各種反対政治運動背後の利害

政治とはその政策実現によって受益するグループと損するグループのせめぎ合いです。
非合理な扇動にすぐに乗るレベル・・付和雷同型もいますが、扇動する側の人材は一応憲法学者や弁護士ジャーナリスト等ある程度の知識人が多いことから見ると、それぞれがなんらかの利害関係者の意向を受けて動いていたと見るのが合理的です。
芦部理論・自己実現自己統治論を理解して「これは使える」と図式化して中レベル階層へのセールストークに書き換えていく知恵者が、低レベルとは思えません。
集団自衛権論を「戦争法」と言い換える(浅?)知恵者と同じです。
背後の利害当事者を見ると、日本の再軍備反対〜独立反対〜反安保運動〜沖縄基地を残す返還反対は、(密約騒ぎはその亜流です)日本対旧ソ連系諸国の利害であり、公害・・工場立地や高速道路、空港開設などありとあらゆるイノベーション反対(パソコンやレンジの害を強調し防犯カメラ反対など)運動は日本台頭を抑え込みたい国際競争上の利害国全部による対日包囲網であり、尖閣諸島問題は、日中であり、慰安婦騒動で言えば韓国による日本の国際的地位低下を目指す運動です。
それぞれに呼応する国内運動体・支持層がいつも共通して(何々を守る会などと名称こそ違いますが、概ね同じような構成員がダブっているイメージです)いるところが不思議です。
ずべての事件で日本支持層は日本人である限り重複しているのは当たり前ですが、片面講和反対に始まり、相手がソ連であれ中国であれ韓国であれ、日本民族弱体化したい勢力といつも利害共通の運動に精出すのを見れば、理解力の低い単純思考グループとバカにするのは間違いです。
単純図式に反応する人材を表面に出して敵を欺く・「バカの集まりだから相手にする必要がない」と油断させる高等戦術だったとも言えます。
慰安婦騒動ではこの戦術に乗せられて「ばかのいうことはほっておけばいい」と放置していたツケが回ったのです。
例えば集団自衛権立法反対運動の檄文の一例は以下の通りです。
https://shikyoso.blog.so-net.ne.jp/archive/c2305081007-1

こんにちは!静岡市教組です。

・・・この一年余、「戦争法案絶対反対」「9条壊すな」の声は全国津々浦々にひろがり、老若男女がこぞって行動し手を結ぶ歴史的なうねりとなってきた。最高裁長官や内閣法制局長官の職にあった人びとをはじめ、学者、法律家、宗教者、芸能人などを含むあらゆる分野で「戦争法案廃案」の声が湧きあがり、大学生や高校生、若い母親たちの主体的な行動とも響きあい、違いを超えた広範な共同行動が生み出された。私たち「総がかり行動実行委員会」は、このような運動の発展に一定の役割を果たすことができたことを誇りに思う。
この間、全国数千か所での人びとの行動を背景にして国会正門前を連日埋めつくし、国会を何度も包囲した人びとの波は、暴走する政府・与党に立ちふさがる巨大な壁となり、政府・与党を大きく揺さぶり、窮地に追い込んだ。この広範な人びとの声と行動こそが、民主・共産・社民・生活の連携を支え、野党の闘いを強めるという画期的な状況をつくりだした。

この種のネット記事は巷に溢れています。
1億数千万の人口のうち非武装平和論や戦争になると信じるレベルの人が総人口の1%でも百数十万ですし、国会周辺への日帰り圏人口は2千万を超えていますので、その1%でも20万人もいるのです。
こらの人たちは「自己実現・自己統治はいいことだ」という応援に力を得て政治活動に関する活動力が上がっている上にお祭り騒ぎでテンションが上がっているのもわかります。
彼らが繰り返しデモに参加すれば国会周辺で2〜3万前後集まってもそれが国民大方の意思とは関係がありません。
数万のサッカーファンが暴徒化しても、それが国民意思と関係ないのと同じです。
選挙でも自己実現・自己統治理論によって投票率や活動力が一般の人より高いとすれば、4〜50%の投票率の場合、得票率1%の支持を得ているとしても投票しなかった人を含めた実態はもっと支持率が低いことになります。
悪天候等で投票率が下がると組織票に頼る共産党や公明党の得票率が上がると一般的に言われていることを想起してもいいでしょう。
逆からいえば、投票率30%でも60〜65%でも凝り固まった組織票の場合得票数が変わらないので65%になれば投票率が極端に下がる政党となります。
意見が違うから議論するために会議や議会があるのですが、どの政策を採用するかが決まった後は前向きに実現に協力しその過程で運用によって判明した不都合の修正を提案するのが政治家の仕事でしょうが、今までの野党のやり方はそれを怠りせっかくの権限を政権批判に利用するばかりです。
企業内や同好会その他あらゆる組織でこういうことをする人が、その組織内で一定の居場所があるのか?を考えれば、日本の野党の政治活動のあり方が如何に異常であるかが分かるでしょう。
団体や組織とまでいかない友人関係でも・気に入らないとプイッと横を向いて協力しないどころか妨害に精出すような人は、その集団内での居場所をなくすのが普通です。
これが政治問題になると芦部憲法によれば、自己実現・自己統治の崇高さを解くので、これを図式的理解する人たちは、違法でない限り何(妨害行為?)をしても許されると誤解しているようですし、国民も何%かの人が誤解しているのが不思議です。
日本では欧米よりも数千年以上も前から進んだ社会合意のあり方が確立していたことを繰り返し書いてきましたが、欧米がフランス革命で初めて手に入れた民意重視政治の理想(まだ経験不足で観念の先走りです)伝播は、多くの国では新しい統治形態の新知識でしょうが、数千年以上前から衆議で決めていく伝統のある我が国にとっては、小さな子供が生煮えの知識を学校で習ってきた料理の仕方などを両親に自慢しているような姿です。
これを象徴するのが絵画の世界で、幕末欧米の新技術・遠近法あるいはブルーの顔料はそのまま部分的に取り入れたものの北斎に象徴されるように「美意識」そのものは日本の方が優れていたので、ジャポニズムとして西洋文化に影響を与えてきました。
輸入された民主主義は児童の料理自慢同様で、まだ生煮え的歴史段階ですので、落ち着いた結論を出す様式を確立できていないので、人材次第で「自己実現はいいことだ」式の乱用的に利用すると文字通り衆愚政治になってしまいます。

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