不満社会6(エネルギー2)

何かあるとすぐ不満が爆発する社会・暴動やテロ予備軍の大きさが、社会の安定度・治安の良さのランキングになるのでしょう。
世界中で国情・民度によって濃淡があるものの、IT化の進行によって中間層の脱落が起きて(貧しいからではなく取り残されている不満)ちょっとしたチャンスがあれば合法非合法の境界を乗り越えたい欲求を持つ不満層が広く静かに広がっているように見えます。
アメリカンドリームは皆貧しい時に、一握りの成功者の物語・白雪姫物語同様の夢物語でしたが、産業革命以降の工業生産拡大時代に多くの人が中間層経験者になっているので、一旦中間層生活経験者の最下層転落は精神的に耐え難いでしょう。
数十年前には、能力ランク4〜50点の人が年功で退職までに中間管理職程度までなれたのが、現在では4〜50点前後の中間層が中高年になってリストラされるのが普通になり、リストラされるとその大方が非正規に転落するようになっています。
せっかく中間管理職になれても、定年までいられない50代以降・・人生の果実を手にするべき時に非正規転落で悲しい人が増えたのです。
現在若手が50点前後レベルでは従来型中間管理職になれる可能性が低い・中間管理職になるには狭き門になりましたし、幹部候補生的な就職ができても途中リストラに遭わない保証もありません。
わが国では、正規化促進・・この1年程度では、人手不足解消のために従来のパートなどを正規化する動きが進んでいますが、職種が昔のように管理職に戻るわけではなく、呼称が正規というだけで(年金・社保加入義務化が進みますが)年功でベースアップし、一定年功で管理職になっていく我々旧?世代型雇用形態に戻るわけではありません。
IT化進行による中間管理職の絶対的不要・フラット化の流れは止めようがない・・(保険その他待遇面で)正規・非正規かの地位が変わるだけであって、スーパーやコンビニ店員としての現場労働の実質(「名だけ店長」という言葉が一般化してきましたが、店長等の名称だけ立派でも本社の統括支配力が強くなり、店長の裁量権の幅が極端に狭くなっています。
この端的な例がコンビニ経営者で、店長どころか数店〜10店舗以上を保有するフランチャイズオーナーでも本部の指令通りの商品配置、単価の決定、廃棄処分ルールまで、何から何まで決められたマニュアル通りロボットのように運営しているだけです。
今まで自動化やロボットに代替される能力が50点以下の人であったとすれば、今後AI発達によって70点前後の人まで「経験の重みを活かせる」職場がなくなっていくとすれば、その分それ以外の職場はフラット化するしかなくなります。
職業・生き甲斐の重要ステージの変化が目まぐるしく進む現在、次世代の若者の多くが夢を持てない状態で「子供を産みましょう」と言われても自分の子供が育つ時代の苦難を思う時に、子供を産み育てる意欲が萎えるのが普通です。
保育料無償とか授業料無償にしても・もっといえば祖父母から子供の学費を全額出してもらえても子供の進路等で苦労することを思えば、子宝を喜んでいいかを迷う人が増えているので、お金の多寡は子供を産むかかどうかの選択にあまり関係がないことです。
並みの能力でも大卒であれば企業の部課長や校長先生程度になっていた昭和50年頃の親世代に対して、昭和末頃から並みの能力で大企業に入っても、例えばコピー機交換などの御用聞きの営業程度しかなれない・将来に夢のない世代が始まっていました。
ホワイトカラーだけではなく工場では自動化が進むなどベテランの能力の重みが縮小する一方・・すべての分野で年功による給与アップが見込めない・・・非正規・正規雇用の形式の問題ではなく、フラット化時代が始まっていました。
バブル崩壊後何年間も就職氷河期とも言われていましたが、直前のバブル期に引く手あまたで有利な就職ができた年代も・中高年になってからリストラが待っている点では同じです。
・・単純な景気循環論の結果ではなく長期的社会構造の変化が始まったのです。
親世代から内心(息子は困ったものだ)思われ、・・自分の将来が心配・・この鬱憤や不安を内心抱えているのが、今の50代以下の世代です。
(将来幹部になれそうな)狭くなった就職戦線で勝者になっても、中高年になってからリストラ対象にならない保証のない社会です。
遅れてこの変化が始まっている弁護士業界も同じで、小泉政権時代の司法改革・・弁護士大増員政策以降弁護士になった今の若手中堅?の場合、「弁護士になりさえすれば豊かな生活が保障されている」ものではなくなりました。
大卒であれば部課長までいける時代でなくなった一般社会のパターンが数十年(ひと世代)遅れて弁護士業界にやってきたようです。
大量増員直前に弁護士になっていて短期間「いい思いをしたちょっと上の世代(今の50台前後?)」も大量増員後の若手による弱者寄り添い意識レベルアップ?(裏から見ればサービス過剰攻勢?)に負けて(ちょうど子供の進学等で出費の多い時期がきて)逆に苦しくなってきます。
企業で言えばバブル期に能力以上の優良企業に就職できた人材が中高年になって邪魔扱いされてリストラ対象になってきた悲哀?に似ています。
サラリーマンは割増退職金をもらって退職ですが、弁護士の場合自営なので、割増退職金も貰えないので廃業資金も出せない?ジリ貧で困っている人が多くなってくるように思われます。
弁護士業は経済単位で見れば家族営業の個人商店規模が中心の弱小単位が原則の業界ですが、(大量増員以降一部大規模化してきましたがまだ小規模が大半です)たまたま弁護士業界は資格=参入障壁で守られていた点で恵まれていたに過ぎません。
大量増員政策で参入障壁が低くなった以上、一般産業界同様に淘汰が始まるのは必然です。
受験者激減がこの兆候ですが、今後は弁護士の自主廃業増加にとどまらず、倒産が増えて行く可能性を否定できません。
日弁連や弁護士会の対外主張は、基本的に人権擁護のための法律面に限定する主張ですが、法律に関する以上は結果的に政治の重要争点に関係することがあります。
政治重要争点と関連する分野で弁護士会の主張を対外主張するには相応の慎重さが求められるはずですが、この10〜15年前後の政治に関する主張はなんとなく慎重さを欠いてきた(内部的には慎重審査しているのでしょうが・・)ような印象を受ける人が多くなったのではないでしょうか?
政治主張の多くが、旧社会党や民主党でさえ放棄した55年体制下の社共両党的主張と結果を同じくすることが多くなった印象が強くなったのは、業界不安(競争激化→2極分化)の高まりとどこかで関係しているかもしれません。

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