各種反対政治運動背後の利害

政治とはその政策実現によって受益するグループと損するグループのせめぎ合いです。
非合理な扇動にすぐに乗るレベル・・付和雷同型もいますが、扇動する側の人材は一応憲法学者や弁護士ジャーナリスト等ある程度の知識人が多いことから見ると、それぞれがなんらかの利害関係者の意向を受けて動いていたと見るのが合理的です。
芦部理論・自己実現自己統治論を理解して「これは使える」と図式化して中レベル階層へのセールストークに書き換えていく知恵者が、低レベルとは思えません。
集団自衛権論を「戦争法」と言い換える(浅?)知恵者と同じです。
背後の利害当事者を見ると、日本の再軍備反対〜独立反対〜反安保運動〜沖縄基地を残す返還反対は、(密約騒ぎはその亜流です)日本対旧ソ連系諸国の利害であり、公害・・工場立地や高速道路、空港開設などありとあらゆるイノベーション反対(パソコンやレンジの害を強調し防犯カメラ反対など)運動は日本台頭を抑え込みたい国際競争上の利害国全部による対日包囲網であり、尖閣諸島問題は、日中であり、慰安婦騒動で言えば韓国による日本の国際的地位低下を目指す運動です。
それぞれに呼応する国内運動体・支持層がいつも共通して(何々を守る会などと名称こそ違いますが、概ね同じような構成員がダブっているイメージです)いるところが不思議です。
ずべての事件で日本支持層は日本人である限り重複しているのは当たり前ですが、片面講和反対に始まり、相手がソ連であれ中国であれ韓国であれ、日本民族弱体化したい勢力といつも利害共通の運動に精出すのを見れば、理解力の低い単純思考グループとバカにするのは間違いです。
単純図式に反応する人材を表面に出して敵を欺く・「バカの集まりだから相手にする必要がない」と油断させる高等戦術だったとも言えます。
慰安婦騒動ではこの戦術に乗せられて「ばかのいうことはほっておけばいい」と放置していたツケが回ったのです。
例えば集団自衛権立法反対運動の檄文の一例は以下の通りです。
https://shikyoso.blog.so-net.ne.jp/archive/c2305081007-1

こんにちは!静岡市教組です。

・・・この一年余、「戦争法案絶対反対」「9条壊すな」の声は全国津々浦々にひろがり、老若男女がこぞって行動し手を結ぶ歴史的なうねりとなってきた。最高裁長官や内閣法制局長官の職にあった人びとをはじめ、学者、法律家、宗教者、芸能人などを含むあらゆる分野で「戦争法案廃案」の声が湧きあがり、大学生や高校生、若い母親たちの主体的な行動とも響きあい、違いを超えた広範な共同行動が生み出された。私たち「総がかり行動実行委員会」は、このような運動の発展に一定の役割を果たすことができたことを誇りに思う。
この間、全国数千か所での人びとの行動を背景にして国会正門前を連日埋めつくし、国会を何度も包囲した人びとの波は、暴走する政府・与党に立ちふさがる巨大な壁となり、政府・与党を大きく揺さぶり、窮地に追い込んだ。この広範な人びとの声と行動こそが、民主・共産・社民・生活の連携を支え、野党の闘いを強めるという画期的な状況をつくりだした。

この種のネット記事は巷に溢れています。
1億数千万の人口のうち非武装平和論や戦争になると信じるレベルの人が総人口の1%でも百数十万ですし、国会周辺への日帰り圏人口は2千万を超えていますので、その1%でも20万人もいるのです。
こらの人たちは「自己実現・自己統治はいいことだ」という応援に力を得て政治活動に関する活動力が上がっている上にお祭り騒ぎでテンションが上がっているのもわかります。
彼らが繰り返しデモに参加すれば国会周辺で2〜3万前後集まってもそれが国民大方の意思とは関係がありません。
数万のサッカーファンが暴徒化しても、それが国民意思と関係ないのと同じです。
選挙でも自己実現・自己統治理論によって投票率や活動力が一般の人より高いとすれば、4〜50%の投票率の場合、得票率1%の支持を得ているとしても投票しなかった人を含めた実態はもっと支持率が低いことになります。
悪天候等で投票率が下がると組織票に頼る共産党や公明党の得票率が上がると一般的に言われていることを想起してもいいでしょう。
逆からいえば、投票率30%でも60〜65%でも凝り固まった組織票の場合得票数が変わらないので65%になれば投票率が極端に下がる政党となります。
意見が違うから議論するために会議や議会があるのですが、どの政策を採用するかが決まった後は前向きに実現に協力しその過程で運用によって判明した不都合の修正を提案するのが政治家の仕事でしょうが、今までの野党のやり方はそれを怠りせっかくの権限を政権批判に利用するばかりです。
企業内や同好会その他あらゆる組織でこういうことをする人が、その組織内で一定の居場所があるのか?を考えれば、日本の野党の政治活動のあり方が如何に異常であるかが分かるでしょう。
団体や組織とまでいかない友人関係でも・気に入らないとプイッと横を向いて協力しないどころか妨害に精出すような人は、その集団内での居場所をなくすのが普通です。
これが政治問題になると芦部憲法によれば、自己実現・自己統治の崇高さを解くので、これを図式的理解する人たちは、違法でない限り何(妨害行為?)をしても許されると誤解しているようですし、国民も何%かの人が誤解しているのが不思議です。
日本では欧米よりも数千年以上も前から進んだ社会合意のあり方が確立していたことを繰り返し書いてきましたが、欧米がフランス革命で初めて手に入れた民意重視政治の理想(まだ経験不足で観念の先走りです)伝播は、多くの国では新しい統治形態の新知識でしょうが、数千年以上前から衆議で決めていく伝統のある我が国にとっては、小さな子供が生煮えの知識を学校で習ってきた料理の仕方などを両親に自慢しているような姿です。
これを象徴するのが絵画の世界で、幕末欧米の新技術・遠近法あるいはブルーの顔料はそのまま部分的に取り入れたものの北斎に象徴されるように「美意識」そのものは日本の方が優れていたので、ジャポニズムとして西洋文化に影響を与えてきました。
輸入された民主主義は児童の料理自慢同様で、まだ生煮え的歴史段階ですので、落ち着いた結論を出す様式を確立できていないので、人材次第で「自己実現はいいことだ」式の乱用的に利用すると文字通り衆愚政治になってしまいます。

超国家・普遍思想4と現実との乖離2(全面講和論と安保騒動)

昨日紹介したウイキペデイアの清水幾太郎の記事を読む限りでは、彼は左翼思考から転向したのではなく、反米という一点で節を曲げずに頑張っていたように見えます。
丸山眞男氏ら「進歩的文化人」主流は、ソ連寄りの主張では戦えない・国民支持がないのを知っていたので「反安保」(ソ連支持)よりは「議決方法が民主的でない」と論点をずらしていくことにしたのでしょうが、清水氏はこのずるいやり方が気に入らなかったようです。
米ソどちらの側についた方が良いかの綱引きで社会主義に夢を持つ純粋な人が国民支持を受けずに論争負けた場合、自己主張が日本のためになると信じているならば支持者を増やすために自己主張の説得力を増やすためにさらに努力するのが本来です。
論戦に破れたからと言って例えば「相手の声が悪いとか聞き取りにくい」とか揚げ足取りの非難しても始まりません。
「日本のための思想信条の自由」であるならば、国民に受け入れられず挽回の余地がないとわかった時点でその思想の優劣が決まったのですから、潔く結果を受け入れるべきです。
討論で負けたのに土俵外の争いに持ち込むような卑怯な真似は日本社会では許されません。
敗戦時に日本の堅固な社会組織解体を目指すGHQの威力を背景に「過去の仕組み解体主張すれば何でも良い」という左右双方が共同歩調できた良き時代に勢いを増した観念論者・進歩的文化人?の限界が最初に出たのが、サンフランシスコ講和条約の股裂事件であったでしょう。
以後いわゆる(敗戦後米ソ双方から支援されてきた)進歩的文化人?はあくまで共産主義が良いと頑張る(確かな野党)勢力と議決方法に矮小化する(日本国家を超越した背後の支配権力に擦り寄りたい)勢力に別れていったように見えます。
そのトドメになった最後の大団円になったのがいわゆる60年安保騒動だったことになります。
左翼系ではこの騒動の大規模さとその高揚感を懐かしむ(続く大騒動を期待する)高齢者が多いですが、最後の大決戦が大きな争いになるのは歴史上普通で、豊臣家が滅亡した大坂の陣が大きな合戦であったことを理由にもっと大きな合戦が起きるの期待しているようなものです。
「進歩的文化人?」と言う変な種族が60年安保以降、土俵上の勝負で負けてしまったので正々堂々の議論をする能力・自信を失い、アメリカの民主的手続き重視の論理を借用して政府の足を引っ張ることを主たる運動に変えていったのですから、姑息な争い方に反対する清水氏の方が王道というべきでしょう。
政敵の足を引っ張ることに精出すことになった勢力の方こそ、自己批判すべきだったと思われます。
これが潔くない行動として批判したら、報道界で干され、従来の仲間から仲間はずれにされてもくじけなかった清水氏こそ侠客・男の生き方です。
日本人は「難しいことはよく分からない」と言いながらも、実はしっかりと正邪を見極める能力が高いので、邪道を続ける限り野党や「進歩的文化人」支持がジリ貧になるしかなかったのです。
安保騒動・・40年前の清水幾太郎の孤立化の経緯を(ウイキペデイアの紹介記事しか知りませんが・・)見ると、ここ数年顕著になっている国会の議論・集団安保法案などで法案の中身よりは議論の時間が少ないとか議決方法が民主的でないとかばかり主張したり、経済政策その他重要法案の審議そっちのけで、森友、加計学園問題等に何年も同じテーマで堂々巡りしている、(この数日では日銀人事案について事前報道があったことを理由に難色を示すなど(・・野党の関心は人材・能力の適性に関する賛否意見であるべきでしょう)近年の野党の国会戦術・揚げ足取りばかり煽る報道界の体質の源流を見る気がします。
国会ではちょっとした政府答弁のミス等があるとその責任をはっきりしない限り、審議に応じないなど議論が全て中断する慣習になっているのは、60年安保以来の悪しき伝統になっている様子が見えます。
昨日22日の日経新聞朝刊3pにも働き方改革の1年延期方針に対して「政争している場合か」という大きな見出しがあって、見出しで見る限り批判記事が出ています。
題名しか見ていませんが、政府提出データが間違っていたことで紛糾しているようですが、内容についての議論がなく入り口でこんな資料ではどうの・・・という議論ばかりでは国会が何ためにあるかわかりません。
政権のよりどころになっているデータが違うならば、自分の主張を裏付けるデータの方が正しいと主張すればいいことです。
我々の訴訟でいえば、相手が有利に展開するために出した資料に不備があった場合、その不備を補正出来ないうちに結審した方が有利です。
例えば訴訟で大量の署名簿を提出した時に中の1名の署名に不備があってもその他数万名の署名に影響しないならば一人くらいの署名文字が読めなくともその補充調査するよりは、その分だけ撤回するかは提出者の自由です。
証拠価値を(反対尋問等で)減殺された方が、その証拠がないと負けそうな重要証拠の時には新たな証拠提出に必要な期間を待ってくださいと頼むのが普通です。
国会で野党が政府新たな資料を出すまで審議に応じないというのは、この逆をやっていることになります。
これを論理的に見れば、政府はその資料がなくとも法案の結論が左右されない・あってもなくともいいおまけの余計な発言(大臣失言)や資料に対する揚げ足取りでしかなかったという前提・・野党が問題にしている資料ミスや大臣発言は法案審議の帰趨に関係ない無駄な資料であることを野党が自己証明していることになります。
野党は政党として独自意見があればその主張をすればいいのですから、政府提出資料の一部にミスがあれば、それがなかった時にその法案の決定にどういう影響があるか、あるいは大臣の「問題』発言がその法案とどういう関係があるかを論じれば良いことです。
担当大臣が法案を十分理解していないことが時々問題になりますが、法律というのは(実務運用して見ないとどういう不都合があるか分からないのが原則で)運用するのは法ができてから一定期間経過後の現場ですので、半年〜1年で交代していくのが原則になっている担当大臣が数年先の運用を即座に想定して答えられないのは当たり前のことです。
これを前提に最近の法律では、施行数年後に実務運用を見ての見直し規定を置いている法律が増えてきました。
物理的な車や洗濯機等の機械類でも実験の繰り返しだけではわからないので、販売後実際にユーザーが使ってみてその使い勝手によって、さらに修正・磨きをかけて行くのが普通です。
「まして生身の人間相手の法律においておや!」と言うことです。

新旧日米安保条約と日本の防衛3

トランプ氏は一方で基地経費発言していることからすると,世界での役割は別としてアジアに関しては,「基地経費負担するならばその地域の警察官をやっても良い」と言う意思表示に読めます。
完全にやめるのではなくコスト次第と言う一見自分勝手に見えるものの、商売人らしいしたたかな?分り易い計算がみえます。
いわゆる「雇い兵」ですが、日本政府の直接の雇い兵ではなく飽くまでアメリカに指揮権のある基地利用を条件とする「いいとこ取り」ですが、これを如何にしたたかに交渉して日本に取り込んで行くか・・米軍縮小に合わせた日本軍強化・の手腕が日本に問われています。
幕末ペリーの強引な手法に日本の上層部は驚きましたが,粗暴な人間は一見相手を驚かしますが時間の経過で粗暴な方が手玉でにとられるのが普通です。
商売人の腰が低いのは、長期的には腰の低い方に有利に働くことを知っているからです。
これを日頃から強引にやっているつもりが、「結果的にやられっぱなしになっている現状にストレスが溜まりカンシャクを起こしたのがアメリカのピープルでありこれの支持を受けているトランプ旋風である」と言う見立てで書いてきました。
今後の日米関係がどうあるべきかは,アメリカのプレゼンス縮小の移行期間に合わせて暗黙のうちに当然決まって行くことですから、(民進党は日本が困るのを期待しているのでしょうが実は)日本古代からの交渉実力から言ってそれほどの心配はありません。
日本にとってアメリカ軍の後ろ盾が控えていることが一定期間(この間に中国共産党政権が自壊して平和国家に変身してくれる期待もあります)重要でしょう。
トランプ氏も巨大な米軍設備・軍需産業・将兵をイキナリ本土防衛に必要なだけに縮小することは国内雇用問題だけとしても不可能ですし,まして国外にも既存の複雑な利害構築していた関係の整理がありますから、すぐには無茶を出来ません。
上記移行交渉には長期間を要することは間違いがありません。
多角交渉だと腕力による優位性が利かないのが面白くないので、今後はアメリカが強い立場を利用して一対一の2国間交渉を求めるのがトランプ氏の基本戦略のようですが,1対1の交渉でしかも粘り強い交渉になれば,日本の方が格段に交渉力が上です。
長期細かな交渉過程があれば、結果的に日本の立場を守れる・・徐々に米軍に引き上げてもらうのに比例して日本防衛力をアップして行く関係になることは、過去の交渉実績が示しています。
この関係が続いている限り中国は簡単に日本に手を出せないし,その間に日本の自衛力が強化されて行きます・・逆に時間をかければ,中国がつぶれそうな気配ですから時間が日本に味方するでしょう。
イギリスとEUの離脱交渉も複雑ですから,老かいなイギリスがどのような交渉能力を発揮するかの関心で,見物する方には面白い展開になるでしょう。
日本としてはトランプ氏を敵に回さずに(おだてながら)同氏がうまく政治を出来るように軟着陸させることに協力して行くしかありません。
今までも日本はアメリカの補完勢力として,陰日向なく協力して来た実績があるので、今後もアメリカの補完勢力に徹することが重要です。
トランプ氏の強引な手法では却って女房役の取りなしが必要になりますので,日本の役割が減じることがありません。
日本の国際役割・補完性機能に付いては2016/02/28/「覇道の限界と日本の補完性7」前後で連載中で途中になっていますが,動乱期にこそ再び脚光を浴びるべきでしょう。
16年2月に書いて来た補完機能は,アメリカは世界中でうまく行かなくなって来て日本の助けを必要としている現状を書いたものでした・・。
日本の助けを借りて漸く運営する・・オバマがあちこちでオタオタしているのに我慢出来なくなった国民がちゃぶ台返しをして「世界から引き上げろ」と言うヒステリーを起こしたのが今回大統領選「アメリカ第一」のスローガンの基礎です。
そうなると今後の日本のアメリカに対する補完機能の発露の方法を修正して行く必要がありますが,複雑になればなるほどうまくやれる能力の人が日本には一杯いますから心配はいりません。
話題が変わりますが,何千年も話し合いで解決して来た成熟した我が国で戦後イキナリ話し合い解決機能が何故なくなってしまったかの関心でこの数日60年安保条約騒動を例にして書いてきました。
サンフランシスコ平和条約が中ソ・共産系除外で成立した後遺症・・当時中ソの立場に固執する・・西側軍事力低下を最大目標とする中ソ系マスコミや外国資金で動く勢力は、日本の利益よりも中ソ系利益を優先する思想ですから、何を言っても受入れる余地がなかった・・話し合い解決の成立余地がなかったことに原因がありその後遺症を今に引きずっているのではないかと言う関心です。
数日前まで書いて来たようにこの延長上で60年安保騒動が起きたように見えます。
60年安保はサンフランすすこ平和条約による独立時に同時成立していた日本に極端に不利な条約の改訂・・日本に有利な改訂ですから、完全な対等条約を勝ち取るにはまだ無理があるにしても少しでも良くすることに反対する理由がなかった反対運動であったことを書いて来ました。
合理的理由があるとしたら米軍不利な改訂を阻止したい米軍スジの意向と,西側陣営に組み入れられている条約自体に反対するものであった・・西側陣営参加のサンフランシスコ平和条約反対運動・・要は日本独立を阻止したい勢力の蒸し返しでしょう。
アメリカ系の資金流入の有無は分りませんが(・・アメリカはソ連のようにまだつぶれていないにので・・)60年安保はソ連の資金と人的応援で行なわれていたことがソ連崩壊後分って来ました。
しかも昨年の集団自衛権論争は既に60年安保条約で(日本施政権内限定ですが)認められていたことが、12月2日に紹介した条文で分りました。
昨年マスコミ報道だけで,安保の条文をよく見ていませんでしたが,既存条文を見ると相互防衛義務負担が新たに生じるのではなく,共同防衛義務の範囲が広がることに対する反対だったのに集団自衛権ばかり(か分りませんが印象としては)氾濫していたように思えますが・・・。
たとえば、朝日の報道で見ると以下のとおりです。http://www.asahi.com/topics/word/%E9%9B%86%E5%9B%A3%E7%9A%84%E8%87%AA%E8%A1%9B%E6%A8%A9.htmlからの記事です。
集団的自衛権(2015年05月12日 朝刊)
同盟国などが攻撃されたとき、自国への攻撃と見なし、反撃できる権利。国連憲章など国際法で認められている。日本の歴代内閣は「保有しているが、憲法9条との関係で行使できない」との解釈を示していたが、安倍内閣は昨年7月の閣議決定で、解釈を変更。(1)日本と密接な関係にある他国が武力攻撃され、日本の存立が脅かされる明白な危険がある事態(存立危機事態)(2)我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない(3)必要最小限度の実力行使——の新たな3要件を満たせば、集団的自衛権による武力行使を憲法上可能とした。
上記のとおり集団自衛権行使が憲法違反かどうかばかりが朝日新聞に限らず大規模報道されていましたし、昨日の日経新聞でも「安倍政権のこの一年の成果として「集団自衛権がどうの・・」と言う記事がでていす。
集団自衛権・・共同対処は既に60年安保に規定されていてこれが国会通過していたのですから,何故いまごろ再び大騒ぎし直したか疑問です。
ここ4〜5年来の国防上の大きなテーマは、60安保条約の限界・・日本施政権下範囲を日本施政権外に共同防衛行為をする範囲拡大が許されるか?だったことなります。

新旧日米安保条約と日本の防衛2

旧安保条約はポツダム宣言同様に一方的に押し付けたモノで,日本の権利・アメリカの義務が全くない・・条約とは言えない代物であった上に条約期限もない無期限条約でしたので,これをパーフェクトに対等でないまでもその当時の日本の国力相応に少しでも有利に改訂し,10年後に更に見直し可能な条約の盛り込んだのは日本にとって格段に有利な結果でした。
そうすると60年安保騒動が何故起きたのか?・・・政治活動には相応の到達目標がある筈ですから,どこの利益を図るための騒動だったのか,今になると不思議な現象でした。
新球場分を見比べると疑問の余地なく日本に利益になる改訂でしたが,ニッポン民族が有利になると困る勢力が運動を煽っていたとすれば,「パーフェクトでないと行けない」と言い張って結果的に交渉決裂を目指していたと解釈すれば合理的理解可能です。
日本独立に反対する勢力が西側陣営だけとの講和条約反対→独立反対を唱えていたのと同じ構図です。
今になって記録を見ると60年安保は当時のマスコミ報道とは全く違って,(私の独自解釈ですが・・)全面講和論で日本の独立に反対した勢力の蒸し返し運動と折角有利な条約を改定したくないアメリカの意を裏で受けた勢力の合作騒動だった印象です。
その頃のスローガンでは,(高校生の頃で良く覚えていませんが・・)日本が米ソ戦争に巻き込まれると言うだけの運動だった印象です。
3日に紹介したとおり日本が共同防衛義務を負うのは「日本施政権下」=国内の戦争に関してだけです。
ソ連(に限らず外国)が日本国内に攻め込んで来たときに守ってくれる米軍と一緒に戦うと言う米軍協力義務の明記すると、日本が米ソの戦争に巻き込まれるという主張は無理があり過ぎます。
これを誤摩化すために?マスコミは,日本に基地があると一緒に攻撃を受けるとか,米軍の展開する極東の範囲が問題だとしきり宣伝し社会党もこれを煽っていました。
しかし,上記のとおり改訂しなければ旧条約のママであり,旧条約締結(1951年9月八日のトキには米軍は駐留していて朝鮮戦争を戦っていましたし,極東と言う意味不明の地域で軍事活動していましたから,(無期限条約なので)改訂を拒否すれば旧条約がそのままですから,米軍がいなくなる訳ではありません・・。
ウイキペデイアによると以下のとおりです。
  朝鮮戦争(ちょうせんせんそう、1950年6月25日 – 1953年7月27日休戦)
旧条約は独立のとき1951年9月8日ですから,米軍は日本の基地から出撃を繰り返している最中でした。
マスコミ報道は反対論を煽るためのものばかりで,条約改訂によって危険になるものではない不安を煽っていたことが分ります。
旧条約締結時には問答無用的関係・・独立を認めてもらう弱い立場だったので日本がいろいろな注文をつけられなかったのに比べて新条約では,条約交渉プロセスの経緯が記録に残るので・・高官同士のやり取りから米軍の自由度が逆に狭まっただけのことです。
何故これに国民が憤激したのか意味不明ですが,ソ連の意を受けたマスコミの脚色報道が原因だったのではないでしょうか?
上記米ソ戦争に巻き込まれると言う宣伝も論理的でない主張の1つですが,でも激化に大きな影響を与えた樺美智子さんの死因に関しても以下のとおりであることが分って来ました。
http://yabusaka.moo.jp/60anpo.htmによる樺美智子さんの死因に関する報道と事実の違いは以下のとおりです。
※樺美智子の死因と報道・・・・樺美智子の遺体は慶応病院法医学教室で解剖され、「内臓器圧迫による出血のための急死。致命傷となる外傷はない」という結果が出た。ところが、解剖に立ち会った社会党参議院議員と代々木病院副院長は「扼殺の疑いが強い」と異なる発表をした。さらに社会党弾圧対策委員会は殺人罪で告発。「樺美智子さんは警棒で殴られたうえ、踏まれて死亡したのではないか」という報道も加勢した。しかし後日、東京地検は現場写真や参加者の証言などからその説を否定している。」
樺美智子さんの死は私も知っている程当時の国民に大ショックを与えただいショッキング報道でしたが,その原因は客観事実に反した社会党の発表や虚偽報道にる煽動行為に原因があったことが今になると分ります。
マスコミは客観事実さえ報道しないのですから,その他報道姿勢の偏り方が半端でなかったことが分ります。
その後の経過は以下のとおりです。
 17日、樺美智子の死に抗議した約7,000人が、再び国会前に集まった。
 新聞社7社は、「暴力を排し、議会政治を守れ」との「7社共同宣言」を発表。
 同じ日、国会では社会党・河上丈太郎代議士刺傷事件が起こる。
 18日午前11時、東京・日比谷で樺美智子を慎む全学連総決起大会開催。午後には東 大で合同慰霊祭が開催される。
 強行採決からちょうど1ヶ月後の19日午前0時、前夜からでも隊33万人が国会を取り 巻くなか、新安保条約が自然承認される。新条約は内乱鎮圧条約や、 第三国への軍事的便益提供禁止などは削除され、条約存続期間は10年とされた。
 23日午前10時20分、新安保条約は東京・白金の外相公邸で批准書の交換が行なわれ、すべての手続きを終えた。そして岸内閣は「人心一新「政局転換を理 由に、この政治的混乱の責任をとって総辞職を発表。
 7月14日に池田勇人が党総裁に選出され、19日に池田政権が発足。 
 そして7月の3つの県知事選では、社会党系候補は全敗、自民党系候補が当選した。自民党は11月の総選挙でも前回より9議席増やした。」
上記によれば、運動エネルギーに大きな影響を与えた樺美智子さんの死因についても社会党やマスコミは明白に虚偽発表・報道をして国民を誤った方向へ煽っていたことになります。
声なき声・・国民の多くは、マスコミの煽動に乗らずに事実をよく見ていたコトがその後の選挙結果・社会党の敗北)で分ります。
大規模デモ隊と言っても国民の0、1%にもなるかならないか程度が普通ですから,(デモ参加者が13万人でも一億数千万の人口比で、0,1%しかいません)感情を煽る一方の非論理的なマスコミ意見に成熟しない高校生や大学生等の若者中心に反応してしまっただけのことだったと見るべきでしょう。
マスコミは感情を煽るのではなく,中立の立場で客間的な経過説明をして国民の冷静な判断のチャンスを与えるべきでしょう。
この反対運動によって,条約改訂がもしも出来なかったならば、日本はアメリカ軍の占領支配を跳ね返すチャンスを失い半永久的に支配を受け続けるしかなかったことになります。
話題が飛びましたが,アメリカは元々日本防衛のために駐留していたものではない・・・今もアジア全域のために出動しているだけで日本防衛には寄与していません・・精々基地があるから・・おつきあい程度に防衛協力しましょうと言うだけです。
アメリカ自身に危険が及ぶような相手・・日本にとって最も危険な相手ですが・肝腎の防衛が必要になれば尻ゴミするに決まっている・・核の傘は実は大して当てにならないことは昔から誰でも知っていることです。
日本が独立を守るためには,いつかは自前の防衛力整備が必須であることを知っているからこそ,警察予備隊の時代からニッポン民族独立に反対の勢力・・反日勢力は必死になって防衛力強化に反対し妨害してきました。
アメリカも日本の防衛をしたくないものの日本軍事力が強化されるの防ぐために守ってやると言うしかなかった面もあるでしょう。
その意味では守る気もないのに日本の核武装を阻止して来た歴代政権より、「日本を守ってやらないから日本は自分で核武装すべきだ」と言うトランプ氏の方が正直です。
政治献金や講演料名目でマネーロンダリングしている?ヒラリー氏よりも、12月2日に米国企業キャリーを脅して?メキシコへの工場進出を中止させたことに関連して書きましたが,ズバリ企業やクニを脅して落とし前を取って行くことになりそうなトランプ氏の方が分り良い面があります。

新旧日米安保条約と日本の防衛1

岸政権の60年安保改訂交渉は、米軍の意思次第でいつでも軍が日本人を鎮圧出動出来る権利を認めた第一条削除を筆頭に占領軍としての米軍を(今もアメリカの支配下にあると言う実質は別として)法形式上全面否定した・・形式的にも日本独立後約10年経過でようやく軍事的独立を果たした大成果でした。
占領軍の本質を前提とした旧条約では,法律上も駐留軍は肝腎の日本防衛義務を全く負わない仕組みでした。
アメリカとしては日本を占領支配するだけで何の義務も負わなかった占領軍の本質が、独立前の竹島占領や北方領土占領を黙認した基礎に繋がっているのです・・。
昨日紹介した旧条約の条文によると共同防衛義務が全く記載されませんが,元々米軍は占領軍でしかないからアメリカとしては日本の独立を認める代わりに占領軍が従来と何ら権限が変わることなく継続さえ出来れば良いのであって、日本を防衛する義務など想定すら出来なかったからでしょう。
アメリカ軍支配を侵す勢力があれば、アメリカ軍の支配地(縄張り)を守るために?撃退する関心があっただけです。
強盗が折角の略奪品を奪われそうになればこれを撃退するのと同じで,被害者を次の泥棒や強盗から守る義務などに関心がありません。
「占領支配の沽券にかかわるかどうか」だけの関心であったから、北方領土でも李承晩ライン・竹島(要は漁業権の争いですからアメリカの軍事関心「沽券」には関係がなかったのでしょう)もスキなようにさせていたことが今の日露,日韓のしこりになって残っている原因です。
最早占領軍ではないと言う意味を明らかにするために60年安保では防衛義務を新条約第5条で明記させたのですが,相手の防衛義務を明記する以上は日本も相互負担するのは当然です。
日本で大騒動になった60年安保のテーマを見ておきましょう。
11月30日現在のhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E4%BF%9D%E9%97%98%E4%BA%89の記事からです。
「1951年(昭和26年)に締結された安保条約は、1958年(昭和33年)頃から自由民主党の岸信介内閣によって改定の交渉が行われ、1960年(昭和35年)1月に岸首相以下全権団が訪米、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領と会談し、新安保条約の調印と同大統領の訪日で合意。1月19日に新条約が調印された。
新安保条約は、
内乱に関する条項の削除
日米共同防衛の明文化(日本をアメリカ軍が守る代わりに、在日米軍への攻撃に対しても自衛隊と在日米軍が共同で防衛行動を行う)※アメリカ軍の防衛の明文化はされていないとの反論が多数されている。
在日米軍の配置・装備に対する両国政府の事前協議制度の設置
など、安保条約を単にアメリカ軍に基地を提供するための条約から、日米共同防衛を義務づけたより平等な条約に改正するものであった(※より平等でないとの意見もあり)。」
独立時の条約は独立を認める代わりの既得権として,(沖縄返還時の基地既得権自我条件だったのと同じです)基地無償使用権をそのまま維持するものでしたが,今度は日本に基地を置く以上は,日本の要請があれば日本防衛義務を分担する外、軍や設備の配置も米軍が勝手に出来ず日本との「事前協議」のタガを嵌めると言う当たり前の条約に改訂しようとするものでした。
「日本に基地を置きながら日本防衛に協力しないならば何のための条約だ!」となります・・まさに旧条約はアメリカが占領を続けたいだけの条約だったことが分ります。
昨日紹介した旧条約には、期限がない・・・破棄・・一方的なけんか腰の破棄をする以外には,やめらない条約でしたが,この改訂で10年間に限定されました。
もしも改訂が出来なければ、日本がアメリカと喧嘩するほどの関係にならない限り(今でもびくびくして付き合っていますが・・)アメリカは従来どおり植民地支配軍として「半永久的」に居座っていられる関係だったことが分ります。
ウイキペデイアの記事は当てにならないと言う批判がありますので,外務省の公式記録による60年安保条約そのものを見ておきましょう。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/jyoyaku.html
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
第一条
 締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。
 締約国は、他の平和愛好国と協同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。
第二条
 締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。
第三条
 締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。
第四条
 締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。
第五条
 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
 前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。
第六条
 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。
第十条
 この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。
 もつとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。
 以上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。
 千九百六十年一月十九日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。
日本国のために
 岸信介
 藤山愛一郎
 石井光次郎
 足立正
 朝海浩一郎
アメリカ合衆国のために
 クリスチャン・A・ハーター
 ダグラス・マックアーサー二世
 J・グレイアム・パースンズ
上記を見ると,旧条約第一条の内乱条項がなくなり米軍が国内で勝手に軍事力行使出来ない・・当たり前の条約になっています。
代わりに第5条で日本施政権下の米軍に対する攻撃に対する共同防衛義務が明記されましたが,これは米軍日本防衛にあたることになった以上,日本防衛のために出動した多米軍と共同軍事行動するのは当然のことであって仮に明記されなくとも米軍と一体化して戦うベキは解釈上でも出て来ることです。
友人に引っ越しや大掃除をの手伝いを頼めば,頼んだ本人がテレビを見て遊んでいる訳には行きません・・喩えば、日本上陸作戦をしている侵略軍と戦ってくれているアメリカ軍に弾薬や食糧を届けたり見張り報告程度の協力をするのは当たり前のことです。
何故これが60年安保で大問題になったのか意味不明です。
以下に紹介するとおり,60年安保のときに極東の範囲を問題にしてソ連が,「歯舞色丹を返すのをやめた」と通告して来たこともありますが,旧条約で元々書いてあった上に,60年安保でも米軍の防衛義務は日本施政権範囲内だけですから,日本の施政権外での協同防衛義務はありませんから、何も変わっていないのです。
新安保条約でもソ連が日本の政権下の地域へ侵略しない限り共同軍事行動がないのですから,この条項をソ連敵視とソ連が怒るのは(ソ連を刺激すると反対する国内運動家も),日本侵略意図があると言う意思表示だったのでしょうか?
一方で極東の範囲が不明だと言うのも大きな反対理由になっていたようですが,この条文は元々旧条約に入っていたのですから,新安保で変わったことではないのに、何故国内で大反対理由になるのか?も不思議です(無期限条約でしたから,改訂しない限り旧条約のママです)し、ましてソ連が日ソ共同宣言を何故破棄出来る理由にするのか不明です。
日ソ不可侵条約破棄→満州から日本人大量に拉致したのと同様に、国際合意を守る気持ちが元々もない・・・相手が(国内デモストライキ等で)弱れば,何をしても言っても,しても良い・・力関係次第と言う信用出来ない体質が再び出ただけのことです。
こんな国相手に先行協力すると,(中国も韓国も日本の世話になるだけ世話になって今になると如何に日本をやっつけるかに智恵を絞るクニですが・・)取るものだけ取ってから「破棄する」と言うドンデン返しがいつあるか知れません。

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