ハニトラ→美人局の現代版2

この事件で思い出しましたが、たまたま私自身同種事件を15~20年ほど前に担当したことがあります。
インド主張中にレイプされたという主張だったか、浅草のホテルが事件現場だったか忘れましたが、ともかく浅草のホテルが路地に面していたのでタクシーをどこで降りたから始まって路地をどうやって歩いて行ったかなど、その他の状況を詳しく応酬しているうちに女性側の弁護士はそのホテルには少なくとも同意してはいったことを認めるしかなくなってしまい、(囲碁でいえば投了です)引き下がった事件がありました。
長い付き合いがあったのに、いきなりレイぷされたと言い出された事件でした。
ただし、ここで引用する意味は事実の真偽に興味があるのではなく、TBS男性側の言い分でも日頃から何か頼むと見返りに気楽に性関係を求めるし、それに応じる風潮があるということです。
伊藤詩織氏は「私はそういう女ではありません」という主張でしょうし、そういう業界常識を覆したいという正義感で記者会見を開いたというのですから、そういうことでしょうが。
その男性個人の特性であれば、風潮を正すための記者会見をする必要がない・芸能や放送業界はいつも性を売り物にして成り立っている風潮があるという意味でここでは書いています。
そういう風潮が業界に蔓延しているから男の方も気楽に誘ったりするのでしょう。
財務次官のセクハラ疑惑も黙って刑事告訴したり損害賠償請求交渉したりしないでいきなりの週刊誌発表と記者会見ですが、記者会見から始まる点もどこか今回のセクハラ事件週刊誌公表と似ています。
共通項は世の中の間違った風潮をただしたいという意味では表向き正義感に基づくもののように見えますが、安倍政権周辺を叩ければ何でもしたい・いわばマスメデイア総がかり行動の一環となれば、政治目的の行動となります。
伊藤詩織氏が15年の強姦被害事件を総選挙直前に山口氏が安倍政権応援本発表直前の17年6月頃にいきなり記者会見して告訴したという絶妙な時期選びと今回のセクハラ発表も16年から続いていた被害と言いながら、財務省の資料改ざん発覚の今ここで発表する必要性?の偶然の一致の疑問です。
テレ朝女性記者が正義感・色仕掛け取材の悪弊をただしたい純粋な思いを16年から温めてきたのであるならば、この時期になぜ発表したのか?別の時でよかったのでないかの疑問です。
政局に利用されて色眼鏡で見られるのが明らかなのに・・政治部記者であればその辺の機微に最も詳しいはずのプロですから、政局と切り離せば余計な憶測が広がらないでよかったのですが・・。
解散風によって(メデイア界の目が覚めて)審議拒否が収まってセクハラ騒動も収束するでしょうが、福田次官のセクハラ疑惑についてもう少し続けます。
編集前の録音がどうであったか、女性記者の訴えがあったのにこれを無視して?あえて国会で審議が止まるほどの騒動の渦中にある財務省次官と1対1(ということは個室を意味するのか?など疑問が尽きませんが)の酒席での取材に行かせたのか、誰が予約して誰が費用を払ったかなど重要事項の発表も、記者会見での質問すらありません。
世間を騒がせて発表する以上は、これらについてメデイアの常用する「説明責任」がないのでしょうか?
結果は、訴訟手続きで明らかにするしかないということでしょうが、いかにも目先の政治効果を狙っているイメージ見え見えで、数年後に裁判で事実がわかってもその時には政局は終わっているから・・次官も懲戒されてしまっていると言わんかのような不自然な対応です。
一般的事件では弁護士として相談を受ければ、企業内飲み会などに嫌なら行かなければいいのですが、義理のある別の上司の送別会など行かないわけにいかない飲み会があるでしょうが、そう言う場合には然るべき担当部署に相談してセクハラ行為を抑制してもらうとかですが、今回は自社内の人間関係ではなく一種の取引先のしかも1対1の酒席です。
取引先の酒席に応じるかどうかは企業関係であって、その女性個人が断りにくい問題ではありません。
企業対応で誰か別の人を派遣すれば良いことなのに16年から夜間単独取材からその女性を外していたというにしては(録音装置を持たせて?)をこの政局緊迫下に限ってあえて送り込んだ意図が不自然です。
セクハラ被害を訴えていたとすればそもそもそういう業務命令を出すこと自体労働契約上の精神から見てアウトのイメージを抱きますが・・・均等法の行政指導・ガイダンス違反でないのでしょうか?
特定上司からのセクハラ被害を訴えているのに、業務命令でその上司と2人きりで約1週間の出張命令出したことが事件になれば、そんな非常識な出張命令を出した方がアウトでしょう。
西山事件以来明らかになったことは、刑事事件で確立している通り、取材とはいえ「違法収集は許されない」ということです。
この程度の論理は違法証拠事件の報道をしょっちゅうしているし、西山事件の教訓もありメデイア界では熟知している筈です。
ハニトラで国家機密情報を聞き出そうとするのは、国家公務員法違反行為をそそのかす犯罪です。
そして密室と想定される「1対1の酒席での会食」は予約していくものでしょうが、(行ってみたら単独取材になってしまった事件ではありません)「嫌だと上司に訴えていた」というならば、その記者がどうしてのこのこと一人で行く必要があったか不思議です。
2回目の記者会見ではデスクの指示で行ったとなっているのですが、苦情を申し入れていたのにどういうやりとりがあって彼女が単身行くことになったのかの説明がありません。
いかにも上司とデスクを使い分けているような印象ですが、その点について誰も突っ込んだ質問をした形跡がなさそうです。
第1回会見では上司一人しか知らなかったような説明でしたが、デスクと上司が違うとしても直属上司が自分一人で収めておく性質(社内上司のセクハラ/パワハラ相談の場合、・・・例えば「課長に被害を受けていると係長が平社員から相談を受けた場合、社内のどの系列(派閥もあるし)の上位者に相談するかを悩んで「そのうち然るべき人に相談し対応するから少し待って欲しい」というのが普通ですが、取引先顧客関係のセクハラであれば社内の誰にでも遠慮なく相談できるものです)のものではなく、自分の上司(課長)や同輩(係長同士)に相談するのが普通です。
仮に部下から相談されているのに、これを握りつぶして上司が同輩やその上司に一切の相談をしていなかったとしても、(単独取材が業務上必須であるならば)1年半も彼女に限って夜間単独取材をさせていなかったとすれば業務担当者の仕事ぶりとしてイレギュラーであるばかりか、その穴を埋めるために別の同僚が代わって行くことになるはずですから、代打で行かされる同僚間でこうした事情が自然にひろまるものです。
(企業で出産前後その他の事情で休暇を取る場合、出産や家庭の事情は個人情報であるものの、代打的に代行する人には、いつのまにか全て伝わっているのが普通です。
私のところに労働事件ではない一般事件で相談にくる派遣の女性でも、正規社員出産休暇中のピンチヒッターであるなどの事情を普通に説明します・・・部局内同僚間で彼女が嫌がっている理由は周知のことだった筈です。

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