フェイクニュース6(拡散の原動力4)

日本のネット記事も、真面目に読めば根拠薄弱であることが分かるような「おもしろ」「誇大表示」記事らしいものが溢れていますが、政治記事では、面白いギャグだと笑ってばかりいられないとんでもない結果も引き起こします。
中にはクリントン批判のフェイクニュースに反応して店舗襲撃事件まで現実に起きたのが恐ろしいところです。
https://mainichi.jp/premier/business/articles/20170901/biz/00m/010

偽ニュースが起こした米国「ピザゲート事件」の“狂気”
2017年9月2日 清水憲司 / 毎日新聞北米総局特派員(ワシントン)
「私たちには自分を守れない人々を守る責務がある。いつの日か理解してほしい」。娘2人に宛てたビデオメッセージを撮影した後、男はワシントン市内のピザ店「コメット・ピンポン」に押し入り、ライフル銃を発砲した。
・・・幸いけが人はなかったが、フェイクニュースの拡散を象徴する「ピザゲート事件」として全米を驚かせた。
男は「ヒラリー・クリントン陣営が児童の人身売買に関わっている」というフェイクニュースを信じ込み、子供たちを助けるつもりだった。
・・・ピザゲート事件の発端は、暴露サイト「ウィキリークス」が流出させたクリントン陣営幹部のメールにあった「ピザ」の言葉だった。米メディアの分析によると、ネット掲示板では「チーズ・ピザ」が児童ポルノの隠語として使われており、匿名投稿者たちの妄想をかき立てた。オバマ前大統領の支持者が経営するピザ店「コメット・ピンポン」が次第にクローズアップされた。
無責任な連想ゲームは、繰り返されるうちに「ニュース」としてネット空間に拡散し、エドガー被告が聞いていたラジオ番組でも取り上げられた。3日間悩んだ末に、エドガー被告は自ら事実を突き止めようとピザ店に向かった。

伝言ゲームで知られるように、多くの人を介すれば内容が大幅に変わって行くことが多いのですが、この種冗談や過激な表現はこれに「尾ひれ」をつけた拡散流布自体でこれを見る人は「フェイクかな?」と思いながらも信じないまでも相応のマイナスイメージ刷り込みが出来上がることが多いのです。
デマでもそれを大手メデイアが大規模な話題にすること自体で洗脳効果があります。
トランプ氏は話題性のおかげでの選挙費用が少なく済んだと豪語していることとも符合しています。
https://wired.jp/2017/06/22/journalism-post-truth-era/

TEXT BY JASON TANZ
TRANSLATION BY TOMOAKI KANNO
WIRED(US)
この数年の間にソーシャルメディア、特にFacebookが主要なニュースソースとして出現したことで急加速した。
プロのメディアが世論を方向付ける力は衰え続け、いまではほとんど失われている。ソーシャルメディア以前は、新聞の編集者が、どのネタを発表するか、それをどこに載せるかの最終決定権をもっていた。
今日、その役割を手にしているのは読者である。編集者は記事を発表できるが、それが誰にもシェアされなければ、書かれなかったも同然となる。
読者が新たなパブリッシャーだとしたら、彼らにニュースをシェアさせる最善の方法は感情に訴えることだ。主によくない感情に。
『Human Communication Research』誌に最近掲載された論文によれば、Facebookで情報をシェアするかを決める「重要な媒介メカニズム」は怒りだという。特定の主義に偏り、強い怒りを感じている人ほど、政治のニュースをネット上でシェアする傾向にある。そして、そうやってシェアされる記事は、それを読む人にさらなる怒りを抱かせることになる。「マーケットシェアを獲得するにはラディカルになる必要がある」と、フェイスブックの元プロダクトマネジメント部長サム・レッシンは言う。「穏当では何も得られない」

政治でのフェイクが騒がれていますが、発信者がもともと特定思想に凝り固まっていない純粋儲け主義・遊び感覚でやっていることが、却って拡散効果を発揮しているように見えます。
多くの読者を呼び込めば 多くのスポンサーがついて儲けられるのが基本ですから、彼らは内容の善悪など気にしない・絵空事でも、やらせ、奇抜・過激であればある程効果がある・・何でも良いのが基本です。
フェイクのレッテルを貼られるリスクを恐れない・・単に金儲けになるかどうか・・如何にして注目を惹きつけるかだけに特化する人には伝播性の競争では叶いません。
https://mainichi.jp/articles/20171114/k00/00m/040/021000c

フェイクニュース
作られ方 ブログ管理人が内幕語る
神奈川県座間市で9人の遺体が見つかった事件で、話題性の高い情報を載せているトレンドブログに「父親も共犯?」など事実無根の見出しや投稿を載せた管理人が、匿名を条件に毎日新聞の取材に応じた。
動機を「収益目的と世間のニュースやその裏を追いたい気持ち」と説明。ブログは個人で運営し、収入は多い月で10万円台後半になるという。
閲覧増やすため見出し過激に
トレンドブログは、事件や芸能人のスキャンダルなど注目の話題を取り上げ、クリック数などに応じて報酬が支払われるネット広告(アフィリエイト広告)を収益源とすることが多い。個人運営だけでなく記者を集めて組織的に運営するものもある。

いわゆる大災害時などに起き易い流言蜚語は出所不明の庶民の憶測発信が元ですが、今は日常的なネット発信が容易になった上に金儲けの手段になったこともあって、伝播力が半端でなくなったので量から質に変わったとみるべきべきか?の問題です。
許可制にしてルール整備するようにしているビットコインや民泊同様にして行く必要があるかの問題です。
フェイクの直接取り締まりは、事実認定の難しさの他に憲法の表現の自由の保護があって難しいですが、思いつき的でちょっと乱暴な意見ですが、(その道の専門家による緻密な論議が必要ですが)業法化してしまえれば、違反行為に対する何段階かの行政処分があって最終的には許可取り消し→無許可営業の場合は業法違反による刑事処罰法制化が可能になるので、大規模なフェイク発信だけでも防げるでしょう。
許可業種になり且つ全国展開的大手になると一定期間の(刑事処分まで行かなくくとも)業務停止処分だけでも業績に大規模な影響が出るので、内部チェック規制が厳しくなりフェイクの暴走を防げます。
例えば個人が空き家を利用している民泊の場合、なんらかの違反をしていて1〜2周間業務停止しても大した影響がありませんが、全国展開している仲介サイトが業務停止処分を受けるとその間従業員等の固定コスト負担があり、且つ信用毀損による大規模ダメージを受けます。
農産物の産地偽装や無農薬表示違反があった場合、その農家だけの問題ではなく、これを取り扱っている大手スーパーの方が、その何千倍もの損害を受けます。
農産物の産地偽装や無農薬表示違反があった場合、その農家だけの問題ではなく、これを取り扱っている大手スーパーの方が、その何千倍?もの損害を受けます。
この場合、大手スーパーが「当社は騙された被害者です」と言い張って済ませられないので必死になって再発防止に務めるが普通です。

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