自衛力4→稼働率1

ただし、これまでの引用記事は2015〜16年前後の情勢やデータですが、国際情勢は日々新たですから、国際孤立の深まっているロシアが大幅譲歩して17年に最新式戦闘機輸出+エンジン輸出「模倣して作っても構わない」と言わんかのように?に応じたようです。
これによって少しは(また模造する対象品レベルが上がったので?)中国の戦闘機技術がアップするでしょう。
http://www.ssri-j.com/SSRC/abe/abe-338-20170928.pdf

中国がロシアから新型117Sエンジンを大量購入
漢和防務評論20170829(抄訳)阿部信行
(訳者コメント)
「SU-35の対中輸出は、ロシアにとって大幅譲歩であったようです。
中国はロシアの足元を見て、有利に交渉を進めたようです。特に新型117Sエンジンを購入機数24機に見合った数よりも多く購入し、開発中のJ-20に搭載し試験飛行を行おうとしている、とKDRは見ています。
ロシアは、インド市場が縮小したため、どうしても中国市場を確保しておきたいのでしょうか。
ロシアは、現在対米、対欧州関係が不安定で、政治外交面でも中国を引きつけておきたいはずです。」

ウクライナ紛争による制裁の打撃とロシアの(資源下落による)経済苦境の複合の結果(その上インドからも購入拒否を受けている結果)ヤムなく中国に対し技術の模倣されるのを承知でしかもおまけのエンジンまで付けて売るしかなくなったので、(これまで冷戦期の「最新型?」の模造しかできなかった)中国軍機の近代化が進む可能性があります。

横道に逸れますが、プーチンはウクライナ侵攻で国威発揚のつもりですが、その結果国際孤立してしまい、本来国防上最も警戒すべき中国に擦り寄るしかなくなっている現実が見えます。
数年前に開催された中国共産党の(日本と戦っていないのに)対日勝利70周年記念行事には主要国首脳が欠席する中、半日運動中の韓国パク大統領と並んで主要国首脳で唯一参加させられた挙句に、式典では古代中国王朝の式典列席する属国的な侮辱的立ち位置でした。
そのような挙げ句の果てに将来自国の脅威になるべき武器輸出まで飲まされてしまっている・・中国のいいなりにならざる得なくなっている現状が見えます。
将来何の脅威にもならない弱いウクライナを侵略し、重要な脅威になる中国との関係で国家の威信を失う行為・・これがプーチンが国内で誇っている国威発揚の現実です。
ところで、これまで書いてきた通り戦力には戦闘機の数だけではなく滞空時間の関係で同じ飛行機が1日に何回出撃できるかが重要ですが、戦闘機等の稼働率の方が実質的な重要性があります。
一般に言われる稼働率が9割の自衛隊と2割前後の中国軍とでは稼働率の差によって、実働戦力が大きく違ってきます。
戦闘機等の稼働率は軍機密中の機密でしょうが、実質的に見れば部品供給能力の技術格差になります。
一般的にソ連時代の稼働率は10%前後であり、最新型(といっても冷戦時代に開発したのものですが・・)冷戦終期のSu-27では20%前後と言われています。
昨日コラム最後の行に純正部品と模造部品の品質の違いを書きましたが、中露の場合稼働率を上げられないのは、本体製造技術自体が米国の最先端技術の剽窃・・スパイ活動によっている点・自前技術ではない点に稼働率が低迷する原因があります。
中国の多くは1950年代のお古であり、実戦で使えるのは、昨日紹介した米軍調査によるSu-27とその改良版しかありませんが、航空技術力ではまだロシア以下とされているのは少数を買って後はそれを分解してはその模造品を作っているに過ぎない以上当然です。
ロシアはその模造生産を怒っているので、(日本は二度と新幹線を輸出しないと怒っているのと同じです)だからこそ次の最新型戦闘機の供給を中国が求めても断られていたので、ロシア軍以上の稼働率は想定できないという見方が普通です。
そこで、中国全土で実働できる中国戦闘機は48機しかない・だから漁船の侵入程度でお茶を濁しているという意見が普通に出回っているのです。
日本のアメリカ製戦闘機等の整備技術の高さには定評がありますが、それは日本が最先端戦闘機を作れないからアメリカ製を買っている・模倣しているのではなく、米軍占領政策の結果、日本の高度な技術力を恐れて日本の航空機製造を禁止して強制的に買わされてきた・・航空機製造禁止によって技術者が新幹線製造に結集したことで知られている通り・・ことに原因があります。
本来できるのに敗戦の結果、作らせて貰えないだけですから、たまたま部品しか作らせて貰えなくとも部品を作れば本国アメリカよりも精巧に作れるのは当たり前です。
上記の結果、車に限らず日本製品全般に故障率の低さが国際定評ですが、整備能力は産業スパイが技術情報を盗んできても身につくものではありません。
ソ連がロケットや戦闘機を作れても車や家電など民生品を作れないのは、家電製品までスパイしていてはコスト割れなのでスパイに頼れないからだと「ロシアの台頭と資源(民族文化の有無)2」May 23, 2017,前後書いたことがありますが、ソ連は自分で作ったはずの戦闘機なのに稼働率が20%に留まっているのは、自前技術ではなかったからでしょう。
日米がともに稼働率90%の高水準を持っているのは、日本の整備技術の高さによるところが大きいと思われます。
この信頼があってこそ横須賀が米軍空母の母港になっているし、沖縄その他の基地を米軍利用価値があるのです。
ちなみに韓国の場合どうなっているのでしょうか?
http://www.recordchina.co.jp/b194476-s0-c10.html

2017年10月20日、韓国・東亜日報は、韓国空軍のF−15K戦闘機が修理部品の不足で飛行不能が頻発していることが分かった。
国会国防委員会所属の金学容(キム・ハクヨン)議員(自由韓国党)が空軍本部から提出を受けた資料によると、F−15Kの「修理部品不足に起因する飛行不能(G−NORS)」事例の発生件数が15年の50件から今年上半期には60件に急増した。同期間の飛行不能時間も7.9日から16.8日に増加した。
金議員は「空軍が部品を使い回しする方法で運用しているため、部品を取られた戦闘機が有事の際出撃が不可能」と指摘した。
F―15Kは朝鮮半島有事の際、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の地下執務室を精密打撃する「タウルス」ミサイルを装備する機種で、1機当たりの価格が1000億(約100億円)。全60機が配備されている。

だからといって稼働率が何割と安易に断定できるものではありませんが・・・部品が足りないというのでは危機的です。
日本の場合いざという時にエンジン不調で飛べないと困るので、いつも戦闘機1機あたり予備のエンジンを2〜3台用意しているのが普通と言われています。
もちろんその他部品も同様でしょう。
それでも定期改修あるは能力増強(新型ミサイルに搭載切り替など)などで大改修中ではすぐに飛べないので、平均稼働率が90%程度に落ちると言われています。
航空母艦の場合には一旦ドック入りすると半年間は就役できないと言われていますので、常時就役するためには2空母打撃群以上が必須と言われるように整備能力は戦力の重要指針です。
(これが仮に3ヶ月〜1ヶ月〜2週間と短縮していければ実働戦力の大幅アップになりますから、整備期間が重要です。)

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