消費力アップ4と世界的減税潮流の基礎1

減税→小さな政府論・・消費力アップには財政投資はいらない・・邪魔だと言うのが世界の潮流であり、それが正しい方向です。
先進国では生産力アップよりは消費力アップがテーマであれば、政府が税で資金を集めて需要創出→生産力増強するのではなく、消費者のニーズを探りつつニーズに敏感な民間が生産して行くしかありません。
江戸時代には藩も幕府も財政は赤字で(今の国債のように豪商から借りて)苦しみ、上は質素倹約・・贅沢出来ずに、その分民は豊かでした・これこそが民中心・消費時代のあるべき姿です。
中国王朝やフランスの宮廷など民が飢えに苦しんでも華美な生活を誇り宮廷文化(だけ)が盛んでしたが、日本の場合庶民文化が栄え豊かになる一方で今も支配層や天皇家も質素倹約が上に立つものの努めとなっているのはこの歴史によります。
江戸時代の浮世絵や落語や盆栽各種娯楽が多方面で発達した文化力・需要は、政府が創出したものではなくニーズに敏感な民間が適応して来たのです。
レッセフェールと言う学問を知らない頃から、日本では昔から民の力を信じて実践してきました。
西欧が近代に入って漸く気が付いた人道主義とかと動物愛護の思想以前から日本では人道に反する虐待をしたり動植物を粗雑に扱う文化ではありません。
消費力アップ論によれば、税収=政府の役割をへらして消費者・国民の選択に委ねるのが正しい方向であり、これに応じて政府の役割を縮小して行くのが正しい方向です。
先進国で減税の機運が強くなって来たのは(マスコミは金持ちの強欲と非難し,それでも足りずにタクスヘイブンなどとスケープゴート化して騒いでいますが・・)税の縮小は政府の機能縮小の現実に適合しているのであって、大衆迎合主義と言う批判は政府の役割を従来どおり維持したい立場による一方の立場の宣伝に過ぎません。
「財政赤字をどうするのだ」という脅迫も税収が減ったならば、成長目的の政府機能.財政支出を縮小すればいいことですから、縮小すべきか否かの議論を先にすべきであって、この議論を飛ばしている点怪しいところがあります。
飽くまで旧来型政府の役割を維持したい勢力・・日本の官僚マスコミは減税要求の潮流を大衆迎合主義とか大金持ちが肥え太るばかりと批判しながらも減税の潮流に抗し切れないことから、これとセットで赤字財政をどうするのだと言う脅しを使い法人税と所得税の減税分を補填すべく所得税等を払っていなかった別の階層に対する増税をしようとしているのが消費税強化論になります。
所得税・法人税の課税対象は比較的所得の高い階層(一定所得以下の人は課税されない仕組み)ですが、彼らに対する課税を減税した分、政府の役割を縮小すれば無理がありません。
従来どおりに成長目的の役割を果たそうとすれば別の階層から取るしかないので、対象になるのは所得の低い階層(従来の非課税層)しかありません。
現代では所得格差を是正する税制の所得再分配機能が言われていますが、所得税を減税して消費税で穴埋めすれば、再分配機能の逆張りになります。
税の原初的機能は底辺層から搾り取るだけ絞ってそれを支配層に再分配して来たのが税の成り立ちからの原則的機能でですが民主国家ではこれを表に出せないので、格好付けに貧者にも気持ちだけ配って、再分配機能があるとこじつけて来たに過ぎません。
この点は消費税アップする都度、生活必需品を限定除外して弱者のために配慮したとお茶を濁しているのと同じパターンです。
消費税問題では部分的に除外部分を大宣伝しますが、所得のある人から税を取る代わりに所得のない階層からも税を取ろうとする原則・・骨格は変わりません。
宗教家が貧者の1灯と言って庶民からお金を吸い取りながら、豪華なローマ法王庁を見れば分かりますが..施餓鬼というか時々スープを振る舞う偽善と同じです。
所得税免除(課税限度額の引き上げ)が行き過ぎて来たので?もう一度形を変えて底辺層から徴収しようとするのが消費税の思想ですが、近年格差拡大が社会問題になって来たのは底辺層から税を取り他方で高額所得層に対する減税が進んで来た結果によります。
日本の格差がそれほどではないのは、消費税率をアップ出来なくて穴埋めに国債や郵貯を利用して来た(国民がお金を持っていることが重要ですが・・)・財政赤字によってファイナンス出来た幸運によります。
金欠で苦しんだ江戸幕府や各藩は、海外から借りずに国内資金で間にあわせていた点は今と同じです。
保険の赤字も何故赤字で運用出来ているかと言えば、国債等によるファイナンス(幕府や各藩が税を取らずに豪商から借りていたのと同じ)が出来ていたからです。
日本の財政や保険赤字が可能であったのは、国債や郵貯の資金出し手は(小金持ちを含めて基本は)お金持ちですから、金持ちから税・強制力を用いなくとも事実上所得移転が行なわれて来たから格差拡大も進みませんでした。
ここ数日書いたように金融緩和によって資金が海外に逃げるようになっている・・金融商品も貿易商品ですから…金利が実勢よりも安くされるのは国民にとっては国内金融商品が割高になり、海外の割安な→利回りの良い商品を買うことになります・・。
資金が海外に逃げて資金吸い上げが行き詰まって来た結果、日銀による国債買い戻しや株式市場介入に走っているのですが、このままでは資金が金利の高い海外に逃げるばかりでどうにもならない・・、いよいよ諸外国並みに消費税を引き上げるか政府機能縮小するしかなくなって来たようです。
(2択ならば、税収を上げるよりは政府予算を減らして財政政策機能を縮小すべきです)
トランプ氏は法人税と所得税の大幅減税を公約にし、他方で対外プレゼンスを減らす主張をしているのは主張が一貫しています。
例えば増減税同額・・減税分同額の企業補助金を減らすから資金手当は大丈夫と良く報道されるのは、一見首尾一貫していますがそれでは何のための減税か意味不明です。

消費力アップと消費税増税論の矛盾3

8月14日の日経新聞朝刊1面には戦時公債が紙くずになった例を書いて危機感を煽っていますし、3pにも、GDP比250%にもなっているのは先進国では日本だけだと書いています。
敗戦後の超インフレは、戦争中対外貯金がないまま無制限に公債を発行していたので・・敗戦=対外開放の結果、言わば円が大暴落した結果による・・・ソ連崩壊時のソ連の混乱同様であって、これを資本・通貨取引を自由化している今の日本に当てはめるのは、事例の違うものを、あたかも同じであるかのような報道・・虚偽報道に類するものです。
世界最大の純債権国になっている今の日本を戦前の貧困時代に当てはめて不安を煽るのは一種の虚偽誘導です。
何回も書いているように債務国が消費拡大したら破綻が待っていますが、豊かな国はこの際貯蓄を崩してでも消費拡大し、国民の生活水準を上げる努力すべきです。
ましてこの20年間日本は国際収支黒字の連続・対外純債権を増やし続けているのですからこの増加ペースを落とす程度で良いのです。
これまで書いているように純債権国である限りコップの中の嵐・・お父さんが10〜20億円の預金のある息子に生活費負担させないで毎月20万円借り続けて親の年収以上の債務になっている・・借金を息子に残すのかと騒いでいるようなものでマンガチックです。
一家のトータル収入・貯蓄が債務を上回っていれば将来何の心配もありません。
10億の金融資産のある人が今株を売るのは損だと考えて、金融資産をそのままにして1億借金してある企業に出資した場合、その債務が年収の2倍であろうと3倍になろうと支払力に関係がないことが明らかです。
マスコミは意味のないことを比較対象に持ち出して頻りに大変なことになると主張しています。
紙幣大量印刷の結果円が暴落すれば債務国の場合返済資金がなくて困りますが、債権国の場合対外資産評価が円の下がる率に比例して上がるので、日本人・・日本企業にとっては大儲けするだけで損しません。
借金の額が単独で意味あるのでなく、バランスシート上どう言う関係にあるかで判断すべきは企業会計の常識です。
国債を日銀が何%引き受けているかではなく、心配するべき基準は国際収支の推移・・対外純資産がどうなるかの問題です。
この種の議論は何回も書いてきました。
デフォルトリスクは国債保有率やGDP比率に関係がなく対外純債権の有無にかかわるとしても、東証の株式保有比率に占める公的資金の比率がドンドン上がって行くとどうなるでしょうか?
日銀や年金資金・・公的資金による買い受けが増えて行き究極のパターン・・99%占有率になると株式市場はどうなるのでしょうか?
株式は債務ではないので、国債のような支払能力は問題になりません・・そんなことよりは、投資のリターン予想・・収益予想に基づく合理的相場ではないとなれば、民間投資家は怖くて寄り付かない・・民間からの資金流入が細ってしまった場合に経済活動がどうなるかの問題です。
政府や偉い経済学者に言わせれば、
「民間投資など当てにならない・・頭の良い自分たちが将来性のある分野に選別投資するから心配するな」
と言う立場で税で強制的に資金を吸い上げては、彼らの考える成長株に投資している意味では一貫している・・大した自信家です。
しかし、将来思想が変わるかも知れませんが、今のところ「レッセフェール」の方が正しいと言うのが真理ですから、彼らのよって立つ信条がレッセフェールよりも正しいと信じる所以を力説してもらう必要があります。
現在の普遍的真理によれば、優秀な学者や官僚が投資先を選別することが続くと大方失敗する・・国民資産を毀損する比率が高い・・損する可能性が高いでしょう。
バブル崩壊以降「エリートに資金の使い方を任せろ」と言う信条による政府・マスコミ誘導の結果、ドンドン政府が資金を使って来た結果、政府資金が底をついて来たのでその穴うめが迫られたのが、この10〜20年ほどの財政赤字論です。
タマタマ財政の壁に直面したならば、この機会に立ち止まって旧来政策(官僚が有望な産業を見極めて応援するのが正しいのか?)の見直しをする良いチャンスとすべきではないでしょうか?
赤字(資金不足)だと大騒ぎしていながら、逆に政府の投資を増やしたいのが今の政治風潮です・・安倍政権の参院選挙後の補正予算案を見れば、一部消費拡大のための商品券配布を強調していますが大筋は輸出用の港湾整備その他インフラ整備や助成金拡大などの政府役割増大を目指していることが明らかです。
http://mainichi.jp/articles/20160602/k00/00m/020/064000c
第2次補正予算案
今秋最大10兆円 商品券発行も
・・主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で合意した「政策総動員」の一環で、足踏みが続く国内景気をテコ入れする狙い・・・
ネット検索ではこの程度しか出ませんが、今朝の日経新聞朝刊7pの「インフレで財政を救えるか」の欄の中には28兆円と出ています。
まだ国会が開かれていないので、憶測記事段階と思われます。
ところで、これ以上に企業税や所得税を上げられない・・むしろ世界中で法人税や所得税の減税競争が始まっています。
それでも飽き足らない国際資本がタクスヘイブン利用になった(やり過ぎた)ので、我慢出来なくなって来た政府がこれを叩く動き(パナマ文書)が出て来ましたが、要点は減税に資本家が悪乗りし過ぎたと言うだけであって、減税傾向が止まる様子が見えません。
トランプ氏は法人税と所得税の大幅減税を公約にしていますし、これに引っ張られてヒラリー氏も減税公約を4〜5日前に発表しました。
減税論の行きつくところは小さな政府しか有りません。

官製相場の限界1(金利)

目標とすべき先進国の産業モデルのある新興国と違って産業振興も政府が主導すれば成功出来る保障はありません・・。
日本は模倣すべき国のない先端産業国であり民間資金余剰国ですし、仮に資金不足国でも本当に脈のある事業ならば、世界の投資家が放っておきません・・M&Aも盛んです・・どこの投資家も見向きもしない投資を政府がやればどうなるものでない・・結果的に失敗する可能性の方が高いでしょう。
※宇宙探査その他政府がやれるべき分野,社会保障のようにやるべき分野が一杯あることはこれまでも書いています・・何もかもやめるべきと言うのはなく、「産業振興は民間に委ねてこの分野の財政支出をなくして行くべき・・税収削減すべき」と言う意見です。
政府が資金を吸い上げるのは良くない→消費税増税反対論の続きです。
とりわけ消費増が目標になって来ると供給側が計画し宣伝さえすれば売れる訳でない・・必需品供給時代は供給者の意向、政府の計画が有効な場合が多いですが、面白そうだから手に取る時代になるとそうは行きません。
日本は室町〜江戸時代から消費者向けに面白いものを工夫しては(朝顔の花1つとってもこれが「朝顔か?」とびっくりするほど変わった変化を楽しんで来ました)消費を盛り上げる文化が進んで来た社会です。
着物の柄であれ役者の似顔絵や村のお祭りであれ、俳諧や都々逸などお上が進めた結果ではなく庶民の工夫が花開いているのです。
石油ショックのように供給側の事件でも、一時的に政府が下支えする必要だった事は確かですが、これは一時の出血手当でしかなく、原油相場の急上昇に対応・・脱却するには、民間の省エネで努力に待つしかなかったのです。
消費増が期待されている以上は、政府が出来ることはホンの僅か・・むしろ庶民からし金を奪いの活力を妨害しない方が有効でしょう。
戦後の赤字国債に関するウイキペデイアの記事からです。
「1965年度の補正予算で赤字国債の発行を認める1年限りの特例公債法が制定され、赤字国債が戦後初めて発行された。その後は10年間は赤字国債の発行はなかったが、1975年度に再び発行されて以降は1989年度まで特例法の制定を続け赤字国債が発行された。
1990年度にはその年の臨時特別公債を除く赤字国債の発行額がゼロになり、1993年度まで発行額ゼロが続くものの、1994年度から再び発行されその後に至っている」
赤字国債発行には戦後だけでも、上記のとおり・・75年は石油ショックであり、93年以降はバブル崩壊ですが、93年以降政府が資金不足に陥った経過を私なりに以下のとおり整理しました。
    記
(1)中国の市場参加による20年以上にわたるデフレ圧力(石油ショックによる石油値上がりと低賃金中国の市場参加による商品値下がりは、交易条件悪化ショックでは同じです)・・に対して、衝撃緩和のために長年財政投入をして来た結果財政赤字が巨額になってしまった。
この必要性は中国との格差がなくなるまでですから、人件費その他生活水準格差がある限りこの衝撃緩和の必要性が続きます。
※ 最近対中ショックが薄らいでいるのは中国の人件費アップによります。
(2)衝撃緩和目的の資金投入は、賃金で言えば中国人件費との差額補填(直截的施策で言えば、社内失業を実施する企業への雇用調整助成金・・その他間接的政策は一杯あります)・・言わば後ろ向き支出ですから財政支出に対応する資産が何も形成されていない・・国債の種類で言えば建設国債ではなく赤字国債になるしかありません。
(3)ショック緩和の資金ファイナンスするために増税出来ないので(これまで書いているように増税すると国内消費抑制になってしまうので)低金利(郵貯や国債の低金利)で資金を国民から吸収する政治を続けて来たが、臨時的な筈の衝撃緩和策が20年にも及んで来ると(個人で言えば臨時出費のために月給では間に合わずサラ金に借りるような事態が20年も続く?)債務総額が増えて来たので低金利でも支払リスクが無視出来なくなって来た。
(4)金利が徐々に下がるに連れて国民の国債・郵貯離れが生じて来たので、穴埋めのために日銀や年金資金による買い受けが常態化・・拡大して来た。
(5)それでも不安があったのでプライマリーディーラー制度を設けて一定量の買い受け強制をして来たが、禁じ手とも言うべきマイナス金利まで来るとさすがに国債や郵貯を通じた庶民からの資金吸収能力がなくなってしまった→エンドユーザー不在のままでは日銀買い戻しをしない残り一定枠を小売り・再販するのは無理が出て来た・・売れないまま自己保有継続しているリスクが大き過ぎるようになってきた。(三菱の特別資格返上)
(6)(マイナス金利採用時には、予めこうなることは予想されていたでしょうが)ここまでくると三菱を脅す・・嫌がらせで引き止めるのは無理があるし、かと言って、今更実勢相場・・投資家が自腹で買ってくれそうな相場まで戻すと日本経済は大混乱です。
金利も市場需給に委ねるべきなのに、金利の官製相場造り(中央銀行による基準金利操縦)はドンキホーテのように滑稽ですが、誰もその滑稽さを書いていませんが遂に無理が明からさまになって来たのです。
「毒を食らわば皿まで」と言いますが、ここまで来ると新規発行国債を100%日銀が買い戻す運用・・直接引き受けをするしかなくなってきました。
国債の場合、既発行国債を日銀が100%保有しても、結果的に紙幣発行の歯止めがなくなったというだけであって、それがどう言うことになるのか実はよく分っていません。

マイナス金利の限界(三菱の資格返上の波紋2)

国債市場特別参加者制度を見ると、元々、特定グループを作って一定量の買い受けを約束をさせるのは、日銀のマイナス金利政策は市場実勢を反映出来なくなるリスク回避目的があったこと・・買い手がつかなくなってからでは間に合わないので早めにこう言う制度を作っておいたことがあきらかです。
日本は純債権国で資金余剰ですから、市場原理に任せておいても国際的に最低金利になるのは必然と言えば必然です。
しかし、国民はリスクがあっても他国の高金利債券等を選ぶ自由があります。
昨日外貨建債券発行が多くなっている現状を紹介しましたが、外貨建債券と国内債の金利差は、資金余剰国かどうかで決まるのはなく主として為替相場観によって決まります。
100%貿易自由化になっても物品やサービスの場合運賃やその後のアフターサビスの問題があって市場との距離が重要で、このため現地生産化が必須化しているのですが、金融商品の場合、物品と違って現物輸送がなくコンピューター処理するだけですから、日本との距離(野菜が古くなる)運賃の関係なく・瞬時に南アランドであれユーロであれ換金出来る・・両替コストだけです。
判断要素は為替リスクヘッジ程度ですから、物品や労賃に比べて国際平準化がすぐに達成出来ています。
以上の結果、資金余剰国だから金利が安くしても良いと言うのは国際化を無視した意見になります。
すなわち、トヨタ社債の場合どこの通貨建てであっても企業リスクは同じですから・・購入者が例えば3年程度で手放そうと思っている場合には3年先の為替リスクを考えて購入を決める・その間に円が発行国通貨に比べて3%上昇する読みの場合、金利が国内債より3%以上高くないと買わない・・為替相場観(個人の場合為替変動リスク回避のためのヘッジ能力がほとんどないので)に収束して行きます。
物品も純債権国・輸入資金が潤沢である限りその国の物価が上昇すれば、利を求めて安い国から物品・サービスが輸入されるので、日本だけが一方的に物価上昇し続けることはあり得ない・・輸入が増えることを繰り返し(安定的物価上昇目標はナンセンス)書いてきました。
逆に言えば中国から低賃金による安い製品(・・農作物から石化製品や鋼材に至るまで)が入ると日本国内物価が下落します。
中国の国際市場参加以来恒常的デフレ圧力に悩まされて来たのが我が国です。
原油相場を見れば分るように商品価格は、国際相場によって決まって行く時代ですから、1国あるいは数カ国の政策で、物価を上げ下げするのは論理的に不可能(我が国だけ物価を2%アップさせると言う日銀は素人の私が言うのは気が引けますが・・アタマがおかしいのか・・)と言うべきです。
資本・金融自由化が進んで来ると金融商品・債権株式相場も同じで、日本国内の金利を下げれば株式配当率が低くても株式を買うだろうと期待するのは、一時的な効果でしかありません。
金利安→配当率の低さ→国内資金が海外に逃避・投資するようになるのは必然・・金利も時間の経過で国際的に平準化して行かざるを得ません。
国内で日銀にゼロ金利近傍で社債発行しても国内投資家はそれならば国内で買わないで海外で買うようになる・・その結果日本企業のトヨタその他世界的日本企業が何%か上乗せ金利で海外通貨建てで社債発行するしかなくなっていることを昨日紹介しました。
日本企業が日銀に気兼ねして低利回り国内発行にこだわっていると日本投資家は日本企業の社債を買わない・・海外企業の高利回り社債を買うしかなくなってしまう・・日本企業が国内市場で資金を得られなくなります。
政府が金融に介入し過ぎた結果、国内金融機関が商売にならなくって来たようです。
金利低下が金融機関の営業利益を損なっていると一般に言いますが、利ざや縮小の問題よりは、公定価格になると民間活力がなくなって行く原理の現れです。
トランプ旋風その他金融関連に対する風当たりが強くなってきましたが、既に頂点を越えて下り坂・・地位喪失が始まっている後追いでしかありません。
この点でも日本社会は世界最先端を走っています。
日銀・官製相場に関連して株式相場についてちょっと書きますと、金利低下だけでは株式相場を維持出来ないので日銀が(国債だけではなく)上場投信(ETF)を直截購入していたのですが、7月29日にこの買入額を倍増して6兆円に増やすと発表していました。
(年金資金の株式購入比率アップもその一種ですが・・銘柄を特定していません)
これらの買い支え効果・・いわゆる年金・日銀相場・・官製相場に乗れば・・長期的買い支えは無理と分っていますが、短期的には損がないとばかりに投資家がトピックス構成株を売って、日経平均構成銘柄を買う歪んだ相場形成が始まっていると言われます。(今朝の日経新聞朝刊16p)
消費税から、国債や株式、金利政策と実勢相場に話題がそれましたが、ここで言いたいことはこれ全ての事柄は政府が国民からどうやって資金を吸収するかにアタマを悩ましている問題と関連しているからです。
私は、政府が資金を国民から吸い上げ(て頭の良い政府が使ってやら)ねばならないと言う政府・官僚や学者らの基本的視座が間違っていると言う意見でこのシリーズを書いています。
国民を豊かにするのが政府の目的であるとすれば、資金を国民から吸い上げるよりは国民の自由意思で使いたい消費を増やす方向へ政策の舵を切り替えるべきです。
資金をバラまいて国内生産を誘発するために政府が選別的に資金を使い、一方で日銀や年金資金を投入して株価維持するのは間違いです。
政府の力で市場操作することは、短期には出来てもすぐにメッキが剥げて大損してしまいます・・これは国民のお金です。

マイナス金利の限界(三菱の資格返上の波紋1)

三菱UFJ銀行のプライマリーデイーラー資格返上申請が大問題になっています。
http://jp.reuters.com/article/bk-mufg-bond-idJPKCN0YU0NN
2016年 06月 8日 18:15 JST
関連トピックス: トップニュース, ビジネス
焦点:三菱UFJの国債特別資格返上、決断の背後にマイナス金利
「[東京 8日 ロイター] – 国債市場を支えてきた三菱東京UFJ銀行の特別参加者(プライマリー・ディーラー)からの離脱は、日銀のマイナス金利政策によって市場構造が大きく変化している現状を浮き彫りにした。」
以下財務省「国債市場特別参加者制度」からの引用です。
http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/pd/index.html
国債の大量発行が今後も続くと見込まれる中、我が国では平成16年10月以降、「国債市場特別参加者制度」を導入しています。これは、欧米主要国 において、国債の安定消化促進、国債市場の流動性維持・向上などを図る仕組みとして導入されている、いわゆる「プライマリー・ディーラー制度」を参考としています。
この制度は、国債入札への積極的な参加など、国債管理政策上重要な責任を果たす一定の入札参加者に対し、国債発行当局が「国債市 場特別参加者」として特別な資格を付与することにより、国債の安定的な消化の促進、国債市場の流動性の維持・向上等を図ることを目的としています。制度の 概要は以下のとおりです。
国債市場特別参加者制度 制度概要
特別参加者の責任・応札責任:
全ての国債の入札で、相応な価格で、発行予定額の4%以上の相応の額を応札すること。
・落札責任: 直近2四半期中の入札で、短期・中期・長期・超長期の各ゾーンについて、発行予定額の一定割合(原則短期ゾーン0.5%、短期以外のゾーンは1%)以上の額の落札を行うこと。
以下省略
上記のとおり(最低これだけは引き受ける安定消化の保障)条件で仲間入りさせる仕組みです。
日本の最大大手銀行がこれを断る・・特別な買い受け資格などいらない・・国債の安定消化を断わらざるを得ない事態が起きていると言う意味で激震が走っています。
ところで金融機関は本来一般から資金を集めて一般人には分らない有望投資先を見つけてまとめて投資したり融資するのが本来(は決済機能でしたが、この1〜2世紀に限る)の業務です。 
言わば政府が税を集めて道路や橋を造る・警察力などの公的制度維持するのに対して、民間需要に対しては民間の銀行が市場での需要に応じて資金分配する仕組みでした。
19世紀型政府としては、夜警国家思想が知られていますが、日本の場合明治維新以降欧米に追いつき追い越すための近代化資金として、郵貯制度を創設して民間から資金を集めて(国営製紙工場や製鐵その他)財政投融資して成功して来たことを紹介しました。
(この功績が大きいのでもはや無用になったからと、特定郵便局をむげに扱うことは許されません)
第一次世界大戦以降ケインズ説によって、日本だけではなく世界中の政府にとって財政投資政策の巧拙が重要になってきました。
安倍政権も「三本の矢」が知られるように経済政策が主要テーマになっていることからも明らかです。
金利水準だけを中央銀行が決めるとしても市場の資金需要とその配分・セールスを市場に任せていると、海外受注あるいは企業誘致(工場用地造成や固定資産税減免など)出来ない時代・・インフラ輸出その他政府が海外でトップセールスするしかない時代です。  
資金分配に関する政府の役割が大きくなる一方で市場の資金分配機能を見ると、株式市場に一般人が直截アクセスするようになった上に、各種ファンドが発達している結果、銀行の資金分配能力がなくなる一方ですから、銀行は資金を集めても何を出来るか(残っているのは祖業である決済機能だけか?)が問われねばなりません。
金融機関の使命低下・・喪失については、このコラム開始直後・例えば05/02/07「銀行の機能変化と銀行救済策12」以前から繰り返し書いてきましたが、リーマンショック以降の金融緩和・金利低下=紙幣のだぶつきが,唯一残っていた貸し出し機能についても致命的ダメージを与えたように見えます。
機能低下・・業務能力(資金分配機能や貸し出し)低下の結果、預かった資金をマトモニ運用出来ずに日銀に預けたり国債に滞留させて,確実な利ざやで儲ける無作為収入にあぐらをかいていること自体が産業としての存在意義がなくなって来た結果・・最後の足掻きだったのです。
本来の銀行業務をさせるためにも、日銀預金金利を下げて国債を日銀が買い上げて銀行には銀行の仕事させる発想は当然のことですが、国債金利もマイナス化して来ると全部日銀が買い上げてくれないと銀行が一部でも引き受けし切れなくなったのが特別資格の返上問題です。
これは、本当の市場需要がない・・マイナス金利は市場原理から見て無理があることを表しています。
無理に金融機関に引き受けさせるために一定の特典を与えるグループ化が、上記プライマリーディーラーシステムですが、一定率まで日銀が買い戻してくれる密約の恩典程度では・・100%買い戻してくれればリスクがないですが・例えば7〜8割しか買い戻さない場合,銀行は残り2〜3割を自力で売りさばく能力がない→エンドユーザーがいない・・国民がマイナス金利の国債を欲しがらないのは当たり前です。
私の場合、マイナス金利で敢えて買う気持ちがしない・・タンス預金にしておくか少しリスクがあっても、外債その他いくらでも投資先があるよ!と言うのが普通です。
三菱としては売り損ねて自己保有していると、将来の金利アップのリスクに耐えられない「損だ」となって来たのが(株仲間・ギルド資格)返上問題です。
末端の買い手がつかないと言うことは相場が高過ぎると言うことですから値引きして売れば良いのですが、それが何故出来ないかと言う問題です。
三菱銀行はリスクがあると思えば市場金利をつけて損切りすれば良いのです・・・・例えばゼロ金利で売れないが1%つければ(割引価格で)売れると思えば、その金利で売り出して損切りすれば良いことですが、それを1社でもやると日本国債の暴落・・日銀の無理なマイナス金利設定の崩壊が始まってしまいます。
三菱UFJ銀行の態度表明は「王様は裸だ」と子供ではなく大臣にあたる最大手銀行が「プラス金利でないと売れない」と言い出したことになります。
日本の代表的大企業がゼロ金利では、社債発行出来ないよと言い出したのと同じです。
ところで、何年も前からトヨタなど大手日本企業発行の社債が、南アランドやトルコリラなど何%の高利回り外貨建てで売られていて、これの営業を受けることが多くなっています。
買う立ち場になれば為替リスクのない円建て買いたいのですが、国内でゼロ%近辺の金利で発行したらいくらトヨタでも買い手がつかないので、金利の高い国の通貨でワザワザ発行しているようです。
外国の金融業者を儲けさせないで国内で売れる金利で発行すれば良い筈ですが、日銀の金利政策をコケに出来ない・・遠慮があるからでしょうか?
市場原理無視の金利政策は発行企業に、ワザワザ海外金融機関に頼んだり当地の機関に届けでるなどの手間をかけさせ、日本の社債発行機関の仕事を奪い海外為替の動きにうとい国民にリスク負担をかけるなど、みんなに損をさせている印象です。
三菱の資格返上問題は、日本の代表的大企業がゼロ金利では、社債発行出来ないよと言い出したのと同じです。

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