異次元金融緩和とハイパーインフレ1

国際相場で必需品等を輸入する資金が枯渇するかどうかがハイパーインフレになるかどうかの基準であり、円相場の基準です。
日銀がいくら無制限に円を刷っても外国人投資家がこれを日本で借りて海外に持ち出して「円キャリー取引」をしている限り、同額の債権を日本の銀行等が保有しているのであって日本の負債ではありません。
トヨタなど事業系や資源開発企業等国内企業がマイナス金利の円を多めに銀行から借りて(あるいは社債発行して)海外投資しても同じく対外債権が増えるだけで円が暴落する心配がありません。
国内投資されない余剰発行分が海外に出て行くとその時点で流出した分だけ(国際収支の基調的黒字による基調的円高趨勢を押し戻す)円安効果が出ているのであって、大震災のときのように日本の危機発生時には円が戻ってくることが想定されている結果危機が起きるとその効果を想定した投機筋の円買いが起きて円高になるのが原則です。
対外負債(資本流入)を膨らませて一見景気の良い国(アジア危機前の東南アジア諸国など)の場合,世界経済危機が来ると資本引き上げによって大暴落しますが、日本は逆に危機が来たときに円引き揚げ・・還流予想によって逆に上がる・・ここ数十年続く危機時の円高はこの原理によります。
リーマンショックであれ、東北大震災であれ,昨年来の中国発の経済危機の恐れ→イギリスEU離脱ショックなどによる円高はすべてこう言う動きでした。
しかし、震災当時のコラムに書いたように日本の場合背伸びして海外投資していない・・国内資金滞留も多いので、大震災にあったくらいで、海外投資引き上げに追い込まれるほど困りはしません。
東北震災や熊本震災で見れば分りますが立地企業は甚大被害を受けますが、その復旧費用捻出のために海外工場を売却して資金を引き上げる必要がないと言えば分るしょう。
ただ復興用に国内余裕資金を使って海外進出を予定していた資金が乏しくなることは確かです。
日本は大震災で貿易赤字になっても総合収支では毎年巨額の黒字を計上しているので、何もしない(同額分海外投資して行かないと)と黒字分だけ毎年円が上がる基調(比喩的に言えばGDP比1%経常収支黒字があると何もしないと1%ずつ円が上がる)にありますので、震災復興等で海外進出用資金・・流出が減ると、この限度で海外資金流出が一時的に減る・・国際収支上の黒字分の蓄積による円高が進みます。

“http://www.asahi.com/articles/ASJ2556FSJ25ULFA01J.htmlからの引用です。

財務省が8日発表した2015年の国際収支(速報)によると、貿易や投資による日本と海外のお金の出入りを示す「経常収支」の黒字は前年の6・3倍の16兆6413億円だった。原油安による貿易赤字の縮小に加え、訪日外国人による日本での消費が増え、旅行収支が53年ぶりの黒字となったことなどが経常写真・図版

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上記の第一次所得収支は海外利益送金収入ですが、この送金が大きい結果日本経済は恒常的に総合収支では黒字が続いている・・放置しておくと黒字分だけ円高が進むので、恒常的に海外還流して行く必要がある状態です。
大地震等の資金需要が出たと言ってもその程度は微々たるもの(上記例で言えば海外投資が皆無になるのではなく何%か減るだけでしょう)東北大震災の2011年以後数年間で見ても貿易収支が赤字になっても海外収益で穴埋め出来ていて、総合収支が黒字のママであったことが分ります。
ただ、世界の金融業者は他人のお金をキチキチ運用して投資する立場しか知らないので、「経済変調があると日本が資金を引き上げるだろう」と言う間違った読みで円が上がるので、日本は迷惑します。
間違いであろうとなかろうと・・実際に円上がる以上はこれを阻止する必要・・世界危機時に日本が損をしていなくとも円の大量発行を仕掛けて円の独歩高を阻止する必要があったのですが、これを怠っていたためにリーマンショック後日本経済が低迷してしまったのです。
危機時の通貨騰落率によって、そのときの国際的経済力のランキングが分る仕組みです。
従来はUS$1強でしたが、今や何かあると(アメリカの金融緩和の打ち止め→中国等から資金引き上げリスクの予想、あるいはEU離脱ショック予想だけでも)日本円の上がる率が高くUSドルが少し上がる程度・これが世界の実力評価と言うところです。

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