金融政策の限界6(韓国のミニバブル2)

マスメデイアでは中国バブル崩壊を懸念する声が漸く大きくなってきましたが、韓国の場合世界経済や日本への影響が小さいからか殆ど注目されていません。
以下はhttp://seoul123.seesaa.net/article/121402277.htmlからの引用です。
「6月13日韓国銀行によると、韓国人の個人負債は、昨年末基準で1650万ウォン、アメリカは5795万ウォン、日本は3626万ヲン(260万円)、オーストラリアは5150万ウォンと集計されました。
一方、個人金融財産はアメリカ1億6557万ウォン、韓国3451万ウォン、日本1億5617万ウォン(1120万円)で、韓国と経済規模が同じオーストラリアは8254万ウォンです。
韓国銀行は、個人の負債を判断する時、単純に負債の増加だけを注視するのではなく、金融財産の増加を含めて考え、個人の財産健全性と負債償還能力を判断しなければならない。また、個人の負債が増えるのは経済成長に伴う自然な現象なので、それ自体を否定的に見てはいけないと指摘しています。
金融財産を金融負債で割った比率で見ると、昨年末の時点で、日本が一番高く4.31、アメリカ2.86、韓国2.09、オーストラリア1.60になり、日本が一番安定した経済状況にあることが解ります。」
(ただし何年のことか分らない書き方です・・2009年頃に書いたものかも?・・韓国の個人負債激増が問題になり始めたのはここ数年のことですから今のテーマとしてはちょっとモノ頼りないですが・・・。)
上記のとおり急激な個人負債の膨張の心配に対して金融資産も増えているから心配するな?と韓国銀行が言い訳しています。
しかし、GDP比の増加率を昨日紹介した「日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)」の記事(これは新しいデータです)から見れば以下のとおりです。
「韓国の家計負債は、2015年末に1,200兆ウォンに達していて、負債の規模もさることながら、増加スピードが速いことで懸念されている。韓国の家計負債は04年に494兆ウォンであったが、15年には1,200兆ウォンに膨らんでおり、年平均8%ほどで増加をしたという計算になる。同じ期間中に、韓国の経済の実質成長率が3.6%前後であったことを考えると、経済成長に比べて負債は2倍以上のペースで増加したことがわかる。」
これによればGDPの拡大の2倍のスピードで個人負債が増加していることが分り、韓国銀行の説明に無理があることが分ります。
上記記事は全国民をごっちゃにした統計数字で見た場合でも負債率が2倍にふえていると言う指摘ですが、韓国の場合、いわゆる財閥一族に富みが集中し・勤労者も大手企業・公務員とその他零細企業従業員との二極化が激しい・・ヤンパン支配再現のような同様の大きな格差があると言われている社会構造を直視すべきです。
アメリカの格差拡大不満同様に財閥オーナーとその周辺だけがGDP拡大の恩恵を受けている不満が大きい・・これがイギリスのEU離脱論の根底にある世界の潮流ですが、財閥社会の韓国ではその矛盾がもっと大きくなっている筈です。
ただ韓国は前近代意識が強いと言うか庶民が弱い社会ですから、どんなに不満があっても意思表示出来ない・・精々移民や売春婦になって海外に逃げる算段しか出来ない点(北朝鮮でもあれだけ貧困で苦しんでいても誰も反抗しません)が欧米との大きな違いです。
格差の大きい社会では国全体の統計を平均するのでは意味をなさない・・末端庶民の苦しみを見るには、負債比率をGDPで割るとしても、その何倍かの倍率をかけないと本当の意味が分からない状態です。
消費者金融が拡大し続ける社会構造=庶民の方は金融資産など殆ど持っていない・・老後資金がないばかりか国レベルでも年金制度が充実していない現実こそが重要です。
金融資産を持っている人・・例えば500万の預金を持っている人がサラ金やヤクザから10〜30万借りることはあり得ない・・あるいは借りても預金を崩せば返せるのに娘の身売り・・海外売春に追い込まれる人はいない筈です。
借りる人は金融資産など元々持っていない・・(サラ金の顧客も通信料金など引き落とし用に預金口座を持っていますが)金融資産といえるほどのものを持っている人と持っていない人に厳然と別れているのが普通です。
(いつも書きますが一定の例外はありますが原則で書いています)
国民の苦しみ・程度を見るのに、財閥の持つ巨額資産+消費者金融を全く利用していない中間層(年収数千万円以上の階層)の金融資産合計と負債の比率を見ても意味がないことは確かです。
金融資産とのバランス論は、対外でフォルト可能性・・国内資金で賄えているかが分る程度・・国家のデフォルトリスクが多いか少ないかの基準にはなりますが、2極化された国民不満・・国内治安リスクは読めません。
日本の財政赤字リスクの判断には、国内金融資産残高と国債残高の関係が重要ですが、財政赤字の議論になると何故かエコノミスト・マスコミは個人金融資産残高との比較を報道したがりません。
いつも書いていますが統計はどの場面で切り出すかが重要です。
以下はhttp://www.sankei.com/west/news/141118/wst1411180004-n1.htmlからの引用です。
1000兆! アジア最悪の個人負債 2014.12.31 17:00
 リーマンショック以降、金融危機の恐ろしさが身に染みた多くの国では、金融機関が個人向け融資に慎重になっているが、韓国ではむしろ国内総生産(GdP)に占める個人負債の割合が増す現象が起きているのだ。
 韓国メディアの毎日経済新聞(電子版)が伝えたドイツ金融会社アリアンツが発表したデータによると、昨年末時点の世界主要53カ国のGDPの個人負債比率は65・1%で、09年に比べて6・4ポイント下落した。
 ところが、韓国はアジアで最も高い92・9%で08年比で10%上昇。負債規模は08年からの5年間で、1・4倍に急増したという。」

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