消費力アップと消費税増税論の矛盾2

金融政策で言えば金融引き締めは全産業の水面を公平にアップさせて国内産業全般(輸出用工業製品も含めて)に重荷を負わせ、金融緩和はその逆に水面を下げて活動し易くする政策ですが、消費税増税は国内消費材にのみ重荷を負わせる・・国内消費抑制策になります。
しかし20世紀末頃から、世界の工場から現地生産に移行中で国内産業の顧客は主として国内需要用にあるとすれば、国内消費だけ減る事はあり得ない・・結果的に国内生産の縮小をもたらします。
国際収支赤字で困っている国=輸入超過の場合には消費抑制策は生活費を切り詰めさせ国際収支改善効果がありますが、何十年も国際収支黒字が続いている豊か国でこれをやる必要があるかと言うことです。
先進国・・あるいは純債権国では、政策の目標は民の消費力アップ・生活水準向上にある・・金融緩和は消費底上げ目的・・ひいては国内生産力上昇を計るべき・・消費力アップこそが国力や民の幸福の指標であるとする、このシリーズで書いている意見からすれば、金融緩和しながら消費抑制策である消費税率アップするのは政策混乱あるいは矛盾です。
金融緩和をしながら消費税を上げるベシと言う財務省やマスコミに出て来る経済学者は、金融緩和は国内生産力増を目的にしているが、消費の増減とは関係なく成立すると言う切り離し論を前提にしている・・すなわち消費抑制して倹約した資金を生産力増強に回すということでしょうか?
これならば金融緩和と消費抑制策は一貫します。
そう言うやり方は、スターリンが約2000万人も餓死させながら小麦を輸出していた実績がありますし、現在中国が出血輸出で外貨を稼ぐのも国民犠牲の点で同じです。
何回も書きますが後進国の場合、スター企業を育てるのも一方法ですが、先進国の世界で競争出来る企業は現地生産主流の時代ですから、財政資金投入して成功してもすぐに海外に出てしまい国内生産力の増加は一定で終わり・・(ジャパンでスプレイのように?)衰退産業分野で輸入攻勢に曝されている企業の延命に資する程度です。
※輸出成功すれば自信を持てるので、現地事務所→現地進出でもやれると決断するのが普通の企業ですから、世界の工場再現を夢見るのは時代遅れです。
消費税増税=消費抑制しながら、増税によって得た資金を生産力増強のために補助しても仕方がありません。
ところで、消費税アップ論者は頻りに財政赤字が問題と言いますが、政府資金が不足していることを「財政赤字」と言い換えているに過ぎません。
税収が一定とした場合、福祉予算や生活レベルアップ資金需要が新たに起きたならば、その分時代の役割を終えた殖産興業型従来型予算を減らして入れ替えて行くべきです。
毎年北海道に旅行していた家庭が今年は沖縄にも行ってみたいと言う場合、北海道旅行をやめるのが普通の判断です。
旧来型支出を減らさないママ、社会保障やインフラレベルアップ予算を増やそうとするから増税が必要になっているに過ぎません。
消費税は財政投資に使わない・・福祉目的税と言いますが、一方で増税必要性理由として財政赤字補填を主張しています。
増税が赤字解消もしくは縮小目的ならば、増税分は赤字国債縮小(借換債をその分発行しない)に使うのがスジですから、福祉政策に新たに支出増加させるのでは赤字解消にならないのですから、主張自体が矛盾です。
紙幣には色がつかないので税収増加分がある御陰で無駄な(成長目的の投資継続は無理があることを書いてきました)財政投資を減らさずに済ます・・あるいは減らし方の速度を緩めようとしているのが明らかです。
この辺で政府が資金不足=財政赤字に陥った原因を振り返ってみましょう。
明治維新以降戦後の高度成長期まで恒常的資金不足であった我が国は、庶民から資金を吸収する特定郵便局郵貯制度を全国通津浦々までの完備したことによって資金を集めては(財投資金として)殖産興業に励んで来ました。
この資金吸収政策の成功が明治維新以降の日本の大躍進・殖産興業の成功に繋がったと言われています。
前島密が讃えられている所以です。
庶民の自発的上納・・郵貯資金貯金に頼れなくなって、これを直截庶民から小銭を取り立てようとしているのが消費税になります。
日本は純債権国で世界一の金あまり国ですから、資金需要が諸外国よりも低いので、余剰資金量に応じて金利が諸外国より低くなるのは自然です。
郵政改革によるだけはなく金融の国際化が進んで海外金融商品を庶民も自由に選択取得出来るようになったので金利低下の結果、国民は利回りの良い外貨建て預金や外債購入など流れる・・郵貯も銀行も資金獲得の国際競争力を失います。
政府が税以外に民間資金吸収する方法は郵貯と国債発行(金融機関に入札させて金融機関が国民に小売りする)がありますが、この辺は国債金利低下に伴って国内最終需要が消えてしまった・・国民は買わない・・消化に不安になって日銀が国債を市中から一種の買い戻しをするようになったのと軌を一にしています。
日銀の国債買い戻しは、将来のデフォルトや金融緩和リスクばかりをマスコミで報道しますが、内容実質は末端国民・・エンドユーザーの買い手がつかなく(国民からの資金吸い上げが出来なく)なりつつあって、その打開策として一定量の買い戻しを約束して金融機関に入札させる仕組みにしたと見るべきです。

消費力アップと消費税増税論の矛盾1

金融緩和(金融調政策)によって直接的経済成長を期待する役割が先進国・純債権国・豊かな社会では終わっていることをここでは書いています。
億単位の預貯金を持っている人は、銀行金利が下がっても消費を増やしたりすることはありません。
世界の工場としての役割が終わって需要地・現地生産に切り替わりつつある現在、国内生産量は自国消費プラスαに規定されるのが原則です。
国力の源泉が今では消費力にあるとする意見をMay 7, 2016「資源+生産力から消費力アップへ1」以下で書いてきました。
成長戦略とは内需拡大化またはプラスα部分(マザー工場機能)を増やすしかないのですが、プラスα分は画期的製品で成功しても国内限定でなく現地生産に移行して行きますので、先行者利益期間が過ぎれば元に戻るしかありません。
千か万に1つの大成功を期待するよりは、庶民の消費底上げ政策の方が規模が大きく安定的です。
国民の方も、ある程度のものは手に入っているので、政府の号令一下・・金利をちょっと下げれば設備投資が増え、住宅や各種ローン購入者が増える・・国民が政府の思うように消費を増やしたり減らしたりする単純反応する人が減って来た・・直ぐ反応する時代は終わっています。
純債権国・紙幣あまりの社会では、供給過剰・・消費不足社会ですから、消費を増やす政策(明日以降書いて行きますが量は足りているので生活レベルの向上・・トイレがあるだけはなくウオッシュレットが普及するように、文化発進力の充実)が必須ですし、レベルアップ消費が増えて生活が充実することは国民福利増進にも叶っています。
絶対消費量を増やすには人口拡大と一人当たりの消費を増やす2方法がありますが、人口を増やす方法は、生活水準がそのままの前提ですから国民には、夢がありません。
一人当たり消費を増やすと量の欲求が限界に近づくので、商人はイキオイ全ての分野でレベルアップ競争になり、より上質・・豊かな生活が出来るようになります。
既存商品が行き渡っている豊かな国では、今後国内消費拡大・レベルアップにはどう言う政策が必要かコソが必要な議論ですが、少なくとも、消費抑制に働く消費税増税論は時代錯誤の印象を受けます・・。
学者官僚は「木を見て森を見ない」と言うか、時代の大きな流れがどうあるべきか・・質素倹約論はギリシャ等の債務国には合理的ですが、世界一の純債権国日本の政治としては非合理である点に気が付かないようです。
豊かな社会、純債権国では、貯蓄ばかりしないで逆に消費=需要を増やした方が良いのです。
満腹だからもう要らないと言うのではない・・・量を消費するのではなく上質化する工夫が政策に求められます。
土建的財政支出の時代が終わったのは確かですが、それと内需拡大の必要性が終わったのとは質・レベルが違います。
世帯数より建物の数が多くなれば、家の需要がなくなったのではない・・もっと広い家に住みたい・快適な家(上質な家具調度に囲まれた生活をしたい)・交通便利な場所に住みたい需要などが無限にあるのと同じです。
美術品でもより良い物を解体見たい欲求に答える・この種のレベルアップで国際競争して行くべきですが、この種のものは従来型GDPにはあまり影響がありません。
田舎に行くと料理の味や盛りつけの芸術性よりは量で勝負する傾向が目立ちましたが、国全体でえば、田舎者のスキなGDP競争から脱却すべきです。
今後は量を充足する時代から、上質な料理・農産物・・トマトでも良いものを作ったり味を楽しんで行く時代です。
実用品ばかりではなく、絵画・各種文化を向上させて行く(江戸時代に俳諧や川柳落語は歌、小唄、義太夫・・歌舞伎や各地のお祭り文化等々が発達したように)政策に注力すべきです。
・・・・我が国はその意味でも上質なものを愛する点では遣唐使の昔から世界に冠たる上質品愛好国家ですから消費の上質化競争では、更に世界をリード出来るでしょう。
そうすれば、名実共に世界の尊敬を集められるようになります。
ドイツの批判みたいで恥ずかしいですが、内需の貧弱なドイツの問題点は内需拡大と言っても基礎文化が貧弱だからレベルアップ出来ない(おいしい物を作ったり楽しむ能力が弱い)から・・量で止まってしまうからではないかと言うのが個人的意見です。
質素倹約論に戻りますと、痩せた人は栄養を取った方が良いですが、肥満の人は栄養を取り過ぎないようにするなど国によって、処方が違うべきです。
特定分野、例えば自動車税・ガソリン税や住宅取得税アップは自動車や住宅販売抑制になることは明らかです。
増税分野=その分野の消費抑制の視点で言えば、消費税増税アップ論は特定消費抑制ではなく消費全般を抑制するための政策になることは間違いがないでしょう。
財政健全化論と増税とは必ずしも一致するものではありません。
赤字原因を縮小したり、成長による増収もあり得るしどの税目を挙げるか(どの分野を非課税にするか)も必ずしも一致しない・そこには多様な論理があり得ます。
(喩えば高齢化問題と言えば、65歳以上の人口比ばかりマスコミが書きますが、保険赤字の原因も高齢化ばかりではなく医薬品や医療機器の高騰にも原因があることを「ダイジェスト報道5と正確(中立)性担保4」February 14, 2016前後で連載しました・・これからは65歳以上で働く人が増えて来るなど社会保障負担も変わってきますのでもっときめ細かい年齢別分野別議論が必須です)
政府のえり好みによる・・特定産業に下駄を履かせる・・政府官僚が市場選別よりも優れている前提)個別産業優遇の財政政策は限界があるので、全体の足場・・水平面の上下変動を通じて公平に影響を及ぼし、対等条件下で伸びる産業と伸びない産業が市場で決まって行く金融政策の方が自由競争にも適している・・合理的政策であることをこのシリーズでは書いてきました。

金融政策の限界9

先進国で必要とされているのは、生活レベルアップ向けの投資や研究開発ですが、これは投資乗数が低いのが原則です。
運転を快適にするために道路補修を4年1回から2年に1回にしたところで、その社会の産業効率・生産性は殆ど上がりません。
豊かになれば経営者も自宅の内装.備品をグレードアップしますが、それによって経営効率が目に見えて良くなる訳が有りません。
自宅の文化レベルが上がると文化系次世代が育つ可能性を期待出来る程度でしょう。
景気対策としての財政出動・・凸凹道を舗装し曲がりくねった道を直線にするのは投資乗数が大きいのですが、こうした投資はキャッチアップ型後進国経済には有効ですが、(開発独裁が有効な所以です)先進国では後進国への生産移管が始まって以降、規模拡大型よりは、生産力過剰→整理統合縮小が主たるテーマですから、投資誘発効果を求めるのは無理があります。
利用の減った山間僻地の道路や電線水道設備を閉鎖して行く決断の方が求められていて、他方で都市のトイレや道路美化(植栽の手入れや電柱地中化など)などの投資が求められています。
景気対策としての財政出等は特定分野狙い打ちの需要創出(長野オリンピックあるいは、映画舞台化による一時的観光ブーム=地域限定バブル・・エコ減税や地デジ切り替えなどの場合特定産業バブル)にしかならず、その期間が終わると却って後遺症に苦しみます。
ジャパンデスプレイの例で分るように一種のゾンビ(企業ではなく日本が棄てて行かねばらない)生産品の延命策も、いくら資金を補充しても切りがありません。
8月6日経新聞では革新機構からジャパンデスプレイに資本注入予定と出ていましたが,市場採算の取れない特定物の生産にこだわるのが無理になって来たのではないでしょうか?
ところで後ろ向きの応援をする革新機構って意味があるでしょうか?
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO05759850W6A800C1MM8000からの引用です。
「スマートフォン向け液晶パネル大手のジャパンディスプレイ(JDI)が筆頭株主の官民ファンド、産業革新機構に金融支援を要請したことが分かった。液晶パ ネルの販売が振るわず資金繰りが悪化していた。革新機構による債務保証や融資などが浮上している。数百億円規模の支援を得て財務の健全性を高める。(関連記事企業総合面に)」
後進国・・キャッチアップ型の場合業界結集しあるいは財政資金投入してモデルケ事業育成するのは意味がありますが、先進国では既存産業技術は日々陳腐化に曝されてるので革新脱皮していく・・「リストラクチャリングして行く」のは個別企業の責務です・・。
トヨタでもトーレでもコマツでも1企業の中身を見れば、日々革新に励んでいる→新製品開発に挑戦してこそ生き残れる・・裏から見れば陳腐化した旧製造設備はしょっ中廃棄しているから生きのこって行けるのです。
世界の工場の地位を失いつつあって規模縮小予定の先進国では何を廃棄して行くべきか、その間の経営をどうするかは市場原理に委ねるが原則ですから、国策策定は無理があるので、業界総意による出資と言う形にしてこれに一部財政投融資するのも緩やかな国策・・お茶を濁してるのですが、ジャパンデスプレイの例を見ると、業界のどこの企業も維持出来ない(市場性のない)製品を業界上げて生産力維持するのは無理があることがわかります。
中国では全体的な経済低迷にも拘らずエコカー減税等の(国産優遇の部品指定?)テコ入れ策によって中国国産の新車販売が伸びているようですが、これは需要の先取りでしかありません。
・・優遇期間が終われば・・あるいは優遇(減税)をそのまま続けても数年分の需要を先食いしている以上は、数年でメッキがはがれ、反動減が来ることが明らかです。
先進国では反動減が怖いので、特定産業や地域限定プッシュ型をやめて日米欧で社会全般の消費力アップを図る金融緩和論が政策の中心課題になって来たのは、当然の流れです。
ただ中国では緩和をテコに直ぐにマンション需要に火がつく・・これもバブルの再燃再拡大が議論されていますが、その外に需要の先取りと在庫が増える点で需要減問題を先に送って行きます。
中国では、この10年間ほどマンションその他焦点を絞っての優遇策でその分野ごとのバブルを煽っては損をさせて(例えば1昨年暮れ頃から政府推奨の「株は儲かるぞ!」式のバブルを煽って於いて昨夏の株式暴落)は、別のターゲットを決めてまたバブル化させることの繰り返しでしたが、もはや、再転嫁すべき対象がなくなって来た・・国民資金の底が尽き始めた印象です。
中国や韓国の場合、モラルハザードになり易い(と言いますがまだモラルが出来ていない)社会では緩和さえすれば良い訳ではありませんが、先送り政策に頼っていることになります。
これでも・・目先の経済停滞を誤摩化すことは可能ですが、カンフル同様で問題解決を先に送っているだけですから、いつかは行き詰まるだけはなく先に送る都度おまけが膨らむ傾向があるので最後は大変なことになります。
例えば100万円借りて返せないときに借り換えると金利や紹介手数料を含めて120万借りる・・120万返すために150万借りる〜200万円などと繰り返しているうち瞬く間に最初に借りた100万が1000万になるのと同じです。
金融緩和(金融調政策)の役割が先進国・純債権国・豊かな社会では終わっていることをここでは書いています。
億単位の預貯金を持っている人は、銀行金利が下がっても消費を増やしたりすることはありません。
政府の号令一下・・金利をちょっと下げれば設備投資が増え、住宅や各種ローン購入者が増える・・国民が政府の思うように消費を増やしたり減らしたりする単純反応する時代は終わっています。
先進国である筈のアメリカが金融政策に単純反応する社会・・ここ数年の異次元金融緩和によってクルマローン安によるクルマ購入の拡大はサブプライムローンの再現と言われているのは、新興国・・から絶え間なく流入する移民の存在と貧民層が多いからではないかと思われます。
アメリカとしては、異次元緩和を早くやめたい状況ですが、中国の破綻・・世界経済混乱を恐れて政策変更出来ずに困っています・・日本とは状況が違っています。

金融政策の限界8

紙幣大量発行を利用して国民がそのまま国内消費に振り向けると(海外投資ゼロに近い場合)どうなるでしょうか?
比喩的数字で言えば、異次元緩和分が100兆円あるとした場合、日本ではその内99%以上が海外投資に向かい、資金不足の新興国では99%以上国内消費・投資に向かう場合の違いです。
単純に国内消費を増やせばこれに呼応した国内投資も増えますし、各種輸入が増えて国内景気が過熱して景気が良いように見えますが、国際収支赤字累積→流入資本引き上げ加速→通貨暴落(アジア危機)→いつかはハイパーインフレの心配がありますから、経済学者の杞憂論は資本不足国を前提にしていて資金余剰で縦横に海外投資する日本社会を1回目の東京オリンピック時期・・資金不足国と同視していると思われます。
ちなみに中国だって将来の経済失速を前提に海外資金逃避・・裸官(賄賂・高官非難が中心ですが経済的に見れば資金逃避の1態様です)に始まって死に物狂いで?企業買収に動いています・・この数日ではイタリアサッカーチームの買収も報じられているように、何でも買収対象になっているのが現状です。
中国の場合、(まだ海外進出するほど経営経験が熟していないのに)死に物狂い・・後先を考えずに買収するので失敗が多いと言われていますが・・「借りたら返す」近代法のモラルが定着していない中韓国民レベルを前提に経済政策の議論を日本の学者がしていることになります。
日本の場合いくら金利を下げても家計負債が増えるどころか、(サラ金系債務が激減していることを4〜5日前に紹介しました・・この結果サラ金大手も小さな個人的サラ金業者もほぼ壊滅しています)逆に個人金融資産が増える一方と言われています。
以下は野村のデータによりますが表をそのままコピペ出来ないので各年の(金融資産内訳に興味のある方は上記に直接アクセスしてご覧下さい)合計数字のみの紹介です。
http://www.nicmr.com/nicmr/data/market/retail.pd
リテール金融市場 日本の個人金融資産残高の推移
西暦    2011    2012     2013    2014     2015(Q1)   Q2     Q3
合計  14,999,732  15,440,650 16,443,403  16,962,404  17,001,117  17,175,367  16,838,135
野村資本市場クォータリー
(注)1. 2015年第3四半期以前の値は改定のため、前号の数値と異なる場合がある。
野村資本市場研究所作成

上記データは15年第三4半期(Q3)までしかありませんが、日本の個人金融資産が長1200〜1400兆円と言われていたのがいつの間にか15年第一4半期(Q1)以降約1700兆円に膨らんでいます。
日本の場合・・バブル崩壊で懲りた経験にもよるでしょうが、いくら金利を下げても日銀や経済学者の期待どおり、見通しの悪い事業を始めるために借金したり、返す当てもないのに借りる個人が滅多にいないのは慶賀すべき智恵です。
実はバブルのときも借りまくったのは不動産業者と貸しまくった金融業界(特に痛手を受けたのは住専でした)だけでした(個人は、農地など高値で売り抜けて得した人の方が多かった)から、日本全体の傷が浅かったのに金融業界の不始末の所為で日本全体が迷惑を受けたに過ぎないことを何回も書いてきました。
日本は犯罪率が低いと言う意味は、一定率の不心得者がいる・ゼロではないのと同様で、モラルハザード者も日本にも一定率いるには違いないですが・・消費者金融借入増に走る人も皆無ではないまでも、そう言うレベルの比率が低いと言うことでしょう。
日本社会の場合、道徳律その他で世界の先を走っていますので、中韓等の周回遅れの国に有効な19〜20世紀型金融緩和をしてもそれほどの政策効果を発揮しないのは当然です。
いつも書くことですが、エリ−トの考えることはいつも過去の事例研究・・お勉強が得意な人ばかりですから、先進国の政策決定に関与するのは間違いです。
日銀のエリート・経済学者や有名エコノミストは中国や韓国の中央銀行総裁やシンクタンクに就職すれば、社会状態が適合していて、提言どおりの政策効果がすぐに出て重用されるのではないでしょうか?
中韓贔屓のマスコミ人が退職後中韓の大学に就職して厚遇を受けている例がありますが、経済学者やエコノミストや日銀委員も中韓の大学教授に就職すれば活躍出来る筈です。
実際中国の場合バブル崩壊を食い止めるためにちょっと金融緩和するとすぐにマンション価格が急上昇し再バブル化して来たので、5月には2戸目マンション購入制限策(納税基準を過去1年分から2年分にするなど)に乗り出していますし,赤字生産を阻止するために2月26日にG20で約束したばかりの過剰設備整理の約束で休止中の高炉の再稼働が始まるなど政策効果がストレート・・ホンの数十日程度で出て来る国です。
ホテルでバイキング方式にするといくらお皿に取っても料金は変わりませんが、日本人の多くは自分が食べられる程度しかお皿にとりません・・。
中韓の客は食べもしない量をやたら皿にとって食べ散らかし放題と言われています・・今では恥ずかしいことと分って来ているかも知れませんが、元はそう言う話でした。
これが国民性の違いと言うか発展段階の差です。
マイナス金利や紙幣大量発行の恩恵で1000〜1万件に1つあるかないかの本当の有望新規事業がこれによって開業資金を得易くなる場合があるとしてもその効果は・・徐々に浸透して行くしかないので、すぐに日本全体の負債が大幅に増えて経済が活発化する・・経済効果がすぐに出るようなことにはなりません。

異次元金融緩和とハイパーインフレ1

国際相場で必需品等を輸入する資金が枯渇するかどうかがハイパーインフレになるかどうかの基準であり、円相場の基準です。
日銀がいくら無制限に円を刷っても外国人投資家がこれを日本で借りて海外に持ち出して「円キャリー取引」をしている限り、同額の債権を日本の銀行等が保有しているのであって日本の負債ではありません。
トヨタなど事業系や資源開発企業等国内企業がマイナス金利の円を多めに銀行から借りて(あるいは社債発行して)海外投資しても同じく対外債権が増えるだけで円が暴落する心配がありません。
国内投資されない余剰発行分が海外に出て行くとその時点で流出した分だけ(国際収支の基調的黒字による基調的円高趨勢を押し戻す)円安効果が出ているのであって、大震災のときのように日本の危機発生時には円が戻ってくることが想定されている結果危機が起きるとその効果を想定した投機筋の円買いが起きて円高になるのが原則です。
対外負債(資本流入)を膨らませて一見景気の良い国(アジア危機前の東南アジア諸国など)の場合,世界経済危機が来ると資本引き上げによって大暴落しますが、日本は逆に危機が来たときに円引き揚げ・・還流予想によって逆に上がる・・ここ数十年続く危機時の円高はこの原理によります。
リーマンショックであれ、東北大震災であれ,昨年来の中国発の経済危機の恐れ→イギリスEU離脱ショックなどによる円高はすべてこう言う動きでした。
しかし、震災当時のコラムに書いたように日本の場合背伸びして海外投資していない・・国内資金滞留も多いので、大震災にあったくらいで、海外投資引き上げに追い込まれるほど困りはしません。
東北震災や熊本震災で見れば分りますが立地企業は甚大被害を受けますが、その復旧費用捻出のために海外工場を売却して資金を引き上げる必要がないと言えば分るしょう。
ただ復興用に国内余裕資金を使って海外進出を予定していた資金が乏しくなることは確かです。
日本は大震災で貿易赤字になっても総合収支では毎年巨額の黒字を計上しているので、何もしない(同額分海外投資して行かないと)と黒字分だけ毎年円が上がる基調(比喩的に言えばGDP比1%経常収支黒字があると何もしないと1%ずつ円が上がる)にありますので、震災復興等で海外進出用資金・・流出が減ると、この限度で海外資金流出が一時的に減る・・国際収支上の黒字分の蓄積による円高が進みます。

“http://www.asahi.com/articles/ASJ2556FSJ25ULFA01J.htmlからの引用です。

財務省が8日発表した2015年の国際収支(速報)によると、貿易や投資による日本と海外のお金の出入りを示す「経常収支」の黒字は前年の6・3倍の16兆6413億円だった。原油安による貿易赤字の縮小に加え、訪日外国人による日本での消費が増え、旅行収支が53年ぶりの黒字となったことなどが経常写真・図版

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上記の第一次所得収支は海外利益送金収入ですが、この送金が大きい結果日本経済は恒常的に総合収支では黒字が続いている・・放置しておくと黒字分だけ円高が進むので、恒常的に海外還流して行く必要がある状態です。
大地震等の資金需要が出たと言ってもその程度は微々たるもの(上記例で言えば海外投資が皆無になるのではなく何%か減るだけでしょう)東北大震災の2011年以後数年間で見ても貿易収支が赤字になっても海外収益で穴埋め出来ていて、総合収支が黒字のママであったことが分ります。
ただ、世界の金融業者は他人のお金をキチキチ運用して投資する立場しか知らないので、「経済変調があると日本が資金を引き上げるだろう」と言う間違った読みで円が上がるので、日本は迷惑します。
間違いであろうとなかろうと・・実際に円上がる以上はこれを阻止する必要・・世界危機時に日本が損をしていなくとも円の大量発行を仕掛けて円の独歩高を阻止する必要があったのですが、これを怠っていたためにリーマンショック後日本経済が低迷してしまったのです。
危機時の通貨騰落率によって、そのときの国際的経済力のランキングが分る仕組みです。
従来はUS$1強でしたが、今や何かあると(アメリカの金融緩和の打ち止め→中国等から資金引き上げリスクの予想、あるいはEU離脱ショック予想だけでも)日本円の上がる率が高くUSドルが少し上がる程度・これが世界の実力評価と言うところです。

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