金融政策の限界7

以下金融政策の限界論です。
不景気とは、・・経済原理上投資するメリットがないと言う市場判断によって、投資が停滞しているのが現在の世界経済です。
昔は需要があっても資金がない国では、インフラ投資出来ませんでしたが、今では需要があれば先進国から資金が流れ込みますから、需要がすべてを決める時代になっていると言うテーマでこのシリーズを書いてきました。
日本は世界最大の純債権国・資金余剰の国ですから、投資が増えないのは資金不足によるのではなく市場的関心による需要がないからです。
これ以上トンネルをくりぬいて10数人規模の小集落間の移動を便利にしてもコストパフォーマンスが悪過ぎる・・公共工事による経済効果を期待するのは限界が来ていることは20年前から分っていることです。
今は財政目標は公共工事からいろんな方面へ拡散していますが、民間の創意工夫・・智恵を結集しても採算取れないものを、政府が作っても需要が想定より増えることがありません。
第二階東京オリンピック設備計画同様にやってみると、想定以上のコストがかかる逆の結果になるのが普通の成り行きです。
特定成長分野を政府が決める(太陽光発電への補助など)のは計画経済のようで無理があるし利権の温床になりがちなので、全国民に公平に効果が行き渡るように規制や金融緩和で公平にみんなのハードル(コスト)を下げる・・水平面をさげる(下駄を履かせる)努力が規制緩和・金融緩和論です。
しかし市場原理に委ねると民間がやる気が起きない分野については、公共投資であってもあるいは金利下げによって少し投資が増えても(元々需要が乏しいのですから)これによる経済成長効果が殆どない見込めません。
金利下げによって無理に後押ししても投資乗数・・経済成長効果がないことに変わりがない・・世界水準から見て高度にインフラその他が行き渡っている先進国・・しかも資金が余っている我が国では、金利が下がり紙幣増発しても本来の需要が増える訳がありません。
我が家で言えば金利が下がっても借金する気がしないし・・牛乳やコーヒーの値段が1割下がっても昨日より多く飲みたいとは思いません。
景気対策として人為的に需要を引き上げようとして財政投融資や金融緩和するのは、結果的に経済合理的に見て必要もない資金利用を煽ることになります。
※生活に必要なインフラ整備は終わって今後はレベルアップ用の整備・・街路樹の植栽、駅プラットホームの防護冊やエスカレーターなどの増設、電線地中化・・公園便所のレベルアップなどは経済成長効果を望めませんが、豊かな国では税でやるべきでしょうし、ロケット開発や南極派遣など)長期的展望による資金が必要なために民間で出せない分野を国家地方政府が出すのは必要ですが、目先の経済成長を求めるとおかしなことになります。
財政の使い道は豊かになった程度に応じて快適な生活を増進する目的で行なうべきであって、経済対策として行なうべきないと言う視点で書いています。
私見によれば即効的景気対策・・経済成長目的の財政出動政策は不要であり誤り(害)ですが、(為替相場対策→その結果として内需が増える効果としては意味があることは認めますが・・)これを間違って?利用する人が増えた場合、我が国のバブルの教訓だけではなく、どこの国でも何らか(長野オリンピック景気も本来その社会地域の需要を越えた人為的需要でした)のバブルが発生し、崩壊する法則?を直視すべきです。
日銀が金融緩和しても物価が上がらない(物価が上がらないのは良いことです)とか国内投資が増えていないと批判する意見がありますが、元々そう言う直接的効果は予定されていないと言うべきです。
何回も書くように開かれた世界ではある国の物価が上がれば物価の低い国から輸入される・・中期的には国際相場以上に物価が上がることはありませんので金融政策に物価上昇効果を期待するのは無理があります。
同様にいくら日銀が紙幣を発行しても(日本が輸入資金を持っている・債権国である限り)ハイパーインフレは発生しません。
赤字国債論議で財政赤字が続くと必ず出て来る「将来払えなくなればどうする」と言う議論に対して何回も書いていますが、赤字累積がどうなるかは、日本全体の赤字の場合の議論を一部組織でしかない「政府財政赤字」の議論にすり替えているのです。
日本経済全体のために必須ならば(体全体を助けるために一部ちくりと注射して痛い思いをしても良いように)「政府」と言う部分団体の赤字も我慢すべきかは別問題です。
金融緩和論に戻りますと、リーマンショックに対して世界中が金融緩和で対処したのに、日本だけが緩和しなかったので超円高になり、リーマンショックの被害が最も少なかった日本が一番回復が遅く・・大きなダメージを受けてしまいました。
金融緩和は国内投資を直截増やすよりは為替相場の引き下げ効果があって、輸入抑制・輸出環境好転→国内投資環境の好転、・・結果的に緩和しなかった日本だけが割を食ってしまったのです。
インフレ期待を日銀が掲げたのは(私見によれば)間違いですが、金融緩和競争に日本だけ泰然としているべきではない・・これを改めたのは正解です。
マイナス金利もEUが早くから実行しているしEUの方が、マイナス金利ハバが日本よりも大きいのに、これとの比較論が一切なく日本のマイナス金利だけ「害が大きい」と批判しているのは学者としてはマトモな議論とは言えません。
移民のテーマでも、西欧等での移民増加のマイナス効果を全く論じないで人道論だけ煽っているのも同じです。
人道論は既に移民してしまった人の救済論であって、これから移民を入れてよいか否かの議論とは関係がない・・すり替え論です。
マスメデイアは「日本経済が沈没するように期待するバイアスがかかっているのではないか」「日本が損するような提言しかしない」と言う批判にも説得力がありそうな状態です。

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