国際経済秩序1

アメリカだけが金融取引禁止等で世界支配できるかと言うとそうではありません。
今や世界中でいろんな取引が網の目のようになっていますので、結局は巨大市場を持っている方が相対的に強い立場になります。
中国でさえ、中国市場ではアメリカ企業を思うままに操れることが常態化しています。
情報操作?規制協力を強要されたグーグルが思い切って中国から撤退したことが知られていますが、一般企業は中国市場からの撤退選択をしないで中国政府の思いのママに操られているのが普通です。
新日鉄住金の合併やその他企業行為が中国政府の許可待ちで何年もかかったことを想起しても良いですが、グローバル企業はちょっとした合併(N&A)その他をするためには進出先国の許可を受けないで本国だけで実行してしまうと進出先の国では違法になってしまいます。
日本国内で許認可を受けていても、進出国ごとに許認可がないとその国では操業出来ないのは当然です。
これから進出するならばそのとき考えれば良いのですが、既に中国等で工場や店舗を持っていると日本だけで許可受けたからと言って法的合併してしまうと、中国の許可を受けていないので中国の工場や店舗操業が独禁法違反になってしまいます。
このため(日本企業だけではなく)欧米のグローバル企業も、中国での許認可を受けないとアメリカ国内での企業買収も出来ない・・何も出来ない状態に陥っているのが現状です。
アメリカの報道で温家宝総理(当時)等政府要人の汚職の実態が暴かれたことで、関連記者の記者証の更新拒否が相次ぎましたが、だからと言ってアメリカの報道機関が丸ごと中国への記者派遣をボイコット出来た訳ではありません。
アメリカも中国報道を丸ごとボイコットできないので、(グーグルはそれをしましたが・・)結果的に別の記者を派遣するしかないのでしょう。
中国企業もアメリカ企業も日本で操業しようとすると日本政府の許認可を受けないと違法になる点は同じですから、お互いに入り組んだ関係になっているのが現在社会です。
相互に相手の市場で生きて行くためには、相手の言うこと・・「郷に入りては郷に従う」しかありません。
中国も日本に食料品を輸出するには日本の消費者の要求する規格に従うしかありません。
結果的に市場規模の大きい方が、強い関係になります。
国内でも話し方・物腰態度に始まって、いろんな分野で東京標準に次第に統一されて行くのと同様です。
国ごとにいろんな規格が違うと高コストですし、政治的意図による嫌がらせなどが介在して不透明で、国際展開への障壁(カントリーリスク)になります。
車の規格や各種製品基準の国際規格の必要性が先行していましたが、ココ20年くらい前からは、バーゼルでの国際金融機関の自己資本比率の決定や国際会計基準の統一や税制の標準化への動きが良く知られているように、今やソフト分野での統一基準策定またはこれに近づけることが重要になっています。
離婚と子供の養育権のように民族の歴史・・独自性の強調される分野でさえもこれに関するハーグ条約を日本も遂に最近批准しました。
このように今や世界中が合意出来る分野から順次各種基準の統一化が進んでいます。
統一が進んだ分野ごとに政治に翻弄され難くなりますから、現在のTPP交渉は従来型の物品に限らないソフト分野の規格化を進めようとしている点では、一定の進歩的な動きと言えます。
アメリカの裁判所に提訴されると困るという反対論が強調されますが、ルールが統一化されればどこの裁判所でも良くなるのが当然の帰結です。
日本国内では、どこの裁判所で裁判を受けても結論が変わる心配がないと思っている人が一般的でしょう。
国内事件では多くの人は管轄条項や管轄合意は、距離による有利不利だけを基準に考えています。

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