ウクライナ政変とロシア2

西欧との間でウクライナ取り合いの綱引き程度にしておけば、燃料その他多くの面で死活的にロシアに頼っているウクライナはロシアのご機嫌を損ねる訳に行かないので、程々につき合って行けた筈です。
実際今回のデモ等の騒動で追い出された前大統領は、直前までEUとの協定を結ぶ予定だったのを昨秋ドタキャンしてロシアとの協定を結んだたことが騒乱の切っ掛けになったのですが、彼としてみれば南欧危機で懲りたEUから緊縮財政の要求その他うるさいことばかり言って来るEUとロシアを両天秤にかけて破格の好条件を引き出してロシアと協定を結んだのは、それなりの計算があってのことでしょう。
これに負けずにEUが条件を緩めて来れば、そのときにまた話に乗ればいい程度の腹づもりだった可能性があります。
ウクライナにとっては、どっちつかずの方が双方から有利な条件を引き出せるのでそうした行動をしていた筈です。
EUとの協定をボイコットしてロシアと仲良くしようとしたことに憤激した民衆暴動で彼は追い出されましたが、政治家の奥深い腹の底は民衆には見えません。
ロシアが陰陽の介入をせずに民衆暴動を座視していた・・なす術もなかったように見えることが疑問ですが、EUとの競争上ウクライナに譲歩し過ぎたので損な取引だった(ご破算になった方が良い)と思って放っておいたのかも知れません。
こんな人口の多い貧乏国をEUと競り合って勝ちとったものの高い買い物に気づいた・・破綻状態のウクライナを抱え込むとロシア経済が持たないという冷静な計算が働いた可能性もあります。
ロシアとしては戦略的要衝であるクリミアさえ確保できれば良いのであって、図体の大きい貧乏国をまとめて抱え込むのは大損です。
今回の強行策の結果、本体のウクライナを敵に回して小さなクリミヤを手に入れただけですから、一見ロシアの大損ですが、逆から見れば必須のところだけ手に入れて貧乏な不採算事業を切り離したと見るべきかも知れません。
そのままであれば経済援助しなければならないウクライナを、クリミアの併呑によって文句なしの敵国に追いやってしまい、無駄飯食いを切り離してEUに任せて清々したとも言えます。
企業がお荷物の主力不採算事業を恩を売って切り離すようなやり方です。
マレー半島からシンガポールが独立したことやイラクからクエートが分離独立したことがあります。
中国だって沿海部が内陸から切り離して友好国程度にして独立した方が有利に決まっています。
ウクライナを完全な敵国に追いやったロシアの行動は失敗だったのか、計画どおりだったのかは歴史が証明して行くことでしょう。
西欧にとってはロシアの裏庭とも言うべきウクライナ取り込みに動き過ぎた・・(民衆暴動を煽って)露骨にやり過ぎたことが、ロシアの反発するチャンスを与えて貧乏国を(昨年秋まで要求していたきつい条件を突き付けられないまま)引き受けるしかなくなったのですから、やり過ぎの結果の貧乏くじだったと言うべきでしょう。
御陰で日本にまで奉加帳が回って来て日本が千億か1500億の援助をすることになったと報道されていました。
中国成長鈍化やシェールガス期待→資源価格下落による経済変調でロシア経済は下降状態になっていて、支持率低下に焦っていたプーチンは、西欧のやり過ぎを捉えて、民族感情に訴え易い対外喧嘩に賭けたと言うのが一般的見方です。
しかし、穿った見方によれば、ウクライナの政変自体ロシアが(西欧が煽ったかのように見せかけて)裏で煽ってこれを攻撃材料にしてクリミアの切り離しに成功した可能性があるとすら言われています。
ロシアの対応がびっしり予定どおりと言わんかのように、一糸乱れず何の混乱もなく行なわれています。
兵員移動や住民投票その他がかなり前からの綿密な計画と準備がなければ不可能なほど手際よく進み過ぎていることと、ウクライナでイキナリ過激な暴動になって行った過程と前大統領がこれと言った抵抗(暴動制圧努力)をせずにあっさり国外脱出をした手際が良過ぎる不思議さがあります。

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