投資効率4

子供のために自分の生活費を削ってでも数百万円より多くかけて、子供を高学歴化したい親が多いのですが、この階層は一ヶ月当たり数千円くらい子供手当(児童手当等法改正の度に名称が変わりますが・・)の引き揚げがあってもさらにもう一人生みたいとは思わないでしょう。
現在一人1カ月当たり5000円らしいですが、これがせいぜい月1000円前後上げるのに反応して、もう一人産もうかと考える親は底辺層に多くなります。
間違ったことでもマスコミが宣伝しさえすれば、これに反応し易い・・無批判に浸透して行くのも底辺層に多いのですが、子供手当の増額、高校無償化その他ホンの僅かな餌につられる底辺層の拡大生産が図られてここ数十年経過していることになります。
日本の将来のためには、今後の社会は高度化・・教養・技術修得が必要な時代でこれに対する適応力のある人材比率を上げるのが政策目標であるべきです。
職業訓練さえ数時間多くすればレベルアップするのなら中国等新興国でも職業訓練に励むに決まっているので、後進国と差を付けるには優良な素質の人材を増やして行くことこそが、政策目標であるべきです。
もしも優良子孫比率を上げる目的の出産奨励であるならば、子供を産めば一定課税するくらいにした方が合理的です。
僅か数千円前後の補助金増額目当てに子供をもう一人産もうかという人が子孫を増やすのが良いのか、数万円くらい課徴金を払っても子供の欲しい人だけが子孫を残す方が良いのかの問題です。
非正規雇用関連労働者と言えども親の教育負担・愛情をほぼ同様に受けていると思われますが、彼らは一人で親世代を4人分支えるどころか自分一人の将来分の年金さえ支払能力がない人が殆どです。
この階層に補助金を出して拡大再生産をしても社会保障負担が増えるばかりで、年金負担能力がない点は変わらないでしょう。
(これと言った病気でもないのに若者世代で生活保護受給者が広がっています・・これでは次世代が年金を負担するどころではありません)
この点は私がこのコラム開始初期以来主張している外国人労働力移入反対論の根拠と同じで、貧困層の子沢山政策は当面は安い労働力増加で潤いますが、彼らが高齢化したときの社会負担と彼らの次世代に対するケアー・・社会負担増に苦しむことになります。
(現在既に日本語の分らない子供に対する学校現場の負担増、あるいは少年事件の発生等で外国人労働者の反撃が始まっています)
今年の9月21日に千葉の幕張で開催された関弁連のシンポジュームのテーマは「外国人の人権」でしたが、そこでの説明では、学齢期になっても不法滞在等の次世代は、就学のチャンスすらなく、授業についていけないどころの話ではない実態が紹介されていました。
その大会でのテーマは、彼らの人権をどうするかであって、不法滞在であろうがなかろうが一人の人間が困っている限り彼らの人権を考えるのは我々弁護士の役割ですから、それはそれで考えさせられるテーマでした。
しかし別の視点・・こうした社会弱者を大量に生み出す外国人労働力に頼る社会のマイナスを強く考えざるを得ません。
社会のあり方として考えると日本語が全く分らないまま小学校にも通わずに彼らが成長して青少年になって大量に参加して来る社会では、どう言うことになるのか(既に静かに始まっています)空恐ろしい感じがしています。
(現在外国人滞在者は把握されているだけで約200万人に上っています)
今の親世代(60〜70代)は、来たるべき時代は高度社会であるとの予感から、自分の子供を来たるべき時代に適応させるためには、一人当たり高額の養育費・各種訓練費をかけるしかないことを本能的に分っていました。
マスコミが「生めよ増やせよ」と宣伝してもこれを無視して少子化に励み、資金を一人〜2人に集中して(余裕のない層は借金してでも)子供を最低でも高校へ、大学へあるいは専門学校へと進学させてきたのは正しい智恵の発露でした。
歴史を見てもいつ死ぬか分らない戦国時代が終わって、江戸時代に入ると一斉に少子化に転換し、その代わり子供の教育に励んだのと同じで賢い選択です。
私がこのコラムで繰り返し書いている少子化進行促進論が、学者やマスコミによるマインドコントロールにメゲズに実際に子を産む母親によって実際に行われて来たのは正しいことです。
この辺は日本マスコミがこぞって主張している・財政赤字→日本が大変なことになる論が、世界全体・・世界の経済界では全く問題にされていないで、危機時には円が逆に上がっている(世界の圧倒的多数が日本経済の実力を認めていることになります)ことと同じです。
何故か日本のマスコミはいろんな場面で実態に反して中立を装って特定の立場をむやみにマインドコントロールして実現しようとする傾向があるので注意が必要です。

通貨安政策4(資本逃避)

為替相場が人為的介入によって実勢と相場が長期間乖離し続けると、ジョージソロス氏のような投機筋・仕手筋に狙われてしまう筈ですが、こうしたリスクなしにウオンの下落が長期間続いていて、むしろ売り浴びせを防ぐために必死に買い支えている状態です。
(最近の報道ではウオン買い支えのために外貨準備が急減している・・その結果純債務国に転落したり純債権国に復帰したりの繰り返しのようです)トータルでは赤字なのではないでしょうか?
日本のマスコミは、韓国政府のウオン安政策が成功していると格好を付けて報道しますが、実際には安くなるべき要因が内在してどうにもならない状態の言い訳になります。
いくら儲かっているとか、格付けがどうのと言っても(そう言う宣伝工作にエネルギーを使っても)実際にその国の通貨が上がって行くか下がって行くかこそが誰のコネも効かないのでその国の国力のバロメーターそのものです。
ちなみに「格付け」とは大金を払ってして貰うものなので、依頼者の希望によっていくらでも上下するもので何らの信用性もありません。
貿易黒字だけでは資金繰りの状態が分らないことのたとえとして、日本の例で言えば原発事故以降貿易赤字傾向ですが、外国投資による利益送金収入が大きいのでトータル収支ではなお何兆円という黒字です。
逆に外資導入が多い貿易黒字国では、トータル収支では赤字となっている国もあります。
対外純債務国と似通っていますが、債務支払時期が必ずしも一致しないので(その年度内に全部返す債務は珍しいので)支払う債務と債務額は一致しません。
外資による多額の資本出資を受けている韓国の場合、ドルや円で持ち込んでウオンに両替した投資ですから、ウオンの下落によって投資金が目減りして行くのでウオンが際限なく下落するとなれば、早く売って逃げようとなり兼ねません。
これがアジア通貨危機、欧州通貨危機が来るたびに問題となる韓国通貨危機発生の構図です。
たとえば、トヨタなどがアメリカに1000億円投資した工場を持っていて、年間売上げ50〜100億円だった場合、これがドルの1割下落によって評価が1割下がると100億円の評価損失になります。
ドル下落によって景気が良くなってアメリカ工場の売上が1割=5〜10億円上がって、純利益がその10%として0.5〜1億円増えても、企業評価としては約99億円マイナスになります。
これが分っているのに通貨安が進行する国に対して行った投資資金をそのままにはしておけません。
通貨安競争にはこのマイナス面・副作用があります。
うまい物を食いたければ、その代わり代金としてお金が出て行くような物で何事もいい面ばかりではありません。
通貨安競争が世界の潮流になると、世界的投資資金の引き上げ競争が加速して行くことになります。
行き過ぎたグローバル化の反省と言うか逆グローバル化時代が始まりかけているのです。
世界中から引き上げた資金をどうするかとなると安全資産に逃げる・・通貨安になりそうもない国の紙幣に交換しておけば損がないと言うことから日本の円が急激に上がっているのです。
下がりそうもない国の株式購入でも同じように見えますが、円が上がればほぼ反比例してその国の企業業績が下がる=株価下落しますので差引同じ結果ですが、国債の場合円が上がった分だけ得するので外資は国債に集中します。
現に中国、韓国からの欧米資本引き揚げが加速していて、上海株式相場は大幅に下落し、且つ人民元相場も弱含みで、中国は資金不足で困っている筈です。
中国からは資金引き上げラッシュなのに、今なお中国への新規投資をしようとしているのは、主要国の中では日本だけです。
中国はこのため日本の新規投資を切望している状態なのは韓国同様ですが、必死であればあるほど低姿勢になるのではなく強硬姿勢で来るのが中国、韓国のやり方です。
(中・韓の品性が卑しいのではなく)日本の歴代政権の対応がこうした習慣にしたのでしょうが、今まで味を占めた経験で中国はイキナリ尖閣諸島で、韓国は竹島で挑発するなど言いがかりをつけ始めた構図です。
日本は投資資金の人民元・通貨下落による一般経済的損失だけではなく、今回の尖閣諸島問題を契機とした反日騒乱によって、中国投資の危険性が追加認識されれば、遅ればせながら世界の潮流に日本も加わって行くことになるでしょう。
(必ずしも世界の潮流に乗ってれば良いとは言えませんが・・・中・韓に関してはこの機会を好機として中韓に義理立てする必要がない・・今回の騒動は中韓政府の煽りで行っていることは明白ですから、・・遠慮なく資本を引き上げるべきだと思います)
従来の自民党政権時代のように安易な妥協・・相手が何か言いがかりをつけて来ると黙らせるためにその都度何かお土産をやる方式をしない方が良いでしょう。
我々弁護士業務に置き換えれば、ヤクザ相手でも同じですが、こう言うやり方は相手がエスカレートするばかりでいい結果になったことはありません。
工業投資は相手も撤退されると先端技術導入が出来ずに困るのでなお何とかなるが、サ−ビス業の投資はいつでも邪魔になれば口実を付けて追い出されるので、あまりしない方が良いと以前から書いてきましたが、イオン店舗など襲撃されているニュースを見るとこの危惧が現実化し始めています。
これ以上新規投資で深入りしないで一日も早く中国・韓国から資本を引き上げるべきです。

賃貸借契約の真意

貸金に関する本音の約束と文書に書いた約束文言との違いに似た話は賃貸借にもあります。
契約期間2年と文書に書いてあってもそば屋に貸した場合、正当事由がない限り満期が来ただけで出て行ってくれというのは許されないと説明します。

借地借家法
(平成三年十月四日法律第九十号)
借地権の存続期間)
第三条  借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。
(強行規定)
第九条  この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする。
(建物賃貸借の期間)
(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条  建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
第二十九条  期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。

相談者は
「きちんと2年と期間を書いてあっても約束を守らない方が正しいのですか?』「これでは何を信用して良いのか分らなくなる・・道徳は地に堕ちた・・そんなことを法で強制しているのは納得出来ない」
と言わんばかりの質問をして来る人がいます。
そもそも、そば屋でも喫茶店でも魚屋でも「そこで商売を始める以上は、2年で店を畳むつもりで借りる人はいないでしょう」と説明します。
2年でやめるのは商売に失敗したときだけで、誰だって失敗するつもりで始める人はいないので、順調にいけば行くほどそこから動きたくないのが普通です。
(実際2年ごとに動いていたのでは客を失うし、設備投資も無駄になりますから、本気で2年で出て行くつもりで借りる人は皆無でしょう)
2年の契約は契約書に印刷していてこれが普通だと言うから仕方なしに署名しているだけでしかなく、本音は商売に失敗しない限り半永久的に借りていたいというものですし、合理的に解釈すれば、せいぜい家賃の見直し期間くらいの意味でしかなくて「あなたも本当に2年で出て行ってもらう予定で貸した訳ではないでしょう。」と説明します。
何か気に入らないことがあったときだけ大家が2年契約の文字をたてに主張するのは、大家の方こそ本当の約束を守っていないことになります。
本当の気持ちを裁判で認定して行くのは大変なので法律で「正当な事由がない限り自動更新して行く」と決めたのであって、決して契約を守らなくとも良い・・道徳はどうなるのかということにはなりません。
と、地主や家主さんには説明してきました。
金貸しも同様で、
「困っている人に仏様のように手を合わせて頼まれたならば、最後まで仏様のままでいれば一貫したね」というのが私の意見です。
そう言われると
「先生の言うことも分りますが、それでは我々は食って行けませんよ〜!」
という金貸しが普通です。
金儲けのための投資資金の融通と違い、お金でも何でも、ものがなくて困っている人に貸すのは金儲けのためではなく、慈善事業と思うしかないでしょうと説明しています。
個人の金持ちが貸した場合・・こう言う会話の結果、「仕方がないか!」と諦めることが多かった経験です。
こんな風にお笑い話でやりながら交渉して行くのですから弁護士って結構面白い商売?でした。
ここ20年ばかりの間に個人的サラ金は淘汰されて行き、今では大手企業ばかりになってマニュアル式交渉になって来たので、こうした面白み・・個人の個性で交渉する仕事がなくなってきました。
個人関係で言えば、誰かに道具類を預けるとその間に使って傷んだりするのが普通・・お金の場合で言えば、誰かに預けておけば預けたお金を少ししか使い込まれなければ良い・・8〜9割も戻れば「あぁよかった」と思うのが普通ではないでしょうか?
今後先進国では投資機会が少ない・・あっても投資すれば、投資金の何倍になって戻って来るような高成長機会は滅多にありません。
(何時の時代にもアップルやユニクロのように部分的に急成長する企業はありますが、私の書いているのは国全体レベルで成長企業より沈滞企業の方が多くなる状態です)

マイナス利回り4(消費信用3)

話題をマイナス金利に戻します。
全く劣化しないように思われる金貨の保管でも、その管理費・・警備その他に年間1%コストがかかるならば、金貨の価値が年1%ずつ(経費として金貨をカジって行くしかないので)目減りして行くべき筋合いです。
ウラン等放射性物質も半減期が長いのですが、その間の保管・管理コストが莫大です。
(結果的に原子力発電は安くないじゃないの?と言う疑問が噴出しています)
種モミのように生産に利用しない限り万物は時間の経過で価値が目減りするのが原則です。
元々お金でも何(家)でも本でも道具でも貸すのは、お願いされて「貸してやる」と言い、「お貸し下さい」と言うように、消費目的の場合目減りを前提としているので貸すのは本来的に「恩恵関係であって」金儲け目的ではあり得ません。
建物に関しては高度成長期以降、ビジネス(商)としての賃貸ビル等が発達しましたが、それまでは、家作と言って余裕のある人が恩恵的に貸してやる(民法の人間)関係でした。
大正から昭和に掛けて出来た借地法や借家法では、借り手を弱者として保護する法律になっているのはこうした現実を前提にしています。
他方で、平成に出来た借地借家法では、恩恵ではなく業として経営する人が増えて来たので、借りる方が顧客として強い場合があることを前提に定期借地権や定期借家制度が創設されました。
スーパーやファミレス等の出店にあたって、1000坪単位の土地を借りる場合、恩恵ではなく、投資資金の運用として土地購入資金としてまとまったお金を使うよりは借りる方が得だからか借りるに過ぎず、企業にとっては一種の投資行動になります。
生活必需品としての土地貸借・消費から投資になって来た分野も出てきました。
農地で言えば企業参入の必要性が出て来て、小作制度復活阻止至上命題の農地法(戦後直後はこれで良かったのですが・・)とは違ったコンセプトに切り替える必要が出て来たのと同じです。
貸金と金融の違いを見ると、消費目的に貸すのが貸金であり、投資資金として貸すのが融資(資本の融通)という棲み分けでしょうか。
種モミの供給のように何かを生み出す資本の融通ならば、元金プラス利回り回収を期待するのが当然ですが、消費目的の貸金は恩恵・・消費してしまう目的である以上、元金回収や利息を期待するのは無理があります。
この無理を通すために親族を連帯保証人にしたり、(黙っていると返せる訳がないので)自ずから取り立てが厳しくなるので余計金貸しは嫌われます。
金貸しが忌み嫌われるのは、消費目的で貸した以上は元本でさえ回収を期待するのは不合理である・・恩恵で(元本の何割かが帰ってくれば上出来)しかないのを承知で貸しておきながら、これを金儲けにしようとしているところに無理があるからです。
返す当てがないからこそ懇願されて貸すのですから、返せないことを知りながら恩を着せて貸しておきながら、満期が来たら鬼に変わって、厳しく取り立てるのでは一種の詐欺みたいなものです。
金貸し(あるいは個人の小金持)に言わせれば「あれだけ毎晩のように来て泣いて頼んだから貸してやったのに・・」返すときになって返さないのは詐欺じゃないかと言い募るのですが、上記のとおり元々返せっこないのが分っていて貸しておいて、満期が来たら約束とおり返せ」という方が、だまし討ちみたいなものです。
僅かの貸金で返さないなら家を渡せなどと強欲な要求する例が増えたので、これらは民法90条の公序良俗違反として無効にする判例が昭和30年代に出そろいました。
その後(無効にするだけでは借金と不動産価格のバランスが極端に違うときだけしか救済されないために、判例による解決には限界があるので)50年代に入って仮登記担保法が出来て不動産を取るときには無効まで行かないときでも借金と清算をしなければならないことが法で決められました。
(この法律は不動産価格がうなぎ上りに上がっているときに意味がありましたが、平成に入って下がる傾向になって来たことと、殆どの人が先順位で住宅ローンによる抵当権が設定されていて超過債務状態が増えたので実際的意味を失っています。)

仮登記担保契約に関する法律
(昭和五十三年六月二十日法律第七十八号)

最終改正:平成一六年一二月三日法律第一五二号

(趣旨)
第一条  この法律は、金銭債務を担保するため、その不履行があるときは債権者に債務者又は第三者に属する所有権その他の権利の移転等をすることを目的としてされた代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約その他の契約で、その契約による権利について仮登記又は仮登録のできるもの(以下「仮登記担保契約」という。)の効力等に関し、特別の定めをするものとする。
(清算金)
第三条  債権者は、清算期間が経過した時の土地等の価額がその時の債権等の額を超えるときは、その超える額に相当する金銭(以下「清算金」という。)を債務者等に支払わなければならない。

年金赤字4(赤字の基礎1)

現在の年金赤字問題は、大きく分けて原因が2種類・・経営ミスと人口減の2種類あると思われます。
人口減の問題も突き詰めれば、以下に書くように経営見通しが大きく狂ったことに帰する・・結局は経営責任の問題と思われます。
先ず経営責任から入って行きましょう。
第1 経営責任
① 長寿化が進み計算(勘定)が合わなくなったことによる大幅赤字
年金受給開始後仮に平均して10〜15年で死亡を前提に設計していたとした場合、平均20〜25年も生きるようになると積立金が約2倍必要・・裏から見れば支給予定額の半分不足になりますから、このままですと大赤字になるのは必定です。
少子化と言っても年金納付年齢層としてみればまだ始まったばかりですから、現在の赤字原因の大方はこれによると見るべきでしょう。
この見通し違いの責任はどこにあるのでしょうか?
民間の年金・生保・損保等で考えれば分りますが、今年は死亡者が予定より多かったから保険金を払わないと言えないし、火事が多かったから火災保険を払わないと言えないのは当然です。
このために支払原資確保のために資金余剰が政策的に厳しく要請されていますし、突発的大事故に備えて再保険等が発達しています。
契約者の方も、25年も掛けて来たのに年金をもらえない年齢で死んだり、貰い始めて数年で死んだから損だ・・掛け金を返せと言えない・・生保で言えば満期まで1回も死ななかったから損だとも言いません。
私などいくつも生命保険に入っていましたが、一回も死なずに掛け損でしたが文句を言ったことがありません。
これが保険の原理です。
逆に長生きし過ぎたからと言って、(私の場合年金では長生きして元をとろうと思っていますが・・)顧客である生保年金等の加入者の責任である筈がありません。
これが国営になると長寿化の責任だ、少子化による加入者減が原因だとマスコミが宣伝し始めて経営責任・見通しの悪さを不問にするマスコミ論調が風靡しているのですから不思議です。
企業年金も同様に予定が狂って困っていますが、これに対してはマスコミはだんまりです。
年金赤字分は企業の負債(本体からの資金投入責任)として財務諸表に影響してきます・・GMが破綻処理で、これを切り離して再生に成功したことについては以前書きました。
最近では日航の再生でも年金の給付基準引き下げが話題になりました。
この部分の赤字は、制度設計した政府や企業年金が責任を持つべき分野(税の投入・・生保や企業年金で言えばこうした場合に備えた準備金や企業本体からの繰り入れや借入などで対処すべき)です。
政府は年金積立金で県営住宅建設資金その他に使って来て資金を蓄積して来なかった付けが回って来たのです。
食いつぶしてしまったのは運用者である政府の責任です。
② 当初の制度設計が、加入者増を前提にしていたのに加入者増が頭打ちどころか減少に転じたことによる資金不足=赤字
これも後に書くように永久に国民が増加し続ける筈がない・・企業年金も従業員数が無限に増え続けるワケがないのですから、増え続ける前提の設計は経営見通しの悪さ・目先の利益を目的にした制度設計に起因しています。
土建業界などでは、加入者減の結果払えなくなって困っていますが、従業員が減少に転じるとは思わなかったという言い訳は、通らないのが普通です。
優良企業でもいつかは、業容縮小・従業員減に見舞われることを覚悟すべきです。
現存する企業の平均寿命を見れば分るとおり、何百年も続く企業が滅多にないだけではなく老舗でも従業員が増え続ける企業などあり得ません。
(古代から続く企業は家業的にやって来たところが主で従業員を増やし続けると企業が続きません)
人口や従業員増加が無限に続く前提で・・年金額を決めることに、大きなミスというより故意責任があったのです。
少子化による加入者減も企業年金赤字と共通ですが、マスコミは少子化の影響と言います。
エルピーダやシャープ等の人員削減を見ても分るとおり、企業は少子化の結果従業員が減っているのではありません。
③ 制度設計当時に比べて積立金の運用利回りが低下して、予定通り支払が出来なくなったことによる赤字
AIJ事件が起きたばかりですが、多くの企業年金・適格年金が利回り低下に苦しんで、高利回り運用を売り込んだ怪しい投資顧問会社に頼った悲劇です。
高利回り社会=インフレ期待・・インフレの連続を期待していたことに誤りがあった・・結局は経営責任の範疇でしょう。
何回も書きますが、インフレ期待とは借金や資金を預かった者にとっては、返すときの貨幣価値が半分〜10分の1になっていれば返すときの負担が半分〜10分の1で済むという狡い発想・一種の詐欺行為です。
制度設計者が長期間の年金積み立て者をへの実質返金・分配額を減らせると思っていたが、うまく行かなかったに過ぎませんから、騙され損なった加入者が責任を取る話ではありません。
(まじめに年金を掛けて来た国民は被害者にならないで済んだだけで、何が悪いの?)
悪巧みをした方が「そんなうまいことは許されないよ・・」と天罰を受けている状態です。
④ 上記の亜流ですが、低成長下で給与アップ(あるいは絶えざる物価上昇)=納付金アップを前提にしたスキームに無理が生じて来たことによる一人当たり納付金の減少による赤字
 (マスコミによるインフレ期待論の基礎ですが、インフレ期待は邪道であることをこれまで連載してきました・・これも見通しの悪さ=経営責任であることは明白でしょう)
韓国・中国その他新興国の成長を見れば明らかなように、高成長は無限に続くものではない・・いつかは、給与アップが緩慢になり最後には停止するのは自明ですから、永久に給与アップが続くことを前提に制度設計すること自体無謀であり、その失敗による設計責任は設計者が負うべきものです。

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