憲法と国家4(南原繁氏の普遍価値論1)

南原氏は、戦後教育改革の中心人物として戦後教育政策に対して絶大な影響を及ぼしたし、思想界でも丸山眞男その他戦後の支配思想を形成した一流人材を門下生に擁するなど、戦後育った我々世代が無意識のうちに「日本ってこんな国」という刷り込みをしてきた張本人または大恩人です。
この重要な人物の思想について、私の能力では難解すぎて無理を承知で以下の論文を引きながらラフな紹介をしておきましょう。
まず結論から入ります。
高齢化すると、順を追った克明な説明を理解する能力が下がり、話を遮って「要するにこう言うことか!と聴きたくなりますが、この応用です。
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/hss/book/pdf/no97_05.pdf

(研究ノート〉
宗教ナショナリズムと南原繁
西 田 彰 一
おわりに
本稿において、筆者は南原繁の政治哲学を題材に政治と宗教の問題を検討してきた。
・・・南原は侵略を否定した内向きの議論であることも多いため、これまで侵略主義的な超国家主義論者たちに抵抗した人物として扱われることは多かったものの、その共通性については十分に検討されてはこなかった。
しかし、そこをあえて超国家主義論者たちとも共通する地平の問題として扱うことで、あらたな論点を発見できると考えたのである。
その結果、南原の宗教理解とは政治と宗教を分離して扱うものの、それは人格をもった個人が宗教を求めるのと同様に、政治共同体もまた宗教を求めるのであるとする議論であったことを発見した。そのために、宗教は永遠の理想として目指されなければならないものとなり、理想と現実の峻別が強調されるようになった。
しかし、その理想と現実の峻別は理想を固定的にとらえるために、理想そのものの正しさについては検討されることがない。そのため、英米のプロテスタント信仰の在り方が現実の問題として理想化され、理想そのものの妥当性について検討されることは生じなかった。そのために、南原は戦後はアメリカの占領政策を実質的に批判的にとらえることはできず、国民を民族に横滑りさせて、それに追従していくことになった。また、理想を問えなかったことは、共同性の問題を単に文化の練達という相互理解の問題に落とし込むものであった。

上記を見ると南原氏は、現実国家の上に超国家思想を持つ点で戦前右翼・超国家主義者と同根でないかと上記執筆者は見ているようです。
そもそもそも丸山眞男がCHQの神道指令に呼応して言い始めた「超国家主義」とは何か?その前提たる「国家神道」とは何かの定義すらはっきりしていないようですが、この点については、以下に詳しい批判がありますので関心のある方はお読みください。
http://www.zb.em-net.ne.jp/~pheasants/kokkas.htm
以下飛び飛びの引用ですのでそのつもりで読みください

丸山真男・超国家主義論のカラクリ
丸山論文のポイント
『現代政治の思想と行動』にあるこの短い論文が、永い間重要視されてきたことは事実である。さらに今日では、著者本人とともに「神格化」されているとまで言われている。なぜこうなったのか、以下で検証する。

まず第一に、丸山論文にある超国家主義は、GHQ神道指令において定義されたものである。
また第二に、同論文が雑誌『世界』の昭和21年5月号に発表されたことを確認する必要がある。
第三として、この論文の構造が教育勅語の構造を基礎に書かれたという事実がある。

神道指令の超国家主義
神道指令は国家と神道を分離せしめる指令である。GHQは、我が国の昭和戦前における軍国主義の基礎が神道、なかでも彼らのいう国家神道にあると断定した。
神道指令は具体的な国家と神道の分離政策、そして大東亜戦争や八紘一宇などの用語、文部省『国体の本義』や『臣民の道』などの頒布を禁止したものである。
なかでも大事なことは国家神道が含む「過激なる国家主義」「超国家主義」(ultra-nationalistic ideology)の定義である。
神道指令によれば、天皇・国民、そして国土が特殊なる起源を持ち、それらが他国に優るという理由から日本の支配を他国・他民族に及ぼすという信仰あるいは理論、これが過激なる国家主義あるいは超国家主義である。
・・・ポツダム宣言から公職追放令まで一貫しているのは「世界征服思想」である。これこそ彼らが日本から排除したかった「精神的武装解除」の最たるものであったと考えて自然である。

以下略・上記論文?主張によれば丸山眞男は教育勅語を誤読した上で、神道指令の単語を言い換えただけで、事実にもとずく定義ができていないと批判されるようです。
ついでに国家神道についての上記著者によれば以下の通りですから、これも関心のある方はお読みください。
http://www.zb.em-net.ne.jp/~pheasants/kokkas.htm国家神道研究

国家神道というものの正体が分からないままに今日に至っている。その国家神道とは、あくまで昭和20年12月15日のGHQ神道指令にある国家神道である。つまりGHQの定義による。
ポツダム宣言・神道指令を経て日本国憲法第20条そして第89条が制定された。なかでも神道指令は国家神道というものを定義して国家行政と神道を厳格に分離させようとしたものである。
しかしこの国家神道なるものの正体はあいまいであり、国家の神社行政の中には、つまり神社関係法令のなかには神社は非宗教とするものしか見当たらない。むろん教義もない。法令をあげると次のようなものである。
明治15年   神官教導職の兼補廃止 (神官は非宗教家、府県社以下は別途)
明治33年   神社局設置        (神社非宗教、神社のみ担当)
昭和15年   神祇院官制        (神祇院の設置、神官職督励)
教義がなく法令上も国家神道を特定できるものがない状態で、国家神道という言葉のみが様々に用いられている。
以下略

以上の点は措くとしても、南原繁氏は宗教的理想と政治的理想を区分けし、宗教的理想をプロテスタントに見ていたようです。
上記によれば、南原氏の基本思想はこのシリーズの関心・憲法で保障する平和論や人権論が国家存立を超越するか?「国家が滅びても守るべきテーゼがあるか」の関心にまともに関係する政治思想家であったことが分かります。
国家を超えた普遍的価値を主張する点で現在主流あるいは100%を占める憲法論(侵略されたらどうするかの問いに答えない非武装論や天賦人権論)の基礎を形成した人物になります。
※普遍的価値観共有といえば、安倍政権の価値観外交が想起されますが、もちろん彼も同じ日本社会の戦後空気の中で育っていますので、私(多分大多数の日本人が)同様に洗脳されて育っています。

思想の自由市場論4(中国の挑戦)

小川榮太郎氏の朝日新聞への挑戦は、ネット社会でなければ朝日新聞に有利な報道の洪水で小川氏の言い分が世間に知られないまま収束し、報道界で抹殺され彼の仕事がなくなっていたと思われます。
フリージャーナリストとすれば、大手の意見に楯突くのは元はと言えば死活問題でした。
大手メデイア4〜5社の寡占市場では、寡占意見に逆らえる自由な市場でなかったのです。
小川氏の行動を見ればいろんな意見が飛び交う・・文字通り思想の自由市場が始まったようです。
素人が参加するようになると慣れていない分当面マナー違反が増えるでしょうが、それは別に事案に応じて対処して行けば済むことで先ずは自由な市場が開かれていることが重要です。
ネット社会の今では彼の言い分がネットに出回っているのに、何故か言論市場支配者とも言うべき朝日の主張がネット上で見当たらないことを2月13日に書きました。
「自由市場」で根拠のない誹謗中傷に開かれた反論しているとかえって話題性が高まり拡散するのを嫌ったのでしょうか。
市場は「事実無根の批判」かどうかを知りたいのですが、訴訟は法的には公開の口頭弁論で行うのですが、実務運用は密室での弁論準備手続で進む・・・部外者は入れません・・のが普通ですので、詳細が公開されるのは準備手続きが終わってから口頭弁論に移りそこで法的には公開されますが、そこで一般人が期待する口頭弁論→演説をするのではなく、「準備手続きで提出済みの準備書面1〜5記載の通り陳述」するという数秒〜1分以内の発言で終わるのが普通です。
ですから、一般傍聴人は判決時に判決文を関係者からもらうまでお互いどういう主張をしてきたのか内容不明・・本来の意味の公開討論が先送りになります。
13日に省略して引用しませんでしたが、小川氏の主張では事件が終わるのは5年くらい先になると書いていた記憶ですが、その間に森カケ騒動が終わってしまえば、朝日の煽りが仮に事実無根であっても世論への影響力で政治が決まってしまった後では取り返しがつきません。
朝日新聞は「訴訟にしたので一々私的(訴訟外)反論の必要がない」と言うスタンスなのでしょうが、いかにも「臭いものにフタ式」の行動です。
一般言論市場で支持者が多い自信があれば、訴訟をするのとは別に言論市場で公開討論に応じればいいことでしょうが・・。.
13日に一部引用した小川氏の他の部分では裁判があるとそのつどその進行状況・朝日の具体的主張をネット公開すると書いていますので、これを実行すればこの戦略が通用しなくなりました。
逆に小川氏がこの公開約束を怠るようになれば、小川氏が追い込まれている・みっともないので公開したくないのかな?と外野は推測することになります。
言論の自由・思想の自由市場論を主張してきたアメリカの場合、中国のように首脳の意向に反すると言う単純基準で即時削除や報道規制できません。
中国では政府トップの意向が瞬時に変わっても構わないので・・昨日紹介したように末端が昨日までの基準で発表すると「今朝の意見は違うんだ」とお叱りを受けて大変です・・そこで上の意向を汲むために汲々とする・・社会が生まれます。
中国の皇帝・今で言えば習近平氏が昨日までの意見と違うことを言えば、昨日までの意見と矛盾しようがしまいが、官僚→人民は即時に従うしかない仕組みです。
また話題が逸れますが、韓国では気楽に日韓合意破棄する傾向があって「1人前の人間のすることではない」と思う日本人が多いと思いますが、中韓では古代から権力者になれば昨日までの命令・・「国民はその命令に従っている限り処罰されない」という意味で一種の契約ですが、これを根拠なく(国民の知らぬ間に)瞬時に変更できる社会を日本統治下に入るまで続けてきた経験によるものです。
国民間では昨日の約束は今日も有効でなければ社会生活がなりたたないでしょうが、権力者になれば無茶が通る社会だったことになります。
この伝統意識が最高権力者・大統領になると何でもできるかのような振る舞いをし国民もそれを今でも期待している社会です。
例えば文政権の政権公約・公務員を増やして失業問題を解決する、あるいは最低賃金引き上げ約束などに期待しますが、現実政治経済はそんな甘いものではないので選挙時の大きな期待がすぐにしぼむことの繰り返しでした。
歴代大統領就任後公約で煽った期待を実現できないことへの失望が、大統領退任後例外なく刑事責任追及に発展する・・極端に振れる原因です。
非常識な期待をする選挙民のレベルが問題ですが、千年単位で培った専制権力への憧れがあるからでしょう。
これが国際関係でも最高権力者は国際合意をいつでも破棄変更できるかのように国民が期待する体質につながります。
対等相手国が、韓国の新権力者の意向に迎合する余地がないので、(朴槿恵の慰安婦騒動拡大が期待を裏切って)ここでも国民期待を裏切ります。
欧米的学問ではこのような思いつき的政治を東洋的専制支配.家産官僚制と表現してきましたが、中国的ルールを世界に広げると昨秋の党大会で習近平が開き直り公言したのは「このやり方の方が良い」という開き直り主張でしょう。
表現の自由に関しては、この規制のために人海戦術に頼ってきたモグラ叩き方式でも、コンピューターの高度化で政府方針に反する・キーワード入力すれば、反政府傾向の発信を瞬時に検索できるソフトが発達してきたようです。
思想教育を欧米と違い露骨に厳しくやる上に、それプラスモグラ叩き方式との両面作戦が効果的・・優勢になったと言うのが、中国の主張でしょう。
現在の国際戦争は裸の武力を滅多に使えないので、戦争の前哨戦・・最前線が思想攻勢やサイバー空間の浸透競争に移っているのですが、中国はもともと言論の自由など認めていないので侵入防壁が鉄壁の備えなのに、自由主義国では(時代遅れの?)言論の自由原則のために自国への浸透に対する防護壁がないままとなっています。
これを経済面でいえば、先進国の解放主義に乗じて中国は自由奔放に欧米や日本に進出する一方で、自国への進出には合弁しか認めず、その合弁比率規制をもうけるのみならず、進出企業には高度知財提供を義務つけるなど一方的な関係になっていることに対する(先進国共通の怒りが蓄積してきた・)これをアメリカが端的に表明したのがトランプ氏のちゃぶ台返し的発言です。
トランプ氏は過激に国益重視と言いますが、要はこれまでの国際合意は守らない国相手に自分だけルールを守る仕組みだから公正なルールではないからゼロベースで見直したいということでしょう。
2月4日からのフェイクシリーズで書いてきたように、日本を含むアメリカ陣営ではフェイクか否かのまどろっこしい議論をしている内にアメリカ支配下の言論界は中国やロシアの工作員に乗っ取られてしまうかもしれません。
ところで憲法その他の学問は、何のためにあるでしょうか?
とりわけ憲法は「その国家」のあり方を決めるものであり、その方向性を決めるものです。
「その国家」とは憲法を制定した国家のことであり、外国・異民族のための制度ではありません。
そう言うと偏頗な「民族主義者」とか時代錯誤という批判が普通に想定されること自体が、わが国思想市場の異常性を示しています。

フェイクニュース6(拡散の原動力4)

日本のネット記事も、真面目に読めば根拠薄弱であることが分かるような「おもしろ」「誇大表示」記事らしいものが溢れていますが、政治記事では、面白いギャグだと笑ってばかりいられないとんでもない結果も引き起こします。
中にはクリントン批判のフェイクニュースに反応して店舗襲撃事件まで現実に起きたのが恐ろしいところです。
https://mainichi.jp/premier/business/articles/20170901/biz/00m/010

偽ニュースが起こした米国「ピザゲート事件」の“狂気”
2017年9月2日 清水憲司 / 毎日新聞北米総局特派員(ワシントン)
「私たちには自分を守れない人々を守る責務がある。いつの日か理解してほしい」。娘2人に宛てたビデオメッセージを撮影した後、男はワシントン市内のピザ店「コメット・ピンポン」に押し入り、ライフル銃を発砲した。
・・・幸いけが人はなかったが、フェイクニュースの拡散を象徴する「ピザゲート事件」として全米を驚かせた。
男は「ヒラリー・クリントン陣営が児童の人身売買に関わっている」というフェイクニュースを信じ込み、子供たちを助けるつもりだった。
・・・ピザゲート事件の発端は、暴露サイト「ウィキリークス」が流出させたクリントン陣営幹部のメールにあった「ピザ」の言葉だった。米メディアの分析によると、ネット掲示板では「チーズ・ピザ」が児童ポルノの隠語として使われており、匿名投稿者たちの妄想をかき立てた。オバマ前大統領の支持者が経営するピザ店「コメット・ピンポン」が次第にクローズアップされた。
無責任な連想ゲームは、繰り返されるうちに「ニュース」としてネット空間に拡散し、エドガー被告が聞いていたラジオ番組でも取り上げられた。3日間悩んだ末に、エドガー被告は自ら事実を突き止めようとピザ店に向かった。

伝言ゲームで知られるように、多くの人を介すれば内容が大幅に変わって行くことが多いのですが、この種冗談や過激な表現はこれに「尾ひれ」をつけた拡散流布自体でこれを見る人は「フェイクかな?」と思いながらも信じないまでも相応のマイナスイメージ刷り込みが出来上がることが多いのです。
デマでもそれを大手メデイアが大規模な話題にすること自体で洗脳効果があります。
トランプ氏は話題性のおかげでの選挙費用が少なく済んだと豪語していることとも符合しています。
https://wired.jp/2017/06/22/journalism-post-truth-era/

TEXT BY JASON TANZ
TRANSLATION BY TOMOAKI KANNO
WIRED(US)
この数年の間にソーシャルメディア、特にFacebookが主要なニュースソースとして出現したことで急加速した。
プロのメディアが世論を方向付ける力は衰え続け、いまではほとんど失われている。ソーシャルメディア以前は、新聞の編集者が、どのネタを発表するか、それをどこに載せるかの最終決定権をもっていた。
今日、その役割を手にしているのは読者である。編集者は記事を発表できるが、それが誰にもシェアされなければ、書かれなかったも同然となる。
読者が新たなパブリッシャーだとしたら、彼らにニュースをシェアさせる最善の方法は感情に訴えることだ。主によくない感情に。
『Human Communication Research』誌に最近掲載された論文によれば、Facebookで情報をシェアするかを決める「重要な媒介メカニズム」は怒りだという。特定の主義に偏り、強い怒りを感じている人ほど、政治のニュースをネット上でシェアする傾向にある。そして、そうやってシェアされる記事は、それを読む人にさらなる怒りを抱かせることになる。「マーケットシェアを獲得するにはラディカルになる必要がある」と、フェイスブックの元プロダクトマネジメント部長サム・レッシンは言う。「穏当では何も得られない」

政治でのフェイクが騒がれていますが、発信者がもともと特定思想に凝り固まっていない純粋儲け主義・遊び感覚でやっていることが、却って拡散効果を発揮しているように見えます。
多くの読者を呼び込めば 多くのスポンサーがついて儲けられるのが基本ですから、彼らは内容の善悪など気にしない・絵空事でも、やらせ、奇抜・過激であればある程効果がある・・何でも良いのが基本です。
フェイクのレッテルを貼られるリスクを恐れない・・単に金儲けになるかどうか・・如何にして注目を惹きつけるかだけに特化する人には伝播性の競争では叶いません。
https://mainichi.jp/articles/20171114/k00/00m/040/021000c

フェイクニュース
作られ方 ブログ管理人が内幕語る
神奈川県座間市で9人の遺体が見つかった事件で、話題性の高い情報を載せているトレンドブログに「父親も共犯?」など事実無根の見出しや投稿を載せた管理人が、匿名を条件に毎日新聞の取材に応じた。
動機を「収益目的と世間のニュースやその裏を追いたい気持ち」と説明。ブログは個人で運営し、収入は多い月で10万円台後半になるという。
閲覧増やすため見出し過激に
トレンドブログは、事件や芸能人のスキャンダルなど注目の話題を取り上げ、クリック数などに応じて報酬が支払われるネット広告(アフィリエイト広告)を収益源とすることが多い。個人運営だけでなく記者を集めて組織的に運営するものもある。

いわゆる大災害時などに起き易い流言蜚語は出所不明の庶民の憶測発信が元ですが、今は日常的なネット発信が容易になった上に金儲けの手段になったこともあって、伝播力が半端でなくなったので量から質に変わったとみるべきべきか?の問題です。
許可制にしてルール整備するようにしているビットコインや民泊同様にして行く必要があるかの問題です。
フェイクの直接取り締まりは、事実認定の難しさの他に憲法の表現の自由の保護があって難しいですが、思いつき的でちょっと乱暴な意見ですが、(その道の専門家による緻密な論議が必要ですが)業法化してしまえれば、違反行為に対する何段階かの行政処分があって最終的には許可取り消し→無許可営業の場合は業法違反による刑事処罰法制化が可能になるので、大規模なフェイク発信だけでも防げるでしょう。
許可業種になり且つ全国展開的大手になると一定期間の(刑事処分まで行かなくくとも)業務停止処分だけでも業績に大規模な影響が出るので、内部チェック規制が厳しくなりフェイクの暴走を防げます。
例えば個人が空き家を利用している民泊の場合、なんらかの違反をしていて1〜2周間業務停止しても大した影響がありませんが、全国展開している仲介サイトが業務停止処分を受けるとその間従業員等の固定コスト負担があり、且つ信用毀損による大規模ダメージを受けます。
農産物の産地偽装や無農薬表示違反があった場合、その農家だけの問題ではなく、これを取り扱っている大手スーパーの方が、その何千倍もの損害を受けます。
農産物の産地偽装や無農薬表示違反があった場合、その農家だけの問題ではなく、これを取り扱っている大手スーパーの方が、その何千倍?もの損害を受けます。
この場合、大手スーパーが「当社は騙された被害者です」と言い張って済ませられないので必死になって再発防止に務めるが普通です。

フェイクニュース4(拡散の原動力2)

昨日紹介した高裁判決では、名誉毀損等の具体的被害がない限り表現の自由は(最大限)尊重されるべき」という思想も出ています。
表現についての批判は、思想の市場淘汰に委ねるべきと言い続けてきた憲法学者らの意見が背景にあるのでしょう。
支配思想に押しつぶされていた少数意見もネットの発達で声を上げられるようになっただけでも良いことですが、特定政治思想・正義感に偏らない・どちらのグループでも良い・小遣い稼ぎになる程度で満足するもっとフリーな人が参加し始めたのが、SNS以降の世界です。
情報発信参加が容易・大衆参加型になった結果、初めて発信手段を入手した大衆は、特定立場攻撃の悪意がない分警戒心が低く気楽に・野放図に?・注意を引くために過激な創作をする傾向があります。
少年が面白半分に調子に乗ってやりすぎて大事件が起きることがあります。
発信自由・大衆化すると玉石混交状態になりますが、これに便乗・紛れて敵対国が相手国世論誘導に利用することが容易になって来ます・これがロシアによる選挙介入疑惑です。
いわば戦国時代の足軽が日当次第でどちらの武将の下でも働くし、現在世界の傭兵集団もそのような特性がありますが、普通の市民が小遣い銭欲しさだけで、リベラルだろうと極右だろうとどうでもいい・このような動きに気楽に参加するようになった社会になったということでしょう。
何でも気楽に批判できるようになると今までは大手メデイアから不公平な報道をされてきたと不満を持っている反リベラリスト、反グローバル系の方が、SNS利用による自前の発信力を身につけた勢いで、既成勢力に反対する過激な反感フェイクに乗り安い面があるでしょう。
この結果(どちらの陣営でも構わない)目を引くような過激発信したら、トランプ系の方が反応が良くてこれの転送が拡散した原因です。
以下の記事自体がフェイクかどうかどうか不明ですが、以下の通り無責任な情報拡散が続いているようです。
https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2017/11/1127.html

2017年11月27日(月)
アジアで広がるフェイクニュース
インドネシア・北スマトラ島にある人口15万人の街、タンジュンバライ。
人口の8割はイスラム教徒です。
モスクから流れるのは、イスラム教の礼拝の呼びかけを知らせる「アザーン」。
去年(2016年)7月、モスクの前に住む仏教徒の女性が、この音が大きいとして、音量を下げるようモスクに要求しました。
ところがSNS上には、「仏教徒がイスラム教徒の祈る権利自体を奪おうとしている」といった、女性の要求の内容をねじ曲げた投稿が広がったのです。
投稿を目にした男性です。
SNSの投稿を見た人
「仏教徒がアザーン(礼拝の呼びかけ)を禁じた。
(仏教徒を)あざける言葉とともに、“火をつけろ”と書いてありました。」
拡散する投稿に扇動された群衆は、ついには仏教寺院を襲い始めました。
その結果、合わせて10の寺が全焼。
この事件は、同じ街に住む人たちの心に今も影を落としています。
タイ SNSで拡散 深刻な経済被害も
リポート:藤下超総局長(アジア総局)
これは、今年(2017年)5月から6月にかけて、タイで出回った動画です。
「サンドイッチの具に、豚肉の代わりに綿が使われている」という内容ですが、全くの作り話です。
以下省略

フェイスブックがファクトチェックをやめて読者の判定に任せる方向に方向転換したことを2月4日に紹介しました。
2月4日には(過激なフェイクであればあるほど、「共感」が増えるので)共感の数量で決めるのでは意味がないのではないか?との私の意見を書きましたが、表現の自由を守るためには思想の自由市場で競争させろという古典的論理から言えば、フェイスブックが上から目線でチェックするよりは、自由競争に委ねる一見識と言うかそれしかないでしょう。
そもそも事実・ファクトとは何かですが、明日以降に書きますが、現地レポーターが現地で一部経験した地元意見を紹介する場合を見れば、レポーターが経験したのは事実としても、その地元の傾向のように言う点で誤解を招く行為です。
政治問題に関してはその上に(数十年後に判明してもすぐに明らかでない)機密事項が多くて憶測が中心になっている面もあり政治意見との区別をつけにくい・それ自体よくわかっていない上に、脚色していれば創作・表現の自由と言うのですから基準がはっきりしないと思うのは無理もないでしょう。
素人的には、メデイアの好む方向へ脚色する方がごまかしが巧妙・・「世論誘導の弊害があるので許されない」と思うのが普通ではないでしょうか・・?
品格を重んじる大手メデイアの場合、少なくとも「取材相手の言った事実」とこれをどのように解釈するかの自社意見とをはっきり区別して表示することから率先して欲しいと思います。
あるいは発言部分をカットした部分・マイナス情報も明らかにすべきでしょう。
国会中継や政治家発言の切り取り、つぎはぎ編集の問題が指摘されていますが、メデイアに政治家の発言に対する解釈・思想表現の自由があるとしても、事実報道と自社解釈を区別すべきです。
大手メデイアは報道手段独占を良いことにして、これまで編集権があるということで事実上自社意見に沿う方向に脚色して世論を誘導していた点を改める必要があります。
フェイクが社会問題になっているのは多くの人が、自分の好む傾向の記事のみを見たいし、信じたい傾向があるという大前提があります。
上記紹介したインドネシアの仏教寺院事件を見ると元々の相互不信が下地となって、フェイクニュースが簡単に受け入れられる下地になっていたように見えます。
情報がいっぱいあるように見えて、大手メデイアの一定立場に偏った?情報垂れ流しに対する不満等が強いと自分好みの情報しか目に入らないので、一定方向の情報のみ見るようになり、さらにどぎつい?過激表現に注目が行きやすくなる傾向・・結果的にそれぞれの傾向別に狭い情報の深堀り?と言う名の過激化に進展して行きます。
結果的に中庸のバランス感覚がなくなり、社会分断を煽る情報が氾濫し結果的に社会分断の危機感が生じてきます。
熱烈共感者が(フェイクっぽいと知りながら)情報拡散するとそれを別の共感者がさらに拡散することの繰り返しであたかも多数が支持しているかのような現象を生じさせてしまう・これを大手メデイアがニュースとして大々的に取り上げる結果、ネットを見ない一般人もそれを信じてしまう傾向が論じられています。
トランプ氏のツイッター発信が知られていますが、多くの人は(ローマ法王の支持が)メデイアで取り上げられたことによって、情報を入手していたとする調査結果が報告されています。
大手メデイアのニュースで「根拠のないデマ情報が話題になっている」と大々的報道があると「根拠がない」という注意の方を忘れてしまい、そういうニュースがあったな・・というおぼろげな記憶が残る・・印象効果が残っていきます。

自衛力4→稼働率1

ただし、これまでの引用記事は2015〜16年前後の情勢やデータですが、国際情勢は日々新たですから、国際孤立の深まっているロシアが大幅譲歩して17年に最新式戦闘機輸出+エンジン輸出「模倣して作っても構わない」と言わんかのように?に応じたようです。
これによって少しは(また模造する対象品レベルが上がったので?)中国の戦闘機技術がアップするでしょう。
http://www.ssri-j.com/SSRC/abe/abe-338-20170928.pdf

中国がロシアから新型117Sエンジンを大量購入
漢和防務評論20170829(抄訳)阿部信行
(訳者コメント)
「SU-35の対中輸出は、ロシアにとって大幅譲歩であったようです。
中国はロシアの足元を見て、有利に交渉を進めたようです。特に新型117Sエンジンを購入機数24機に見合った数よりも多く購入し、開発中のJ-20に搭載し試験飛行を行おうとしている、とKDRは見ています。
ロシアは、インド市場が縮小したため、どうしても中国市場を確保しておきたいのでしょうか。
ロシアは、現在対米、対欧州関係が不安定で、政治外交面でも中国を引きつけておきたいはずです。」

ウクライナ紛争による制裁の打撃とロシアの(資源下落による)経済苦境の複合の結果(その上インドからも購入拒否を受けている結果)ヤムなく中国に対し技術の模倣されるのを承知でしかもおまけのエンジンまで付けて売るしかなくなったので、(これまで冷戦期の「最新型?」の模造しかできなかった)中国軍機の近代化が進む可能性があります。

横道に逸れますが、プーチンはウクライナ侵攻で国威発揚のつもりですが、その結果国際孤立してしまい、本来国防上最も警戒すべき中国に擦り寄るしかなくなっている現実が見えます。
数年前に開催された中国共産党の(日本と戦っていないのに)対日勝利70周年記念行事には主要国首脳が欠席する中、半日運動中の韓国パク大統領と並んで主要国首脳で唯一参加させられた挙句に、式典では古代中国王朝の式典列席する属国的な侮辱的立ち位置でした。
そのような挙げ句の果てに将来自国の脅威になるべき武器輸出まで飲まされてしまっている・・中国のいいなりにならざる得なくなっている現状が見えます。
将来何の脅威にもならない弱いウクライナを侵略し、重要な脅威になる中国との関係で国家の威信を失う行為・・これがプーチンが国内で誇っている国威発揚の現実です。
ところで、これまで書いてきた通り戦力には戦闘機の数だけではなく滞空時間の関係で同じ飛行機が1日に何回出撃できるかが重要ですが、戦闘機等の稼働率の方が実質的な重要性があります。
一般に言われる稼働率が9割の自衛隊と2割前後の中国軍とでは稼働率の差によって、実働戦力が大きく違ってきます。
戦闘機等の稼働率は軍機密中の機密でしょうが、実質的に見れば部品供給能力の技術格差になります。
一般的にソ連時代の稼働率は10%前後であり、最新型(といっても冷戦時代に開発したのものですが・・)冷戦終期のSu-27では20%前後と言われています。
昨日コラム最後の行に純正部品と模造部品の品質の違いを書きましたが、中露の場合稼働率を上げられないのは、本体製造技術自体が米国の最先端技術の剽窃・・スパイ活動によっている点・自前技術ではない点に稼働率が低迷する原因があります。
中国の多くは1950年代のお古であり、実戦で使えるのは、昨日紹介した米軍調査によるSu-27とその改良版しかありませんが、航空技術力ではまだロシア以下とされているのは少数を買って後はそれを分解してはその模造品を作っているに過ぎない以上当然です。
ロシアはその模造生産を怒っているので、(日本は二度と新幹線を輸出しないと怒っているのと同じです)だからこそ次の最新型戦闘機の供給を中国が求めても断られていたので、ロシア軍以上の稼働率は想定できないという見方が普通です。
そこで、中国全土で実働できる中国戦闘機は48機しかない・だから漁船の侵入程度でお茶を濁しているという意見が普通に出回っているのです。
日本のアメリカ製戦闘機等の整備技術の高さには定評がありますが、それは日本が最先端戦闘機を作れないからアメリカ製を買っている・模倣しているのではなく、米軍占領政策の結果、日本の高度な技術力を恐れて日本の航空機製造を禁止して強制的に買わされてきた・・航空機製造禁止によって技術者が新幹線製造に結集したことで知られている通り・・ことに原因があります。
本来できるのに敗戦の結果、作らせて貰えないだけですから、たまたま部品しか作らせて貰えなくとも部品を作れば本国アメリカよりも精巧に作れるのは当たり前です。
上記の結果、車に限らず日本製品全般に故障率の低さが国際定評ですが、整備能力は産業スパイが技術情報を盗んできても身につくものではありません。
ソ連がロケットや戦闘機を作れても車や家電など民生品を作れないのは、家電製品までスパイしていてはコスト割れなのでスパイに頼れないからだと「ロシアの台頭と資源(民族文化の有無)2」May 23, 2017,前後書いたことがありますが、ソ連は自分で作ったはずの戦闘機なのに稼働率が20%に留まっているのは、自前技術ではなかったからでしょう。
日米がともに稼働率90%の高水準を持っているのは、日本の整備技術の高さによるところが大きいと思われます。
この信頼があってこそ横須賀が米軍空母の母港になっているし、沖縄その他の基地を米軍利用価値があるのです。
ちなみに韓国の場合どうなっているのでしょうか?
http://www.recordchina.co.jp/b194476-s0-c10.html

2017年10月20日、韓国・東亜日報は、韓国空軍のF−15K戦闘機が修理部品の不足で飛行不能が頻発していることが分かった。
国会国防委員会所属の金学容(キム・ハクヨン)議員(自由韓国党)が空軍本部から提出を受けた資料によると、F−15Kの「修理部品不足に起因する飛行不能(G−NORS)」事例の発生件数が15年の50件から今年上半期には60件に急増した。同期間の飛行不能時間も7.9日から16.8日に増加した。
金議員は「空軍が部品を使い回しする方法で運用しているため、部品を取られた戦闘機が有事の際出撃が不可能」と指摘した。
F―15Kは朝鮮半島有事の際、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の地下執務室を精密打撃する「タウルス」ミサイルを装備する機種で、1機当たりの価格が1000億(約100億円)。全60機が配備されている。

だからといって稼働率が何割と安易に断定できるものではありませんが・・・部品が足りないというのでは危機的です。
日本の場合いざという時にエンジン不調で飛べないと困るので、いつも戦闘機1機あたり予備のエンジンを2〜3台用意しているのが普通と言われています。
もちろんその他部品も同様でしょう。
それでも定期改修あるは能力増強(新型ミサイルに搭載切り替など)などで大改修中ではすぐに飛べないので、平均稼働率が90%程度に落ちると言われています。
航空母艦の場合には一旦ドック入りすると半年間は就役できないと言われていますので、常時就役するためには2空母打撃群以上が必須と言われるように整備能力は戦力の重要指針です。
(これが仮に3ヶ月〜1ヶ月〜2週間と短縮していければ実働戦力の大幅アップになりますから、整備期間が重要です。)

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC