アメリカンファーストとは?4(取引外交の限界1)

アメリカの通商政策は,クリントン政権〜ブッシュ〜オバマ政権と連続した保護主義強化の流れ(アメリカ経済の実際的落ち込みを背景にする)を受けているものであって、トランプ氏はこれを(手順を践まずに)乱暴・品なく言い表しているだけの違いです。
欧米の人権思想・自由平等主義と言っても、生産方式の近代化と関係していることを1月21日に書きましたが,欧米の自由平等の人権尊重のかけ声は,産業革命で先行した優位性を最大限発揮するための主張に過ぎなかったコトがアメリカの身勝手な保護主義の歴史を見ても明らかです。
欧米がアジア・アフリカ諸国より競争力があるときには自由競争・能力主義が正しいと言って,ドンドン侵略し、植民地支配する名分に人権を使っていただけのことであり、自分が競争に負け始めると相手国を不公正障壁のある国となじって高関税をかけるコトの繰り返しをしてきました。
自分が弱くなると,品質競争で負けているかどうかではなく結果として国際収支黒字国を許さない・・結果的に自国の既成国力の相対的低下防止目的ですから,現状固定の主張に外なりません。
自由競争とは実力に応じて地位も上下する前提です。
スポーツ選手で言えば実力の上下に応じてランキングも上下する、企業も株式市場で日々評価が上下する仕組みですが,結果重視のアメリカ基準によれば企業価値の上がっている企業は不公正なことをしていると認定し課徴金をとることになりますし、練習努力の結果前年より世界ランキングの上がったスポーツ選手は陰で不公正なことしていると認定し処罰してランクアップを認めない社会になります。
アメリカの言い分は自分の地位が下がるのは許せない・相手に輸出自主規制(あるいは相手国のいらないものをもっと多くの輸入)を要求する=相手選手に「負けろ」と要求する八百長試合の強制です。
昨日紹介した論文によると国力低下防止のために競争力向上を目指す・練習に励むのではなく、腕力で阻止する・強権発動主義を既に1970年頃から始めていたのです。
国際競争力維持強化には、このシリーズで書いている民度を上げるのが正攻法ですが、アメリカは戦前大恐慌時から国際競争を切り抜けるために民度を上げる方法については考えもしないで腕力で解決しようとする傾向が今も変わっていません。
逆に新興国台頭に対して、低レベル移民を多く入れて,低賃金競争をして来たから余計苦しくなって来たのです。
民度を上げることに努力しても「アメリカの民度では無理」と観念しているからでしょうか?
今では,アメリカの突出した強みは軍事力と巨大消費市場のみ,・・まさに中国のよって立つ足場と同じです。
この力を利用して市場に参入したいならば,かなり無茶な要求でも聞くしかないだろうと言う立場を前提に何かとイチャモンをつけては金を巻き上げる・・中国同様の恫喝外交がアメリカの基本でした。
これまでは、一応紳士のフリをして「衣の下に鎧を隠していた」(大統領は議会の突き上げを口実に自主規制を要求し,ピープルを煽って日本車をハンマーでぶちこわすテレビ報道をする・・口実をつけて巨額課徴金を凸など)のですが,トランプ氏になると格好つけていると間に合わないほど追いつめられて来た・・アメリカ経済に余裕がなくなったので,トランプ氏は,モロにダンビラを振り回し始めた印象です。
メキシコ国境に高い塀を作るのはアメリカの勝手ですが,その費用を持てと言うのは行き過ぎ・理不尽な強者の横暴です。
1月22日にアメリカは世界の警察官どころか,中国やロシア、トルコなどの地域大国の横暴をアメリカもやりたくなって来た・・仲間入りしたい本音がトランプ旋風の基礎だと書いて来たとおりの展開になって来ました。
アラブの石油でもスエズ運河でも,そこで騒げば世界は放置出来ない・・一時的には大きな効果がありますが,そう言うことをすれば長期の目で見た信用がなくなる点が大きなマイナスです。
だからアラブ石油連盟も石油禁輸の劇薬をその後1回も行使できていません。
中国がレアアースの禁輸をしたり反日暴動を仕組んだことは,そのトキには,溜飲が下がった気がしたでしょうが、その分大きなトラウマになって残って行く筈です。
日ソ不可侵条約違反の侵攻→シベリア連行も日本人は決して口に出しませんが,こういうことやる国と言う日本人のトラウマは数百年単位で消し去ることは不可能です。
ソ連がこれによって得た利益・・樺太・千島占領+奴隷労働強制の利益と数百年単位以上に及ぶ日本人のトラウマとどちらが得かの計算がたたなかったのです。
このマイナスイメージを日本人の心から消し去るには,得た利益の何百倍の努力が必要になる筈です。
ヤクザも1回大声を出して威張れば、その後普通の付き合いをして貰えなくなります。
アメリカは競争力低下に合わせて徐々に地位低下して行くのを素直に受入れるべきですが,地位低下を阻止するために強引なエゴの主張を続けていても、(すぐにはどこのクニもアメリカ打倒とは言えませんが,)その分着実にアメリカの威厳が損なわれて行くのに気が付かないのです。
先進国労働者が職を失って行く現状は,日本の歴史で振り返ると社会安定を重視する徳川政権による永代売買禁止令によって,明治までは農地売買が厳しく禁止されていた(無産者輩出を厳しく制限していたことになります)ことを紹介して来ましたが、明治政府による農地流動化政策によって,独立自営農民・中間層の多くが小作人や都市労働者に没落して行ったときと現在の状況が似ています。
この辺の流れについては,04/10/04「イギリスの囲い込みと我が国の自作農崩壊との相違・農村の窮乏化政策」08/26/09「土地売買の自由化1(永代売買禁止令廃止)」その他のシリーズで紹介して来ました。
明治維新の頃には、都市で新たな産業が勃興していて農地を失って都会に出た人も適応能力のある人は生活に困らなかったので,秩父困民党事件など地元に残った農民だけの散発的騒動で終わり、没落士族中心に各地の不平士族の乱になりましたが,それも線香花火で終わりました。
西欧のラッダイト運動がすぐに落ち着いたのと同じです。
今の先進国は新興国による低賃金競争に曝されて,従来どおり多くの中間労働者を抱え込む余力がなくなりつつあります。
知財等の発達があっても大規模工場縮小後の労働者の受け皿になれない・・力不足ですから、単純低賃金競争に入って行くと失業者が増える一方・・新しい受け皿産業が充分に育っていません。
根本的解決には日本のように個々人が工夫して,良い物を少量生産して行く社会+マルチ技能工を養成して行くしかないでしょう。
この努力を怠って廻りを強圧で押しきろうとするのですから、赤ちゃんが駄々をこねて一時的に自分の意志を通そうとているようなことでは文字どおり一時的線香花火に終わり将来性がありません。
中台関係を例にすれば,トランプ氏が中国を激しくパッシングしてくれてもそれは飽くまでも見返りを求める取引外交である以上、これに喜んで舞い上がるのは危険となります。
パッシングが強ければ強いほどパッシングされる国は交渉に応じるしかなくなると言うより,トランプが何を求めてパッシングして来たのかがすぐに分るので、正面抵抗するよりはトランプ氏の気に入る内容で妥結する方向に動くのが普通です。
過去数十年間ス−パー301条の脅しで世界中のクニが WTO違反だと言いながらも戦うことが出来ず事実上屈服して来た結果(1月26日にウイキペデイアの記事で紹介しました)を見れば明らかです。

新興国台頭と日本の進むべき道4

日本の場合には支配・被支配融合の同胞社会ですから「移民を入れろ,高賃金労働者を解雇して移民に入れ変えれば良い」と欧米カブレのエコノミストに言われても、おいそれとはこれに乗れません。
飽くまで国民のレベルアップで新時代適応を図るしかありません。
この一例が農家の踏ん張りで量よりもより、うまいもの・高級化にあちこちで成功し始めました。
欧米流に早く切り替えたい単細胞系から見れば(韓国にも負けている・・)じれったいクニです。
「介護人材不足だから移民を入れろ」と言う意見に対する私の元々の反対の理由は・・同胞のためのクニ・社会であって、外国人や資本家のための社会ではない点にあります。
介護士不足なら人件費を上げればいくらでも人材が埋まるのに、他産業より人件費を安くしているから人が集まらないだけです。
不足していれば需給原理で人件費が上がる筈なのに、何故人件費が上がらないか→実質上政府管理給与にしているからです。
直接管理していませんが、保険点数を低く抑えているから業者が賃金を安くしないと採算が取れない・給与が安いか介護士になる人が増えないと言う当たり前の原理です。
介護等人手不足を原因と言って介護だけでも移民を入れようとするのは,実は移民導入突破口にしたい勢力の策謀です。
介護や保育士などの人件費を安く押さえておけば、人が集まらなくなるのはた当たり前・・人手不足で国民が困るように仕向けておいて,「この分野だけでも移民を入れましょう」と言う戦略です。
民進党が「保育所落ちた日本死ね」と独りよがりで悦に入っていますが,保育士が必要と言うならば,解決策を発表して与党と優劣を競うのが政党の使命であって,標語だけで安心しているのでは政党とは言えません。
介護士不足の解決には,介護分野の人件費を上げるのが王道ですが,これを政権政党がしない・・保険点数引き揚げをしないのはこれ以上保険赤字を拡大出来ない外に,賃金を上げるとその分野に人手をとられる→これに引っ張られて一般労働者の賃金も上がるのが怖い・・要はアメリカ並みに移民と競争させて工場労働者などを安く使おうとする魂胆があるからです。
保険に頼らずに自由に委ねる・・人件費を自由化すれば国民が本当に必要としている分野に人が集まります。
政府管理しているから国民意識が不明になっているのであって,経済原理貫徹が重要です。
民進党がその主張をしないのは,もしかして国民意識がそこまで行かない・・介護に金を出したくない・居酒屋で楽しむ方が良いと言う人が多いのを知っているから,民意より自分たちの方が進んでいる前衛思想で「(保険赤字など無視して)政府が金を出せ」と言うのが野党の意見かも知れません。
介護や保育士などの人件費を市場の自由競争に委ねると、もしも本当に社会がその分野を必要としているならば,その人件費がアップして行き,社会が相対不要としている分野の人件費に勝つ筈です。
ただしこれでは保険制度が破綻すると言うならば,保険外利用の活性化を目指す方向・・保険外事業分野を増やせば,保険点数に関係なく契約で(ペイする単価を)決められます。
有料老人ホームでは高額料金をとる以上は,これに比例して有能な人材(平均的介護士や看護師より人柄が優しくしかも有能な人)が必要・・保険施設よりも高額賃金で有能人材の引き抜きが行なわれます。
そうなると高額ホームで働く目的の介護士候補者が増えます・・仮に介護施設の3分1が中級〜高級優良ホームになれば3人に一人が保険点数で決まるより高給取りになれるならば,同数の新たな応募者が増える計算ですが,保険利用しないのですから保険赤字にはなりません。
むしろ保険赤字が減ると思われます。
すなわち金持ち・中間層も皆保険介護しか利用しない社会は,言わば大金持ち・中間層も私有を許されない・・みんな県営・市営住宅利用を強制されているような社会(県営住宅赤字に悩まされている社会)です。
金持ちは自分で家を立てれば良いように,(今は中間層どころか,普通の現場系も民間マンション購入層になっている現在の方が国民が幸せです)医療も介護も金持ちは自分で好みの介護や医療を受けられるようにすれば、保険利用者が激減し保険財政が健全化し保険介護の需要が減るので,低賃金の介護士は,今のように多くいりません。
皆保険制度そのままでも,保険外医療や介護の利用をし易くし,セーフテイーネットとして貧困者も保険で医療を受けられるように意識改革すれば良いだけです。
教育機関も公立しかなければ,学校が足りないと言う騒ぎが何十年も前から起きていたと思いますが・・私立があった方が選択肢があって良いのではないでしょうか?
以上はちょっとしたと思いつきですから別の角度から検討すれば,矛盾があるかも知れませんが,・・別途正面から書くときがあると思いますが,余裕者は自費治療・介護等に行きたくなるように誘導して,貧困者のみの利用にして行けば,保険赤字はなくなりひいて人材不足の解消にも役立つでしょう。 
介護や保育所問題は移民を入れなくともいろんな工夫の余地があると思います。
日本は(国民を入れ替えても貿易黒字が良い)日本第一ではなく、同胞第一の社会ですからいくら欧米かぶれ・・あるいは回し者?が頑張っても,私一人の反対によるのではなく,移民が入り込むのは飽くまで例外に留まる筈です。
我が国では結果的に労働者を移民と入れ替えるようなことは出来ないので,民度(日本は社内教育の社会ですから社員レベル)を上げる困難な工夫・・正攻法から逃げることは出来ません。
アメリカは元々の国民と新参の区別のない・・50歩100歩の違いしかない社会ですから,安直な人民の入れ替え工夫・・しかも有能人材ではなく安い人材との入れ替え戦術をやって来たコトになります。
飲食店で言えば味やサービスの工夫努力が面倒なので値下げ競争に入り、そのためには仕入れを安いところに切り替え,従業員も安い非正規に切り替えるようなやり方です。
企業の場合辞めて貰えば従業員ではなくなりますが、ピープルは国内にとどまっているのが普通ですから、非正規に転落した元中間層の不満が溜まったままです。
韓国の場合売春婦その他になって国外脱出熱が盛んです・・他所へ行ってくれれば,養わねばならない人がへるし、不満分子が出て行ってくれた方が企業もクニでも楽ですから、中国では世界中に華僑がいることでも分るように国外脱出を昔から奨励?して来ましたし,民主化後の韓国も言わば奨励しているように見えます。
この数十年で見れば両国のアメリカへの移民数増加が半端ではありません。
以下の記事は根拠が全く分りませんが、大方の傾向は以下のとおりです。http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1456266929
「このように現在も韓国からの移住は年間2万人~3万人で継続しています。現在は160万人前後でしょう。」
「中国系で360万人といわれます。香港や台湾からの移民先として伝統的にもっとも人気がありましたが、過去30年は大陸からの移民が増加しています。大陸からだけでも年間平均8万人前後が移住しています。」
「日本人も年間5000人くらいで移住しています。多くがアメリカ人と婚姻した日本人女性であり、そのほか若干の熟練技能者として永住権を取得した人達です。アメリカは移民送出の少ない国に移民多様化推進のためのDiversity Program(移民多様化計画)制度を設け抽選で当たれば永住権が申請できる特異な制度を設けており日本は年間移住者数が少ない為権利を有しています。」
上記記事では,その人の意見ですが生活水準格差が移民の原動力であるように書かれています。
韓国は人口が約5000万人しかなくて日本の人口1億2〜3000万の5〜6倍の移民を出しているのですから,失業統計や一人当たり所得統計に現れない原動力の強さがよく分るでしょう。
(GDPを人口で割っても意味がない・・財閥等資本所得の大きい国では個々人への分配は極端に少なくなります・・アメリカで4000万とも言われるフードスタンプ受給者が出て来る背景です) 
日本人の移民は偶然?間違って結婚した女性中心ですから,生活苦・脱出願望の人は皆無に近いと思われます。

民度4(朝鮮族2・観念論の弊1)

古代日本は律令制その他多くの制度を導入しながら,思想の均一化をもたらす「科挙制」を頭から採用しなかったのは,やおよろず・多様な意見を尊重し硬直した主張を嫌う民族性→科挙制度の危険な本質を当時から見抜いた先人の優れた智恵です。
日本は徳川家が佛教に代わる学問として儒学を重視したのは,佛教経由の学問では近世社会に適合出来なくなっていたからですが,(04/13/08「佛教から儒教へ1」以下に連載しましたが,儒学も赤穂浪士の処断に当たって限界を露呈したことも紹介しました)家宣父子の中継ぎを経た吉宗が儒学者新井白石を失脚させて以降,自由な学問が花開いたのは古代に科挙制度を採用しなかった賢明な選択に負うところが大きいと思われます。
律令制を取り入れても「(事実上骨抜きにしましたが)、科挙制を当初から採用しなかった点については2005年・・11/26/05「日本に科挙が導入されなかった理由1(地方分権社会1)」その他でいろんな角度から書いています。
ソモソモ,李氏朝鮮の長い統治期間中にこれと言った学問業績の有無については(寡聞にして)聞きませんが,その原因は朱子学採用以降、明朝、清朝及びこれを宗主国とする李氏朝鮮では,明清朝以上にその解釈学に特化してしまったことによると思われます。
解釈ばかりしていると学問研究とは言えない・・思考の範囲が既存権威内での応用に限定され,幅広く思考を巡らせるべき知能も発達しません・・。
まして自民族発祥思想ではなく,宗主国の明や清朝でどのような解釈が主流か?の早耳を競う程度が重視されるようになるとなおさらです。
私の司法試験受験勉強当時には,「今ドイツではこのような考え方が新しい流れだ」とか一方で戦後はアメリカ支配でしたから「アメリカの判例動向がどうの」とか・・アメリカに留学して来たばかりの新進気鋭?学者の意見が注目を集めていました。
憲法や刑事証拠法など人権保障関連は米国発の法理でしたから,米国の判例の動きや解釈論などが幅を利かしますが、ワイマール憲法同様に日本国憲法が理想的理念で作られたことが欠点です。
良く知られているように日本語通訳だった20代女性が抜擢されてイキナリ短期間に空想論で作ったことが,大きな原因になっていると思われます。
法や憲法は政治利害を前提にした妥協で出来上がって行く結果、実態に応じたものに練り上げられますが(綱吉の生類憐みの令は独裁権力の欠点が出た・社会生活者との妥協をしなかった点が問題でした),社会経験もない一介の通訳がイキナリ憲法草案を密室で書き上げた・占領軍独裁制の欠陥がモロに出たもので,ほんとに「交戦権がない」と言うことで良いのかなど無理・・稚拙過ぎる条文・・これが未だに平和憲法論争の原因になっているのです。
ソモソモアメリカ憲法は(判例法主義の伝統を受けて)修正第何条と言う表現が有名なようにしょっ中書き直されて来たもので、運用して都合が悪ければ修正して行く仕組みで「不磨の大典」ではありません。
素人が思いつき的に「戦争のない社会が良いなあ!と言う程度で現実国際社会との折り合いなど考えずに書いた条文・・いつでも修正出来る前提で気楽に書いた条文をその背景を考えずに絶対修正出来ない「平和主義」の理念を守れなどと言う壮大な観念論の柱・金科玉条にしてしまうのは一種のすり替え・詐欺みたいな主張です。
以下は諸外国の憲法改正の回数に関する国会図書館による調査研究からです。
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8624126_po_0824.pdf?contentNo=1第824号 国立国会図書館
諸外国における戦後の憲法改正【第4版】調査と情報―ISSUE BRIEF― NUMBER 824(2014. 4.24.)
国立国会図書館 調査及び立法考査局憲法課(山岡やまおか規雄のりお・元尾もとお一りゅういち)
●1945年の第二次世界大戦終結から2014年3月に至るまで、アメリカは6回、カナダは1867年憲法法が17回、1982年憲法法が2回、フランスは27回(新憲法制定を含む。)、ドイツは59回、イタリアは15回、オーストラリアは5回、中国は9回(新憲法制定を含む。)、韓国は9回(新憲法制定を含む。)の憲法改正をそれぞれ行った。」
平和憲法その他の信奉者は,アメリカにもその実例がないのでアメリカの判例(解釈)を錦の御旗として利用出来ないので,「近代法の法理を守れ」「憲法違反」などどこの国にも実際にない空理空論・法理を主張するしかない状態のように見えます。
思想家ではなく法律家である以上は、観念的反対ではなく,諸外国・・共謀罪や秘密保護法や憲法停止の非常事態制度(・・フランスが昨年のテロ以来執行中)のある国で、どう言う人権侵害事件が起きているかの例を出して議論すべきだとこのコラムで繰り返し書いていますが,そのような事例を出す気配がなく相変わらず抽象的反対を繰り替えしているだけです。
スパイ防止関連法や個人識別情報制度を人権侵害と騒いでいる先進国がないので,「近代法の法理に反する」と意味不明の原理を持ち出すしかないのでしょう。
現在は近代社会のままではない・・法理も時代に合わせて変わると言う意見をどこかに書きました。(貨幣の正邪も時代によって変わることを明日書きます)
日本の法学者の多くは,近代までの中朝民族の頑迷固陋な観念論の信奉者よりもずっと上を行く、特殊精神傾向の集団ではないでしょうか?、
ついでに書いておきますと,アメリカ式勉強法の導入は我が国発展に大きな意味があったと思われます・・たとえば、勉強の仕方まで変わる・・アメリカではケースメソッド・・事例研究中心であることも知りました。
私自身高尚な議論は不向き・・実務家向き?ですので,事例演習形式の勉強の方が理解し易いので助かりましたが・・。
法科大学院制度創設後の新司法試験問題を見た印象では,徐々に事例を上げてその解決方法を問う事例設問形式中心に変わって行き,今ではこればかりのような印象です。
こうなると大学院での法律相談実習や模擬裁判など実技訓練が必須になって来るので、法科大学院へ行かない独学者には不利になっています。
アメリカ一辺倒の時代になっても英米法は判例法のクニ・・事例に合わせて融通ムゲな解決が出来る(ただしデュープロセス・・手続違背には厳しい判例が多い)ことから,学問の広がりが制約されないのが良いところです。
先に抽象概念があって、その適用を議論するのではなく、事例から思考が始まる良さです。
我が国憲法論者は折角英米法導入による良い側面(思考の柔軟性・・憲法を柔軟に変えて行く)を活かさずに肝腎のアメリカすらも求めていない「憲法を守れ」と言う観念論ばかりに執着しているのは残念です。
現在の天皇陛下生前退位・譲位論も同じで,出来る範囲で先ずお心に沿うように早く変えようとすると,先ず反対,完全・全面改正でないと行けないと言って,内容の議論よりは方法で反対する・・結局修正反対します。
日本独立時の平和条約も全面講和など出来るわけがないのが分っている・・今だにソ連・ロシアと平和条約を結べない状態を見れば分ります・・のに全面講和以外反対・日本独立を遅らせるために運動した社会党と同じです。
沖縄も不可能な無条件返還にこだわっていたし,(アメリカ基地存続反対では変換は無理でした)何事も完全主義?と言う名の反対主義です。
中韓に限らずどこのクニもいつの時代にも,物わかりの悪い原理主義者が一定数いますが,(幕末に国際情勢無視の「(鎖国)の祖法を守れ」と幕府を困らせるために騒いだ勢力もこの一種です)占領軍が実態に合わない憲法を押し付けたのでこれ(悪用するため)に飛びつく困った人材が大学機関の主流派になってしまった弊害です。
幕末に「祖法を守れ」と主張したのと同類の(内容の議論をしないで兎も角)「憲法を守れ」の主張を繰り返しています。

文字文化普及4とピープル・民度1

自民族語表現(じぶんの言葉で考え書けるようになって)が始まって僅か3〜40年しかないクニでは,日本人が万葉仮名で自己表現するようになってからと比較すると、約1500年対40年の差です。
人の一生に変換すると150歳対4歳,75歳対2歳ですから,成熟した大人相手のマトモな外交をするには無理があるでしょう。
ただしこれまで書いているように士大夫層・一握りのエリートに関しては中国は2000年の歴史がありますから19世紀までの西欧のように(会議は踊る)職業外交官.政治家に委ねていれば無理がないのですが、民主主義理念が普遍化してくると庶民レベルが(幼児レベルかどうかが)重要になって来ます。
韓国ではすぐに民衆が激昂して大騒ぎになるのは、民度が政治を論じる程度に成熟していない結果によります。
言わば体力年齢は一人前だが成熟度が幼稚園児レベルの民衆に選挙権を与えたような社会で、何か気に入らないことがあると泣きわめいて収拾のつかない運動体になって暴れるような社会です。
幼稚園児に「昨年こう言う約束したでしょう」と言っても聞き入れる筈がありません・・これが日韓条約や1昨年の日韓合意を守れない実態ですし,トランプ氏も衆愚をバックにしている以上過去の政府間合意・・長年の歴史経緯など無視しようとしている点は同じです。
アメリカもピープルレベルではロシアと大差ありませんが,直截民主義と言いながら選挙人制度という目に見えない壁で衆愚の政治参加を事実上阻止して来たからボロが出なかったに過ぎません。
日本のように住民登録者に自動的投票権が配布されるのではなく,アメリカでは自主的に選挙民登録した人だけが投票権がある制度・・日本で5〜6割の投票率とすれば,アメリカのような制度の場合,ワザワザ選挙前に(仕事を休んで行ってみると身分証明する保険書の外に◯◯がいるとか言われて出直したりするのでは)登録しに行く人は激減するでしょう。
これをクリントン大統領当選時以来民主党が支持者獲得の戦略として選挙登録運動を押し進めた結果、庶民が大量選挙登録するようになった・・この10数年で地滑り的支持層の変化を起こしているのを注目する必要があります。
経営者的視点を基本とする共和党が、フードスタンプその他バラマキを基礎とする選挙民層の増加に付いて行けずジリ貧になっていた原因です。
民主党の戦略を逆手に取って中間層を含めたイライラ感に訴えた・・衆愚を利用したのが、共和党のトランプ氏と言う見方が出来ます。
日本のように全員参加政治になると政治は民度レベル自体に直結します。
韓国でもアメリカでも民衆レベルに従えば,過去の合意も理屈も関係ない・・旧社会党の土井党首並みに「兎も角イヤなものはイヤ」鳩山氏の「少なくとも県外へ」と言う過激な無茶苦茶な主張になります。
日本では単細胞的スローガンに賛同するのはホンノ数パーセントいるかいないかでしょうが、未成熟国ではこれが多数ですから大変です。
いまのトランプ氏の過激主張は・・言わば中国、ロシア、トルコ並みに(これまでこのコラムのあちこちでアメリカの民度レベルは中国と共通性があるから日本は気をつけるべきだと書いて来ましたが・その共通性が表面に出て来た・・感情の赴くまま腕力に任せて強引な政治をやると言う意思表示です。
論理も何もない・・幼児が床の上で仰向けになって泣き叫ぶだけならば,あまり酷ければ放置出来ますが腕力・力のある猛獣(地域大国)の場合放置出来ない・・餌をやるしかない状態・・強迫に従うしかないと言う満足感に浸る快感を求めていることになります。
猛獣と力のない人間が最終的にどちらが優位に立っているかは明らかですから,檻から出た猛獣が咆哮し人間を威嚇出来るのは実は一時のことです。
猛獣ほどの力のない幼児(小国)が泣きわめくだけでは放置される(スワップ協定交渉中断)とどうにもなりませんので,自国言語で文字表現手段を最近まで持たないで来た民族は形而上の複雑思考にはもすごいハンデイがありますので,文字どおり自分で言語表現出来る大人の保護を受けるしかないと言うべきでしょう。
国際動乱期に19世紀末の李氏朝鮮は,いまでの保護者であった清朝がぐらついて来たので,どこの保護を受けて良いのか迷った挙げ句日本,ロシア、清朝軍閥の間で右往左往していました。
李氏朝鮮の実力者大院君は「壬午軍乱」のときに清朝の李鴻章に拉致されて3年も抑留されているなど日露清の間で右往左往した歴史です。
この混迷状態・・とこれを取り巻く国際情勢下で,ロシアの南下を防ぐ欧米列強の都合で日本が面倒を見るように、国際暗黙合意で押し付けられた理由も朝鮮民族の文化度で見れば理解出来るところです。
朝鮮族のレベルから見ると日本にとって日韓併合はメリットがないどころか害があるので、(併合・・内国民・平等待遇は無理があるので友好国として徐々にレベルアップに協力する微温的方法)伊藤博文が併合に反対していました・・。
併合反対派の巨頭である伊藤博文暗殺→日韓併合の邪魔者を除いた功労者・犯人安重根を英雄視して讃える今の韓国政府・人民の態度は,日韓併合こそ自分たちが甘い汁を吸える源泉だったと自白していることになりませんか?
日本はこんな聞き分けのない「ガキ」みたいな民族をおしつけられて大損した関係です。
日本敗戦後朝鮮半島は保護者がいなくなる大ピンチだったのですが,期せずして朝鮮戦争勃発によって,北は中国,南はアメリカの保護下に入るチャンスに恵まれた状態で約70年も経過しました。
(無責任に)勘ぐれば,南北示し合わせて騒乱を起こせば、米ソが介入してくれると言う遠大な計画実行だったと言えないことはありません。
何ら理由もないのに、李承晩が軍をワザワザ南部に移動していて,38度線付近を空っぽにしていて,開戦直後にほとんど戦争らしい戦争なくほぼ全土を占領される異常さ,米軍が参加すると北朝鮮軍はまるで抵抗しないで,すぐに北の端まで追い上げられる・・その後中国義勇軍が参加するとまた押し戻した挙げ句にもとの38度線で膠着する・・何か出来レースっぽい動きです。
しかも巷の噂では,南北共に朝鮮人兵は逃げてしまってマトモニ戦わずに、米兵と中国兵同士だけが戦って甚大な被害を出していたと言われています。
北朝鮮の方ではソ連が早くに愛想を尽かし,体よく中国に押し付けて逃げてしまい,押し付けられた中国が縁を切り切れずに今でも困ってる状態です。
上記事情もあって米中とも朝鮮民族のためにもう一度自身が危険に合うような戦争する気持ちはありませんし、長距離砲,衛星その他兵器の飛躍的発達によって前線基地としての地政学的重要性・利用価値が薄れたので、ロシアの南下を防ぐ必要のあった1900年当時のような戦略的価値もなくなりました。
ロシア自体が,(プーチンが頑張っているにしても地域大国として振る舞えれば良い程度で)世界制覇の意図を持っていませんし,その実力もありません。
新たな野望を持つ中国にとっても朝鮮半島に米軍基地がない方が有り難いというだけで朝鮮半島そのものに基地を持ってもメリットよりデメリットの方が大きいでしょうから,このために米国とリスクのある戦争をするメリットはありません。
世界大国にとって重要でなくなってしまった・・そこで大国の気を引くために北では核開発による挑発に必死ですし,韓国では,反日運動過激化・・子供がダダをこねている印象です。
アフガンが古代〜中世までの中央アジア・世界通商路から外れてしまった焦り・・いつも強国を引きずり込むメリット・・観光客の代わりに軍でも何でもが来て欲しい?のと似ています。
沖縄はいまも通商路にはあるものの航続距離が長くなって沖縄で水などの補給不要になった結果、米軍もグアムで守れば足りる・基地縮小過程に入った焦りが昨今の激しい反対運動になっているとも言えます。
何しろ普天間基地が住宅密集地で危険だと言う激しい運動の結果、過疎地の辺野古+海上に移転すると決まると・・移転反対ですからわけが分らない・・最近では騒音苦情に対して,ヘリポートを基地内の奥の方への移設工事を始めると工事反対の座り込みですから・・・合理的に推論すれば,もめ事を大きくすることを目的にしているとしか見られません。
朝鮮民族対策に戻しますと,今後二度と(親代わりになって養いたくない)面倒見たくない・・「チャンスのある都度一歩ずつ引き下がって行くべきだ」と言うのが、現在日本の国論でしょうし、米中ロ共に今後南北で戦争が起きても関わらない・・「自分たちで好きなように戦争をして下さい」と言うのが本音・基本方針でしょう。
南は放っておかれると困るので世界中に慰安婦問題など拡散して騒ぎを大きくするのが目的のように見えますし、北も核開発その他何か世界の耳目を引き付けること自体を目的にしているように見えます。
南北共に,強国の関心を引きつけて介入を期待しているようにみえるのが現在の大きな構図です。
慰安婦合意を守らない韓国の態度に対して遂に「満を持して」いた政府が1月6日駐韓大使一事帰国命令やスワップ合意交渉中断などの4項目を発表しました。
ダダをこねている子供に対して「いい加減にしないとこれ以上相手にしないよ!」と言うのは,1つの選択肢と思いますが,どこまでダダに付き合うべきかの判断は冷静な判断によるべきですから,感情的対応で良いわけがありません・・。
ただし、教師や親が子供や生徒を叱る場合,これを常に感情対応と批判するのも間違いです・・冷静に将来を見据えてやっている場合に必要な判断ですし,カッとなって後先考えずに子供を叩いたりする場合は分りよいですが,暴力を伴わない場合,その区別は意外に難しいものです。
そこで何でも反対式のマスコミ風潮に圧されて最近では「事なかれ式」・・先生も教育上必要な叱責が出来ない問題が起きて来ます。
石破氏のように政府の4項目決定に対して,感情行為対応が良くないと言う意見は、従来型マスコミ意見の風潮に合わせて迎合的に発言した可能性があります。
ミノモンタ氏が熊本地震の際に何の根拠もなく自衛隊批判さえすれば良いかのようなtweetして批判を受けたのと同じ印象です。
さすがに政治家ですから,政府はよく考えてやっているとも表現しているので,形式上はどうにでも逃げられる形ですが,印象的には政府が感情的対応しているかのように強調したニュアンスになっています。
石破氏が深く考えた結果の発言だったかどうか今のところ・・この後の展開(国際的根回しを済ませていたかのなど)を見ないと分りませんが,今のところ印象的共通性を書いているだけです。
だだをこねる子供に対する突き放しの第一弾が、感情で行なわれた判断の結果だったのかはこの後の展開で決まるでしょう。

Civilian2とCitizen4(信教の自由2)

フランス革命の意義に戻しますと「市民」が,革命の成果として信教の自由=教会の思想審査の特権を廃止し(特定宗教が信徒の思想審査するのは勝手ですが,異端と判定され破門されても信教の自由があれば市民は別に困りません),同時に教会の経済基盤である・中世以来,領主による領地寄進で成り立っていた教会財産(領地)を国有化してしまいました。
西欧で宗教戦争が何故激しく長く続いたかと言えば,ルネッサンスで人間解放を謳いながらも実際には信教の自由がなかったからです。
信教の自由があれば、命がけで戦争までする必要はありません。
ガリレオだって,信教の自由があれば地動説が正しいと最後まで言い張れた・・節を曲げる必要がなかったでしょう
ちなみに西欧でイギリスの近代化が最も早かったのは、ヘンリイ8世( 1491年6月28日〜1547年1月28日)のイギリス国教会設立→ローマ教皇支配から思想統制からの独立・民族の思考自由化が始まったからではないでしょうか。
我が国で言えば信長による比叡山焼き討ち(元亀2年9月12日(1571年9月30日)が象徴的ですが,このトキから宗教の権威・呪縛がなくなり日本社会の合理主義が始まったのと時期的にも似ています。
ただし、ヘンリー8世は個人の粗暴性の故に・・破門されるならば別の宗派を建てると言う単なる開き直りをしただけ・・ローマンカトリックから独立しただけでキリスト教社会に留まった点では、信長が目の前で浄土法華両宗派のエリートを集めて宗論を戦わさせて(安土宗論1579年天正7年)合理的な方に軍配を上げるなど時代変革の意識鮮明だったのとは違いますので、社会に与えた効果が間接的で大きくはありませんが,似たようなことになったと言う意味です。
信長は石山本願寺と熾烈な戦いをしていたことを数日前に紹介したように浄土宗支持者は政治の場面では大敵でしたが,(和解したのは1980年ですからこの宗論はその直前・・まだ戦っている最中です)このときの軍配は浄土宗に上がったと言う、うろ覚えです。
法華〜日蓮系の排他的・・自由な思考を禁止する傾向に自由な発想を重んじる信長の合理主義が許せなかったのでしょうか。
叡山焼き討ちは古代から続く宗教意識の権威を木っ端みじんにすると言う信長による時代変革の意図的なものであったので、その後を受けた秀吉〜家康〜幕末まで時間をかけて徐々に,宗教権威をなくす方向が着実に進みました。
家康の頃までは学問知識が佛教を経由していたので,黒衣の宰相コト崇伝や沢庵和尚がまだ権威を持っていましたが、その後紫衣事件などの政変?を経て「学問知識」の源泉が朱子学に入れ替わり,更には陽明学導入で日本人意識の実践的精神・合理化が進んで行きます。
この合理的実践主義の尊重・・経験が明治維新以降の近代化・・現在の現場力の高さに大きな役割を果たしたのはまぎれもないところです。
佛教が知的権威から切り離されて行った経過については、11/28/05(2005年です)「儒教との距離5(定着していた仏教2)前後の連載で詳しく紹介したことがあります。
信長以降捲まず撓まず各種宗教権威が否定され,宗教界は葬式佛教や寺子屋程度あるいは各種興業(相撲巡業や軽業師その他)の場所貸し・・いまでは観光遺産?に地位低下させるのに成功したのです。
この辺,未だに天動説を信じ,あるいはダーウインの進化論など知らない国民が一杯いると言われる・・真偽のほどは分りませんが・・アメリカなどとの大きな違いです。
繰り返し書いていますが日本の社会変化は武士の勃興に始まり何事も数世紀上にわたって少しずつ着実で後戻りのない点が特徴で,この辺が個人的(トランプ氏もその一人にカウントされるのか?)粗暴性で突発的・革命的に起きる西洋とは基礎レベルが違います。
上記のように宗教の権威をつき破る意識改革が意図的・着実に進んだ日本とヘンリー8世の暴挙とは違いますが,ここではローマの教会の権威をコケにしてしまったことがイングランドでの社会変化の切っ掛けになったのではないかと言う思いつきを書いているだけです。
今になるとどう言う根拠か知りませんが(私のような視点によるとは限りません)従来のルールしきたりを無視する「とんでもない君主だった」と言う悪評価に対する再評価の動きがあるようです。
ヘンリ8世が思い切ったことが出来たのは,1つにはイングランド,アイルランドはローマ文化からの中心地から遠い辺境の地でローマ文化・キリスト思想の浸透が遅く半端であった(ケルト族の習慣・信仰が色濃く残っていることは周知のとおりです)ことから早く離脱出来たコトが大きかったように思えます。
もっと古くにはマグナカルタがありますが,もともとローマから遠い上に海を隔てている結果,ローマの権威が及び難かった・・地元民族固有の考え方や生き方がそのまま残り易かったことを表しています。
中世の特色は修道院文化とも言えますが,スペインやフランスなどに比べてイングランド・アイルランドでは修道院が(私の知る限りですが)それほど発達しなかったように見えます。
この辺は同じ漢字文化圏と言っても思考様式が中韓と全く違っている・日本の場合,都市のあり方・住宅様式から衣類・食材文化までまるで違っていますが、それほどではないにしても・・我が国と似ています。
イギリスでマグナカルタが出来,コンモンローが早くから発達し〜弁護士制度が発達し・・今でも国際的に弁護士業界が世界を席巻出来ている原因も,国教会の独立が大きな契機になったかも知れません。
ちなみに我が国サービス業の生産性が低いと言われていますが,・・ラーメン屋・デパートの生産性かな?どうやって計るのか?と思って内容を見ると,国際金融サ−ビス,コンサル・法律海運その他も含まれています。
法律サービスや金融サービス・コンサルも含まれているのでは、M&Aなどのコンサルなどで巨額報酬を得ているのに比べると我が国では企業買収等のコンサル業が未発達ですから,日本のサ−ビス業の生産性が低いわけです。
落ちぶれたりとは言え,イギリスは今でも法律・金融サービス分野ではだんトツで日本が遠く及ばない・国際競争力のある分野です・・歴史は怖いものです。
日本でのフランス革命の理解は、参政権→意見表明の自由・人権宣言の角度中心ですが,フランス革命に倣った西欧的理解では,参政権は派生的成果であって、信教の自由の獲得・・ローマ教皇支配から脱却こそが絶対に譲れない革命の成果でした。
日本では学校で学ぶフランス革命は政体変更(アンシャンレジーム打破)中心ですが,フランス革命の時系列的変化を見ると,一直線で共和制になったのではありません。
政体・・立憲君主主義か共和制かどのような選挙権を認めるかなどは正に(私に言わせれば)「些末な」革命の成果・・バリエーション範疇でした。
短期間の革命進行途中でさえめまぐるしく変わるので簡単に書ききれませんが,最初は(王制前提の)立憲君主主義宣言でしたし,途中で公安委員会が幅を利かす=議会と行政一体制の時代があり、共和制になったりテルミドールの反動があり,ナポレン帝政になり,ナポレオン失脚後王制に戻ったり更にナポレン3世の時代もあります。
共和制になってもいろんな風に政体が変わって来ました・・現在のフランスの政体はド・ゴール将軍の始めた何と第5共和制です。

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