新型コロナの実害比較(新興国の3重苦)

バングラやインド、ネパール等の南アジア諸国は、中東や西欧への出稼ぎが多く、出稼ぎによる本国送金が、貧困国経済を支えてきた側面があります。
出稼ぎ者による送金がなくなり母国の家族生活が苦しくなっていたところに夫や子供が失業して帰って来るとダブルで生活苦になります。
https://www.asahi.com/articles/DA3S14464839.html

(コロナ危機と世界)途上国の危機:下 職失う出稼ぎ、母国に逆流 米の移民、雇用の調整弁 2020年5月4日 5時00分
新型コロナウイルスの大流行は、世界各地の移民や出稼ぎの労働者を直撃した。収入減や解雇が相次ぎ、母国へ帰る「逆流」も始まった。仕送りに頼ってきた途上国の家族は貧困の縁に立たされている。

上記は中南米諸国でコロナ禍急拡大があっても(ブラジルもメキシコもペルーも)思うように外出規制できない背景を踏まえたものでしょうが、アジアも同じです。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00118/042200013/

新型コロナで窮地の出稼ぎ労働者 東南アジアに「依存リスク」
2020年4月23日

https://blog.goo.ne.jp/otatomoyuki/e/cf6fe31b83f613beddabd7616de7ef77

【コラム】新型コロナウィルスまとめ:バングラデシュ(2020年5月16日現在)
バングラデシュでは3月7日に初めて新型コロナウイルスの感染者3名が確認されました。その後、4月14日に感染者数は1,000名、5月4日には10,000名、そして5月15日には20,000名を超えました。一方、新型コロナウイルスによる死亡者も、3月18日に最初の死亡者が確認されてから、4月20日に100名を超え、5月8日には200名に達しました。感染者数と死亡者数は加速度的に増加しています。
バングラデシュ政府は3月26日から政府機関や学校を閉鎖した他、公共交通機関も停止し、実質的な「全国封鎖」を実施しています。
一方、生活苦に陥った縫製工場労働者のデモ抗議が散見されるなど、経済的な影響の大きさも見られます。この為、バングラデシュ政府は5月10日から経済活動の限定的な再開を許可しました。
・・・現在、海外在住のバングラデシュ人の内、およそ400名が新型コロナウイルスで死亡したことが明らかになっています。

インド、バングラや周辺諸国等では海外出稼ぎ者による本国送金が外貨収入の大きな部分を占めているのですが、欧米シンガポールや中東諸国等への出稼ぎ者が現地の外出禁止政策で失業し、住む家もなく食料にも困るようになり、何百万という出稼ぎ者が本国帰還を望んでいる状態が報道されています。
国際便が停止しているのでチャーター機を求めているが、その手配がつかない(母国のチャーター機を飛ばす資金力次第でしょう)上に、失業者激増中の母国に無職者および感染者を抱え込むリスクがあるので貧困国は二重苦〜3重苦で行き詰まっているという報道になってきました。
コロナ感染拡大が始まったばかりでも、すぐに営業再開させないと経済が持たなくなってきた・・背に腹は代えられないという状況らしいです。
米も国内格差により外出禁止が続くと、米国内の弱い部分・・非正規雇用中心の貧困層=蓄積がないのにすぐ失業する階層が食えなくなり始めたので、なりふり構わない再開を急ぐ原因になっている点は貧困国同様です。
要は米国は国内に貧困階層(国?)を抱えている2分された社会になっている弱点が浮き彫りになってきました。
国内に格差を抱え込んでいる米国は全体として感染拡大中であるにも関わらず、経済活動再開せざるを得なくなったのと遅れて急拡大が始まったばかりの貧困国が経済活動再開するしかなくなったのと原因動機は同じです。
米国の失業率・就労者減は以下の通りです。
https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/05/fbe9b9327fefa377.html

4月の米失業率は14.7%と戦後最高を記録、雇用者数は前月から2,050万人減
米国労働省が5月8日に発表した2020年4月の失業率は14.7%(添付資料の図、表1参照)と、市場予想(16.0%)を下回ったものの、大幅な悪化となった。就業者数が前月から2,236万9,000人減少した一方で、失業者数が1,593万8,000人増加した結果、失業率は前月(4.4%:2020年4月6日記事参照)より10.3ポイント上昇した。1982年12月に記録した10.8%を上回り、統計開始(1948年)以来の最高水準となった。

https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/04/f25e797027a01d5f.html

米ロサンゼルス都市圏の失業率、5月には31.7%へ上昇の見込み
ロサンゼルス郡経済開発公社(LAEDC)は4月21日、「南カリフォルニアにおける新型コロナウイルスによる雇用への影響(EMPLOYMENT IMPACT OF COVID-19:SOUTHERN CALIFORNIA)」と題したレポートを発表した。
レポートによると、南カリフォルニア(注1)の雇用者数は、2020年5月に前年同月比27.4%減の746万人に落ち込み、282万人の雇用が失われると予測されている。その結果5月の失業率は31.4%に悪化し、中でも、ロサンゼルス郡とオレンジ郡からなるロサンゼルス都市圏(注2)の失業率は31.7%と南カリフォルニアの平均を上回る高水準が予測されている。
これではしゃにむに事業再開したくなるわけです。

ドイツも26日日経新聞夕刊ではルフトハンザ航空に対する1兆円の政府資金注入の報道がありましたが、コロナ対応優秀国であり経済力突出のドイツを含めどこの国も長引く外出禁止によって経済失速→資金的に限界になって再開を急ぐようになってきましたが、コロナ対処法が見つかった訳ではありません。
格差とは何か?ですが、お金があれば大方の応用が効きますので基本は何ヶ月収入が途絶えてもやりくりがつくか?ですが、都市型生活の弱点というか、食品トイレットペーパーその他必需品の備蓄の多いあるいは応用力のある家庭(マスクが必要となれば妻が毎朝洋服に合わせて作ってくれる)と、単身者等「その日暮らし」的生活者との違いでお金があってもちょっとした品不足情報で直ぐに振り回されて走り回る必要性が違ってきます。
「備えあれば憂いなし」というように大手企業も内部留保の厚い企業と儲けを気前よく分配し(最悪は自社株買い?)次々と投資してきた企業は、変化に弱い点は貧困層と同じです。
世界的に見て災害の多い日本企業は、エコノミストに批判されても内部留保の厚さが際立っていましたが、(個人事業主でもある弁護士業の視点で一定内部留保は必要という視点で、私はエコノミストの批判論を批判してきました)航空産業その他の手元資金の厚さでは国際的に抜きん出ていることがコロナ禍の始まった時点で、国際比較されていました。

韓国と中進国の罠1(半導体産業の内実)

新興国市場の定義を14日紹介しましたが、振幅の激しいのが特徴・・人間で言えば若者の心や挙動・国で言えば新興市場の特徴です。
国民感情も若者気質丸出し・感情の起伏の激しさ・それをそのまま実行してしまう民族性は文字通り新興国の気風です。
韓国民の誇りとするサムスン電子は国民性そのまま体現して商品相場の中でも起伏の激しい半導体生産で、不況時の沈んだ時に次の好況期を睨む積極投資の賭けを繰り返して頭角をを現してきたものです。
サムスンの場合・・市況型産業の申し子なので、当面半導体不況で落ち込んで56%減益でも、今後の市況回復期待感で株は上がっているようです・・。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50727750Y9A001C1FFE000/

サムスン、減益でも半導体先手投資 底入れ感で攻め
中国工場スマホ向け増強 2019/10/8 12:06
2019年7~9月期連結決算の速報値は営業利益が前年同期比で56%減ったものの、4~6月期と比べると17%増え、急速に悪化した業績に底入れ感が出てきたためだ。
2019年7~9月期連結決算の速報値は営業利益が前年同期比で56%減ったものの、4~6月期と比べると17%増え、急速に悪化した業績に底入れ感が出てきたためだ。
サムスンは市況の反転を見越して、中国西安市の既存工場向けにスマートフォンなどに搭載する最先端NAND型フラッシュメモリーの生産設備を導入する。新生産ラインは20年春にも稼働し、主に華為技術(ファーウェイ)など現地のスマホ工場に出荷する見通しだ。装置発注の金額は数千億円規模とみられる。
ソウル近郊の平沢(ピョンテク)工場でも増設を続ける。18年に着工した第2製造棟を建設中で、来春以降に製造装置を発注する見通しだ。

とはいえ、ヒタヒタと追いついてくる中国という相手がいるので、従来のような市況の波の見通しによる増産一本やりでは躓きかねない状態です。
先手投資といっても中国での新工場投資中心のようですから、中国による技術移転の標的になっているでしょうから将来的には骨抜きにされるリスクが高まります。
サムスンが中国におけるスマートフォンの生産を停止

サムスンが中国におけるスマートフォンの生産を停止
2019年10月03日 by Brian Heater
ロイターが確認しているところによると、Samsung(サムスン)は米国時間10月2日、中国におけるハンドセットの生産を停止したという。このところ、世界最大のスマートフォン市場で同社の苦戦が続いたことの結果だ。
・・・最近のサムスンはインドやベトナムなど、ほかの国に目を向けて、生産コストを中国におけるよりも下げようとしている。スマートフォンの販売は中国でも続けているが、製造はもっと安い場所に移したいのだ。

日本の部品業界から見たサムスンの実力https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00055/

サムスンのマーケティングを支援したことがあるコンサル会社、コムセルの飯塚幹雄社長は「家電で中国勢にシェアを奪われ、日本メーカーが韓国勢に駆逐されたのと同じ道をたどっている」とみる。サムスンを知る関係者が向ける視線はかつてないほど厳しい。
けん引役はファーウェイ
国内の部品・素材大手にとってサムスン、アップルの「2強」は、最優先顧客と呼べる存在だった。端末の競争力を引き上げるため、最先端の日本製部材を「誰よりも早く採用してきた」(前出の国内メーカー幹部)からだ。
しかし現在、国内部品・素材大手がサムスンに代わる大口顧客として見据えるのがファーウェイだ。スマホ開発では心臓部であるCPU(中央演算処理装置)の設計を自ら手掛け、5Gでは基地局を含めて他社の追随を許さない。

サムスンやSKなど韓国系がこの先半導体専業でしか生き残れないとした場合、10年先にも10年先にもトップグループでいられるか?
中国の製造強国25とかの実現性は低いようですが、それでも自国生産比率アップが急激です。
韓国の産業業界は韓国より20年遅れで近代工業設備導入が始まった中国に各種業態で追い上げられ、石化事業の場合湾岸産油国やサウジ等原油生産国が自国にプラント設置して自国生産を始めると追い上げられている構図に韓国は対応できない状態が見えます。
サウジ等産油国自身の石化事業育成が続いている結果、ケミカル業界が石化事業に頼ったままでは、生産地との競争に負けていく構造不況業種化しているのではないでしょうか?
半導体産業は、中進国の罠を掻い潜れた例外ですが、(これは日米半導体協定によって日本が輸出規制を受けた結果です)化学業界の動きを見ると日本の先端技術工場を国内導入して、低賃金で日本を追い上げた成功物語・・・プラントさえできればどこの国でも生産できる環境に韓国が頼っていたような印象です。
中国の低賃金・人海戦術に頼る縫製工場等が早期にバングラデシュに移転し、さらに近代的生産工場もベトナム等に転出する状態に入っていますが、中国の競争力が行き詰まってさらなる高度化の必要に迫られているのと同じ状況になっているようです。
日本が汎用品から撤退していく過程で、比喩的に言えば日本が最新設備として100億円かけた設備を廃棄するときに5〜10億円で中古設備を購入するなどして設備投資コストを超安値に抑えて韓国や中国がその穴埋め生産してきたので、見かけ上急速にGDP大躍進しますが、この方法だと次の新興国の台頭に負けていきます。
大躍進による資金をバックに最先端設備導入→2〜3流品から1流品生産へとなりますが例えば日米から設備や素材の大部分を仕入れる場合、設備コストが先進国とほぼ同じになります。
競争条件としては、人件費と消費地に近いかどうかが重要となり、韓国勢の中国民族企業との競争では自国内消費が弱く中国市場に頼る分と人件費の違いから中国現地生産を増やしていくしかなくなっていくでしょう。
同じように製造装置や部材が手に入れば地元の強みで韓国系は押されていく流れでしたが、米中対決激化で思わぬ応援というか、ファーウエイをはじめととする中国民族企業への高度部材や技術移転がストップになりましたので、競合する韓国系はチャンスと見ていたでしょう。
ところが韓国内の反日運動煽りすぎで、日本のホワイト国除外決定となりサムスンやSKに対する高度部材供給がストップする可能性が出てきました。
中国は日本の対韓輸出規制強化は大喜びでしょうから、日韓紛争激化・韓国の肩を持つことはあり得ません。

新興国市場(韓国ケミカル業界の現状)

韓国を含めた新興国市場(別名エマージング市場と言われる所以です)は成長が急激な代わりに政変を含めて危機も急激(ナセルによるスエズ運河接収など権力者の決断に左右されやすい傾向があり、他方大国に対して威勢の良いことを言うものの逆に大国の金融政策その他(米中対決など)の影響が増幅されて波及しやすい)ので、外資にとっては如何に速やかに進出撤退できるかが重要です。
結果的に韓国資本市場が「足の速い資金」流入が中心となっているとしても、新興国市場の特性であり止むを得ないところです。
韓国への資金流入が直接投資の場合定着性が高いのですが、足の早い資金中心の場合外貨準備が増えたと言ってもその分外資流入比率・リスク資金率が上がっただけの場合があります。
結局直接投資が増えているのか減ってるのかが韓国将来性を投資家どう見ているかの指標となります。
新興国市場とは新興→リスクも大きいが成長も激しいのが特徴です。
https://kotobank.jp/word/%E6%96%B0%E8%88%88%E5%9B%BD%E5%B8%82%E5%A0%B4-183672の用語解説は以下の通りです。

経済発展の初期にあって成長率が高いアジア、東欧、ラテン・アメリカなどの国々の証券市場を指す。代表的なものは、BRICsと呼ばれるブラジル、ロシア、インド、中国の市場。いずれも高い経済成長率を誇り、世界中から投資資金を集めた。しかし、規模や制度面などから見るとまだ全体的に未熟な段階の市場が多い。
また国内に十分な投資家層が育っておらず、規模が比較的小さい市場も多い。このため、海外からの資金の流入や流出で大きく株価が変動するリスクがあり、先進国の経済動向や金融情勢に影響を受けやすいという脆弱(ぜいじゃく)さが指摘されている。
(熊井泰明 証券アナリスト / 2007年)

韓国市場に関する約10年前の記事ですが
https://www.iima.or.jp/docs/gaibukikou/gk2009_07.pdfによれば以下の通りです。

資本市場月刊

アジア株式市場のいま
財団法人 国際通貨研究所開発経済調査部主任研究員糠谷 英輝
・・・月刊資本市場 2010.3(No. 295)66

存在感の大きな外国人投資家
投資家別の株式保有シェアを見ると、個人、事業会社、外国人がそれぞれおよそ30%を占めている(図表10)。また投資家別の株式売買シェアを見ると、ここでも個人が49%と圧倒的なシェアを持ち(注6)、これに外国人がシェア27%で続いている(図表11)。いずれにしても機関投資家の存在感は極めて薄く、株式市場は個人と外国人に大きく依存していると言えよう(注7)。■3.韓国株式市場の特徴韓国株式市場の特徴としては、外国人投資家の存在感が極めて大きく、国内機関投資家の育成が遅れていること、店頭市場であるKOSDAQが国際的にも大きな市場となっていること、ELW(Equity Linked Warrants)・ETF市場が急速に拡大していることなどが指摘できよう。
〈コラム〉「韓国は先進国か?」
・・・モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)の指数では、韓国は新興国(Emerging)とされている。MSCI指数における韓国の先進国への格上げは期待されているが、未だに実現には至っていない。MSCIは、韓国市場の障害として、通貨ウォンの交換性がないこと、外国人投資家がOTC取引を行えないことの2点を指摘している。

どこか別の説明では韓国はこの定義中、メキシコやインド等のネクスト11に入っているようです。
ここで個別銘柄・ハンファケミカルの企業情報を見ておきます。
https://korea-keizai.com/hanwha-chemical/

韓国経済・COM
ハンファケミカル【企業基本情報】
2019/01/07

図表省略しますが18年を15年に比べれば良いですが16、17年に比べると18年はかなりの売り上げと利益減です。
19年に入るとハンファに限らず化学業界全部が約半減状態らしいです。
https://korea-keizai.com/20190408petro-chemtech/

【業績速報】ハンファケミカル営業利益半分
2019/08/07
第2四半期の営業利益976億ウォン、 前年比47.1%減少
基礎素材の不振、太陽光の実績も期待に及ばず

1Qの当期純利益 LG化学53%↓、ロッテケミカル43%↓、ハンファケミカル56%↓
国内の石油化学業界が、市況がなかなか回復せず、第1四半期の業績が低迷する見通しだ。証券会社各社はLG化学、ロッテケミカル、ハンファケミカルなど石油化学企業の第1四半期の営業利益を前年比最大50%まで減少するだろうと見込んだ。

上記業界全体の業績推移を見るとハンファが日本での起債に失敗したのは、日韓関係悪化にのみ帰する訳にはいかないでしょう。
そうとすると米国での起債計画やり直しは、よほど金利を高くしないとまた失敗してしまうリスクが高まります。
国外資金調達に失敗して国内緊急融資に頼るとしても、業界全体が利益半減状態では、特定企業救済では済まない・業界全体で外債の借り換え債発行がスムースにいかない・救済問題になりかねないので韓国全体の金融能力にかかってくるリスク→為替相場への波及も視野に入れる必要が出てきます。
米中対決がどのようになるかによっても新興国市場に波乱が起きますが、韓国の場合最早新興国を卒業しつつあるのではないか?
停滞国へ逆進が始まっているかの疑問で書いています。

新興国の限界(民度)4

中国は虎の子の外貨準備がなくなるまで景気下支え・失業増大防止のためにゾンビ企業へ追い貸しを続けているのは、人民を大切にすると言うよりは、目先の利益・お金で釣るしかないからです。
(お金はイザと言うときに使うためにあるモノですから・喩えば、治る見込みのない父母に医療費をつぎ込むのも子供の勝手・・それ自体良いことです・ゾンビ企業の延命策も似たようなものでしょう。)
「中国の場合政権正統性がないから、経済原理に反することをするのだ」と頻りにいろんな評論家が批判しますが、そうとは限りません。
IMF官僚の言うとおりにしてうまく行ったためしがない・・ギリシャ等南欧諸国が抵抗するのが正しいと言う意見もあるでしょう。
日本でも不景気が来ると倒産・失業を減らすために・・中小企業向け信用保証枠拡大して延命を助けるのが普通です。
ちょっと不景気が来ると行き詰まるような企業は、元々企業体質が業界最低レベルが普通ですから、4〜5年後に返済期限が来てもやはり返せない・・結局倒産するのが多いようですが、好景気になって人手で不足で困っている頃に倒産してくれた方が社会的に好都合です。
雇用助成金を配布して社内失業温存を進めるなどの緩和政策をし、あるいは商品券をバラまいたり(財政赤字に関係なく)財政出動をしたがるのと中国の四苦八苦とは本質的な差がありません。
むしろ専制君主制・・1党独裁の中国の方が、景気の直撃を受けない性質を持っています。
元々専制君主制王朝〜共産党政権の正統性は、前王朝末期の混乱・リーグ戦を制した・・政敵を倒して勝ち残った・・最強事実の証明だけで足りたのであって、財政運営能力の巧拙で政権を獲得したわけではありません。
最強事実・専制支配とは権力に刃向かえばどのような不利益があるかも知れないと言う恐怖政治?力が本質で、この力さえ示せれば充分ですから、本来に戻って習近平政権は汚職に名を借りた粛清にこれ努めているのです。
中国の場合、政権正統性の基本が最強権力・恐怖政治を出来るかどうか=治安維持が必須ですから、王朝末期に反乱続発で容易に鎮められなくなると権威・処罰力が落ちて足下を見られて大混乱になります。
中国歴代王朝末期の大混乱は、反乱続発・治安悪化・・野盗集団の略奪が起きる→善良な農民が蓄えをなくす・食えなくなって農民の流民化が起きる・・ある程度食糧を持って出たとしても当てにするほどの行く先がある訳がないので食糧がその内に尽きるし、こう言う場合には治安が悪いので途中野盗に襲われ身内を殺され着の身着のままになる可能性が大です。
いろいろな結果、流民化が始まるとこの1〜2ヶ月マトモに食べていない・・家族も死に絶えて後4〜5日もすれば飢え死にするしかないような極限状態化に陥った人間がゴロゴロいるようになると、何でも出来る・・「政権に睨まれると怖い」と言う恐怖政治の威力がこのときに消えてなくなる・・目先食わせてくれれば、それが野盗集団であれ何であれ身を投じるのが分り易い原理で、これが拡大再生産過程に入ると収拾がつかなくなります。
歴代王朝末期の大混乱再来を期待するネット意見が多く出ていますが、歴史をある程度知っているかも知れませんが、現在を見ない意見に過ぎません。
今は命がけで反乱を起こすような人民はいません。
現在ではその前にボートピープルになって逃げる・・外国脱出が簡単ですから(シリア難民を見れば分るでしょう・・中国が苦しいときには蛇頭と言うブローカーを通じて大量密入国者が日本へ押し寄せていました)今日明日の命も分らないほどの事態になる前に逃げてしまいますし、際限ない略奪や殺戮が起きる前に国連なんとか軍が介入しますから、歴代王朝末期のような命知らずの暴動が起き難い・王朝末期型政権崩壊は想定できません。
http://forbesjapan.com/articles/detail/15173
「旅行業界の調査企業COTRI (China Outbound Tourism Research Institute)によると、2016年の中国人の海外旅行者数は1億3,680万人。前年比伸び率は2.7%と、低い数値になった。」
今ではボートピープルになる前に簡単に海外旅行だけではなく、留学や出張出来る時代ですから思想信条程度で命がけ抵抗するバカはいないでしょう。
シリア・イラクのIS戦士と言っても現地で絶望して戦士になっているのではなく、(現地人は続々と西欧への移民を目指していることは周知のとおりです)世界中から送り込まれるプロ?戦死です。
一定率の社会不適合者がどこにもいて従来孤立していたのが、ネットの発達で世界的にどこか居場所を探して団結する構図になって来たのがコトの本質でしょう。
上記のとおりで民意無視を徹底すれば現在の政権の方が、実は外国へ簡単に逃げられなかった近代以前よりも(民意無視の北朝鮮も含めて強権支配の方が、)政権基盤が強靭です。
元気のある順に不満分子が出て行くばかりになると、・・「批判意見を包摂出来ない社会は弱い」と言うPC的意見によれば、長期的には国民レベルが下がって行き国際競争力が低下する現実があるかも知れないと言うだけです。
(たまにはマトモな批判もあるが・・そう言う人はけんか腰でなく温和に自己主張する能力を持っている筈・・テロみたいなことをせずにいられないのは基本的に表現力、協調性がなく精神的におかしな人が多い・相手の意見を聞いてきちんと議論出来ない人と言う意見もあるでしょうから、そう言う人は企業その他の組織から自分で出て行ってくれた方が良いと言う逆の意見もあるでしょう)
政府国民の2項対立社会では、国家・社会の長期的命運よりは、政権維持の方が優先事項でしょう・・これをどこまでやれるか実験しているのが、北朝鮮でありシリアです。
恐怖政治=権力的計画経済ではどうにもならなくなって、自由主義経済=消費者主権=民意に従うようになると世界標準・民意を基準に運営するしかなくなる・・政権正統性の価値基準が変質してしまいます。
「経済活動を自由にしながら計画経済・・民意無視では一貫しないので、早晩民主化するしかないだろう」と言うのが中国の解放時に於ける自由主義社会大方の見通しでした。
国際競争を勝ち抜くためには自由な発想を大事にするしかない・・無視出来ない・・しかし政治意見表明の自由は与えない・・この無理・・天安門事件に象徴される民主化拒否を通すためには、国民に対する現世利益の大判振る舞いでアメを配るしかなかったことになります。
昨日の日経新聞4月26日朝刊8pでは、FT特約「大学に思想工作要求」の見出しで「腐敗監察だけはなく政治的規律」民主主義や西欧的価値観等の浸透も監察の対象になると出ています。
政権正統性がないと言うよりは、思想統制と経済活性化の矛盾糊塗のために経済界に対する大判振る舞いのおこぼれとしての民衆懐柔・・党幹部や官僚への応用篇・・官僚制に必要な給与支給の代わりに賄賂同様に、特権的地位保障や巨額賄賂横行黙認政治になってしまったのでした。
日本で言えば、政治家供給源を経済界の資産家に頼らない(・・昔の豪族でない)以上は、金権体質を防ぐには国費の支給体制・・政党交付金や歳費アップが必要と言うシステム整備問題と同じです。

新興国の限界(民度)3

米国利上げ決定を織り込んで中国が昨年末から金利上げを始めていることを昨日から書いて来ましたが、金利上げプラス資本規制強化によって目先の人民元防衛効果が出て来ましたが、その代わり国内景気が下落・・・特に金利敏感係のマンション購入が減り始めることを見越した先手の措置でしょう。
ハードランニングの主役・・不動産バブル・マンション相場については以下のとおりです。
http://reinet.or.jp/pdf/fudoukencolumn/vol201701.pdf
不動研コラム Vol. 2017-01
不動研(上海)投資諮詢有限公司董事総経理 粕谷孝治(不動産鑑定士)
図表I
日中韓台の住宅価格変動率(対前年比)
 東京   ソウル    北京    上海    香港      台北
 4.1%   3.6%   29.6%   24.9%    -3.2%      -8.0%
 (資料)日本不動産研究所「国際不動産価格賃料指数」(2016 年 10 月)(※)
(※)調査対象物件の新築想定の価格等を評価し、これを指数化。
以上は昨年1年間の上昇率ですが、中国の場合少し前から不動産バブルの行き過ぎで、鬼城等が続出していたので今度は政府主導で株式バブルを煽り、これが1昨年夏に限界が来るとまた不動産への逆戻りですから、トータルでは大変な上昇になっている筈です。
上記鑑定士は「政府のコントロールが効く「官製市場」という側面もある点を勘案すれば、2017 年の住宅市場は大きく崩れることはないというのが、中国現地の多くの見方である。」となっています。
中国では、政府がバブル退治を始めても相場が下がり始めるとびっくりして(腰砕け)規制緩和して結果的に救済し・・また値上がりしたことの繰り返し・・バブル再燃を繰り返して来ました。
バブル参加者は政府がハードランデングするまでやれるわけがない・いつも最後は腰折れで、エンジンを再び吹かすに決まっていると多寡をくくっています。
この空気を反映しているのが上記意見書です。
日本人の感覚からすれば官製相場の株式が1昨年夏に大暴落したように「官製市場とは言え限界がある」と言う人の方が多いでしょう。
政府が何やかやと(循環取引の国家版のような)策を弄するとは思いますが・・それによる延命策が効果を持つのは時間の問題でしょう。
昨年末にはオフショア市場でイキナリ短期金利を100%に引き上げることによって人民元を売り浴びせている「仕手筋」に損をさせる(この仕手相場に逆張りで参加している人民銀行には金利負担がありません)のもその一例ですが、奇策は何回もうまく行きません。
以下に紹介するとおり、金利上げへの方針変更の一方でマネーサプライ・過剰供給政策を続けている様子が出ています。
普通ならば、一方でブレーキを踏み他方でアクセルでは矛盾した感じですが、中国の場合はアクセル践みっぱなしにしたいが、アメリカの金利上げの結果人民元下落が進むと対中貿易赤字削減を公約して当選したトランプが黙っていないことから仕方なしに金利だけ付き合ったと言うことでしょうか?
結果的に金利敏感係のマンション相場は終るしかないので、・・普通のクニではこの機会に後始末に入るのですが、中国の場合政府主導によるバブルを旋回的・循環的に?に起こして先送りして行くしかない・・資金供給系・商品相場の投機に移って行くように見られています。
政府主導なので国民の多くが必ず次のバブルを政府が起こしてくれる・・終わりがないことを期待している・・うまく乗り換えて行けば良いと言う(プロ国民の)期待に答えざるを得ないと言うことです。
http://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/day-20170320.html
によると以下のとおりです。
「生産者物価指数が、うなぎ登りの上昇を続けている裏には、投機マネーが商品相場へ流れ込んでいるからだ。不動産投機、株式投機、そして商品投機などと投機資金は「旋回」している。中国には過剰通貨が渦巻いている結果だ。今年のマネーサプライ(M2)も期初予想は約12%、昨年の約13%見当から、若干の絞り込みである。それでも、手加減していることは明らかだ。
名目成長率8%経済で、12~13%のマネーサプライが必要なのか。日本の高度経済成長時代は、マネーサプライの供給目標は「名目成長率+3%」と言われていた。これから見ると、中国は1~2%ポイントも過剰な通貨を供給している。その理由は、企業の「ガス欠」(通貨供給)を防止して、資金不足による企業倒産を防ぐ目的が課せられている。これが、回り回って中国のバブルの「燃料」役を果たしているのだ。」
上記のとおりとすれば、中国政府のバブル演出が可能なのは、過剰なマネーサプライが寄与していることは明らかです。
過剰資金供給・ゾンビ企業への潤沢な資金供給が倒産続出を防ぎ高額給与資金になり・・回り回って国民の懐を潤し、(本来なら失業していた筈の)中間層の海外国旅行を可能にしている面があるでしょう。
昨年末から金利切り上げ局面になって来たので、今後はマンション相場から商品相場に資金が動きそうな気配を上記記事は示しています。
これも国内で投機しているうちは良いですが、商品投機・値上がり見込みで(実需もないのに)資源輸入が増えて来ると再び外貨準備が流出します。
中国国内利益の海外送金規制が続いてるようですが、これは今後の外資導入に支障があるだけで既に投資してしまった企業は今更撤退出来ないので心配ないとしても、今度は資金流出ではなく正真正銘の貿易赤字によるものとなれば、資金流出規制のような規制が利かない・・輸入代金踏み倒しをしろ」とは言えば文字どおりデフォルト宣言になります。
http://jp.reuters.com/article/china-trade-feb-idJPKBN16F0FP2017年 03月 8日 16:23 JST
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中国貿易収支、2月は87.9億ドルの赤字 輸入が急増
[8日 ロイター] – 中国税関総署が公表したデータによると、2月の中国貿易収支は606億3000万元(87億9000万ドル)の赤字となった。数カ月に及ぶ建設ブームを背景に鉄鉱石や銅、原油、石炭などの輸入が想定以上に急増した。
2月の輸入は人民元建てで前年同月比44.7%増となった。輸出は4.2%増だった。ドル建ての数値はまだ公表されていない。
キャピタル・エコノミクスのジュリアン・エバンス・プリチャード氏は「向こう数四半期において堅調な海外需要が予想され、輸出をサポートし続けるだろう」と指摘。
ただ今後数カ月で高水準にあるコモディティ価格の低下が予想され、足元の輸入の増加ペースが維持されるとは思えないと付け加えた。
ロイターがまとめたアナリスト予想では、2月の輸出はドル建てで12.3%増、輸入は20%増だった。ともに1月実績を上回り、数年ぶりの高い伸びが見込まれていた。」
ロイターでは、今後海外需要が輸出をサポートすることになると前向きに書いていますが、この輸入増加は輸出用原材料輸入・・実需に基づくのではなく商品投機相場による輸入増であれば、輸出に寄与しない・・高値づかみに終わる可能性があります。
最後に2束3文になりこれを仕入れた企業による・「出血輸出」の再来でしょうか?
そうなると外貨準備はどうなるかです。

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