アメリカンファーストと国際協調4(崩壊?2)

EUの対中対米貿易比率はhttp://eumag.jp/questions/f0717によると以下の通りです。

EUの物品貿易相手先と規模(2016年)

特にアジア諸国では対中貿易の方が大きくなっています。
http://www.camri.or.jp/files/libs/1156/201810011524292185.pdfによると以下の通りです。
それぞれグラフ等が出ていますので、関心のある方は直接お入りください。

34 月刊資本市場 2018.9(No. 397)
対中貿易依存度が高い国々はどこか?
公益社団法人 日本経済研究センター 主任研究員 牛山 隆一
1.中国の貿易動向
2.対中輸出比率ランキング
3.対中輸入比率ランキング
4.米中間の貿易関係
・・・・・中国は2017年に日本の輸出先として1位米国(シェア19.3%)をやや下回る
2位(同19.0%)、輸入先としては2位米国(同11%)を大きく上回る1位(同24.5%)で、
引き続き重要な貿易相手となっている。
ただ、日本の対中輸出比率(19%)は世界27位であり、2007年(15%、16位)から比率は少し上昇したものの順位は大きく低下した。
また、対中輸入比率(24%)は世界14位で、やはり2007年(21%、8位)から比率は上がったが順位は下がっている。中国の貿易大国化が更に進み、世界の多くの国々が対中依存を急速に高める中、同比率で見た場合に日本の相対的な位置は低下している。
5.おわりに
本稿では対中輸出入比率を算出し、中国への貿易依存度が高い国々の動向を調べた。世界貿易に占める中国の比重が一段と高まるにつれ、対中輸出比率が20%以上に達する国・地域は2007年の11から2017年は26へ、対中輸入比率が20%以上の国・地域も同じ期間に10
から40へそれぞれ増加した。

韓国などは数年前から対中貿易の方が多くなっていることから、露骨にアメリカの気に入らないことを正面からするようになった・反抗し始めています。
https://docs.google.com/document/d/1B_k-2lcstvNhZWWRqkWpEo0Evf1mJlU7NLjlDEZOEak/edit#によると韓国の対中貿易額は以下の通りです。
登録:2018-04-05 06:15 修正:2018-04-05 17:30

「韓国、中国輸出の79%が中間財」…中国の対米輸出減少の“火の粉”降りかかるか

 

韓国の地域別輸出の比重(2017年)//ハンギョレ新聞社
チョ・ゲワン、チェ・ヒョンジュン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

慰安婦合意の事実上破棄政策・徴用工賠償判決執行あるいは年末の攻撃用のレーザー照射事件など対日嫌がらせの連発もその延長上のことでしょう。 

 

アメリカンファーストと国際協調3(崩壊?)

狼やその他集団で狩りをし、あるいは、穀物収穫でさえも稲作のように集団行為がひつようですし、販路を求めるにも相応の供給組織(社会連携)が必須です。
今では三内丸山古墳で知られるように石器時代の黒曜石等の単品的交易にとどまらず縄文時代でもいろんな物品について広範な物品の交易をおこなっていたことが知られています。
工業生産になると(例えばある製品部品が100個あるとすれば、その数だけの関連サプライチェーンが必須となり、その部品(例えばタイヤ)を作るのにさらに50個の部品が必要であれば、その先に50倍のサプライチェーンが必須です。
芸術家のように、創造力・個性重視の職業でさえも、顔料その他材料収集と発表の場を求めたりその購買者に至る連鎖の輪に関係しないと自己ファアースとでは成り立ちません。
原始的に見ても馬や象や鳥や魚類のように集団で生活しているのは生命の危険を防ぐ知恵によることは明らかです。
地球最強になった人類は、今では人間による攻撃が最も怖いようになり、暗闇で一人歩くのは怖いという意味の集団行動が暗黙のうちに要請されるようになっています。
白昼公然の違法行為には、誰かの通報によってすぐに警察が来て検挙してくれますが、国家間の暴力(侵略)行為を防止する方法がないので、覇権国が「パックス〇〇」(パックスアメリカーナなど)の平和を脅かす行為に対して制裁することで秩序を保っていた(覇権国の権威を守ってきた)のがこれまでのやり方でした。
パックスアメリカーナと言われてきた所以です。
今年の正月元旦に1年の期間が古代と今では違っていたのではないかの意見?(個人想像)の例で、臥薪嘗胆や春秋時代の覇者になった文公(重耳)の例を書きましたが、覇者になるには武力だけではなく、相応の人望・が必須です。
覇権国とは相対的強者のことですから、人望がないと同調する与国がなくなり私戦禁止令の効力がなくなります。
ロシアが強盗のように公然とクリミヤを併呑しても制裁はせいぜい、自国の影響力の及ぶ範囲の経済制裁程度です。
ロシア制裁は欧米と日本その他の多くが従っていますが、イラン制裁再開に関しては意思統一がないままのトランプ氏にちゃぶ台返し・・独断専行ですので、日本や韓国中国、EU諸国は渋々・・アメリカ国内法違反企業としてアメリカ国内で活動するEUや日本企業が制裁されるのを恐れた仕方なしの同調に過ぎず同一価値観による同調ではありません。
イラン合意に参画した多くの国が「イラン制裁再開すべきと思っていない」以上その規制を守ろうという意識が低くなるのは仕方がないというべきで、ファーウエーが制裁違反行為をしていることを理由に副会長をカナダで逮捕したのは、(課徴金等で締め上げるのはまだしも)世界をびっくりさせました。
一方で覇権挑戦国の中国が公海の一部に埋め立てを始めて軍事基地を作る工事をしてもこれを禁止せずに、自由航行作戦といって軍艦をその付近に航行させる程度でお茶を濁し事実上の黙認です。
中国への弱腰批判に答えたつもりでしょうが、埋め立て工事に直接答えるべきで、こんな方角違いでは「政治プロの行為と言えない」というべきか米国は正面切って中国に何も言えないことを証明しています。
中国歴代王朝が崩壊した原因を見ると強敵が現れた場合は少なく、あちこちに農民暴動が頻発するようになり、鎮圧軍の抑えが効かなくなって最後は、軍閥に乗っ取られてしまう繰り返しの方が多いのです。
オバマが「世界の警察官をやってられない」ということは、王朝時代で言えば「野盗や暴動軍は好きにせよ!自分は首都に引きこもる」と宣言するのに等しいでしょう。
政府が治安責任を負わないと宣言する・・テロや暴動を鎮圧しないで放置するのであれば、全土の支配権放棄と同じです。
ただ、オバマの場合にはこれからの成長予定地であるアジア重視を示し、利害輻輳している中東からの関与縮小を明示していただけですが、トランプ氏の場合それすらもはっきりしません。
そもそも自国だけでのワンマン的世界切り盛りが無理になれば一足飛びに覇権放棄ではなく、有力支持者の協力を得ての覇権維持が普通の方向性です。
ところがトランプ氏は高関税対象を信頼関係のある同盟国にまで矛先をむけ始めたので、同盟と非同盟の意味がぐらついてしまいました。
自国の利益のために構想したTPP脱退を決めたのを手始めに文字通りの地盤である北米地域のNAFTAの改定・・喧嘩を始めたのには、世界中が驚きました。
続いて日本を含めた西側諸国にも高関税攻勢しながら過去の協定等の改定を強要する方向ですが、時間経過でトランプ氏のワンマンぶりには世界がある程度なれたとはいえ、慣れた度合いに応じて世界中のアメリカに対する信頼は同率で低下しているはずです。
同盟国がいつ梯子を外されるか不明では、アメリカに気持ちよく協力ばかりしていられない・中国にも保険をかけておく必要があるので、協力国の協力度合いが低下する一方でしょう。
経済制裁は圧倒的な制裁力があってこそ効力が強いのですが、いまは、世界のかなりの国で対中貿易と対米貿易量が拮抗している・対中貿易の方が多い国が増えています。
特にアジア諸国では対中貿易の方が大きくなっています。
韓国などは数年前から対中貿易の方が多くなっていることから、露骨にアメリカの気に入らないことを正面からするようになった・反抗し始めています。
慰安婦合意の事実上破棄政策・徴用工賠償判決執行あるいは年末の攻撃用のレーザー照射事件ど対日嫌がらせの連発もその延長上のことでしょう。
それでも経済制裁が相応の効果があるのは、(対中貿易が30%で対米貿易20%の場合でも)その他の日欧が米国の制裁に大方強調することで、世界貿易量では圧倒的多数を占める制裁を受けるから威力があるのです。
米国が世界貿易の過半を占めているときにはその威力が絶対でしたが、上記のように比重が下がってきた上に中国が対米対抗意識を燃やし始めると、ロシアのように中国が原油を買ってくれれば問題がないという国が出てきます。
ロシア原油その他ロシア製品全量買う国力が中国にあるとしても、中国に生命線を握られるのは怖いのでできれば避けたいでしょうが、緊急的でみればなんとかなる強みです。
もっと小国では、中国が「引き受けた」と言ってくれれば、中国の方が米国より怖くてもその場は助かるようになってきました。
今のイランの強気もそこにあります。
世界中で対米貿易の比率が下がっている以上は、経済制裁をしても協力国の数の多さがその決め手になるのですが、同盟国・・すぐに追随してくれる国の協力意欲を減退させる方向の政治ばかりではアメリカの威信は下がる一方です。
トランプ氏が力めば力むほどその威令・信用低下が進んでいる・/ひいては協力度合いが下がっていくのに気がつかないのでしょうか?
例えば秀吉が天下人になった以降に惣無事令で私戦禁止したのに反して、北条氏が(上野国の沼田)真田領を攻めたことで小田原攻めに発展したものです。
真田昌幸と幸村の父子が、この恩義・豊臣政権の威令が行き届いたことに感じた・恩義に報いないのは武士道に反するという美学によって、最後まで豊臣家のために奮闘したのです。
今日現在のウイキペデイアによると以下の通りです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%83%A3%E7%84%A1%E4%BA%8B%E4%BB%A4

豊臣平和令のうち、大名間の私的な領土紛争を禁止するものが惣無事令とされる。つまり、領土紛争においては、全て豊臣政権がその最高処理機関として処理にあたり、これに違反する大名には厳しい処分を下すという法令である。また、秀吉は関白の立場を明確に示す形で、あくまでも天皇の命令(勅定)によって私闘禁止(天下静謐)を指令するという立場を掲げた。[2]
惣無事令は、1585年(天正13年10月)に九州地方、1587年(天正15年12月)に関東・奥羽地方に向けて制定された。惣無事令の発令は、九州征伐や小田原征伐の大義名分を与えた。特に真田氏を侵略した後北条氏は討伐され北条氏政の切腹に至り、また伊達政宗、南部信直、最上義光らを帰順させる事に繋がった(奥州仕置)とされる。この惣無事令によって、天正十六年の後陽成天皇の聚楽第御幸の際など、参集した全国の諸大名から関白である秀吉への絶対服従を確約する誓紙を納めさせ、その違背に対して軍を動員した包囲攻撃のみならず、一族皆殺しを含む死罪・所領没収ないし減封・転封といった厳罰を与えた。いわば、天下統一は惣無事令で成り立ち、豊臣政権の支配原理となったのである。[3]

アメリカンファーストと国際協調2

ちなみにPoliceの語源はギリシャ語のポリス(シティ)らしく、これは英語のポリテカル、ポリシーなどで知られるように、もともと日本語の「政治」を中核とする語源です。
オバマ発言の原文を知りませんが、仮に「ポリスをやれない」と言ったとしても日本語の警察官をやれないと翻訳するのは妥当かの疑問があります。
日本語の警察官は、政治思惑と無関係に(どころか政治的立場による一方に不公平な行動は許されていないでしょう)現状秩序維持機能にロボットのように特化した組織として教育され訓練された機関やその従事者を意味しています。
権力の犬と言って蔑む人もいますが、それは欧米の暗黒の歴史をなぞって言い募っているだけで実際に日本の歴史ではお巡りさんのイメージでわかるように身近な世話役です。
落し物を届けたり行先の道を聞いたり猿が出たと言っては追いかけますようなイメージではないでしょうか?
以上によればオバマが「世界のポリス」をやれないという意味は、政治目的実現のために軍を動かすことは出来ない・・「政治判断が間違っているといくら有能精強な軍を持っていても機能しないからやれない」というあたり前の原理を言ったに過ぎず、日本語の警察官役を果たせないという意味とはだいぶニュアンスが違うのではないでしょうか?
日本の警察は民事不介入といって、揉め事一方の肩を持てないし、要請されても中立行動・・「まあまあ実力行使はやめてください」と二人の間に入って暴力行為に発展しないように阻止する程度しか出来ません。
軍といっても災害出動のほか今ではいろんな機能があるので、一言で言えませんが世界の警察官と翻訳するのは国連平和維持軍程度の役割です。
アメリカがやってきたのは、米国益獲得のために一方当事者の肩を持つ軍事介入そのものですから、これをやめるというのを世界の警察官をやめると翻訳するのは誤訳でしょう。
ポリスをやれないという意味をもっと厳格定義して報道すべきように思えます。
常識的に言えば、他国間の紛争解決手段としての軍事力行使(による介入)は今後できないという程度の意味だった可能性があります。
以上は原文に当たっていないので私の憶測意見です。
我が国憲法でいうところの「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」」はまさにこれをいうものでしょう。
政治力不足・正義に反している主張・マイナスの穴埋めの軍事力行使=不当攻撃には自衛する必要はあっても、自己の政治力.正義不足=不正義補完に使っても長い目で見れば意味がないということです。
「口論で負けているからと相手(妻)を殴っても本当の解決にならない」という意味であり、かといって殴られるのが怖いと不正義に従う義務もない(妻が夫の家庭内暴力に服従する義務はない・・違法攻撃には正当防衛権・・・自己防衛力がなければ警察の介入が必要ということです。

憲法
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

正当防衛・自衛力のない人のために警察の介入・110番で駆けつけた警察が、まず引き分けて暴力行為を停止させることから始めるのですが、これを国際紛争に応用しているのが国連平和維持軍ではないでしょうか?
自衛の範囲の議論をしていると横にそれて行くので、アメリカンファーストに戻ります。
自国に関係ないことには軍事介入しないと言っても、直接間接の区分け定義不明でどこまでが自国国益に直結するかの基準が不明です。
まして時間的限界・今後は介入しないというのか過去に約束して介入している分までいきなり撤退する・・約束を反故にして(遡及的に)やめるのかも不明です。
企業で言えば、今後この分野から事業縮小というのは勝手ですが、契約済で工事途中の現場まで放棄してしまうようになると契約違反です。
昨年12月19日トランプ氏がいきなりシリア撤兵を発表したので、マチス国防長官の辞職表明に発展しましたが、この発表で世界中の米同盟国ではトランプ氏に対する信用が一挙に冷めたものになりました。
1月8日頃のニュースではこの結果、(米国同盟国の動揺を受けて?)ボルトン大統領補佐官がトルコがクルド人を攻撃しない条件付きの撤退と言い始めたようですが・・当然トルコはこんな条件を受けられません。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190109/k10011771841000.html

米軍シリア撤退 “クルド人勢力の安全が条件”にトルコ反発
2019年1月9日 8時42分

米国にとって中東の勢力関係がどうなろうと巨大な国費や兵士の人身損傷を賄うメリットがないというのがトランプ氏の表向き(サウジ皇太子によるカショギ記者殺害事件収束に向けた裏取引という見方が一般的です)主張です。
中東戦略で協力関係にあったクルド族切り捨てに抗議辞任したマチス国防長官および旧来政治判断では、(同盟国をトルコへの生贄にして)置き去りして引き上げるのでは米国の信頼が地に堕ちるという批判が噴出しました。
(日本台湾なども米国は頼りになるのかの心配が吹き出します・悔しいけれども中国への保険もかけておく必要性のバランス論・・米国追従をほどほどに止める動きが加速します)
トランプ氏に言わせれば、今後国際関係関与を減らしていくと表明した以上は、同盟関係を縮小していくのは当たり前・・いつかは「2階に上がって梯子を外される」ことを覚悟すべきだということになるのでしょう。
だから一方で「米国ばかりに頼らずに自助努力せよ、自国防衛予算を増やすべき」だと言っているではないかということで一応一貫しています。
要は「世界の警察官も嫌、政治に関わるのも嫌、揉め事は自分たちで解決してくれ」というのですから分かり良いといえば分かり良い政治です。
「難しいことは分からないから・」と米国が他国と他国の国際紛争から手を引くのは高齢化したわれれ高齢者の身の引き方と同じで結構なことです。
当面自国利益を守るのに必要な限度で他国と関係するのが合理的だというのは一理あります。
ただ自国利益を守るためには、他国との協調が必須ですので、その塩梅をどうするかの基準が見えない点が不安視されているのです。
「泣いて馬謖を斬る」故事がありますが、組織リーダーには行動原理を部下に知らしめ自分が守ることが必須です。
このルールが見えない・・多くの人がトランプ氏の言動が行き当たりばったりで信用できないと思うようになるとアメリカの信用ががた落ちになり、結果的にアメリカの国益に反するようになります。

アメリカンファーストと国際協調1

トランプ氏の米国第一主義はわかり良いスローガンですが、誰だって自分が一番大切なのですが、自分の欲求だけでは社会が成り立たないので、社会あるところ付き合い方のルールがあるのです。
「米国ファースト、都民ファーストと言ってれば何かが決まる訳ではない」と小池都知事の国政参加表明の頃に連載しました。
多くの動物は集団行動で生命を守っていますし、防衛ばかりではなく生活に必要な道具が増えてくると遠隔地との交易の必須度が上がってきます。
たった一人では獲物を素手で取ることができないだけではなく、獲物を取るべき道具を含めて完全自給自足が不可能である限り、100%自分中心で生きていくのは多分石器時代の昔から不可能です。
日本でも石器時代の昔から黒曜石を求めて長距離移動していたことがわかっています。
個人であれ、小集団〜国家であれどの程度で他人〜他集団と折り合いをつけて交際していくかが重要なのに、〇〇ファーストとかグローバル化反対と唱えていれば解決するものではありません。
出来の悪い幼児が駄々をこねているたぐいです。
トランンプ氏の行動をみていると、政治家に要請される高度複雑系の判断に基づくのか疑問を感じる人が多くなっていくでしょう。
「あちら立てればこちら立たず」の2項対立ならば、どちらを味方をするかの決断だけでよかったのですが、中東問題の対処を見ると関係が複雑化しすぎて2項対立の単純思考の文化度ではどうして良いか分からなくなりました。
ナウール共和国の例を引いて資源で食っている国はその分技術文化の発展が阻害されるという私の持論をあちこちに書いてきました。
アメリカはオーストラリアやサウジ同様、資源が国力の基本になっていて資源国の中では比較的優秀人材吸収(移民受け入れ宣伝)に努めたので比較的技術発展できたにすぎない以上、(資源に頼っている分)その限界に見舞われているのは仕方ないことです。
国力と能力乖離のジレンマで歴代大統領が悩んでいるうちに、メッキが剥がれて米国の指導力低下が認識されるようになったのですが、複雑系紛争解決をするには単なる武力や経済力の優位だけでは無理があり複雑系処理能力が必要ですが、米国民の民度では無理があることが分かったということです。
無理があればどうするかですが、能力に余るならば手を引くしかないという単純論理であるべきでしょう。
それを米国ファーストと言い換えているだけですが、米国民の大方がこの自覚を持った・土地成金ならぬ資源成金は成金らしく振舞うしかないということでしょう。
アメリカの民度レベルでは複雑な利害を捌く政治能力がないのは当然です。
アメリカが、19世紀から20世紀にかけてアジア諸国にとって人気があったのは、(日本でいえば、木曽義仲と都人の対比でもわかるでしょう)交渉に長けた複雑系の人がらではなく田舎出の成金らしいおめでたい雰囲気が表に出ていたからです。
第二次世界大戦後覇者になると、気の良さそうなおじさんの役割だけでは物事が進まなくなりましたが、幸い、どんな残逆行為をするかしれない・怖い共産圏諸国という対立軸があったので、アメリカの無茶も通ってきたのです。
ソ連崩壊後恐怖を煽る対立者がなくなると、国家でいえば対立する敵対国がなくなると内政に回帰するしかないのですが、内政は利害が錯綜していて「あちら立てればこちら立てず」で単純能力ではうまくいきません。
アメリカ一強になると国際政治が内政並みになってきて二項対立どころか、5派〜6派に利害が入り乱れる関係になってくると「気持ちの良いおじさん」レベルではどうして良いか分からくなるのは当然です。
世界の警察官ではないとオバマ氏が言ったと報道されていますが、いまも世界一の武力・経済力があるので、軍事力の行使による紛争解決能力がなくとも治安維持程度の能力・・警察官派遣能力・資格はあるでしょう。
軍と警察の違い・・一般的理解では、軍事力は政治と密接に結びついた装置・・要は「国際紛争解決のために利用する装置」ですが、警察は政治判断から切り離された自動装置・・明確な法規違反取締り装置(逆に政治的目的での取り締まりや検挙をするのは違反)です。
紛争解決目的の武力展開力は政治判断によるのですから、政治判断能力がぐちゃぐちゃのままでは、政策目的遂行のための手足となる軍も機能できるはずがありません。
このように警察と具の機能を仕分けすれば、アメリカが果たせなくなったのは、「世界の警察官」をやれないのではなく、政治判断による「軍事力による解決能力がない」ということでしょう。
もしかしたらオバマ氏が言ったのは「紛争解決のための軍派遣・・世界の面倒見られない」と言ったのを、日本メデイア界一致して?「警察官」をやれないと意図的に?誤訳して流布しているのかも知れません。
http://net.keizaikai.co.jp/archives/498

世界の警察官」を返上 オバマ政権、曲がり角に津山恵子(ニューヨーク在住ジャーナリスト)
2013年10月1日
9月10日午後9時、オバマ大統領はテレビ演説でこう語り始めた。
「化学兵器による死から子どもたちを守り、私たち自身の子どもたちの安全を長期間確かにできるのなら、行動すべきだと信じる」と大統領は、化学兵器の禁止に関する国際ルールは維持すべきだと強調。しかし、武力行使に対しては、驚くような考えを明かした。
「米国は、世界の警察官ではない」
「私は、武力行使の必要性に対して抵抗した。なぜなら、イラクとアフガニスタンの2つの戦争の末、ほかの国の内戦を解決することはできないからだ」

上記の文中の「警察官」を軍隊と置き換えたほうが意味が通るでしょう。

中国の国際協調能力4(不公正貿易国認定2)

年数の経過でペッグを組んでいる国同士で格差が生じて来るのは必然ですから、赤字国に連動する国にとっては無茶においしい話になりますし、赤字国はいくら通貨を下げても一緒に相手が下がるのでは赤字解消が難しくなります。
EUであれドルと連動する国があると、その関係国間で生産性上昇率の低い国や地域が参ってしまう関係です。
我が国の場合地方交付金や政府補助金が(補助金は特定業種向けですがその業種がどこの地方に立地しても同じ補助金が交付されます)国内均等に行き渡りますが、それでも地域差が生じて来て僻地はいよいよ僻地・過疎地化する一方となります。
国内的には農村社会から商業社会へ・・都市集中現象で済みますが、国際的にはそうも行かないでしょう。
デフォルト寸前の危機にならない限り修正の余地がないとなれば、現在のキプロス危機のように最後には債権者債務者双方に大きな痛みが伴います。
日々の為替変動制を利用すれば能力差が日々反映されて、ポジションのちがいを軟着陸・ソフトランデイング出来る便利さがあります。
貿易黒字あるいは所得収支黒字の結果、円高や元高が進み過ぎるのを防ぐために、それぞれの政府による為替介入が繰り返されますが、これは市場のドル売りに対してドル買いで対抗することですから、必然的にドル保有額が増えて行くことになります。
上記のパターンは、金利下げによって自国通貨安を演出する場合(何回も紹介している円キャリー取引による円安)も同じです。
為替介入によって得たドルをユーロやポンドに替えるために売りに出せば結果的にドルが対ユーロ等で下がってしまい、ひいては円高・元高になるので為替介入した意味がなくなるので、ドルを保有したままにならざるを得ません。
中国は元の相場上昇阻止のために為替介入を繰り返して来た結果、貿易黒字の累積以上(長期的には結果は同じでしょう)に外貨準備が積み上がることになって中国の外貨準備が急激に積み上がって数年前に日本の外貨準備を追い越してしまいました。
割安な為替相場を無理に維持して対ドルの貿易黒字が蓄積すればするほど、ドル外貨準備が大きくならざるを得ず、準備額が大きくなればなるほどドルの暴落は困るので、その買い支えに動かないと外貨準備=国富が毀損してしまうので、「毒を食らわば皿まで」の一蓮托生的関係になって行きます。
大口債権者が融資先の企業の倒産先送りに・・独仏等の債権国がギリシャや南欧諸国の危機にコミットせざるを得ないのと同じです。
債権者と債務者は、実は同じ船に乗っているようなものです。
後で考えれば債務国の為替の下落でどうせ同じことになるなら、中国人民元を実力相応に切り上げて、国民の生活水準向上に役立てた方が良かったことになるでしょう。
同じことは日本円にも言えて、無理に為替安で貿易黒字を稼いで、ドル預金を増やしても、結果的に同じことにされてしまうならば、黒字に比例した円高を受け入れて、(赤字になるまで円高になるのは困りますが、)それ以上の大幅黒字を積み上げないで国民生活を豊かにしていた方が、実質があります。
円高になれば海外製品が割安になって輸入が増えるし、物価が下がるので国民はより豊かな生活を送れます。
日本の場合、バブル崩壊後一時円高になったもののその後リーマンショックまでずっと円安のままでしたが、それでも中国から食糧品を含めて超安値の製品流入が続いた結果、物価下落が続いたので国民は円安による被害・物価上昇がなく仕合せでした。
この辺は、企業にとってはデフレ経済で大変でしたが、国民にとっては楽だったという意味です。

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