中銀の独立性?1

https://www.asahi.com/articles/ASLD5538WLD5ULFA01M.html

トルコへの「原発輸出」断念へ 事業費が想定の2倍超

昨日トルコの25%の消費者物価上昇率を紹介しましたが、原発等の高度インフラの場合、部品等多くは先進国からの輸入にかかっているので、消費者物価上昇率ではなく生産財上昇率が重要指標になります。
ざっくり言えば通貨下落率と輸入資材や知財等(日本人技術者の人件費)のコストアップが比例するというべきでしょう。
トルコの場合、昨日見た通貨下落率は昨年1年間だけで昨43、5%ですから、過去の累積分と今後インフレがいつ収束するかの予測を合わせると資材等の事業コストが2倍になるという見通しになったのでしょう。
このような高度インフレを理由にする工事中断や成約の破棄は、原発事業に限らずトルコ国内業者間でも広範に進んでいるでしょうから、国内経済活動はは大混乱に陥っていると見るべきです。
経済は経済合理性を離れて成り立ちません・・安倍総理とエルドアンの親密な関係だけでは無理がありますし、いかに強固な独裁権力をもってしても抗えません。
英国への原発輸出もせっかく受注していた日立がコストアップと再生エネルギーのコスト低下による原発発電の割高化による回収見込み率低下に耐えられずに撤退の方向になってきました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40129130X10C19A1000000/

日立、英原発事業の中断を発表へ 2019/1/17 17:06
日本経済新聞 電子版
日立製作所は17日、英国で計画する原子力発電所建設事業を中断することを正式に発表する。東原敏昭社長が記者会見を開く。
約3兆円の事業費を巡る日英の政府や企業との交渉が難航し、現在の枠組みでは事業継続が困難だと判断した。設備の減損処理などで2千億~3千億円規模の損失を計上する。一方、設計や工事準備で発生している月数十億円の費用流出には歯止めがかかる。

やめるだけでも2〜3千億の損失ですが、「赤字で工事を続けるよりはまし」ということでしょう。
英国の場合にはトルコのような破滅的通貨下落はないのですが、原子力電力源(再生エネルギーのコストがどんどん下がっていく見通し)が価格競争に勝てないということでしょうが、英国のEU離脱問題の先行き不透明感からポンド安→物価上昇が進んでいる面も無視できません。

https://ecodb.net/exec/trans_image.php?type=EXCHANGE&b=USD&c1=GBP&ym=Y&s=&e=
世界経済ネタ帳によると以下の通りです。

国策がどうのと言っても、経済原理には勝てません。
12月20日の日経新聞夕刊では米国の金利引き上げが発表されていました。
https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-19-idJPKCN1OI2QF
2018年12月20日 / 07:38 / 1日前更新

米国株は大幅安、FRBの利上げ見通しや議長会見受け
FRBは19日まで開いた連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25─2.50%に引き上げることを決定した。2019年の利上げ回数の見通しは2回とし、9月に示した前回見通しの3回から引き下げた。

米国金融当局としては景気の良い時・体力のあるうちに引き締めて自国経済を筋肉質にしようという目的ですから合理的ですが、米国金利引き上げはファンダメンタルズの脆弱なトルコや中国等新興国通貨の下落→物価上昇を誘うので新興国は国内不景気でも追随引き上げに迫られて弱った経済をさらに揺さぶられます。
通貨下落に怯える国は国内不景気でもアメリカの金利引き上げに負けずに金利引きあげるしかないのですが、そうすると国内経済は急減速ですから一般的に政権担当者はこれを嫌います。
大幅減税で好況を謳歌してしている筈のトランプ氏も「少しの景気低下でも嫌」ということで米連邦公開市場委員会(FOMC)の金利引き上げ政策続行には正面から反対していますが、政権からの独立性の高い米国金融当局は独自解釈で引き上げ決定したようです。
とはいえトランプ氏によるあまりの恫喝に怯えたのか?年初に公開した12月の利上げ時のFOMC議事録は今後の利上げ予定の取りやめに含みを持たせるような内容であったことが議論を呼び、1月10日以来市場安定化に資しているようです。

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