アメリカンファーストと国際協調1

トランプ氏の米国第一主義はわかり良いスローガンですが、誰だって自分が一番大切なのですが、自分の欲求だけでは社会が成り立たないので、社会あるところ付き合い方のルールがあるのです。
「米国ファースト、都民ファーストと言ってれば何かが決まる訳ではない」と小池都知事の国政参加表明の頃に連載しました。
多くの動物は集団行動で生命を守っていますし、防衛ばかりではなく生活に必要な道具が増えてくると遠隔地との交易の必須度が上がってきます。
たった一人では獲物を素手で取ることができないだけではなく、獲物を取るべき道具を含めて完全自給自足が不可能である限り、100%自分中心で生きていくのは多分石器時代の昔から不可能です。
日本でも石器時代の昔から黒曜石を求めて長距離移動していたことがわかっています。
個人であれ、小集団〜国家であれどの程度で他人〜他集団と折り合いをつけて交際していくかが重要なのに、〇〇ファーストとかグローバル化反対と唱えていれば解決するものではありません。
出来の悪い幼児が駄々をこねているたぐいです。
トランンプ氏の行動をみていると、政治家に要請される高度複雑系の判断に基づくのか疑問を感じる人が多くなっていくでしょう。
「あちら立てればこちら立たず」の2項対立ならば、どちらを味方をするかの決断だけでよかったのですが、中東問題の対処を見ると関係が複雑化しすぎて2項対立の単純思考の文化度ではどうして良いか分からなくなりました。
ナウール共和国の例を引いて資源で食っている国はその分技術文化の発展が阻害されるという私の持論をあちこちに書いてきました。
アメリカはオーストラリアやサウジ同様、資源が国力の基本になっていて資源国の中では比較的優秀人材吸収(移民受け入れ宣伝)に努めたので比較的技術発展できたにすぎない以上、(資源に頼っている分)その限界に見舞われているのは仕方ないことです。
国力と能力乖離のジレンマで歴代大統領が悩んでいるうちに、メッキが剥がれて米国の指導力低下が認識されるようになったのですが、複雑系紛争解決をするには単なる武力や経済力の優位だけでは無理があり複雑系処理能力が必要ですが、米国民の民度では無理があることが分かったということです。
無理があればどうするかですが、能力に余るならば手を引くしかないという単純論理であるべきでしょう。
それを米国ファーストと言い換えているだけですが、米国民の大方がこの自覚を持った・土地成金ならぬ資源成金は成金らしく振舞うしかないということでしょう。
アメリカの民度レベルでは複雑な利害を捌く政治能力がないのは当然です。
アメリカが、19世紀から20世紀にかけてアジア諸国にとって人気があったのは、(日本でいえば、木曽義仲と都人の対比でもわかるでしょう)交渉に長けた複雑系の人がらではなく田舎出の成金らしいおめでたい雰囲気が表に出ていたからです。
第二次世界大戦後覇者になると、気の良さそうなおじさんの役割だけでは物事が進まなくなりましたが、幸い、どんな残逆行為をするかしれない・怖い共産圏諸国という対立軸があったので、アメリカの無茶も通ってきたのです。
ソ連崩壊後恐怖を煽る対立者がなくなると、国家でいえば対立する敵対国がなくなると内政に回帰するしかないのですが、内政は利害が錯綜していて「あちら立てればこちら立てず」で単純能力ではうまくいきません。
アメリカ一強になると国際政治が内政並みになってきて二項対立どころか、5派〜6派に利害が入り乱れる関係になってくると「気持ちの良いおじさん」レベルではどうして良いか分からくなるのは当然です。
世界の警察官ではないとオバマ氏が言ったと報道されていますが、いまも世界一の武力・経済力があるので、軍事力の行使による紛争解決能力がなくとも治安維持程度の能力・・警察官派遣能力・資格はあるでしょう。
軍と警察の違い・・一般的理解では、軍事力は政治と密接に結びついた装置・・要は「国際紛争解決のために利用する装置」ですが、警察は政治判断から切り離された自動装置・・明確な法規違反取締り装置(逆に政治的目的での取り締まりや検挙をするのは違反)です。
紛争解決目的の武力展開力は政治判断によるのですから、政治判断能力がぐちゃぐちゃのままでは、政策目的遂行のための手足となる軍も機能できるはずがありません。
このように警察と具の機能を仕分けすれば、アメリカが果たせなくなったのは、「世界の警察官」をやれないのではなく、政治判断による「軍事力による解決能力がない」ということでしょう。
もしかしたらオバマ氏が言ったのは「紛争解決のための軍派遣・・世界の面倒見られない」と言ったのを、日本メデイア界一致して?「警察官」をやれないと意図的に?誤訳して流布しているのかも知れません。
http://net.keizaikai.co.jp/archives/498

世界の警察官」を返上 オバマ政権、曲がり角に津山恵子(ニューヨーク在住ジャーナリスト)
2013年10月1日
9月10日午後9時、オバマ大統領はテレビ演説でこう語り始めた。
「化学兵器による死から子どもたちを守り、私たち自身の子どもたちの安全を長期間確かにできるのなら、行動すべきだと信じる」と大統領は、化学兵器の禁止に関する国際ルールは維持すべきだと強調。しかし、武力行使に対しては、驚くような考えを明かした。
「米国は、世界の警察官ではない」
「私は、武力行使の必要性に対して抵抗した。なぜなら、イラクとアフガニスタンの2つの戦争の末、ほかの国の内戦を解決することはできないからだ」

上記の文中の「警察官」を軍隊と置き換えたほうが意味が通るでしょう。

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