アメリカンファーストと国際協調3(崩壊?)

狼やその他集団で狩りをし、あるいは、穀物収穫でさえも稲作のように集団行為がひつようですし、販路を求めるにも相応の供給組織(社会連携)が必須です。
今では三内丸山古墳で知られるように石器時代の黒曜石等の単品的交易にとどまらず縄文時代でもいろんな物品について広範な物品の交易をおこなっていたことが知られています。
工業生産になると(例えばある製品部品が100個あるとすれば、その数だけの関連サプライチェーンが必須となり、その部品(例えばタイヤ)を作るのにさらに50個の部品が必要であれば、その先に50倍のサプライチェーンが必須です。
芸術家のように、創造力・個性重視の職業でさえも、顔料その他材料収集と発表の場を求めたりその購買者に至る連鎖の輪に関係しないと自己ファアースとでは成り立ちません。
原始的に見ても馬や象や鳥や魚類のように集団で生活しているのは生命の危険を防ぐ知恵によることは明らかです。
地球最強になった人類は、今では人間による攻撃が最も怖いようになり、暗闇で一人歩くのは怖いという意味の集団行動が暗黙のうちに要請されるようになっています。
白昼公然の違法行為には、誰かの通報によってすぐに警察が来て検挙してくれますが、国家間の暴力(侵略)行為を防止する方法がないので、覇権国が「パックス〇〇」(パックスアメリカーナなど)の平和を脅かす行為に対して制裁することで秩序を保っていた(覇権国の権威を守ってきた)のがこれまでのやり方でした。
パックスアメリカーナと言われてきた所以です。
今年の正月元旦に1年の期間が古代と今では違っていたのではないかの意見?(個人想像)の例で、臥薪嘗胆や春秋時代の覇者になった文公(重耳)の例を書きましたが、覇者になるには武力だけではなく、相応の人望・が必須です。
覇権国とは相対的強者のことですから、人望がないと同調する与国がなくなり私戦禁止令の効力がなくなります。
ロシアが強盗のように公然とクリミヤを併呑しても制裁はせいぜい、自国の影響力の及ぶ範囲の経済制裁程度です。
ロシア制裁は欧米と日本その他の多くが従っていますが、イラン制裁再開に関しては意思統一がないままのトランプ氏にちゃぶ台返し・・独断専行ですので、日本や韓国中国、EU諸国は渋々・・アメリカ国内法違反企業としてアメリカ国内で活動するEUや日本企業が制裁されるのを恐れた仕方なしの同調に過ぎず同一価値観による同調ではありません。
イラン合意に参画した多くの国が「イラン制裁再開すべきと思っていない」以上その規制を守ろうという意識が低くなるのは仕方がないというべきで、ファーウエーが制裁違反行為をしていることを理由に副会長をカナダで逮捕したのは、(課徴金等で締め上げるのはまだしも)世界をびっくりさせました。
一方で覇権挑戦国の中国が公海の一部に埋め立てを始めて軍事基地を作る工事をしてもこれを禁止せずに、自由航行作戦といって軍艦をその付近に航行させる程度でお茶を濁し事実上の黙認です。
中国への弱腰批判に答えたつもりでしょうが、埋め立て工事に直接答えるべきで、こんな方角違いでは「政治プロの行為と言えない」というべきか米国は正面切って中国に何も言えないことを証明しています。
中国歴代王朝が崩壊した原因を見ると強敵が現れた場合は少なく、あちこちに農民暴動が頻発するようになり、鎮圧軍の抑えが効かなくなって最後は、軍閥に乗っ取られてしまう繰り返しの方が多いのです。
オバマが「世界の警察官をやってられない」ということは、王朝時代で言えば「野盗や暴動軍は好きにせよ!自分は首都に引きこもる」と宣言するのに等しいでしょう。
政府が治安責任を負わないと宣言する・・テロや暴動を鎮圧しないで放置するのであれば、全土の支配権放棄と同じです。
ただ、オバマの場合にはこれからの成長予定地であるアジア重視を示し、利害輻輳している中東からの関与縮小を明示していただけですが、トランプ氏の場合それすらもはっきりしません。
そもそも自国だけでのワンマン的世界切り盛りが無理になれば一足飛びに覇権放棄ではなく、有力支持者の協力を得ての覇権維持が普通の方向性です。
ところがトランプ氏は高関税対象を信頼関係のある同盟国にまで矛先をむけ始めたので、同盟と非同盟の意味がぐらついてしまいました。
自国の利益のために構想したTPP脱退を決めたのを手始めに文字通りの地盤である北米地域のNAFTAの改定・・喧嘩を始めたのには、世界中が驚きました。
続いて日本を含めた西側諸国にも高関税攻勢しながら過去の協定等の改定を強要する方向ですが、時間経過でトランプ氏のワンマンぶりには世界がある程度なれたとはいえ、慣れた度合いに応じて世界中のアメリカに対する信頼は同率で低下しているはずです。
同盟国がいつ梯子を外されるか不明では、アメリカに気持ちよく協力ばかりしていられない・中国にも保険をかけておく必要があるので、協力国の協力度合いが低下する一方でしょう。
経済制裁は圧倒的な制裁力があってこそ効力が強いのですが、いまは、世界のかなりの国で対中貿易と対米貿易量が拮抗している・対中貿易の方が多い国が増えています。
特にアジア諸国では対中貿易の方が大きくなっています。
韓国などは数年前から対中貿易の方が多くなっていることから、露骨にアメリカの気に入らないことを正面からするようになった・反抗し始めています。
慰安婦合意の事実上破棄政策・徴用工賠償判決執行あるいは年末の攻撃用のレーザー照射事件ど対日嫌がらせの連発もその延長上のことでしょう。
それでも経済制裁が相応の効果があるのは、(対中貿易が30%で対米貿易20%の場合でも)その他の日欧が米国の制裁に大方強調することで、世界貿易量では圧倒的多数を占める制裁を受けるから威力があるのです。
米国が世界貿易の過半を占めているときにはその威力が絶対でしたが、上記のように比重が下がってきた上に中国が対米対抗意識を燃やし始めると、ロシアのように中国が原油を買ってくれれば問題がないという国が出てきます。
ロシア原油その他ロシア製品全量買う国力が中国にあるとしても、中国に生命線を握られるのは怖いのでできれば避けたいでしょうが、緊急的でみればなんとかなる強みです。
もっと小国では、中国が「引き受けた」と言ってくれれば、中国の方が米国より怖くてもその場は助かるようになってきました。
今のイランの強気もそこにあります。
世界中で対米貿易の比率が下がっている以上は、経済制裁をしても協力国の数の多さがその決め手になるのですが、同盟国・・すぐに追随してくれる国の協力意欲を減退させる方向の政治ばかりではアメリカの威信は下がる一方です。
トランプ氏が力めば力むほどその威令・信用低下が進んでいる・/ひいては協力度合いが下がっていくのに気がつかないのでしょうか?
例えば秀吉が天下人になった以降に惣無事令で私戦禁止したのに反して、北条氏が(上野国の沼田)真田領を攻めたことで小田原攻めに発展したものです。
真田昌幸と幸村の父子が、この恩義・豊臣政権の威令が行き届いたことに感じた・恩義に報いないのは武士道に反するという美学によって、最後まで豊臣家のために奮闘したのです。
今日現在のウイキペデイアによると以下の通りです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%83%A3%E7%84%A1%E4%BA%8B%E4%BB%A4

豊臣平和令のうち、大名間の私的な領土紛争を禁止するものが惣無事令とされる。つまり、領土紛争においては、全て豊臣政権がその最高処理機関として処理にあたり、これに違反する大名には厳しい処分を下すという法令である。また、秀吉は関白の立場を明確に示す形で、あくまでも天皇の命令(勅定)によって私闘禁止(天下静謐)を指令するという立場を掲げた。[2]
惣無事令は、1585年(天正13年10月)に九州地方、1587年(天正15年12月)に関東・奥羽地方に向けて制定された。惣無事令の発令は、九州征伐や小田原征伐の大義名分を与えた。特に真田氏を侵略した後北条氏は討伐され北条氏政の切腹に至り、また伊達政宗、南部信直、最上義光らを帰順させる事に繋がった(奥州仕置)とされる。この惣無事令によって、天正十六年の後陽成天皇の聚楽第御幸の際など、参集した全国の諸大名から関白である秀吉への絶対服従を確約する誓紙を納めさせ、その違背に対して軍を動員した包囲攻撃のみならず、一族皆殺しを含む死罪・所領没収ないし減封・転封といった厳罰を与えた。いわば、天下統一は惣無事令で成り立ち、豊臣政権の支配原理となったのである。[3]

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