資金不足14と人民元流出の攻防3

先進国の場合、国民との信頼関係が構築されていて信頼を基礎にした自由取引が前提ですし、ルールが出来れば守るのが原則ですから、急場における緊急規制や金融政策等が迅速に効果を現します。
信頼関係構築には民主制を実質化(・・国民のための政治に)することが重要です。
中国では為替取引・金融取引その他を自由化していない規制社会ですから、規制どおり何でもやれて便利なように思う方が多いでしょうが実態は逆です。
強権専制社会では、逆にこの不自由さ・・多くは幹部に有利な不正運用の実態があります・・に比例してルール遵守意識が弱く規制をかいくぐるヤミルート・ヤミの智恵が発達しています。
この結果、普段から締め付け過ぎる結果、却って急場(政府の危機)であればあるほど、(帰属意識が低いので)新たな施策をかいくぐる知恵を最大限働かす方向に動きますので、急激な金融規制や政策誘導が全く利かない・・尻抜けになるマイナス社会になっています。
地下水脈中心社会で渇水対策として地上の水門の開閉で調節しようとしても無理があります。
元々法を守らないルーズな社会では自然災害時に少しくらいいろんなルールが乱れてもどうってことがないかのように見えますが、逆に規制の緩んだすきを狙って略奪その他の犯罪が多発するのが普通です。
日本のように普段から(1分も電車が遅れないような)細かなルールがある社会では、一旦乱れる大変かと言うとそうではなくて、自主的にルールを守る社会ですから、東日本大震災時には自発的な食糧分配や助け合いのルールがすぐに生まれたし、それを信じている国民は騒がずにじっと待っていました。
中国の場合、2015/08/21「中国過大投資の調整13(国民を犠牲にする社会1)」以来連載したように、歴史上国民を搾取・抑圧対象にしか見て来ていませんから国民も生き残りの知恵を働かすようになり、相応の裏社会の仕組みを作り上げています。
今回の株式バブルを政府が煽って庶民の資金を絞りとったのも搾取政策のその一環でした。
こう言う騙しあいの社会では、政府が必死になればなるほど国民は政府の弱ったことを知ってその裏をかこうとします。
28日のコラム冒頭に書いたように、人民元の実勢相場下落を防ぐために政府によるドル買い支えも活発です。
自国通貨が下がった方が貿易上有利に決まっていますが、そうは行かないのが中国の実際の懐事情を表しています。
新興国・・インドネシア等弱小国では、通貨下落で貿易上有利になる以前に通貨下落の副作用の方が怖いのが実情です。
通貨が下落すると資金流出して買い物するお金がなくなる上に輸入物価が上がるので、買いたいものが買えない・輸入品不足になって、国民生活が窮迫して行きます。
外貨建て債務の返済額が通貨下落に比例して増えてしまいますが、資金不足で返せないフォルト危機が迫って来るのが普通です。
企業で言えば信用不安が起きると資金繰りに困るのでより多くのお金を借りたいのに、信用不安企業には貸してくれない・貸してくれても優良企業の何倍もの金利を要求されるので、(銀行が高利を要求するのではなく別の高利貸しに行くしかないと言う意味です)余計経営が苦しくなる悪循環です。
中国は外貨準備が巨額と宣伝していましたが、図体の大きさに比例して金額が大きかっただけで、内容実質の脆弱国であることを図らずも世界中に曝したことになります。
中国の場合歴史的に人民の政府に対する信頼感が低いこと・・闇ルートの発達が、緊急時における対応力として他の国よりもかえって脆弱性が高いと言えるでしょう。
政府による人民元買い支えが、ヤミで売る人民に人民元を高値で売るチャンスを与えている・・政府が買い支えている間にヤミで一刻も早く人民元の売り逃げ・・ドルに替えてしまおうとする人民元売りの買い方に政府が結果的に回っている・自分でヤミ流出を煽っているかのようになっています。
上海総合も同様で、政府が(国有企業等に命じて)総出動で株式を買い支えている間に・・売り逃げに徹している・・政府の買い支え政策発動で数日〜1週間値を戻してはジリジリと値下がりを繰り返して最近まで結果的に約4割も下がってしまいました。
かと言って、8月11日のように思いきって通貨切り下げ発表すると表面だった資金流出が始まって痛い目にあったばかりです。
為替は市場価格に関係なく政府が決めるとしていながら実勢相場に影響を与えるために人民元の買い支えに(どこの国でもある程度やっていることですが・・)精出していることになります。
こう言う見え透いた矛盾行為の無理が出て来たのです。
昨日のネットニュースでは、中国政府は今回の株暴落は中国が淵源ではなくアメリカの金融政策(金利上げ予想による資金引き上げ)に責任があると一斉報道を始めたとのことです。
こんなことは、昨年からの経済界の常識テーマですから、この常識を前提に「株式が上がる儲かるぞ!と連日のように人民日報が何故煽っていたかの肝腎の釈明がありません。
南京虐殺や抗日戦勝利など噓でも何でも言い張れば済むと言うこの20年程度のことでも、日本人は中国の虚偽体質に怒り出したのですが、中国国民は2000年以上もこんな噓ばかり言われて煮え湯を飲まされるようなことが続いているので、政府を信用しないし、心底から怒っているので、政府が弱みを見せれば政府の足を引っ張る方に動きます。
中国が世界市場に参加したときには、(私も含めてアメリカの横暴を阻止する仲間になってくれると)多くの国は歓迎していましたが、中国の傲慢な態度にいやな気分になっていて、今では中国がモット小さくなることを期待している国が世界の大方になっているでしょう。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC