中国過大投資の調整13(資金不足11)

中国政府には、通貨切り下げに関する論理があると擁護する論説がいつものようにあり、それはそれで理が通っていますが、市場実勢にあわそうと努力しているというならば、自由変動制にすれば良いことです。
自分の都合のときだけ市場原理を持ち出すから、市場に抵抗し切れなくなったと見られてしまうのです。
舌の根の乾かないうちに、ここ4〜5日ドル買い・人民元相場維持に走っています。
輸出入共に大幅減少では経済が持たないのと資金不足の穴埋めには黒字収入拡大に頼るしかなくなって、国際的メンツをかなぐり捨てでも、やむを得ず通貨切り下げに追い込まれたと世間的には見られていて、今では、世界的な株・資源相場の大幅下落現象が起きています。
8月13日ころの通貨切り下げウチ止め後も、人民銀による豊富な資金供給(買いオペその他)その他矢継ぎ早の金融緩和を打ち出していましたが、8月26日日経朝刊には、またもや中国の金利引き下げ・何兆円と言う短期金融市場への資金供給策発表が出ていました。
これを好感したのか翌日の27日には少し株価が持ち直しましたが、(少しでも好材料が欲しい心理がそうさせているだけ・・何日かしたらまた下がり始めることの繰り替えし・・)一進一退を続けながら奈落の底に落ちて行く・・どこまで進むか、どこで下げ止まるかるかの見極めの様子見になっているのが世界の現状です。
(28日の日経新聞には・・ここ数日で23%・・上海総合が6月の最高高値から、現在4割も下がっていると書いていましたが、どこに書いてあったか探しきれません)
金利を引き下げれば下げるほど(当然のことですが)資金流出が加速し(中国の場合外資が逃げるだけではなく国民も国外へ資金逃避を始めます)国内金融機関の体力が落ちて行きます。
(ロシアであれ、ギリシャであれ資金流出の主役は外資よりは自国民であることは良く知られています)
資金流出加速も怖いが資金不足による国内経済窒息→動乱も怖いと言うジレンマ・・一旦資金流出が始まると新興国が味わうジレンマに陥っていることがよく分ります。
あとで紹介しますが、3兆ドルとも言われている中国のドル建て負債の引き揚げが加速すると大変な危機が始まる可能性があります。
日韓スワップがなくなっても中韓スワップで安心だと豪語していましたが、貧乏人同士で相互保証してもどうにならない現実が浮かび上がってきました。
有事の円とドル買いの現実こそが、世界の日本に対する信用の厚さを証明しています。
以下は、勝又氏のhttp://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/day-20150826.htmからの続きの引用です。
「・・・・『ロイター』(8月13日付)は、次のように報じた。「複数の銀行関係者によると、中国人民銀行(中央銀行)が人民元取引への介入を強化している。国有銀行に対し、特定の水準で人民元を購入するよう委託しているほか、関係部署には、大量の外貨購入を防ぐため、監視強化を指示。必要な場合は銀行に『窓口指導』を行うよう通達を出しているという」。
ここまでくると、「基準値」切り下げが中国人民元相場の「危機」につながった事実がはっきり浮かび上がる。
中国当局は、これまで人民元相場を「高めに」維持してきた。ドル資金の流出を極端に恐れていたからだ。間近に迫った米国の利上げが実現すれば、米中の金利差が拡大する。当然に、ドルは米国へ還流する運命だ。1%の人民元相場の低下は、400億ドルの流出になるという試算もある。中国経済は、完全に米国の金融政策に振り回される局面に変わっている。中国企業のドル建て債務総額は、最も多くて3兆ドルという試算もある。」
3兆ドルもの借入金があると人民元が1割下がると元利金支払額がⅠ割上がる関係ですから、通貨切り下げは真水の外貨準備のない国にとっては大変なことになります。
私が中国の真水の外貨準備がどうなっているかを何回も気にして書いているとおりです。
利息支払どころか、元金引き揚げが始まると大変です。
実際に静かに引き上げが始まっているからこそ、資金不足で窒息しそうになって中国政府がなりふり構っていられないほど追い込まれて来たと見るべきでしょう。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC