資金不足13と人民元流出の攻防2

中国の場合、図体が大きいので特定分野のバブル退治を早くやれば、その分野が縮小してもその他の分野で吸収出来た可能性があります。
大手企業が一部の不採算事業部門を早めにリストラクチャリングするようなものです。
しかし、 May 17, 2015「中国バブルの本質(新興国型経済1)」以下に書いたように新興国の場合、北国の春同様一斉開花のメリットがあって目覚ましいのですが、その裏腹の関係で過大投資の不都合も一斉に来るデメリットがあります。
中国は日本の経験を熱心に勉強していたのですが、この辺が不動産業単発のバブルであった日本との違いです。
不動産バブル崩壊をごまかすため・・政府の弱みを隠蔽する目的もあって、他の分野の救済を兼ねて他の分野に採算度外視のテコ入れをし、その分野が駄目になると更に他の分野に転嫁することの繰り返しをして来た挙げ句に最後は株に誘導して金融機関が大儲けしましたが、最後の最後の株式バブル崩壊になると国全体の崩壊リスクになってきました。
金融機関は株式バブルを煽って大儲け(取引先の資金繰りを助けて倒産先送り)したのですから株式バブルが弾けると当然のことですが、その上乗せ分がはげ落ちます・・29日日経朝刊7pには金融機関の大幅失速が出ています。
国有銀行大手3行では、1〜6月で前期比不良債権3割増となっていて、株式バブル崩壊後の実績は出ていませんが、株式バブルを煽る前に大変な事態に陥っていたことが分ります。
不良債権激増緩和のために株式バブルを煽って資金導入・・株バブルを利用した取引先企業の新株発行や社債発行を容易にして得た資金(政府主導による練金術)で企業が延命資金を得ていたことが知られています。
金融機関の利益率低下は度重なる金利引き下げによるとのことですが、(公表されていないシャドーバンキングの支払い遅延・支払い猶予などが含まれている筈です)金融緩和+潤沢な資金供給がないと倒産騒ぎが広がってもっと不良債権が増えていたことになりますから、本質は実態経済の悪化と言うべきでしょう。
からだ全体が悪くなって血液が濁って来たので輸血〜透析の必要な状態です。
株式バブルを煽って庶民からの資金吸い上げによって一息ついていたのですが、株式バブル崩壊後は不良債権率はもっと酷いことになっている筈です。
6月中旬以降の上海総合の急落後予定していた新株発行や起債が相次いで中止になったと報道されています・・中止した企業の資金繰りがどうなったかです。
29日日経朝刊2pによれば、先週1週間だけで短期金融市場に投じた資金供給が何と5千元(9兆5000億円)以上と言うのですから、金融機関の資金不足がめちゃくちゃになっていると言うことでしょう。
不況対策として公共工事などに財政資金投入しますが、今回は、食べて栄養をつけるよりは直接輸血しているようなものです。
短期資金と長期に資金を寝かす公共工事資金とは質が違うとは言え、1週間で10兆円近い資金の直接供給と言えば、リーマンショックで4〜50兆円の公共投資投入発表に世界中が驚いた規模と比較してもその巨額さに驚きませんか?
公共投資は計画から実際に動き出して完成まで年単位の時間がかかるので、1週間で何兆円も金が動く訳ではありません。
他方でヤミ資金流出が盛んで政府は必死に取り締まっていますが、同記事によれば、先週1週間で摘発したやみ取り引きだけでも4300億元と言うのですから、(ヤミ摘発の何倍何十倍も実際には流出していると見るのが普通・・泥棒でもスピード違反でもみんなが捕まる訳ではありません)人民銀行が1週間で10兆円近い巨額資金供給してもその何倍も海外流出しているのではどうにもなりません。
中国では、28日紹介したように連続金利引き下げだけではなく、中央銀行が市場に買いオペを通じて潤沢な資金供給を続けていますが、待ってましたとばかりに預金を下ろしてヤミで外貨を買って海外流出してしまうザル状態ですから、当局もヤミ摘発に必死です。
病人にいくら食べさせても下痢してしまうような状態です。
こう言うときには無理に食べさせるよりは点滴や下痢止め薬等が必要ですが、この段階の治療法がまだないのでしょう。
政府や企業は国民・従業員を食いものにしている以上、国民・従業員としては、圧迫し搾取される敵対関係ですから、敵対している政府や企業が弱ったとなればこのときこそチャンスと見る国民意識です。
(だからこそ政府は弱みを見せられず虚偽発表していてバブル退治が遅れてしまいます)
このような国民には組織のために最後まで頑張るような意識は全くありません・・弱ったとなれば人よりも先に逃げ出したい・・・泥舟から早く脱出したいのは当然の自衛行為ですから、この攻防がどうなるかが、見ものです。

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