資金不足16と人民元流出の攻防5

今朝の日経新聞朝刊1面にはトップ記事で中国政府が、人民元売りの為替予約規制を始めたと出ています。
銀行は為替予約残高の20%の準備金(無利子)積み立てが要求される仕組みですから、これを銀行が予約企業に転嫁すると、結果的に輸入企業にとってはコストアップですから、輸入関税をかけるような輸入規制・・外貨不足を補完する効果もあります。
中国政府はいつも書くように1石2鳥効果が大好きです。
8月11日の為替の切り下げも表向きIMFの要望に添って相場に合わせたと言う言い訳でした。
規制効果に戻しますと、例えば1億元の輸入代金決済が半年先にある場合、為替予約しようとすると半年前に輸入代金の2割を無利子で銀行が準備金として中央銀行に預けろ」というのが今回の規制骨子ですが、銀行は顧客企業に当然転嫁しますので、企業にとっては(2000万元の借入を増やすしかない・・)資金繰り上大変な負担です。
毎月同額輸入が平均してあるとすれば、6×0、2=12割資金を寝かせておくことになります。
20×市中金利負担がコストですから企業にとっては、それ以上に下がる見込みがないと為替予約出来なくなります。
イギリスのポンド防衛失敗の経験によれば、売りの為替予約を制限すれば、値下がりを(少しでも値下がりの勢いを緩和出来る?)止められると言うもくろみでしょう。
しかしこれは予約する輸入業者向けと投機家向け規制であって、庶民が元を今日の相場で良いからドルに替えたいと言う欲望には直接関係しません。
ただ中国では自由な為替取引自体が禁止されているので、輸入に名を借りた人民元の両替・外貨取得が多いので、予約さえ規制すれば人民元売りの加速を防げると言うことでしょうが、庶民の方は予約が駄目ならば、(本当の輸入ではないのですから契約書だけなら好きに書けるでしょう、)契約上の決済時期を半年先ではなく数週間先あるいは前金払い契約に早めれば良いことです。
そうすると契約内容まで政府が規制する・・現物到着前の代金の一部支払を認めないとなって来るのかな・・どちらにしてもイタチごっこです。
代金支払い方法まで規制するようになって行くと規制が広がる一方で、ドンドン市場経済から遠くなって行きます。
※ 追記です。9月日日経朝刊7pには、中国政府は1日に続き2日に為替スワップやオプションなど全てのデリバティヴ・金融派生商品にも上記措置を適用すると通知したそうです。
一旦規制を始めると際限がなくなる運命が待っています・・経済が窒息するまでやるのでしょうか?
東南アジア諸国等である程度人民元取引が広がっていましたが、こんな状態が続くとどこの国の企業でも元での代金決済をいやがるどころかドル取引であっても一々政府の許可がないと契約が発効しないのでは(一種の輸入規制ですから)いつ許可になるか分らない・・迅速性に反するので中国企業との取引自体を敬遠するようになって行きます。
同じ輸出条件ならばよその国に売った方が合理的です→中国側業者は競争相手国より不利な条件(保証金を積んでくれないと契約自体に応じないとか割高で買うとか)をのむしかなくなって行きます。
世界中で中国の存在が小さくなって行くばかりです・・私は中国の評価が実力相応になれば良いと前から思ってマスコミの過大評価を批判してきましたが、(中国を実力以下に見たいとは思っていません・・それはそれで危険です・・)マスコミが過大評価し過ぎていたメッキがはがれて来たに過ぎません。
実力と合致しない過大評価があると、中国政府が実力差に比例して却ってカラ威張り・・力み返りたくなるので、これが危険な軍事膨張や冒険主義を促しているのです。
今回の規制発表は、6月の暴落時に大株主・機関投資家?半年間の株売却禁止令を出し・大手企業の大半について株売買取引停止を命じたのと似ていますし、遡れば、歴代王朝末期の流民化阻止のために農民の移動禁止していたのと同じ発想です。
大手企業の株式売買禁止令は、自分で一部企業のデフォルト宣言している・・国際機関から不適格企業との烙印を押されて取引停止処分を受けたような結果にならないか?と書いたことがあります。
今回は為替取引について、事実上蛇口を狭めることになるので、国際取引縮小を目指す結果になってしまいますので、国際機関から制裁を受けたような効果を自分で率先して行なっているようなものです。
中国政府としては8月11日の為替切り下げ時には表向き実勢相場に合わせたと言い訳があり、早速IMF専務が歓迎表明し、日本の学者・マスコミはそう言う意見を紹介して立派なものだと言わんばかりの論説が目立ちました(曰く・統計的に見ると貿易黒字が増えているので輸出拡大を目指したものではない・・市場の反応が間違っていると言う意見が主流でした)が、今回は言い訳すらありません。
今更格好付けていられないほど切羽詰まっていることの公式表明ですし、(同紙面に中国の外貨準備・公表値?では、14年6月に比して7月までには約1割も減少していると書いています)・・今回の規制発表は、この1カ月では投機売りが拡大していて資金流出に我慢し切れなくなったと見るべきですから、この間にもっと大幅にドル資金が減っているのだな!と世界中が見られてしまうリスクを考える余裕がなくなったと見られます。
この点は兎も角として、驚いた外国人投資家が反応するので(外国人投資家はヤミルートがないので、政府発表に反応する傾向があります)一時持ち直すでしょうが、裏をかくのが得意な人民ですからこんな小手先のことでは株式相場のテコ入れ策同様に1週間もすればまた人民元相場が下がり始めるのではないでしょうか?
株式相場は26日ころのテコ入れで一時持ち直していましたが、先週末ころからまた下がり始めました。

資金不足15と人民元流出の攻防4

人民元買い支えを続けるとドル資金(外貨準備)が日々流出して行きます。
日本の円高阻止のためのドル買いは小泉政権のように円紙幣を無限に印刷すれば出来ることですが、自国通貨下落阻止のための介入は市場と本格的に戦うようになると買い支えにつぎ込むドル資金がみるみる減って行き、限度があるので論理的に無理があります。
しかも外国人が保有している売り浴びせるべき人民元紙幣には限度がありますが、(ソロスのように先物予約でその間に売り浴びせて下がったところで決済すれば大儲け出来ますが、政府がその決済期までに買い支え切ると為替予約した分の損が出ますから、大相場の場合読みが狂うと破産の危機があり、リスクが大きいのですが、)国民が人民元を売ってドルに替えようとすると売り方に回る人民元紙幣は無尽蔵です。
今の中国は、国内資金逼迫解消のために政府は金融緩和し潤沢にマネーサプライを増やすしかない状態ですから、人民の方には売り逃げるべき資金は無尽蔵に出て来ます。
ですから、介入していることが分らないように実勢相場を誘導している限り・市場を誤摩化せる限度での買い支えは有効ですが、露骨に相場維持していると見られて、実勢相場は違う・・「近いうちに支え切れずに下がって行くだろう」と言う憶測が広がれば売り逃げ・外貨預金しようとする人が無限大に増えるので最後には屈服するしかなくなります。
10年ほど前にこのコラムで紹介したポンド防衛は仕手筋との戦いでした・・勝敗はやってみなければ分らない・・勝負を仕掛ける方はリスクが高いので、仕掛けて勝ったソロス氏は有名になりましたが、今回は名もなき億単位の人民との戦いですから政府に勝ち目がありません。
中国では、秦帝国以来王朝が毎回庶民の暴動によって崩壊して来たのが、中国2000年間の歴史ですが、今回は政府軍武力が巨大でいくら民衆が立ち上がっても残酷な殲滅作戦には、庶民は歯が立たないのですが、その代わり、人民元売却と言う雪崩のような動きで政府を押しつぶそうとしていることになります。
国家の衰退が始まると、ロシアやギリシャの例を引いて外貨流出の主役は外資よりは自国民が中心であると28日に書きました。
世論誘導も同様で目に見えないやり方の場合相応の効果がありますが、言論弾圧が目に見えるようになると政府施策の信用がた落ちです。
習近平政権は株の暴落・天津大爆発に端を発して狼狽したのか?なりふり構わない言論統制強化、経済統制強化(大手企業の株式売却禁止など)ですから、最後のあがきに入っていると見る人が増えてきました。
規制強化すればするほど世界市場からは、ついに最後が来たのか?と言う目で見られて売り浴びせが起きます。
政府による裏での人民元買い支えが終わった・・力尽きた(外貨準備が本当はないのではないか?)と市場で見られると株式どころか、人民元自体の大暴落に繋がりかけています。
先週あたりに書いたように、中国人民と政府とは対立関係ですから、人民にとっては国益よりも自己保身第一ですから、将来の人民元値下がりを恐れて早めに売り逃・・外貨に換えておきたいのは当然の動きです。
中国では、政府も国民もお互い裏取引の動向を見て行動する変な社会・・要はルールなき社会になっています。
民主社会とは透明性の重視が本質ですが、透明性を担保する基礎インフラは誰の目にも明らかなルール化です。
中国では、知財剽窃を象徴として、サイバー攻撃による機密情報窃取その他全ての分野でルール無視を政府が先頭に立って行なっている状態です。
中国は法治主義ではなく人治主義と一般的に言われますが、法規制も国会等による決定ではなく幹部の腹づもりで決めて行く社会ですから、ヤミ社会のルール・山口組の掟と変わりません。
選挙制度の有無にかかわらず、為政者は都合の悪いことを国民に知られたくない・・透明性があれば、自然に身ぎれいにするしかなくなりますが、統計や資料を不透明にし、都合の悪いことを報道させなければ、やりたい放題になります。
独裁制と統計等の欺瞞性・これを暴く報道の自由がないことは(ソ連も同じでした)表裏の関係にあることが分ります。
中国では強権社会化=厳しいルール化については、韓非子の時代からの歴史がありますが、それが民意重視から出たものではなく支配意思貫徹のためのルールでしかなかったのが不幸な歴史になりました。
法の目的がそうですから、国民はこれを自発的に守る意識どころか、逆に如何に潜脱するかの智恵・・ヤミルートが発達してしまいました。
裏取引中心の社会では、透明性とは真逆の社会です。
中国政府も実態を反映しない虚偽統計発表し(企業で言えば税を免れるために虚偽帳簿を作るようなことを政府がやっているのです)、政府が率先してサイバーテロ・・先進技術情報窃取していて羞じるところがありませんし、何もかも法治国家以前の社会のママです。

資金不足14と人民元流出の攻防3

先進国の場合、国民との信頼関係が構築されていて信頼を基礎にした自由取引が前提ですし、ルールが出来れば守るのが原則ですから、急場における緊急規制や金融政策等が迅速に効果を現します。
信頼関係構築には民主制を実質化(・・国民のための政治に)することが重要です。
中国では為替取引・金融取引その他を自由化していない規制社会ですから、規制どおり何でもやれて便利なように思う方が多いでしょうが実態は逆です。
強権専制社会では、逆にこの不自由さ・・多くは幹部に有利な不正運用の実態があります・・に比例してルール遵守意識が弱く規制をかいくぐるヤミルート・ヤミの智恵が発達しています。
この結果、普段から締め付け過ぎる結果、却って急場(政府の危機)であればあるほど、(帰属意識が低いので)新たな施策をかいくぐる知恵を最大限働かす方向に動きますので、急激な金融規制や政策誘導が全く利かない・・尻抜けになるマイナス社会になっています。
地下水脈中心社会で渇水対策として地上の水門の開閉で調節しようとしても無理があります。
元々法を守らないルーズな社会では自然災害時に少しくらいいろんなルールが乱れてもどうってことがないかのように見えますが、逆に規制の緩んだすきを狙って略奪その他の犯罪が多発するのが普通です。
日本のように普段から(1分も電車が遅れないような)細かなルールがある社会では、一旦乱れる大変かと言うとそうではなくて、自主的にルールを守る社会ですから、東日本大震災時には自発的な食糧分配や助け合いのルールがすぐに生まれたし、それを信じている国民は騒がずにじっと待っていました。
中国の場合、2015/08/21「中国過大投資の調整13(国民を犠牲にする社会1)」以来連載したように、歴史上国民を搾取・抑圧対象にしか見て来ていませんから国民も生き残りの知恵を働かすようになり、相応の裏社会の仕組みを作り上げています。
今回の株式バブルを政府が煽って庶民の資金を絞りとったのも搾取政策のその一環でした。
こう言う騙しあいの社会では、政府が必死になればなるほど国民は政府の弱ったことを知ってその裏をかこうとします。
28日のコラム冒頭に書いたように、人民元の実勢相場下落を防ぐために政府によるドル買い支えも活発です。
自国通貨が下がった方が貿易上有利に決まっていますが、そうは行かないのが中国の実際の懐事情を表しています。
新興国・・インドネシア等弱小国では、通貨下落で貿易上有利になる以前に通貨下落の副作用の方が怖いのが実情です。
通貨が下落すると資金流出して買い物するお金がなくなる上に輸入物価が上がるので、買いたいものが買えない・輸入品不足になって、国民生活が窮迫して行きます。
外貨建て債務の返済額が通貨下落に比例して増えてしまいますが、資金不足で返せないフォルト危機が迫って来るのが普通です。
企業で言えば信用不安が起きると資金繰りに困るのでより多くのお金を借りたいのに、信用不安企業には貸してくれない・貸してくれても優良企業の何倍もの金利を要求されるので、(銀行が高利を要求するのではなく別の高利貸しに行くしかないと言う意味です)余計経営が苦しくなる悪循環です。
中国は外貨準備が巨額と宣伝していましたが、図体の大きさに比例して金額が大きかっただけで、内容実質の脆弱国であることを図らずも世界中に曝したことになります。
中国の場合歴史的に人民の政府に対する信頼感が低いこと・・闇ルートの発達が、緊急時における対応力として他の国よりもかえって脆弱性が高いと言えるでしょう。
政府による人民元買い支えが、ヤミで売る人民に人民元を高値で売るチャンスを与えている・・政府が買い支えている間にヤミで一刻も早く人民元の売り逃げ・・ドルに替えてしまおうとする人民元売りの買い方に政府が結果的に回っている・自分でヤミ流出を煽っているかのようになっています。
上海総合も同様で、政府が(国有企業等に命じて)総出動で株式を買い支えている間に・・売り逃げに徹している・・政府の買い支え政策発動で数日〜1週間値を戻してはジリジリと値下がりを繰り返して最近まで結果的に約4割も下がってしまいました。
かと言って、8月11日のように思いきって通貨切り下げ発表すると表面だった資金流出が始まって痛い目にあったばかりです。
為替は市場価格に関係なく政府が決めるとしていながら実勢相場に影響を与えるために人民元の買い支えに(どこの国でもある程度やっていることですが・・)精出していることになります。
こう言う見え透いた矛盾行為の無理が出て来たのです。
昨日のネットニュースでは、中国政府は今回の株暴落は中国が淵源ではなくアメリカの金融政策(金利上げ予想による資金引き上げ)に責任があると一斉報道を始めたとのことです。
こんなことは、昨年からの経済界の常識テーマですから、この常識を前提に「株式が上がる儲かるぞ!と連日のように人民日報が何故煽っていたかの肝腎の釈明がありません。
南京虐殺や抗日戦勝利など噓でも何でも言い張れば済むと言うこの20年程度のことでも、日本人は中国の虚偽体質に怒り出したのですが、中国国民は2000年以上もこんな噓ばかり言われて煮え湯を飲まされるようなことが続いているので、政府を信用しないし、心底から怒っているので、政府が弱みを見せれば政府の足を引っ張る方に動きます。
中国が世界市場に参加したときには、(私も含めてアメリカの横暴を阻止する仲間になってくれると)多くの国は歓迎していましたが、中国の傲慢な態度にいやな気分になっていて、今では中国がモット小さくなることを期待している国が世界の大方になっているでしょう。

資金不足13と人民元流出の攻防2

中国の場合、図体が大きいので特定分野のバブル退治を早くやれば、その分野が縮小してもその他の分野で吸収出来た可能性があります。
大手企業が一部の不採算事業部門を早めにリストラクチャリングするようなものです。
しかし、 May 17, 2015「中国バブルの本質(新興国型経済1)」以下に書いたように新興国の場合、北国の春同様一斉開花のメリットがあって目覚ましいのですが、その裏腹の関係で過大投資の不都合も一斉に来るデメリットがあります。
中国は日本の経験を熱心に勉強していたのですが、この辺が不動産業単発のバブルであった日本との違いです。
不動産バブル崩壊をごまかすため・・政府の弱みを隠蔽する目的もあって、他の分野の救済を兼ねて他の分野に採算度外視のテコ入れをし、その分野が駄目になると更に他の分野に転嫁することの繰り返しをして来た挙げ句に最後は株に誘導して金融機関が大儲けしましたが、最後の最後の株式バブル崩壊になると国全体の崩壊リスクになってきました。
金融機関は株式バブルを煽って大儲け(取引先の資金繰りを助けて倒産先送り)したのですから株式バブルが弾けると当然のことですが、その上乗せ分がはげ落ちます・・29日日経朝刊7pには金融機関の大幅失速が出ています。
国有銀行大手3行では、1〜6月で前期比不良債権3割増となっていて、株式バブル崩壊後の実績は出ていませんが、株式バブルを煽る前に大変な事態に陥っていたことが分ります。
不良債権激増緩和のために株式バブルを煽って資金導入・・株バブルを利用した取引先企業の新株発行や社債発行を容易にして得た資金(政府主導による練金術)で企業が延命資金を得ていたことが知られています。
金融機関の利益率低下は度重なる金利引き下げによるとのことですが、(公表されていないシャドーバンキングの支払い遅延・支払い猶予などが含まれている筈です)金融緩和+潤沢な資金供給がないと倒産騒ぎが広がってもっと不良債権が増えていたことになりますから、本質は実態経済の悪化と言うべきでしょう。
からだ全体が悪くなって血液が濁って来たので輸血〜透析の必要な状態です。
株式バブルを煽って庶民からの資金吸い上げによって一息ついていたのですが、株式バブル崩壊後は不良債権率はもっと酷いことになっている筈です。
6月中旬以降の上海総合の急落後予定していた新株発行や起債が相次いで中止になったと報道されています・・中止した企業の資金繰りがどうなったかです。
29日日経朝刊2pによれば、先週1週間だけで短期金融市場に投じた資金供給が何と5千元(9兆5000億円)以上と言うのですから、金融機関の資金不足がめちゃくちゃになっていると言うことでしょう。
不況対策として公共工事などに財政資金投入しますが、今回は、食べて栄養をつけるよりは直接輸血しているようなものです。
短期資金と長期に資金を寝かす公共工事資金とは質が違うとは言え、1週間で10兆円近い資金の直接供給と言えば、リーマンショックで4〜50兆円の公共投資投入発表に世界中が驚いた規模と比較してもその巨額さに驚きませんか?
公共投資は計画から実際に動き出して完成まで年単位の時間がかかるので、1週間で何兆円も金が動く訳ではありません。
他方でヤミ資金流出が盛んで政府は必死に取り締まっていますが、同記事によれば、先週1週間で摘発したやみ取り引きだけでも4300億元と言うのですから、(ヤミ摘発の何倍何十倍も実際には流出していると見るのが普通・・泥棒でもスピード違反でもみんなが捕まる訳ではありません)人民銀行が1週間で10兆円近い巨額資金供給してもその何倍も海外流出しているのではどうにもなりません。
中国では、28日紹介したように連続金利引き下げだけではなく、中央銀行が市場に買いオペを通じて潤沢な資金供給を続けていますが、待ってましたとばかりに預金を下ろしてヤミで外貨を買って海外流出してしまうザル状態ですから、当局もヤミ摘発に必死です。
病人にいくら食べさせても下痢してしまうような状態です。
こう言うときには無理に食べさせるよりは点滴や下痢止め薬等が必要ですが、この段階の治療法がまだないのでしょう。
政府や企業は国民・従業員を食いものにしている以上、国民・従業員としては、圧迫し搾取される敵対関係ですから、敵対している政府や企業が弱ったとなればこのときこそチャンスと見る国民意識です。
(だからこそ政府は弱みを見せられず虚偽発表していてバブル退治が遅れてしまいます)
このような国民には組織のために最後まで頑張るような意識は全くありません・・弱ったとなれば人よりも先に逃げ出したい・・・泥舟から早く脱出したいのは当然の自衛行為ですから、この攻防がどうなるかが、見ものです。

資金不足12と人民元流出の攻防1

資金不足の現状については、中国政府発表がインチキ過ぎて推測するしかないのですが、アメリカ財務省証券保有変動がアメリカによって公表されているので、これの売り越をすれば中国経済の苦しさすぐにバレるので、中国にとって出来るだけ売却したくない外貨準備である筈です。
最近中国のアメリカ国際保有額減少が続いているニュースを見聞きしているのですが、イザ探してみると、以下の記事しか出て来ませんが、これによっても、2年前から日中の保有額差が縮小していたことが分ります。
中国のアメリカ国債保有額が増えるときばかり報道するマスコミの姿勢にも問題がありますが、安倍政権が12年末発足ですから、その後の大変化を前提にすると今ではギリギリの僅差または逆転が視野に入っているのではないでしょうか?
8月中旬だけで人民元買い支えのため・・株式介入資金繰りのために?約12兆円分の外債を中国は売り払ったとも推測されています。(公式発表がいないので当然憶測意見です)

http://kikinzoku.tr.mufg.jp/blog/2013/post-418.htmlからの引用です。
中国が米国債480億ドル分の財務省証券を売却!!
まず統計的に見ると、外国人の米国債保有一位中国と二位日本の保有額推移は以下の通りだ。

   2013年8月     7月         2012年8月 
  
中国 1兆2681億    1兆2793億    1兆1552億ドル

日本 1兆1491億    1兆1354億    1兆1209億ドル

緊急性のない資源輸入先送りや保有の金や買いだめた資源などの売却の外、先ずは不要不急製品の出血輸出などで外貨獲得すればいいこと・・これが輸入減少による貿易黒字増加になっていますが、アメリカ国債や日本株式や債券の売却は、金放出や出血輸出では足りなくなって目立つけれども仕方なしにアメリカ国債の売りをするしかなくなっていることになります。
苦しいから売り食いによる貿易黒字増加ですから、不健全な状態です。
(この後で書くように、ヤミの資金流出が続いていてその取締に政府は必死ですが、その一形態として輸入代金決済を装った外貨流出も当然含まれている・・実際の輸入はもっと減っているのかも知れません)
まして「有事の円とドル」ですから波乱が起きると買いたい通貨であって売りたい通貨ではありません。
大分前から中国スジとして知られている投資集団保有の株式や債券が激減していることが報道されていました。
中国にすれば上昇した日本株を売り逃げして儲けたと言うことでしょうが、日本からすれば中国スジに多く保有されているのは気持ちの良いことではありませんから「良かったね!」と言うところです。
中国によるアメリカ財務省証券保有額や日本株式等の保有が減っている場合、少なくともそれ以上に金その他の外貨準備が減っている・・売るものがなくなって来た・・資金不足が深刻と読むべきでしょう。
8月22日の日経朝刊には、中国発の経済縮小不安が世界の資源や株式相場を下げ基調にしていると言う大きな記事が出ています。
新興国では、(借金を含めた)外資の流入が減って来ると、過大投資のツケが全ての分野で表面化し始めます。
(際限ない経済活動拡大を前提に先へ先へと送って拡大投資していた点では、中国に限らず資源国その他世界全てバブルっぽい動きでした)
中国の場合、バブル退治・正確には拡大前提の投資行動のモデルチェンジをしなければならないと分っていても、病原菌が体全体に回ってしまったような状態ですから、日本のバブルのように不動産分野だけ融資規制すれば良いと言う訳に行きません。
・・かと言って、何もかも引き締めるわけにはいかない・・このシリーズで書いているように全般的経済不振に転嫁・先送り→拡大してしまった以上は、金利を下げたり資金供給を増やしたりして金融緩和しないと経済が窒息してしまうリスクがありますが、あまりにも先送りし過ぎた結果、資金流出騒動になって来たところが致命的です。

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