共産圏的集団指導体制2と地方の衰退1

日本を除くアメリカ、ドイツ等どこの国でも、地方に大企業本社等があり、新規企業が生まれています。
戦後、日本だけ地方では滅多に新規企業が生まれない・・せっかく工場誘致してもその技術を利用して我がものにしてしまう土壌がない原因は、昨日書いたように中央への人材流出パターンに本質があるとしても、占領軍の置き土産・・農地の共産主義的細分化+指導強制による無気力化政策の成功も影響があった可能性があります。
中央の指導強化と地方の発展性に付いて考えて行きます。
自由な発想・思考錯誤に任せると失敗も多いし、すぐに良い結果が出る訳ではありません。
しかし、百〜千人の挑戦者の中から一人でも成功者が出れば全体として長期的に良い社会になると言うのが、産業革命以降世界の一致した考え方でしょう。
逆から言えば、どこかの成功例を探して来て伝授指導するばかりでは、自主開発に挑戦する精神が鍛えられず、長期的には発展の根が枯れてしまいます。
日本企業の衰退と逆転バネのある企業を比べると分りますが、目先が利いてある事業モデルで稼いだ会社は、世界の流れが変わると、応用力がなく衰退する一方となりますが、時間がかかるものの自発的研究開発で自力で伸びて来た会社新たな社会へ対応するべく次の事業へ転換して生き残り復活出来ています。
中国のような超低賃金国の生産競争参加で、日本はもう駄目だと言われながらも時間をかけて、地味に努力して来た結果、今漸く復活出来た背景は飽くまで根気のいる自前技術のある企業が頑張ったからです。
世界の潮流が変わると対応出来ない企業は、それまで時流に乗っていただけで、物まねして来て、自前技術を育てていなかった会社のメッキが剥げる場合が殆どです。
スーパーダイエーで言えば、アメリカ流スーパー販売方式導入で流通業界を席巻したのですが、それだけでは他所も導入すれば、横並び競争になり負けてしまいました。
中国の安い人件費目的に真っ先に進出した中規模家電メーカーは、1時一世を風靡しましたが、みんなが進出するようになると淘汰されてしまいました。
またその後進出した大手もサンヨー電気その他特定技術を持たない以上は、現地企業が育つと負けてしまいました。
松下→パナソニックも低賃金目当ての中国進出からの方針転換・撤退で、BTOBへ戦略転換して何とか踏みとどまり、黒字転換を果たしています。
時代が変わるごとに無数にあった同業種企業群から、転換成功して生き残って来た企業は(各業界ごとに日立、東レ・・零細事業では蒲田の個人事業者までその他枚挙にいとまがありませんが・・)自前技術を大事にして来た企業ばかりです。
中韓の企業は先進国技術の導入・指導を受けてやる分には失敗がなくて効率が良かったのですが、この効率の良さの故にこれに比例して自前技術があまり育っていないので、反日運動の結果日本からの技術導入が細るとどうなるか・・ドイツとの親密化期待・・に関心が移っています。
未熟な子供や部下にやらせるとマドロッコしいし失敗も多いですが、親や上司が何でも手を出していると子供や部下が育ちません。
長期的発展のためには完成モデル模倣の指導よりは、失敗しても良いから自発的工夫力を磨くことが必要です。
中ソは後進国だったので革命後先進国技術をエリートが研究し、模倣(スパイが盗んで)して中央が指導する形式・・政治的には独裁が妥当しました。
このモデルが共産圏への先進技術輸出禁止(ココム・チンコム等)の結果、厳しい警戒をかいくぐっての剽窃(スパイ活動)に頼るしかなくなった結果、導入範囲が特定軍事技術・ロケット等の分野に偏るしかなくて、幅広い民生技術まで及ばないことから、共産圏社会の停滞が際立ってきました。
これがソ連の崩壊や中国が共産主義政権のまま自由主義経済への参加・開放政策へ転換せざるを得なくなった基礎でした。
安倍政権の農業改革・岩盤崩しの要点は、この指導監督制度の強化よりは、廃止・縮小に的を絞り、一時的に停滞しても自発的努力をする業界、努力すれば報われる業界への転換を図るべきでしょう。
「地方創生」のかけ声自体が国主導で地方活性化しようとするもので、無駄な努力と言うよりも、マイナス効果が見込まれます。
農家や地方政治を指導に頼らせる基本政策を決めているのが、以下の条文です。

農協法
第七十三条の十五  農業協同組合中央会(以下「中央会」という。)は、組合の健全な発達を図ることを目的とする。
第七十三条の二十二  中央会は、その目的を達成するため、次に掲げる事業を行う。
一  組合の組織、事業及び経営の指導
二  組合の監査
三  組合に関する教育及び情報の提供
四  組合の連絡及び組合に関する紛争の調停
五  組合に関する調査及び研究
六  前各号の事業のほか、中央会の目的を達成するために必要な事業

上記のとおり共産圏で一般的な党中央の方針を下部組織に徹底して行くやり方そのままを法制化したもののようです。
共産党中央ならぬ、農協中央の指令に基づくやり方では(傘下の単位組合や個々の農民は指令を待つばかりで)農業の自主的発展は望めません。

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