衰退産業保護2(官と臣1)

時事問題から離れて産業助成・振興策に戻します。
太陽光発電も元は日本が先発組だったはずだったのに、いつの間にか中国メーカーに負けるようになっていたのには驚きましたが、衰退が始まる・・負け組になってから巨額補助金政策を行なっても中国企業がそれで大儲けする結果で終わったようです。
表向き国内メーカーのシェアー9割?といっても海外生産品を国内企業のOEM生産や膨大な部品組立なので、最後の部品だけ国内生産で、国内企業製という名称になっているようです。
詳細は以下の解説データをお読み下さいhttp://standard-project.net/solar/maker/country.html

生産工程のすべてを国内の工場で行っているメーカー/ブランドの一覧です。国産にこだわる傾向が強い日本の太陽光発電市場ですが、中国メーカーの安価なパネルが流通する中でもシリコン系パネルでいうとセルの生産から国内工場で一貫して行うメーカーは減ってきている状況です。

https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/article/NEWS/20140904/374263/

太陽光パネルの世界出荷、中国系メーカーが上位20社を独占する勢い、シャープは大幅減、米調査会社が公表

上記は14年のデータですが、世界規模で見れば中国企業の生産が独占状態になっているのに、国産といっても最後の組み立て設置をするのみ?という詐欺まがい・(農産物で言えば最後の袋詰めだけ日本でやれば国産?というのと同じ)の商法の実態が上記データから見えます。
中国が先進国から輸入する部品組立で輸出するので中国の輸出が急激に伸びた逆バージョンです。
中国韓国や後進国の場合、これを繰り返すうちに国内製造できる部品レベルが徐々にアップしていくメリットがあるのですが、先進国が自国生産がコスト競争力を失って国外生産移転する場合、自国内部品製造が減る一方で最後は受託生産・一括丸投げになります。
この状態で購入者に補助金を出して高額購入をさせれば、その資金は実際の生産国が対日高値輸出できるようになるだけです。
太陽光発電s東夷設置者に対する多額補助金の大部分が中国企業に実質流れていたように見えます。
民主党政権が始めたことなので安倍政権になって補助金を急激に絞り始めましたが・・・.。
ところで官と臣はほぼ語源が同根ではないでしょうか?
官の漢字源(藤堂明保ほか編集)をみると官とは宀=家の中に大勢の人が集まったサマを表すとあり、「垣根で囲まれた家屋に集まった役人のこと」とも書いてあり、元は宦とも書いたが、その後「宦官」の特殊用例が一般化した以降は、官と宦官の間とは別の役目になったと書いています。
宦官の「宦」のほうが、家にある臣・後世の家臣・直臣の意味に合って用法にぴったりの感じですが、王家に仕える役人(宦官・官)が増えてくると側近が幅を利かすようになります。
側近の私欲に繋がりやすい世襲性を防げば政権壟断がなくなるとの思惑から断種した官僚・元は宦官のみを側近に登用するようになり、以降は断種した男性官僚のみを側近中の側近の資格にしたので、これだけを宦官というようになったために、宦官と区別するためにその他役人を官というようになったのでしょうか?
臣民であろうと官民であろうと、皇族以外は全員「民」である上に、明治政府による四民平等政策以降は臣と民を分類する意味がなくなっていたはずです。
言葉の意味では単純な「たみ」でいいのですが、日本人は漢字にした時に二字熟語にしないと落ち着かない国民性ですので「民」に何をくっつけるかの違いでしょう。
皇族以外は臣民というのは一応当たり前過ぎですが、臣民を合わせた二字熟語をなんというかの問題で抵抗権に魅力を感じるグループは人民といい、その他の人は「日本国の民なのだから国民」千葉県の人は千葉県民というようにこれが普通になってきたのでしょう。
県民の中で、県の役人・公務員とその他職業をあえて分ける必要を感じない・単なる職業の一つでしかないのが現実社会です。
明治以降の一君万民思想で天皇(皇族)以外は全部平等な民になった以上は、公務員も多種多様な職業の一つにすぎなくなったのですから、公務員とそれ以外2種類に分類する必要性がなくなったはずです。
単に日本国の民=日本国民とすれば単純だったと思いますし、明治憲法で「臣民の権利義務」などと書く必要がなかったのです。
民の中には大工も官僚も商人も漁民もいますが、あらゆる職種を憲法に羅列する必要がなくまとめて「民の権利義務」で良かったのです。
臣民・天皇直属の役人とその他の権利義務と書いても、臣と民で権利義務が変わるものではない・・どちらも日本国民であり同一の刑法民法税法等の適用があります。
高級官僚も庶民も皆家族法の対象ですし、買い物代金を支払う義務=民法の適用があり、殺人傷害等すれば同じく刑法対象です。
臣民を今風の言語で言えば、国家公務員も総理大臣も皆国民であり、国民(国内に居住する人全員?形式的には国籍取得者)の中から、国家公務員や民間人に分かれるなど「国民」は大元の上位概念です。
明治憲法下においても国家公務員・官僚を辞職すれば在野ですし、在野から官僚にもなれる、「臣と在野」は互換性をもっていました。
法の適用は国民に対する法の下の平等であって、官僚と一般国民との違いによって適用される刑法や民法に違いがありません。
明治憲法下でも高級官僚も一般の人も(家族法分野で言えば、婚姻や親子関係など)皆同じ法の適用がありましたので、明治憲法で臣民の権利義務とわざわざ分類したのは無用な分類だったと12月29日に書きましたが、明治憲法は「臣民」と表示することによって臣と民を分けたのではなく一体化を図った・・領民全員が権力機構の一員・手先になるべきであり「権力対象になる民は存在しない」とのフィクションを構成したのでしょうか?

衰退産業延命1(ゴーン逃亡)

官民ファンドなどと表現するのは臣民用語を焼き直したに過ぎず、メデイアがこのように表現するようになったのは、政府が経営内容にまで介入どころか決定権まで持つようになった事に対する「これでは第三セクターどころではない国営でないか?」という婉曲的、遠慮がち批判かもしれません。
戦後「臣民」表示が国民主権の精神に反するようになって都合悪いとなれば「臣民」意識そのままで言葉だけ「官民」にすり替えるなんておかしいと思っていましたが、この10年ほど政府介入が大きくなりすぎている点に対してメデイア界が、これでは戦前の国策事業とどこが違うの?という抵抗精神で官民協働・半官半民と揶揄する高度表現するようになったのでしょうか?
そもそも昨日書いたように、これから伸びるなら応援するのは意味がありますが、実力が落ちてきた事業の延命のために税を投入する発想自体がおかしいのです。
野球や相撲スケート等の名アスリート、企業の敏腕営業マン、社長その他全ての分野で現役としての実力低下が始まればコーチ〜監督〜営業現場から管理職へ、社長から会長、相談役〜業界活動等に転身を進めるべきです。
今世界を騒がせてレバノン政府等を困惑させているゴーン氏を例にすれば、日産立て直しに成功した数年で役目を終えたとして潔く転身していれば華麗な経歴だけ残ったのでしょう。
大改革に向いた才能と改革後の維持とは能力発揮場面が違うのに、(「創業と守成いずれが難きか?」の故事の通りで)地位にしがみつき金銭欲?にこだわったばかりか、恥の上塗り?的な国外逃亡という悪手に頼ったためみっともない連鎖になりました。
国外違法出国は関係者多数に違法行為による訴追される負担を負わせる外、関係政府等に困惑を引き起こすのは目に見えた筈です。
我々弁護士こういう相談を受ければ、自身が新たに違法行為を行うだけでなく、本来無関係な多くの人を違法行為に引きずり込み、迷惑をかけることが目に見えているのでこれをやると
「この人はもともとこういう他人を巻き込んでも違法行為を犯すことをものともしない人だという評価が定着してしまい総合的なマイナス効果の方が大きい」
ことを説明して同意せず実行を思いとどまらせる努力をする・説得に応じなければ辞任することになるのが基本セオリーです。
ゴーン氏は起訴事実の有無という客観的事実で争うより国際世論を味方につけたいという戦略とすれば、このような違法行為を行うことが、国際世論の支持につながると判断したのでしょうか?
国際世論は時間が経たないと結果が出ませんが、稀代の成功者イメージが違法行為の積み重ね・・周りを巻き添えにしてきた・汚れ役には相応の巨額対価を払ってきたので彼らは検挙されるのを覚悟の上だから迷惑をかけていない・・としても「闇の金によって何でもやる」イメージが出来上がっては逆効果でしょう。
国によって受け止め方が違うでしょうが、ゴーン氏が期待するはずのフランスやレバノンでは富裕層との格差に対する不満が盛り上がっている最中です。
こういう国では富裕層実力者が裏でゴーン氏に甘い約束をしたかもしれませんが、巨額資金で違法行為を実行するゴーン氏を英雄扱いどころか、表立って彼を擁護すれば政治リスクが大き過ぎます。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/11/post-13354_2.php

激動のレバノン、大規模デモと経済危機の背景とは
2019年11月10日(日)13時22分
レバノンは10月半ばから、首都ベイルートその他の都市で反政府デモによる混乱が広がり、サード・ハリリ首相が辞意を表明する事態となった。既に危機に陥っていた経済への信頼感は揺らいでいる。
反政府デモの参加者らは、政治エリート層が商売と政治を結ぶ恩顧主義の網を通じ、国家資源を使って私腹を肥やしていると批判している。

私服を肥やしている政治家に対する不満が高じて政権崩壊・その後新政権構想がまとまらないまま漂流している政治状況下ノレバンで、私腹を肥やす象徴的事件のゴーン氏を政治家が公然と庇える状況ではなさそうです。
フランスも格差に不満を抱く反政府デモが昨年から下火にならず続いていることから、マクロン政権はゴーン氏逮捕当初同情的ニュアンスでしたが、国民反発が強かったのですぐに引っ込めて今やゴーン抜きのルノー日産関係再構築に必死です。
レバノンでもフランスでもゴーンが日本で検挙されて帰国できないことを理由に、事実上眠っていた彼に対する疑惑の捜査再開に動き出しそうな雰囲気です。
https://bunshun.jp/articles/-/23607

ゴーン被告、帰国後も雲隠れ 市民から怒りの声も―レバノン
ゴーン氏をめぐり、治安当局は「合法的に入国した」と見なし、法的措置を取らない姿勢。主に富裕層の間で歓迎ムードもあるようだ。しかし、日本で汚職の罪に問われ、司法手続きに従わずに国外逃亡したことについて、怒りの声も聞かれる。
自宅近くで商店を営むハリル・イシュライムさん(65)は「レバノンでは不正がはびこっていて、違法にお金を得た人間が戻ってくるのは当たり前のことだ」と現状を嘆いた。日本では難しくても「レバノンで法の裁きが必要だ」と訴えた。

フランスの状況は以下の通りですが長くなり過ぎるので一部しか引用しません・興味のある方はご自分でどうぞ。https://news.yahoo.co.jp/byline/puradonatsuki/20200102-00157408/

ルノー社労働組合、怒りのコミュニケ発表
フランスの庶民は?
昨晩、筆者はフランス人5人と食事をしたが、ゴーン氏逃亡の話を「おもしろい!やったね!」と言う人は一人だけだった。その他の5人は、「金にあかせてなんでもする人というイメージが再確認されただけじゃない?」と。
Twitter上でゴーン氏逃亡劇を面白がる人もいるが、どちらかと言うと「卑怯」というコメントが多いように感じた。左派「不服従のフランス党」マノン・オブリー氏は「税金逃れをしたあとは、日本の司法から逃れてレバノンへ。富裕層がいかに法から逃れ、国を分断していることか。
いったい彼らはいつまで罰を受けない状態がいつまで続くのだろうか?」と投稿。

フランスの庶民の意見は日本人の期待に合うような意見だけ拾ったかもしれませんが、常識的というか私の意見同様です。
フランスでもゴ-ン氏の旧悪に対する捜査が再開しそうな雰囲気です。
MSNニュース記事からです。

ゴーン被告は法の裁きを受けなければならない-ルメール仏財務相
Tara Patel 2020/01/06 17:48
(ブルームバーグ): 元日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告は同様の状況にある他の人と同じように法の裁きを受けるべきだと、フランスのルメール経済・財務相が6日述べた。
ルノーは仏当局に情報を伝え、当局は同社の要請に基づき調査を開始したと同相がラジオ局フランス・アンテルの番組で明らかにした。
同相によれば、ルノーはアムステルダムに拠点を置くルノーと日産自動車の統括会社「ルノー日産BV(RNBV)」に関連する1100万ユーロ(約13億3000万円)についても調査を求める準備ができているという。

日系企業米国生産と格差緩和1

日本の場合赤字になるまで維持するどころか、赤字でも後何年頑張れるか・・「がんばれるだけ頑張ります」というのが決まり文句ですが・・地域経済への悪影響への心配がこういう精神論表明になるのでしょうか?
11月6日日経新聞朝刊1面トップに富士フィルムが合弁相手の米国ゼロックスから富士ゼロックスの持ち株(25%)全部を2500億円で買取り資本関係解消したと出ていましたが、米国ゼロックス本部はIT化進行により衰退事業分野となっている事務機部門を売り抜けて、富士フィルムから得た2500億円を新規有望部門の投資に回せる思惑が解説されていました。
11月7日夕刊には、米国のゼロックスはこの資金を含めて3兆円規模でコンピュータ企業のHPの買収提案をしたと報じられています。
富士フィルムの立場は合弁契約で富士ゼロックスには販路制約があったのですが、販路制限契約の縛りがなくなるので販路を世界に広げて行くための買い物と位置付けているようです。
この思惑の違いこそが、米国企業の真骨頂であり、落穂拾い的に衰退分野を修復しながらコツコツと維持して行く(法隆寺や、日本画、民俗行事など修復し続けて未来に繋ぐのが日本民族の基本姿勢です)日本企業との違いの象徴的取引というべきでしょう。
収益重視経営を一直線に突き進めると低賃金新興国の追い上げによる国内大量生産部門急速縮小→大量人員整理が急激に起きます。
不採算事業切り離しを一直線に進めると、収益的・株式相場的には高収益企業が増えて万々歳ですが、新興産業の金融やハイテク〜IT産業は雇用吸収力が弱いので製造業から押し出された大量労働者の行き先がない・大量失業→急激なサービス雇用への転換が必要になります。
この辺、明治維新によって武士が失業しても受け皿になる製造業界が多く立ち上がって労働者(士族の転職先でる管理部門事務系需要も急増)を吸収したのとの違いです。
戦後直ぐに日本の挑戦で繊維や家電等の軽工業縮小・米国での雇用喪失の場合には、女性労働者が多かったのでサービス業への転換(今では介護士など)が容易でしたが、重工業や自動車等機械製造系は男性労働者中心ですのでサービス業への転職は1世代程度の時間差がないと気質的に困難です。
我が国でも草食系男子という流行語が20年ほど前に流行った・今やそんな言葉すらないほど男性多数がソフトになってきて男性看護師・介護士等も普通になってきましたが、その間30年ほどの経過があって適応できるのです。
ソフト社会になるのは良いことと思いますが、サービス雇用化は製造業雇用に比べて不規則労働が多いことから非正規化→中間層が痩せて行く一方となります。
事務系でも資本自由化による資本金融取引拡大・IT・知財発展による中間管理職・ホワイトカラー層不要化進展による中間層縮小が加速する一方です。
国際金融取引のプロとして巨額を動かせるエリートはホンの一握りであって、中間管理職不要化の動きはとどまるところがありません。
大学院まで進み研究者の道はというとこれまた多くが同じ思いですから、オーバードクター状態になり、大多数が非正規の臨時講師の仕事しかない状態です。
製造業中心社会からサービス社会化の進行は、一方でグローバル化の波に乗って巨万の富を得る人がごく少数出る一方で中間層から脱落する低賃金層の拡大する社会でもあります。
米国の歴史的行動価値観・・収益率低下見込み〜不採算事業を早めに切り離し売り抜けて収益率の良さそうな企業買収するのが原則的価値観の社会です。
米国独立後北部工業地帯が成長を始めると奴隷による低賃金労働に頼る南部綿花事業切り捨て→南北戦争の主原因でした・・これをドライに割り切って行うのを視覚的に表現したのが、スクラップアンドビルドという表現だったのでしょう。
これの経営への応用が収益重視・・・ROE重視経営です。
戦後復興した日独等の米国追い上げが始まる追い上げられる分野ごとに収益率が下がって行くのがはっきりしているので、米国内生産を早期に切り上げて欧州等需要地での現地生産に切り替えて行ったのは上記経験による選択でした。
資源等ある国や地域にしかない物品は貿易による交換が合理的ですが、工業製品は本来どこでも作れるものですから労働者の能力差とコストしだいで生産適地が決まるものです。
圧倒的コスト差があれば輸送費や関税、人件費の差を負担しても長距離輸出が合理的ですが、技術などの競争力が拮抗してくるとちょっとした輸送費や関税手続きコスト負担も重荷です。
現地相場のコスト・・欧州の場合戦争で疲弊して生産設備が壊滅したのでその隙をついて米国が大量輸出できただだけのことで、労働者の能力としては米国と同様(以上?)でしたので現地生産に切り替える方が合理的でした。
戦争で破壊された欧州製造設備の復興が進むと米国から輸出するよりは、人件費の安い欧州に進出して生産すれば土地代、輸送費、時間、関税等すべて競争条件が同じになるので欧州などでの競争力を保てる→国内製造縮小して行くのが経営学的には正しい選択となります。
米欧の関係はもともと人種的に同根で基本的能力差がないに等しいのですから、相互に現地生産=競争条件が同一化すればどうなるか?
長距離輸送や関税負担するコスト差以上の競争力がないだけでなく、米企業の欧州拠点の場合、米国本社の遠隔指示と現地判断の差が出るので現地生産もうまくいかなるし、米欧相互に輸出コスト負担してまで輸出努力するメリットもなくなります。
これが欧州進出したGMや、フォード、クライスラーなど早くから欧州進出していた企業が軒並みうまくいかなくなっている理由でしょう。
イタリア、ドイツ等の特殊手作り的高級車や食品や衣装系・・仏伊のファッション系その他伝統に根ざしたもの各種製品に限って、米国へ食い込み成功しているのは、文化力格差によるものです。
同じ欧米系人種同士でもいわゆるアメリカの文化レベルはいわゆるヤンキーと表現される・・文化力の総合的表現である女性の理想像で言えば、最盛期のアメリカが初めて獲得した自前の民族理想像がマリリンモンローでした・彼女が米国文化の代表になったことが米国の文化レベルの国際意思表示・自白?と評価すべきでしょう。

GM破産2(遅れた不採算事業切り離し)

会社側の再建案は新会社設立案を基本にしたものでしたが労組優遇で、一般投資家(米国は個人投資家が多い・子供の入学資金用の株式投資など)に対して大きな負担を求めるものでしたので債権者の同意が得られず破産に突入しました。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1176

切り捨てられた「普通の人々」
GM倒産劇の裏側 2009.6.9(火) 小浜 希

GMが発行した無担保社債など約270億ドル分の債券保有者には、新生GMの10%の株式と引き換えに100%の債権放棄を要求。その一方で、GMに約200億ドルの医療費関係債権を抱える労働組合の債権放棄比率は50%とし、新生GMの株式39%を与える内容だった。
米国では労働者個々人も銀行預金より小口投資する投資社会なので、投資家と言っても一般の労働者が多い社会ですから、GM労組優遇の提案で合意できるはずもない・・世論も応援しないので合意不成立で破産に突入します。
日本や韓国では、労組=弱者→優遇という図式化した運動・市民代表を僭称する運動が多いのですが・・アメリカの場合、労働者切り捨て投資家保護反対!という図式的スローガンが成り立たなかったようです。
ウイキペデイアのGM破産解説に戻ります。

2009年6月1日、GMは連邦倒産法第11章(日本の民事再生手続きに相当する制度)の適用を申請した。負債総額は1,728億ドル(約16兆4100億円)。この額は製造業としては史上最大である[9]。同時にアメリカ政府が60%、カナダ政府が12%の株式を保有する、事実上の国有企業として再建を目指す事になった。
・・・しかし、子どもの教育資金や、老後の生活の備えとして、なけ無しの金を注ぎ込んだ個人投資家が、労組偏重の再建計画を甘受できるはずもなかった。

従業員の新時代適応拒否症?が、部分的とは言え企業活性化を妨げる効果を上げ、現在米国の国際的地位低下が目立ってきた基礎構造でしょう。
アメリカの活力は、スクラップアンドビルド・あるいは用済みの都市を捨て去り(ゴーストタウン化して)別の街を作る・効率性重視社会と言われていましたが、一定の歴史を経ると古い産業構造を残しながら前に進めるしかなくなった分、非効率社会になったのでしょう。
破産により不採算部門を切り離し、新会社移行(国有化後国保有株の市場売却で民営に戻っています)により新生を目指すGMですが、破産後10年経過で先祖帰りしたらしく今年に入って以下通りのストらしいです。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49865800X10C19A9000000/

GM工場のスト続く、労使合意なお時間 株価は急落
2019/9/17 5:20
ただ、米国内に業界平均より3割多い77日分の完成車在庫があるため「すぐに販売面に影響が出る可能性は低い」という。

業績不振のおかげで在庫が77日分も溜まっているので企業はストが続いても余裕らしいですが、こう言うのってめでたいのかな?
アメリカの製造業は低賃金国への脱出盛んですが、今でも製造業大国らしいです。
製造業草創期から蓄積した技術があって世界に進出した各種工場のマザー工場機能を果たせる仕事があるからのようです。
ただしマザー工場的役割は従来の内需を満たし輸出までしていた工場群の数%(雇用も同率)で足りるものですから、国外脱出の穴埋めには力不足でしょう。
別の側面から見ると、日本の自動車産業が輸出の限界を悟り現地生産を増やして成功していることを見ると、この限度で日系企業が米国内製造業生き残りに貢献していることが分かります。
米国の外資による国内生産受け入れ政策は、後進国が輸入規制によって、自国産業育成のために高関税などの権利を留保できている役割の逆張りです。
米国の日系企業の米国内誘致政策は、先進国製造業が新興国の追い上げを受けて雇用が急速縮小する激痛緩和の役割を果たして来たようです。
後進国のこれから育つ産業育成を待つのは、少年期に成長期待して見守ってやるのに似ていて成長確率が高いですが、新興国に追い上げられる先進国社会保護のために時間猶予を与えるのは高齢者を大事にするようなものでいわゆる延命策です。
ここでいきなり話題がそれますが、いわゆるM&Aに関する関心を書いていきます。
日本企業の株価収益率の低さが長年問題視されて来ましたが、その裏側の米国企業の目線で考えると企業のあり方に関する基礎的考え方の違いがわかります。
時代遅れになる分野→ローエンド〜セコンドエンド生産にこだわり、同業他社との競り合いを続けてさらに20〜30年生き残れるとしても、これをやっているとその間収益率が徐々に低下していきます。
米国的価値観では、自国産業は利益率の高い高度化転身を目指して不採算見込み事業をどんどん切り離し(M&Aでこれを処分し)て行くべきというもののようです。
比喩的事例で言えば、現在15%の高収益事業が5年サイクルで13%〜11〜8〜7〜3%〜0〜マイナスと変化していくパターンの場合、その事業を今売れば1千億円で売れるが11%に下がってからだと5百億円で、3%に下がってからだと30億円でしか売れない見込みの時に、どの時点で処分するのが合理的かの判断が重視される社会です。
処分金で再投資すべき事業の存在との兼ね合いで合理性が決まるのですが、処分金を年利数%で預金する予定の場合と現在5%の収益率があり、3年後に8%、5年後に1%8年後には15%に成長可能な企業があった場合どの段階で自社事業を切り離して売却するかの複合判断です。
ちなみに雇用を守るために簡単にリストラクチャリングできないとも言われますが、倒産と違って企業を買う方は事業に慣れた従業員が継続してくれることこそ購入価値ですので、原則全従業員が引き続き雇用継続される前提・雇用確保の社会的責任への考慮はこの場合不要です。
マイナスになるまでリストラを先送りし、大混乱の倒産を引き起こす方が無責任経営の評価を受けるのではないでしょうか?

都民ファーストの失速(前任者の批判ばかり?)

民進党も森友•加計問題追及ばかりで何を追及したいのか不明・・いかにも意味ありげに大騒ぎするばかりで着地点が見えない不明の言いがかりっぽいイメージが定着し、健全な国民をうんざりさせてしまった・・
あおり効果があったと喜んでいるのはメデイアだけで、これにおどろされて本来の国政そっちのけで森友・加計ばかり主張している民進党は世論調査のたびに支持率落ち込みを続けていました。
民進党や共産党系がもしも政権を握るとどんなに恐ろしい社会になるのかがが目に見えるような動きでした。
マスメデイアを味方につけて流行語を利用してイメージをふりまくだけの政治家が国政の中枢に関与するようになると、いざ政権を取っても何をどうして良いか不明のために先ずは前政権がやったことの全否定から始めるのが常套手段です。
もともとじっくり調整して練り上げた政策ではない・メデイアの無責任な聞こえの良い政策を採用するために、実行に入ると現地関係者の利害対立が起きて暗礁に乗り上げるのが普通です。
このあとで希望の党の公約を紹介しますが、「正規雇用を増やす」とか「満員電車をなくす」「電線地中化」その他など、どうやって実現するかの道筋がありません。
クールビズのようなファッション系提案はメデイアさえ味方につければ利害調整不要ですが、具体的政治実現には掛け声だけではなく(強権政治以外には)必ず利害調整が必要です。
パフォーマンスに頼る政治家が幅を利かすようになると利害調整能力不足を棚に上げていうことを聞かない不平分子?を「上手く行かないのは抵抗勢力のせい」だと吊るし上げ対象にする安易な方法になりがちです。
乱暴な政治が日常化して行くと社会分断を招き民族和合の知恵が破壊されて行きます。
マスメデイアや左翼系は何かと韓国や中国のシステムを礼賛する意識(・・なぜか中韓の不都合を一切報道しません)が目立ちますが、韓国のように感情9割の社会にしていきたいのかもしれません。
韓国では(日韓慰安婦合意した)パク大統領を許せないとなると証拠がなくとも、感情の高まる集会に合わせて思わせぶり政治におもねる検察が検挙する恐怖政治になっています。
今まさにパク大統領追及だけでは気が済まなくなったらしく、積弊清算と称してその前の李明博大統領時代の違法行為?のほじくり返しが始まっています。
https://www.msn.com/ja-jp/news/world/

10 時間前朝日新聞デジタル
韓国の李明博元大統領は12日、文在寅(ムンジェイン)政権が進めている保守政権時代の高官らの摘発について「政治報復ではないかと疑い始めている」と批判した。記者団に対して語ったもので、「国論を分裂させるだけでなく、重大な時期にある安保や外交の助けにもならない」と述べた。李氏は保守派で、2008年から5年間、政権を担当した。
韓国検察は11日、李政権と朴槿恵(パククネ)政権で安保政策を担当した金寛鎮(キムグァンジン)元国防相を軍刑法違反(政治関与)の疑いで逮捕。金元国防相には李政権時代、韓国軍に命じて、インターネット空間に与党に有利な書き込みをするように指示した疑いなどがかけられている。
韓国検察は、同事件をめぐって情報機関の国家情報院幹部らの事情聴取も続けており、年内にも李元大統領への事情聴取に踏み切る可能性が高まっている。

こういう前政権批判・中国文化大革命式の根拠なき吊るし上げ〜韓国風社会実現を理想化しているのが、日本の革新系政治家やマスメデイアです。
日本では、こんな幼稚な振る舞いをほとんどの人が支持していないことを表しているのが、思わせぶりばかりで一種の吊し上げ政治に狂奔して(もしも多数党が行えば簡単に特別委の多数決横行・粛清に結びつくでしょう)大事な国会審議を空転させている民進党に対する支持率激減の原因でした。
政党は評論家集団やシンクタンクではなく政治実務家集団であるべきですから、党内意見をまとめてしかも実現できる政策を主張して行かないと信用を落とすばかりです。
標語が立派でイカしていれば政治が出来るのではなく、多角的利害を根気よく調整し関係者の納得出来るところで決めて行くのが政治家の力量です。
11月11日頃に、ベトナムのダナンでのAペックの首脳会談と並行して行われたTPP11の交渉で大筋合意に至ったのがその典型で、まとめ役の日本の政治家・官僚はよくやりました。
鳩山氏の「少なくとも県外へ」のフレーズは実現すべき根拠(利害調整)のない主張であったことが象徴ですが、その他「埋蔵金を出せば赤字財政を解消できる」とか、八ッ場ダム工事廃止主張も一旦停止したものの、結局再開するしかなかったこと・実態無視の主張をしていたことが原因で信用をなくしました。
小池都知事の五輪会場や築地移転の見直しも何のために騒いだのか不明・そっくり同じ経過です。
そこで前原〜細野氏ら民進党グループと小池氏が語(謀って)らって決めたのが(観念論の左翼系切り捨ての)合流方針だったでしょうが・・これが国民の希望の党に対する疑念を引き起こす一方で、小池氏の自己中心主義というよりも組織運営能力(結局は根気の良い根回し)不足が表面に出てしまいました。
「国家の運営を任せてくれ」という政党には、有言実行・実務(利害調整)能力が必要なのですが菅元総理に代表されるように市民運動家中心・・批判経験しかなくて自分は何もできない人の集まりでは困ります。
味にうるさい「通」の客が自分で料理できるのかということです。
民進党自身でもこれに気がついているからこそ蓮舫前代表は政策提言・原発廃止で勝負しようとしたのですが、支持労組内の利害対立があるのに利害調整をしなかっために公式発表前に足元をすくわれ都議選大敗北の結果辞任表明するしかなくなりましたが、前原氏も対案を出せる政党を目指したのですが、山尾不倫騒動で出鼻を挫かれました。
仮に前原氏の党運営が始まって何か具体的政策提言しようとしても、民主党〜民進党はもともと結党時に旧社会党系議員を大量に受け入れていることから、どこまでいってもまとまりようがない宿命ですから、無理だと思っていたでしょう。
今回の総選挙を前にしてどうにもならない頑固左翼系議員を切り捨てて希望の党へ合流すると言う意思表示が「排除論理」ですが、この論理の延長で考えれば、希望の党への民進党系議員の大量受け入れ自体が希望の党内での意思統一の壁になっていくのが目に見えています。
民進党員が9割も占める党になれば、希望の党の「実現可能な政策提言をしていく」という結党理念を、民進党的(彼ら的には中道思想と信じているようですが・・)思想が縛っていく・旧社会党系議員が重しになって、民主党時代から現実的政策提言ができなかったことを繰り返すことになります。
この後で代表選立候補者の主張を紹介しますが、それぞれが出身母体民進党時の主張を引きずるしかない状態が如実に現れています。
希望の党失速を受けて小池氏の責任・進退問題を受けて、「創業者利益がある」という小池氏が辞任しないままの解決策・・民進党系議員にとっては義理があって直ちに解任できないので、小池氏単独代表から共同代表制に変更した上で代表選が行われましたので立候補者の主張を明日紹介します。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC