非武装平和論とその帰結1

仮にアメリカが非武装にした方が戦争を防げると考えて日本の非武装化を強制したならば、アメリカ自身が軍備放棄して範を示せば良いことです。
誠意を示せばソ連が攻めて来ないと言う意見が正しいならば、冷戦当時に逸早くアメリカが武装放棄していれば良かったことになりますし、ソ連崩壊後も今なお何故大量の兵器保有しているかかが疑問となります。
アメリカの平和論は、核兵器保有・・報復能力による相互抑止論であることは明らかですから、この論理の行き着くところ、北朝鮮やインドやイランの核武装を否定する事は出来ませんし、日本だけが非武装で平和を守れると言うならば論理矛盾となります。
世界世論は非武装化が平和を守る方法ではなく、むしろ簡単に侵略されない程度の武力保持こそが、戦争抑止力となって安全を守れると言う意見が支配的です。
アメリカの9・11以降のテロ組織に対する断固たる報復論も、報復的武力行使の威嚇こそが平和を維持出来ると言う意思表示そのものです。
世界世論もオバマの柔弱な態度が中ロの軍事力行使を誘発し、テロの続発を招いていると言う意見が多くその批判に耐え切れずに今回のイスラム国空爆決定に踏み切ったことになります。
以上は単なる意見に留まらず、紛争相手国を抱えながら非武装を実行している現実の国が日本以外には一国もないのが現実・・争いのない厳然たる事実です。
非武装平和論を実行している国は世界のどこにあるでしょうか?
フィリッピン等海上警備が手薄だった国で紛争が現実化すると、巡視艇などの充実強化に進むのが普通であって、危険になって来たから、非武装化しようと言う国は世界中どこにもありません。
世界中どこにも非武装化を実行している国がないのにこれが正しいと言うのは無理があるでしょう。
科学実験ならば、多数の意見と違っても自分独自の意見で実験するのは勝手ですが、平和論は敵のある前提で論じてるのですから、独りよがりで実験していると滅ぼされてしまいます。
化学実験とは違い現実政治論である以上は現実に世界のどこが実際にやっているかこそが重要です。
非武装論者は「日本は戦後70年も平和を謳歌して来たじゃないか」と言うかも知れません。
しかし、これはアメリカの強大な軍事力の庇護があってこそ成り立っていたものであって、アメリカによる防衛なしで完全非武装化で成立していたものではありません。
実際にアメリカさえ黙認すれば、韓国による李承晩ラインの設定=日本漁民の大量拿捕や竹島占領が実際に起きていたのにこれを阻止出来なかったし、未だに平和解決出来ていません。
日本の平和維持はアメリカの出方次第であったことが上記のとおり明らかですし、今国防強化の是非が焦眉の急になって来たのは、中韓による日本侵略意図が明白になって、アメリカ軍の弱体化〜核の傘による平和維持効果が疑われるようになって来たことによるのですから、過去70年間平和を維持出来て来たことを延長した議論は意味がありません。
1週間続いていた晴天が終わり、曇り始めてぽつぽつと雨が降り始めたのに、「今までいい天気だったから、傘を持って出掛けなくて良い」と言うような意見になります。
ここで非武装平和論の予定する結果に戻ります。
いつも書きますが、政治的発言や運動は実現すべき現世利益と深く結びついていることが明らかです。
非武装論の招来する現実的結果は何でしょうか?
戸締まり不要論・・中韓が無法な侵略を始めても抵抗してはいけないことの結果はどうなるでしょうか?
諸国民の公正と信義を信頼して・・と憲法前文には書いていますが、どこに信頼出来る公正な国があるのでしょうか?
慰安婦問題や南京虐殺などありもしないことと分っていても、言えば得だとなれば噓八百をドンドン国費をかけて世界中で宣伝して来る国だらけです。
こう言う噓八百を宣伝する国々が、日本が本当に無施錠・・戸締まりしないで放置していれば泥棒に来ない国でしょうか?

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC