マスコミの信用失墜15と特定秘密保護法2

「知る権利「表現の自由」など学生時代に読んだときにはまぶしいような有り難いブランドでした。
実社会に出て見ると、何もかも一緒くたにして「知る権利・表現の自由を守れ!」と叫べば、すべて天下御免・・括れる程モノゴトは単純化出来るものではありません。
個人情報問題で見ても個人のプライバシーを出来るだけ守るべきですが、他方で緊急災害時の救出用に事前に避難弱者の名簿を充実しておく必要があります。
これを公開すると高齢者を狙う悪徳業者の餌食になってしまうし、他方で一定範囲に拡題して周知して置かないと、イザ緊急事態では現場の人がどこへ救出に向かえば良いのか分らない問題が生じます。
このようにモノゴトはきめ細かな配慮・利害調整判断の上に成り立つものですから、単純に「国民主権国家・・国民がオーナーなのに国民の知らない国家秘密を持つ=漏洩禁止するのは許せない」と叫んでさえいれば、解決できる時代ではありませんし、国民もこれをよく知っています。
試験問題・捜査情報その他事前公開できない性質のものが多いし、事後ならば良いかと言うと、これも一概に言えない分野があることも明らかです。
「◯◯の場合にはどこまで開示するか否か」という分野ごとの議論の叩き台を示して議論してその線引きを巡って立場の違いがあるのならばこれを示して自己の立場の方が合理的だという議論をしてくれれば,理解し易い感じです。
秘密にする内容程度にかかわらず、国家が秘密を持つこと自体、民主国家制度に反して全面的に許されないという短絡的な声明をいくつ連発していても、実社会での解決にはならない子供の議論になります。
日本のロケット技術や原子力発電関連の技術情報・リニアモーターカー等の先端技術を5年〜10年経過すれば、国民主権だから国民誰にでも公開すべきとなれば、先端技術が海外に流出して・・あるいはテロリストが入手して大変なことになります。
国家秘密の設定=非民主主義・暗黒政治に逆戻りというストレートな図式的スローガンでは、今どき単純すぎるように思うのは,私一人レベルが低いからでしょうか?
世界中で軍事機密、ロケット技術や原子力技術等々を公開している国がどこにあるでしょうか・・
上記のような対象による区分けしないで国民主権国家だから国民は全て知る権利がある・・区分けする必要すらない・・秘密にすると暗黒社会になると言うのですが、このような論理によれば核兵器やロケット・兵器技術など非公開にしている国は、全て暗黒社会だというのがマスコミや文化人?の主張になります。
世界でこの種の技術情報を公開している国がどこにもない筈なのに、日本だけこれを公開するのをやめるとと暗黒国家になると言うのでは、論者の言う民主国家は世界どこにも存在しない架空のモデル(どんなモデルを理想としているのかも提示されていません)を主張していることになります。
これら先端技術の機密情報を10年経とうが20年〜50年経とうが一定期間で一律公開していたら、国・国民の安全が保てません。
「そもそも各種兵器や原子力技術を持つこと自体が悪いんだから、原子力発電所や兵器の構造・設計資料等を公開して何が悪い」と言う意見ならば主張が一貫します。
そうなると反対論者の基礎思想は非武装平和主義の技術版に連なるのでしょうが、こんな独りよがりを言っていると、どこの国もテロリスト等への技術流出を恐れて兵器供与だけではなく、いろんな技術提携(共同研究)や情報提供すらしてくれなくなって大変なことになります。
日本の研究者がアメリカにいるときは、アメリカの秘密保護法・スパイ防止関連の適用を受けますが、帰国してしまうと日本でいくら情報を売っても日本の法律では無罪となるのでは、アメリカも研究員として受入れてくれないでしょう。
事前は駄目でも事後はどうかと言う問題では、いつかは開示すべきですが、5年ごとの見直しで何回でも更新される・・歯止めのない(更新回数を何回かに限定する規定のない)法案が批判されていました。
一定期間経過後と言っても、試験問題や入札情報の場合には、事後開示を義務づけても大した問題がないでしょうが、先端技術の場合画一・一定期間経過で開示を義務づけるのは問題です。

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