ウクライナ政変とロシア1

この基本原稿は昨年秋(シリア問題でのオバマの腰砕けに関連して)ころに書き、その後昨年末頃掲載のつもりでに書いていたものですが、間にいろいろ入って2014/01/14「アメリカの指導力低下1」以下」2014/02/22「アメリカの指導力16(引き蘢りのリスク4)」まで書いてきました。
3月中旬からクリミア問題が起きたのでその続きになります。
オバマ大統領はシリア問題でロシア・プーチンにひねられ、今度はこの2〜3週間程度の急展開でロシア編入承認まで突き進んでしまったクリミヤ問題で、ロシアの武力行使を押しとどめる力のない状態を満天下に曝しました。
アメリカはロシア高官20人に対するビザ発給禁止程度をロシアによる編入承認と同時(21日ころ)に発表していましたが、こんな程度の制裁?しか出来ない・打つ手なしの状態に陥っています。
(・・ちょっと揉めている間くらい政府高官がアメリカへ行けなくとも痛くも痒くもないでしょう)
その後彼らに対する資産凍結もしたようですが、こんな程度では短期的な効果が知れています。
(ノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領の世界平和に対する考え方・・これからの世界秩序維持は武力行使による圧力ばかりの時代ではないと言う精神でオバマがやっているから立派だという意見もあり得ます・・。)
従来基準で言えば、オバマがロシアにやられっぱなしになっているのを見れば、アメリカの国際交渉能力が劇的に低下し始めたと多くの人・・世界中(特に中国)が見ているでしょう。
ただし、ロシアは当面やりトクのように見えていますが、長期・総合的に得するかどうかは別問題です。
ウクライナをめぐる綱引きでロシアが秋にどんでん返しをやって、これに反発する西側諸国がデモや暴動でロシアと結んだ政権を倒壊させるなどしてロシアを追い込み過ぎたのが今回の騒動の直接原因です。
資源価格下落による経済失速で、内政的に落ち目になっていたプーチンが腕力で反撃せざるを得なかったとも言えます。
ロシア介入後の急展開の局面だけ見ればプーチンがやりたいようにやっているように見えますが、追い込まれて焦った行動に過ぎず長期的展望を持っていなかった可能性があります。
結果的にロシアも西側諸国も大損・大打撃を受ける結果に終わる可能性があると思われます。
西欧は南欧諸国問題処理で手一杯・・ウクライナを取り込むほどの大した力もないのに、ウクライナを取り込もうとしてやり過ぎたと思われます。
西欧が仕掛けて今回の紛争が起こったのですから、乱暴をやった西欧もロシアも双方が深い傷を負うことになる筈です。
アメリカはロシアによるクリミャ併合に対して武力では何も出来ない無力さを世界(特に中国に対して)に示した(元々ロシアの勢力圏内ですからアメリカの最盛期でも同じですから、当然と言えば当然です)。
ロシアは脆弱なクリミアを手に入れることによって、継続的膨大な援助が必要になり、他方でクリミヤ奪取により旧ソ連圏随一の人口大国であるウクライナを完全に敵に回してしまい大損です。
こんなやり方をされたら困るその他旧ソ連圏諸国も、一歩引いていて直ぐにクリミア独立を承認したのはベラルーシだけです。
ロシアは、19世紀型武力を背景にした併呑実行で世界中を敵に回す(警戒の対象にする)大きなマイナスを背負いました。
黒海艦隊維持のため踏み込んだ対応をしたというマスコミ解説が多いですが、ウクライナが仮に親西欧になってもイキナリ黒海艦隊に出て行ってくれというとは考え難いので、マスコミ解説は不合理です。

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