政党と利害調整2

米軍基地自体要らない・・日米同盟破棄を前提にするならば首尾一貫しているし分りよいので野党は現実処理から目を背けて・・野党はすっきりした現実離れした政策を恥ずかしげなく主張して来ましたが、現実問題として政権を取ってみると日米同盟を要らないとは言えなくて行き詰まりました。
民主党政権は、いろんな分野であちら立てればコチラ立たずに陥って、具体的な内政ではいろんな分野で行き詰まってしまいました。
米軍基地の場合には安保反対の一環として米軍基地は要らないというフレーズも(これが現実的か否かは別として)一応論理的に成り立ちます。
古くは杉並ゴミ戦争を想起する人が多いでしょう。
ゴミの場合、「ゴミは要らない」と叫んでいれば済む問題ではないので、理念対立・単純二択の時代が終わってお互いに痛みを受入れるための粘り強い説得能力が必要な社会になっていたのです。
奇しくもこのときは社共推薦の美濃部都知事のときでしたが、社共得意の理念の強調では、どうにもならないことを、現実政治が突きつけたことになります。
今回で言えば、放射能汚染物質・・廃材・瓦礫などの他府県受入れ問題も同じ基礎があります。
民主党や社民党が「元々原子力発電に反対していたのだから、うちは政権をとっても関与しない」と仮に主張すれば、福島県から汚染瓦礫等の除去が出来ないので、政権をめざす政党とは言えません。
特定秘密保護法に対しても野党としては・・そもそも秘密保護の必要がない・「世界中に国家機密を垂れ流せば良い」という無責任主張ならば、諸外国の法令と比較した緻密な議論は要りませんし、「民主主義の敵だ・危険だ」と批判していれば済みます。
あらゆる分野で自己の信じる理念の言いっぱなしで実際に生じる利害調整から逃げているのでは、政権獲得を目指す責任政党とは言えません。
どこまでどのように規制すればどの分野が守られて、どの分野が犠牲を受けるかの具体的な主張と利害調整が必要です。
この手間を省いてTPPでも秘密保護法も集団自衛権でも内容について細かく議論しないで単に「絶対反対」と主張していれば首尾一貫しますが、これでは野党が無責任に「少なくとも県外へ」「日米安保反対」と気勢をあげているだけだったのと同様の繰り返しになります。
(民主党が政権を取ってみれば普天間基地の移転先を決められなかったし,日米安保を破棄できない現実を認めざるを得なかったことから、無責任主張であったことが明らかになりました。)
民主党が特定秘密保護自体に反対だから実務的議論は不要だとしていたり、集団自衛権行使に反対だからその具体的条件等の話し合いに応じないという場合、自分が政権をとっても、国家機密の垂れ流しを許すのか、もしも日本防衛に参加してくれた米軍が攻撃を受けた場合、日本が側面救援しないと言えるのかなど明らかにする必要があります。
普天間基地→辺野古移転に限らず、利害調整努力を避けてあちこちで無責任な意見表明で先送りした付け・・政権を取ってから付けが回って来たのが民主党政権の結末でした。
政党は、小なりと言えども政権党になるのを目的にしている以上は、無責任に批判に徹するのはなく、国内であれ外交であれ矛盾関係にある利害調整から逃げていたのでは、国民の信任を得ることが出来ません。
国民レベルが上がり成熟化して来て、結果を論じない批判のための批判に国民が乗らなくなったことが、革新系政党が低迷するようになった原因です。
民主党あるいは他の野党が政権を本気で目指すならば、自分が政権を取ったときにどうするという対案を示して批判する必要があります。
私は自民党案の特定秘密保護法が良いと言って支持しているのではありません。
この条項が良くないのでこうしたら良いと言う対案・・諸外国に比べてどの部分が良いか悪いかの情報を与えてくれれば、国民もそうだなと考えるチャンスがありますが、これがないまま、反対だけしている野党やマスコミの方法論に困っているだけです。

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