政党と利害調整2

政権に関係のない万年野党的(共和党内のテイーパーテイなど単純主張会派も同様です)立場では、理念優先で事足りるので内部調整に苦労する経験がなく、族議員的な利害調整努力を軽視し勝ちです。
族議員の存在を非合理だ、汚職すれすれだと言って批判し、政治のすべてを透明化すべき・・秘密にすることなどあるべきではないという意見になり易い体質です。
マスコミが族議員自体が悪であるかのように大々的に批判を続けてきましたので、我々一般読者はそのように刷り込まれていますが、政治の世界に利害代弁者がいること自体むしろ必要なことであって悪いことではありません。
(アメリカのロビストの存在同様です)
何もかもを選挙のテーマにして直接民意で決めるのは不可能でしょう・・・。
この利害調整を代議士に委ねる間接民主制を採用している以上は、族議員あるいはロビスとなどを通じて民意がすくい取られ民主主義が貫徹して行くのであって、利害調整努力を無視して一定の理念を強行して行くだけならば、国会議員が何百人も要りませんし、全て強行採決でたります。
理念政党の場合、上から優れた理念・・計画経済を強制して行く強権的共産主義的政治と同根の思考方式です。
利害対立する業界を抱えていない単純な・・理念政党の立場からすれば、交渉到達目標も理念にどこまで合致するか、到達目標達成度が基準になります。
消費税軽減税率の場合で言えば、公明党は、一生懸命に頑張ったが自民党の壁が高くてココまでしか獲得できなかった・・今後はもっと党勢を強くしないと駄目だという言い訳で済みます。
旧社会党も共産党も現実政治で妥当・・実現可能かどうかよりは、どこまで自分が戦ったかが、報告内容の重点でした。
この種の組織では、理念の範囲内かどこまで接近したかが基準であって理念の相克を認める妥協があり得ないので、現実に即して妥協すると裏切り者・・日和見主義者というレッテル張りが盛んになって、連合赤軍事件のように内部粛清の嵐になり易い体質です。
スターリンの大粛清も、実際にはドロドロした本音の決定動機(政敵排除や民族浄化)を隠して「裏切り者」というレッテル張りで民族丸ごとシベリア移住強制など)反論を許さない方法に利用していたに過ぎません。
この種の集団では、最後まで頑張ったが多数決で負けてしまった・強行採決は横暴だと言うことで済みますので,交渉過程も成立直後も組織構成員や国民に秘密にする必要がないと言う意見になり易いでしょう。
自民党の場合は党内に利害対立する多様な業界を抱えているので、A業界が軽減税率対象品目に入って,B業界製品が外された理由に自民党の力が弱かったからという言い訳が出来ません。
国内政治決定でもドロドロとした不合理な基準が入り込むので、秘密交渉が要請されると言えるでしょうか?
外交に限らず政治は全て譲り合いですから(何かを譲らないと交渉が成立しません)交渉の結果譲ることになった分野・・犠牲になった業界が怒りますので、政治家は「国益のために泥をかぶる」と言います。
外交交渉に限らず、国内政治でも15日に書いたとおり「あちら立てればこちら立たず」が普通にあります。
だから政治交渉は内々の話し合いがつきものですが、秘密にやっても国内交渉では直ぐに効果が出るので、味方をしてくれなかった方には直ぐにバレる関係です。
消費税軽減税率で言えば、結果が決まれば直ぐに自分の業界が外されたかどうかが分ります。
普天間基地を辺野古あるいは他県に移すと決めれば移転先・・辺野古や他県の方が被害を受ける・効果が直ぐに分りますので直ぐに大反発します。
目先の調整能力不足から逃げるために「少なくとも県外へ・・」とのキャッチフレーズでは、当面沖縄県民のどちらかを敵に回さないで済みますが、次にどこの県にするかの段階で進退が極まります。
基地自体要らない・・日米同盟破棄を前提にするならば首尾一貫しているし分りよい・・従来野党はすっきりした現実離れした政策を恥ずかしげなく主張して来ました。
民主党が政権を取ってみると、現実問題として日米同盟を要らないとは言えません。
民主党なら調整能力があると言う根拠があって「少なくとも他県へ」と主張して来たのではないのですから、民主党が政権を取ってみるとどこの県も進んで受入れるとは言わないのが明らかですから,直ぐにどうにもならないことが露呈しました。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC