婚姻率の低下(家庭の消滅)4

私は少子化・・人口減がさしあたり我が国のために良いことだと思っていて、中国と人口で張り合う必要を感じませんが、何回も書いているようにいくら減っても3〜4千万人くらいで止まる程度の人口は必要と考えていますので、今のように急激な独身率上昇が、どこで留まるかには関心があります。
婚姻率低下問題については、October 30, 2010「婚姻率低下3」まで書いたことがありますので、今回はその4になります。
ある程度のところまで来れば生物の智恵として何らかの人為的政策がなくとも自然に出生率の低下が止まるのでしょうから、50年〜100年先になっても低下が止まらなかった時に初めて、どうやって低下を止めるかの議論が必要になるかも知れません。
出生率低下を止めるには男子の責任をもっと弱めて、子育ては社会全体で面倒を見るようにしたらどうでしょうか?
(種付けしたからと言ってその家に入り浸りにならなくとも良い・・自由にしてやる・・50〜100年以上先には現在の夫婦概念や家庭制度自体がなくなっている時代になっているのかも知れません。
現在は子供が生まれた以上は、オスの責任を歴史上最大化していますので、その反射効果として女性にとっては子があるかどうかが大きな地位の差になります・・。
夫の庇護に頼らなくても良い社会的能力のある女性は、子を産まなくとも困らないので、昔から子のいない女史・女傑が多いし、女性の高学歴化・・社会的能力向上が、出産率を下げる方向に働く一因です。
天皇家で言えば、皇后や皇太子妃については、英語力その他の能力が高いに越したことはないですが、後嗣としての子供を産むか生まないかの方が重視されるのはその名残です。
(それどころか今でも皇太子家で男子を産んだかどうかが大きな問題になっています)
これからの日本社会では、むしろ家庭崩壊の時代・家庭は不要な時代になりつつあるのですが、制度(マスコミ)の方はその逆ばりで出生率低下の危機感を煽っているのは家庭重視誘導をしているのかも知れません。
制度(マスコミ)は往々にして、滅びつつあるものを保護するために却って制度を強化することが多いので、外見上の最盛期は没落の始まり・序章だったことが多いのです。
日本人口が3000万人前後まで縮小するかも知れない50〜100年以上先になって出生率低下歯止め策が必要になる議論ですが、ある日いきなり方向転換が出来ませんから、オスの責任を縮小して行くためには、昨年春先から書いている・・これが先送りになって未だにこのコラムに載っていませんが・・・・・基礎生活費支給制度を徐々に充実して行く方向性が合理的です。
雄にとって、子供を持つことは雌のサービスが悪くなるだけだったのに加えて、今では婚姻中は家事の分担を求められ、離婚後も長期にわたって子育てコスト負担のリスクまで負うようになると結婚同居生活は却ってデメリット・・リスク要因になっています。
雌・人間の女性は子育てに時間がかかることから、雄が飽きないように他の動物と違って恒常的な性的受容体制・・スイッチオン状態にあるのですが、それだけでは出産前後の空白が問題になります。
(この関係は7月18日のコラム以降に書くように、庶民に関しては貨幣経済化後に出現した実態に基づくもので、古代からあったものではありません)
その間を何とかやり過ごしても、大学院卒業後まで保護の必要な子もいるなどで長期養育が必要なことから、その間の容色の衰えや夫の気移りも心配です。
これをカバーする長期対策としてはサービス力の向上にシフトしたのは合理的だったと思われます。
サービス・・これも炊事洗濯など即物的な分野だけではなく、内容的高度化・文化力にシフトすれば若い女性との差を付け易く、寿命の伸びに対応出来て長持ちします。
実力を失った貴族や老大国が文化を売りにし、(クレオパトラもそうです)成り上がりの経済人や軍人・新興国がこの顧客になるのと同じです。
(武士でも足利氏の最後の頃はそうでした・先祖帰りして武力で勝負しようとした剣法将軍義輝も出ましたが、却って自分の寿命を縮めてしまったし、次の義昭は自分で反信長勢力を組織して行ったために追われてしまい足利幕府の崩壊になりました。)
歴史に「イフ」は禁句ですが、もしも政治から超然として銀閣寺のような文化に精出していた場合、信長や秀吉が将軍家をどうしたか面白いところです。

結婚離れ2

母親は何かと夫をおだてて子育てに参加させようとして来たのですが、まだ父親の責任感は当てにならないので母親としては、母子一体感をおいそれとは捨てられません。
他方で男性の方は、コンビニや中食(ケータリング)の発達あるいは電子レンジを始めとする家庭調理機器のめざましい発達で、自炊生活が苦にならなくなって来たので、あえてリスキーな結婚して苦労する気にならなくなって来ています。
とりわけ最近出現している草食系男子は、この傾向が顕著でしょう。
家庭のない心細さ・孤独感をどうするかは別問題ですが、婚姻制度を重たくしすぎると婚姻を回避しようとする男性が増え独り立ち出来るように進化して行くでしょうし、女性も一人で生きて行けるように回避する方向(中性化傾向)に変化し始めています。
セックス需要が直ぐにはなくならないとしても男女関係は婚姻しなくとも成り立つし、経済面や食事の準備等で相棒が要らなくなれば生涯独身(で必要な限度で付き合うパターン)を選択するのを非合理とは言えません。
子を産むための男女・雌雄関係から発生した筈の異性関係ですが、種の継承に関係ない関係(セックスだけ・あるいは寂しいから心が通え合えるだけ)に転化して行くことになりそうです。
種の保存維持・子を産むための関係で始まった異性関係を前提にしたカトリックでは伝統的に避妊や中絶に否定的ですが、子育ての長期化の結果子孫をもうけるためのセックスから、子供は充分に生まれた後も子を育てるためのセックスとなり、中高年からはセックススレスも珍しくなくなくなり、老後の助け合い期間になれば100%セックスレスです。
子供の成長後も大学院を出てしっかりするまでの夫婦関係は、子を産み育てる一連の行為としてなお理解可能です。
子供が一人前になって出て行った後の定年後の夫婦関係(更には75〜80代になってお互い介護が必要)になると、古代から連綿と続いて来た「子孫」を造るためのカップルとは最早言えません。
高齢者夫婦関係が社会の大きな部分を占めるようになって来ると、子を産むことを予定しない男女関係を若者も真似して形成するようになっても違和感がなくなって行きます。
(異性の若者が子を産む気もなく一緒になっていいのならば、同性愛者・あるいは女性同士のグループホームもこの範疇に入るでしょう)
社会のあり方として子を産む予定のない男女関係・・共同生活を受け入れて行くとすれば、それでも女性は(女性が自分で一生食って行ける時代が来れば・・)男性を必要とする時代が続くのでしょうか?
男子の変化・・・いわゆる草食系化と女性自身も職業意識の高まりで子供さえ生まなければ自分で生きて行ける経済力を付け、更に治安その他のシステムの進化(特にマンション暮らしの場合)で、女性一人あるいは女性同士だけで生活するのにさして困らない社会になって来ました。
男女双方から結婚への意欲が弱まって来たのが最近の風潮で、これがここ10〜20年以上の結婚率や出産率の低下に大きな影響を与えている筈です。
給与が安いから子を産めないと言う俗論が支配的ですが、厚労省の賃金統計(好不況の波)と出生率比較によると実際には給与所得の向上と出生率は反比例関係にあるのは厳然たる事実です。
韓国台湾その他のアジア諸国でも、豊かになる(高学歴化の影響もありますが・・)と出生率が下がる傾向があるのはどこの国でも同じです。
(フランスなど西洋先進国で出生率持ち直しに成功しているように見えるのは、低賃金外国人労働者の大量流入にあることは明らかですし、アメリカも平均寿命が低いことや肥満など後進国性があるのは絶えざる底辺労働者の流入によるものです)
我が国の統計(どこの国でも同じでしょうが・・)では不景気で給与所得が落ち込むと出生率が上がる傾向ですから、出生率を上げるには国民の多くを貧困層にしてしまい、その上で子供手当の増額をすれば、最低賃金層の子沢山を下支えする意味があります。
我が国では貧富の格差が少なく殆が中流意識ですから、結果的に出生率が下がっているのは当然の結果で、目出たい・・国家運営が長期間成功している証(あかし)です。

結婚離れ1

アジアは後進国が多いからこの条約加盟をみんな渋っていると言うのが一般的理解ですが、親子のあり方に関する深層的な意識の差が大きい面があるからではないでしょうか?
西欧人でも、男女比で考えれば当然女性の方が子供に対する愛情が深いでしょうが、アジアと違って西洋の上流・有産階級では子供の頃から子供を手元で可愛がって育てる習慣がないなど、(我が国でも乳母の制度がありますが、ちょっとした金持ちがするものではなくこれはよほど高貴な家柄に限られます)大分違う印象です。
この伝統の上に寄宿舎制度が発達したものでしょう。
この母子一体感の意識が薄い御陰で西洋の女性は早くから子育てから解放されますので、母親が自分で育てるアジアに比べて女性の自由時間が増える・・男女平等への動きが速くなったような印象です。
オーストラリアからスイス人母が子供を連れ出して、この条約で強制返還になったのですが、オーストラリアの夫が子育てをする気がなくて、子供が児童施設に保護される事態が起きて、(母親がいるのに無理に引きはがして孤児扱いです)どういう手段か知りませんが、もう一度スイスに連れ戻せた事例があるそうです。
先進国同士であるスイス&オーストラリアの事例を見ると、先進国と後進国の争いと言うよりは、欧米では母子関係の意識がアジアとはかなり違う可能性があります。
昔から、アジアでは「この子はあなたの子です」と生まれたばかりの子を父親に抱かせるのは、母子一体を前提とした上で、その外側にいる夫に対して嫡子として確認させる・・父親の権力・地位世襲の権利確保のために必要な儀式でしかなかったのです。
この時代には、父親は生みっぱなしでも親の威光にすがりたい子供の方から天一坊のように「御落胤です」とすり寄ってくるものでした。
天一坊事件の場合、親子の対面にまで進みませんでしたが、仮に御対面まで行った場合、嬉し涙を流しても、長年打ち捨てられていたこと対する恨み言を一切言わないルールです。
子がすり寄ってくる程の資産を残せない時代には、こんなうまい具合には行きませんので離婚後せっかく苦労して仕送りしていても、年老いてから子に逢っても子から母親の仇のような目を向けられるのが落ちのようです。
(資産の大小と言うよりは、農業時代の農地や領地の継承は大は大なり、小は小なりに農地を継承すれば耕作して食って行けるメリットがあったのですが、今のように使えば減って行くばかりの資産と違います・・この辺は、2010-9-12「(1)・・能力社会の遺産価値、(2)・・農業社会の遺産価値」で書きました。)
そもそも子が親の遺産を当てにしてすり寄って来るのは普通のこととして、父親・オスの方は子にすり寄って来てもらうことにこれと言った必要性を感じません。
仮に老後を子供に頼りたいと言う気持ちのある男がいたとしても、離婚後無理な仕送りをして病気になったり無資産で老後を迎えるよりは、無理して仕送りした貧しい親よりはある程度資産を残している親の方が子から大事にされる・・あるいは一定の資金を残してヘルパーなどに頼んだ方が良いと考える男が増えてくるかも知れません。
養育料不払いに対する歯止めとしては、November 10, 2010「養育料3と民事執行法11」で強制執行制度の改正強化を紹介しましたが、この方面で対応して行くと男は自衛のために子供の出産自体に反対する傾向が強まってきます。
昨年春先に解決した離婚事件では、女性にはいろいろ不満がありましたが、何よりも「夫が子供を生むのに反対している」ことが離婚決断の大きな理由でしたから、静かにオスの反撃が始まっている様子が分かります。
雄にとって、子供を持つことは雌のサービスが悪くなるだけだった(精神面でも妻の関心が子に集中して行く)のに加えて、今では離婚後も長期に及ぶ子育てコスト負担のリスクまで負うようになると、結婚・同居生活に左程メリットを感じなくなる傾向が強まるのは否定出来ません。
母子一体感は子育てを命がけで行うために遺伝子に仕組まれた智恵でしょうが、親族共同体が崩壊し、近隣の助け合いもない一方で、まだ社会資本の充実がイマイチの現在では、母子一体感だけでは子育てを完成させられません。
そこで身近な資源である夫の協力が最後のよりどころになりますが、母子一体感が強すぎて男親がその枠組みから阻害されるままにして置いて、子育てに協力だけさせようとしても無理があります。

ハーグ条約2

私は離婚裁判確定前の国外連れ出しを認めろと言うのは、日本女性の置かれた立場を強調しても無理がある(欧米系の理解を得られない)とは思いますが、この条約は離婚後も子供が16歳までは海外連れ出し禁止するものですから、(子供を抱えた多くの女性は生きて行くために母国へ帰りたいことが多い筈ですが・・・)大きな問題があると思います。
また、子供の立場で考えても離婚した人の子供は、親戚訪問であろうがなかろうが結果的に16歳まで海外旅行・州外へ行くことが一切出来ない法律になります。
(例外の許可を裁判所に求める制度があるのでしょうが・・・)
他方でアメリカを中心とするこの条約の強制を求める國は先進国が中心であり、国際結婚の多くは先進国居住型であることから、(後進国から先進国へ入国して生活するのが普通です・・・日米関係で言えばアメリカ居住が圧倒的に多い筈ですし、東南アジアとの結婚では日本居住が圧倒的多数でしょう)先進国の男性に有利な条約であることは間違いない法規制になります。
まして、アメリカ連邦法では国内での子供の連れ去りは州を越えても刑事犯罪にならないのに、国外に連れ出すときだけ刑法犯にしているのは、(州法では州を越えて連れ出すと違法になるなどマチマチです)外国人差別のための法ではないかとも言われています。
いずれにせよ、離婚した元妻は結婚同居当時の州から就職その他の理由で移動出来ない仕組みです。
離婚事件の係争中州外や国外に連れ出すのは裁判を妨害することになるのは分るのですが、離婚後(裁判で親権者がが母になった後)も何故、母親がが子供を連れて海外移動を禁止されなければならないか不明ですが・・・。
夫の面会権侵害の危険を理由とするのですが・・行き過ぎの感じです。
例えば日本人妻の場合、片言の英語では現地で有利な就職がないので母国に帰りたいのが普通ですが、これをするには子供をおいて帰らねばならないと言う先進国優位の法制です。
こうした(条約がないから連れて帰ったらどうなるか分らないと言う不信感で裁判運用されるリスクがあるので)不利益を免れるには、日本もハーグ条約締結の必要があるということらしいです。
ちなみにアメリカの国内での子供の連れ去り事件は米司法省の推定では、アメリカでは毎年203,900人とされており(5月29日ウイキペデイアからの引用です)離婚事件の6件に1件となっています。
この大半はアメリカ国内事件だと言うことです。
上記文書ではこの内訳が、夫、妻どちらが何%を占めるかは分りませんが、殆どの事件で共同親権または最低でも妻に監護権が認められる傾向があるので実際の実力行使は夫によるものが多いのでしょう。
夫の子供に対する関係を強調し過ぎたので、アメリカの男性は親意識が成長してしまい、変な方向へ走っている感じがします。
また、アメリカ人の日本人妻が離婚で共同親権を宣告されても、離婚すると滞在資格を失うので国外退去が強制されるのですが、子供だけを連れ出せないので生き別れになることになります。
他方でアメリカでの養育料未払い者は増加の一方ですから、生活苦になって働くためには、アメリカでよりは日本の方が有利ですから(よほどの能力者以外は、外国人差別があるので同じ能力ならば賃金水準の高い自国・日本で働く方が有利です)、帰ろうとすると子供を連れて帰れない不都合があります。
(離婚の多くは夫が生活費を入れない・家庭内暴力などがその殆ど・・日本国内離婚とそれほど変わりません)
乳幼児を抱えている場合、まだ働けないとしても実家に帰れば同居して何とかなる場合もありますが、夫が行方不明でもこれが出来ません。
こうしたいろんな不都合・・アメリカ人にとってのみ有利な法律ですが、これを批准しないままですと欧米諸国では、日本は子供の誘拐を許容しているかのような触れ込みでどうにも宣伝合戦で負けてしまっている状況(アメリカ下院での日本非難決意の採択・フランス国会で決議など)らしいのです。
ちなみに欧米(南北アメリカ及びオーストラリア・南アフリカなど西洋法系の国々)ではほぼ100%の加入率であり、アジアでは100%近い未加入です。
ハーグ条約は親権に関しては中立であるということですが、子供のためとは言いながら形式処理をモットウとしていることから、父親が蒸発していても形式的に国外連れ出し行為だけで犯罪になってしまう不都合があります。
アメリカの裁判所によっては、共同親権を定めるにあたって、(勝手に海外に行かないように)母親のパスポートまで取り上げることがあるようで、一種の人権侵害です。

ハーグ条約1(日弁連意見書)

日弁連でもこれに対する対応は、女性の権利関係の委員会は反対意見が強く、子供の権利を守る関連委員会は賛成傾向と意見が分かれる傾向がありましたが、最近国際趨勢(欧米だけの論理ですが・・・)には抗し難いことと、参加しない国に対してはペナルテイがあって、却って州外に出ることを禁止される裁判に繋がる・・連れ去った日本女性に対して何十億と言う精査的損害賠償判決も出ているなど日本女性に不利に働くことから一定の担保法の国内整備をすることを条件としての批准賛成に結論が出て来たようです。
「国際的な子の奪取の民事面に関する条約(ハーグ条約)の締結に関し、とるべき措置に関する意見書」
  2011年2月18日 日本弁護士連合会

意見書の詳細を省略しますので関心のある方は上記を検索してお読み下さい。
以下はハーグ条約です。

ハーグ条約(1980年)
CONVENTION ON THE CIVIL ASPECTS OF INTERNATIONAL CHILD ABDUCTION(国際的な子の奪取の民事面に関する条約)
(Concluded 25 October 1980)

これも条項が長大ですので省略しますが、今後海外在住その他で子供を外国で育てる女性が増えてくると重要な条約ですので、海外生活の予定のある女性は関心を持って、この条文をきっちり読んでおくべきです。
子供に対するそれぞれの民族別の歴史に由来する思いが他所の国では認められないから不利に働くと言う心配があって(片言の英語しか話せない日本人女性にとって、唯一の補助者であった英語を話せる夫と敵対して裁判するのは大変すぎるし、夫婦の葛藤が生じた時に精神的にもきつい状態になりますが、母国に帰って母親や母国語でのケアーを受けたい気持ちもわかります。
日本人同士でも夫婦関係がもつれると郷里の実家に帰る女性が多かったのは、経済問題だけではなく心の理解に関する地域差があったからでしょう。
ここ数十年離婚問題が発生しても実家に帰る女性が減ったのは、離婚女性に対する社会的受け皿整備が進んだことと心情的な地域差(男女関係や子供に対する考え方に地域差がなくなって来た)や方言(言葉)の壁が減ったこと・・以前は東北方面からの女性は言葉の壁があって不利でした・・も大きいでしょう。
言葉の壁や考え方の基礎の違いは今でも男女差や年齢差が大きいので、家庭裁判所の調停委員は男女ペアーで担当することにしているし、離婚を扱う弁護士も女性がその分野に進出しているのはこうした点を無視出来ないことを表しています。
まだ外国と日本あるいは日本に来た東南アジア諸国出身女性にとっては昔の日本国内の地域差を拡大した形で残っているのが現状ですから、言葉がカトコトしか通じない出先での裁判をして行くのは不利(夫が生活費を入れない場合生活すら維持出来ないヒトが大半です)ですので、子供を自分と一緒に日本や自分の故国に連れ帰る実際行動が起きているのですが、これが子供の連れ去りとして国際問題になっているのです。
しかし、公平に考えれば子供の問題は離婚直前まで子供が現に育っていた環境(・・夫婦の合意のあったところと言う意味もあります)に置くのは当然のことですし、現地の裁判所が現地の法慣習を前提に判断する権利があるのも当然のことです。
自分の都合のいいところへ一方的に連れ去って、そこで裁判を受けたいと言うのは、この部分を見れば公平に考えて無理があります。
そこで日弁連では、女性に対する担保整備をする条件付きでハーグ条約批准に同意する意見書となっているのですが、政府の施策については個々の女性にとってさしあたり関係がないとして(政府や日弁連にお任せとして・・)少なくとも自分の自由意思で子育ての場所を決めた以上は、そこが子供にとって一番良い場所だと言う米英系の主張に対してガードしておく心構えくらいは必要です。
即ち、海外で結婚したなら仕方がないですが、せっかく日本で一緒になったのに夫が海外に帰るとなったら、子供を連れて安易に海外移住しないように気をつける必要があります。
もしかしたら、移住の条件としてでイザとなれば日本に子供を連れ帰っても良いと言う合意書を夫との間交わしておくくらいの準備が必要です。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC