ハーグ条約2

私は離婚裁判確定前の国外連れ出しを認めろと言うのは、日本女性の置かれた立場を強調しても無理がある(欧米系の理解を得られない)とは思いますが、この条約は離婚後も子供が16歳までは海外連れ出し禁止するものですから、(子供を抱えた多くの女性は生きて行くために母国へ帰りたいことが多い筈ですが・・・)大きな問題があると思います。
また、子供の立場で考えても離婚した人の子供は、親戚訪問であろうがなかろうが結果的に16歳まで海外旅行・州外へ行くことが一切出来ない法律になります。
(例外の許可を裁判所に求める制度があるのでしょうが・・・)
他方でアメリカを中心とするこの条約の強制を求める國は先進国が中心であり、国際結婚の多くは先進国居住型であることから、(後進国から先進国へ入国して生活するのが普通です・・・日米関係で言えばアメリカ居住が圧倒的に多い筈ですし、東南アジアとの結婚では日本居住が圧倒的多数でしょう)先進国の男性に有利な条約であることは間違いない法規制になります。
まして、アメリカ連邦法では国内での子供の連れ去りは州を越えても刑事犯罪にならないのに、国外に連れ出すときだけ刑法犯にしているのは、(州法では州を越えて連れ出すと違法になるなどマチマチです)外国人差別のための法ではないかとも言われています。
いずれにせよ、離婚した元妻は結婚同居当時の州から就職その他の理由で移動出来ない仕組みです。
離婚事件の係争中州外や国外に連れ出すのは裁判を妨害することになるのは分るのですが、離婚後(裁判で親権者がが母になった後)も何故、母親がが子供を連れて海外移動を禁止されなければならないか不明ですが・・・。
夫の面会権侵害の危険を理由とするのですが・・行き過ぎの感じです。
例えば日本人妻の場合、片言の英語では現地で有利な就職がないので母国に帰りたいのが普通ですが、これをするには子供をおいて帰らねばならないと言う先進国優位の法制です。
こうした(条約がないから連れて帰ったらどうなるか分らないと言う不信感で裁判運用されるリスクがあるので)不利益を免れるには、日本もハーグ条約締結の必要があるということらしいです。
ちなみにアメリカの国内での子供の連れ去り事件は米司法省の推定では、アメリカでは毎年203,900人とされており(5月29日ウイキペデイアからの引用です)離婚事件の6件に1件となっています。
この大半はアメリカ国内事件だと言うことです。
上記文書ではこの内訳が、夫、妻どちらが何%を占めるかは分りませんが、殆どの事件で共同親権または最低でも妻に監護権が認められる傾向があるので実際の実力行使は夫によるものが多いのでしょう。
夫の子供に対する関係を強調し過ぎたので、アメリカの男性は親意識が成長してしまい、変な方向へ走っている感じがします。
また、アメリカ人の日本人妻が離婚で共同親権を宣告されても、離婚すると滞在資格を失うので国外退去が強制されるのですが、子供だけを連れ出せないので生き別れになることになります。
他方でアメリカでの養育料未払い者は増加の一方ですから、生活苦になって働くためには、アメリカでよりは日本の方が有利ですから(よほどの能力者以外は、外国人差別があるので同じ能力ならば賃金水準の高い自国・日本で働く方が有利です)、帰ろうとすると子供を連れて帰れない不都合があります。
(離婚の多くは夫が生活費を入れない・家庭内暴力などがその殆ど・・日本国内離婚とそれほど変わりません)
乳幼児を抱えている場合、まだ働けないとしても実家に帰れば同居して何とかなる場合もありますが、夫が行方不明でもこれが出来ません。
こうしたいろんな不都合・・アメリカ人にとってのみ有利な法律ですが、これを批准しないままですと欧米諸国では、日本は子供の誘拐を許容しているかのような触れ込みでどうにも宣伝合戦で負けてしまっている状況(アメリカ下院での日本非難決意の採択・フランス国会で決議など)らしいのです。
ちなみに欧米(南北アメリカ及びオーストラリア・南アフリカなど西洋法系の国々)ではほぼ100%の加入率であり、アジアでは100%近い未加入です。
ハーグ条約は親権に関しては中立であるということですが、子供のためとは言いながら形式処理をモットウとしていることから、父親が蒸発していても形式的に国外連れ出し行為だけで犯罪になってしまう不都合があります。
アメリカの裁判所によっては、共同親権を定めるにあたって、(勝手に海外に行かないように)母親のパスポートまで取り上げることがあるようで、一種の人権侵害です。

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