原子力安全協定と同意権1

話を戻しますと、原子力安全協定による地元同意権をテコに原発特別措置法が成立したのではないでしょうか?
(「我々は国民みんなのために原発の危険と隣り合わせに生きているのだ、この程度のこともしてくれないならば、今後は簡単に同意しないよ」と言う脅しです・・裏返せば措置法で優遇してくれるなら、同意の方向で運用すると言う含み・・)
国民みんなのための犠牲と言われても、今になると国民の多くが「そんな危険な原発はなくとも良いのではないか」と言う方向に傾きかけていますが・・・。
それに広範囲の放射能飛散(に関係のない関西方面の食品さえ中国・韓国などでは輸入制限されています)と節電や計画停電の結果、地元以外の国民・企業も大きな被害を受けています。
このように見て行くとどこかで聞いたような台詞・・基地問題を抱える沖縄との対比が浮かび上がってきます。
全国民のために沖縄が犠牲になっていると言う論法を耳にタコができるほど聞かされて来て、沖縄に関する特別法が出来ています。
アメリカは日本全体を守るために沖縄に基地を持っているのではなく、対中国・東南アジア全体に睨みを利かせるのに好位置だから、自分の都合で維持したがっているに過ぎません。
(「核の傘」などまるで当てに出来ないことを繰り返し書いてきましたが、同類の議論です)
国内政治論だけでは、基地問題は解決出来ない・・アメリカの意向を無視出来るなら良いですが、日本はそこまで強くありません。
ここ一連の(尖閣諸島問題などの騒動を見ると)中国はアメリカの軍事プレゼンスの維持に裏で協力しているのではないかとさえ疑りたくなります。
ここ数年中国が黙っていて・・むしろ優しそうなことを言っておいて安心した日本の要求でアメリカ軍が縮小あるいはグアムへ移転してしまってから、居丈高になれば日本が困ったところでした。
民主党政権になった日本では、アメリカ軍の存在が日本全体で邪魔扱いになりかけていたところでした。
「少なくとも国外へ!」と言っていた民主党が選挙に圧勝したと言うことは、国民の多くは今後中国と仲良くして行けば良いのであって、アメリカ軍は必要ないのではないかと言う認識になりかけていたと言うことでしょう。
(今の原発不要論のうねりに似ていました)
ところが小沢氏主導政権でこうした方向へ進み始めたとたんに、中国が矢継ぎ早にこれに冷水を浴びせかけるような強行策にイキナリでて来たのは不思議な選択でした。
今年になってからは、南沙諸島で軍事強攻策に出てベトナムを怒らせていますが・・・。
多分「いま強行策に出ても今の日本はアメリカとすきま風が吹いているので困ってしまうだけだから今がチャンスだ」と言うもっともらしい刷り込みをアメリカ筋が中国の友人を通じて中国政府にしたので、中国は目先の利益にくらんだのでしょう。
英米系の謀略は凄まじいものがあるので、国際政治の経験のない中国などは、アメリカの謀略(離間の策)に直ぐに乗せられてしまうのです。
鳩山総理はこれまで日本はアメリカに偏り過ぎていたのを修正するとまで明言したのに、(そのように思っていた国民が多かったと言うことでしょう)中国の強硬策の実行によって「アメリカ一辺倒から中国へ」のムードがしぼんでしまいました。
今の国民世論では、アメリカのために基地がある本質は変わらないとしても中国の横暴を抑止する押さえには必要か・・・と言う意見が多数になっているのではないでしょうか?(アメリカの思う壷です)
一旦こうした行為をされると今後中国がウマいことを言ったり少しくらい譲歩して来ても、中国は怖い国だと言う印象が刷り込まれてしまったので今後数十年単位で日本人は信用しないことになりますから、中国の「人の弱みに付け込む行為」の代償は大きかったことになります。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC