キリスト教国の国際条約6(ハーグ陸戦条約)

日米戦争でのアメリカの戦時条約違反を主張する声が多く聞かれるものの、条約自体をみた方が少ないかも知れませんので、以下現代版ウエストファーリア条約であるハーグ条約を紹介しておきます。
https://ja.wikipedia.org/wiki

ハーグ陸戦条約
1899年にオランダ・ハーグで開かれた第1回万国平和会議において採択された「陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約(英: Convention respecting the Laws and Customs of War on Land, 仏: Convention concernant les lois et coutumes de la guerre sur terre)」並びに同附属書「陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則」のこと。

我が国は1907年の改訂条約から参加していますので以下この条文の一部を紹介します。
アメリカの2度にわたる原爆投下実験その市街を取り囲むように火をつけてからに順に中心部に焼夷弾を投下して住民が逃げられないようにした攻撃など元々住民大量殺戮を目的にした戦争犯罪に関心のある方が多いでしょうから、参考までに陸戦条約の条文を部分的に紹介しておきます。
前文は如何に抜粋するように条文化していなくとも人倫に反する行為をしないことを約束したものです。

「一層完備シタル戦争法規ニ関スル法典ノ制定セラルルニ至ル迄ハ、締約国ハ、其ノ採用シタル条規ニ含マレサル場合ニ於テモ、人民及交戦者カ依然文明国ノ間ニ 存立スル慣習、人道ノ法則及公共良心ノ要求ヨリ生スル国際法ノ原則ノ保護及支配ノ下ニ立ツコトヲ確認スルヲ以テ適当ト認ム。」

以下はhttp://1st.geocities.jp/nmwgip/Treaties/Laws_and_Customs_of_War_on_Land.htmlの部分引用です

陸戰ノ法規慣例ニ關スル條約
Hague Convention IV – Laws and Customs of War on Land
一九〇七年(明治四〇年)一〇月一八日海牙ニテ調印
独逸皇帝普魯西国皇帝陛下〔以下締約国元首名省略〕ハ、平和ヲ維持シ且諸国問ノ戦争ヲ防止スルノ方法ヲ講スルト同時ニ、其ノ所期ニ反シ避クルコト能ハサル 事件ノ為兵力ニ訴フルコトアルヘキ場合ニ付攻究ヲ為スノ必要ナルコトヲ考慮シ、斯ノ如キ非常ノ場合ニ於テモ尚能ク人類ノ福利ト文明ノ駸駸トシテ止ムコトナ キ要求トニ副ハムコトヲ希望シ、之カ為戦争ニ関スル一般ノ法規慣例ハ一層之ヲ精確ナラシムルヲ目的トシ、又ハ成ルヘク戦争ノ惨害ヲ減殺スヘキ制限ヲ設クル ヲ目的トシテ、之ヲ修正スルノ必要ヲ認メ、千八百七十四年ノ比律悉会議ノ後ニ於テ、聰明仁慈ナル先見ヨリ出テタル前記ノ思想ヲ体シテ、陸戦ノ慣習ヲ制定ス ルヲ以テ目的トスル諸条規ヲ採用シタル第一回平和会議ノ事業ヲ或点ニ於テ補充シ、且精確ニスルヲ必要ト判定セリ。

一層完備シタル戦争法規ニ関スル法典ノ制定セラルルニ至ル迄ハ、締約国ハ、其ノ採用シタル条規ニ含マレサル場合ニ於テモ、人民及交戦者カ依然文明国ノ間ニ 存立スル慣習、人道ノ法則及公共良心ノ要求ヨリ生スル国際法ノ原則ノ保護及支配ノ下ニ立ツコトヲ確認スルヲ以テ適当ト認ム。
締約国ハ、採用セラレタル規則ノ第一条及第二条ハ、特ニ右ノ趣旨ヲ以テ之ヲ解スヘキモノナルコトヲ宣言ス。
〔全権委員名省略〕
因テ各全権委員ハ、其ノ良好妥当ナリト認メラレタル委任状ヲ寄託シタル後、左ノ条項ヲ協定セリ。
第一款 交戰者
SECTION I ON BELLIGERENTS
第二章 俘虜
CHAPTER II Prisoners of war
第二款 戰闘
SECTION II HOSTILITIES
第二二條 交戰者ハ害敵手段ノ選擇ニ付無制限ノ權利ヲ有スルモノニ非ス
Art. 22. The right of belligerents to adopt means of injuring the enemy is not unlimited.
ホ 不必要ノ苦痛ヲ與フヘキ兵器、投射物其ノ他ノ物質ヲ使用スルコト
(e) To employ arms, projectiles, or material calculated to cause unnecessary suffering;
第二五條 防守セサル都市、村落、住宅又ハ建物ハ、如何ナル手段ニ依ルモ之ヲ攻撃又ハ砲撃スルコトヲ得ス
Art. 25. The attack or bombardment, by whatever means, of towns, villages, dwellings, or buildings which are undefended is prohibited.
第二七條 攻撃及砲撃ヲ爲スニ當リテハ宗教、技藝、學術及慈善ノ用ニ供セラルル建物、歴史上ノ記念建造物、病院竝病者及傷者ノ収容所ハ同時ニ軍事上ノ目的ニ使用セラレサル限之ヲシテ成ルヘク損害ヲ免レシムル爲必要ナル一切ノ手段ヲ執ルヘキモノトス
被圍者ハ看易キ特別ノ徽章ヲ以テ右建物又ハ収容所ヲ表示スルノ義務ヲ負フ右徽章ハ予メ之ヲ攻圍者ニ通告スヘシ

 

PKOと国際常識2(ハーグ陸戦条約)

停戦合意が有名無実化して行き、混乱が広がり略奪や虐殺が横行するようになると危険地帯になったことは明らかですが、だからといって、市民を放置して真っ先に「軍」が撤退するのでは国際的非難を受けかねません。
これがウイキペデイアで昨日紹介した国際批判を受けた実態でしょう。
中立を維持しながらも、住民保護には手を貸す・・略奪集団から保護してやること・・これが現在の国際世論というべきでしょう。
元々平和維持活動とは、対立する軍事勢力の領域の現状維持を図るためではなく、戦乱による住民被害防止が目的・・そのための再戦闘勃発阻止であったとすれば、目的の変質ではありません。
戦争に関する戦時条約も、戦争自体をなくせないとしても、軍人でない一般人の保護だけでも始めようとしたものです。
住民保護こそが戦争と平和に関する法の究極の目的・基礎です。
ウイキペデイアからの引用です。
「ハーグ陸戦条約(ハーグりくせんじょうやく)は、1899年にオランダ・ハーグで開かれた第1回万国平和会議において採択された「陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約(英: Convention respecting the Laws and Customs of War on Land, 仏: Convention concernant les lois et coutumes de la guerre sur terre)」並びに同附属書「陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則」のこと。1907年第2回万国平和会議で改定され今日に至る。ハーグ陸戦協定、ハーグ陸戦法規などとも言われる。
日本においては、1911年(明治44年)11月6日批准、1912年(明治45年)1月13日に陸戰ノ法規慣例ニ關スル條約として公布された。
陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則
第25条:防守されていない都市、集落、住宅または建物は、いかなる手段によってもこれを攻撃または砲撃することはできない。
第26条:攻撃軍隊の指揮官は、強襲の場合を除いて、砲撃を始めるに先立ちその旨官憲に通告するため、施せるだけの一切の手段を尽くさなければならないものとする。 
第27条:攻囲及び砲撃を行うにあたっては、宗教、技芸、学術、慈善の用途に使用されている建物、歴史上の記念建造物、病院、傷病者の収容所は、同時に軍事目的に使用されていない限り、これに対しなるべく損害を与えない為の必要な一切の手段を取らなければならないものとする。攻囲された側は識別し易い徽章をもって建物または収容所を表示する義務を負う。前述の徽章は予めこれを攻囲者に通告すること。
第28条:都市、その他の地域は突撃によって奪取された場合といえども、略奪を禁止する。」
各種平和論も戦争になった場合の一般国民の受ける悲惨さを訴えてこそ成り立っています・・逆から極論すれば血の気が多くて喧嘩したい人は「サッカー場でヤクザ同士・・軍同士が殺し合いするなら」どうぞ勝手に!・・平和論が不要です。
昨日紹介したウイキペデイア記載の「国際世論批判」とは、上記平和論によって、まさに人権団体が非難したものでしょうが、その人権団体が一方で「PKO部隊に一人でも被害が出たらどうするのか」と言う矛盾した論陣を張っています。
あるいは日本の人権団体だけの主張かも知れません。
こう言う無茶・・「いい子ぶる」偽善のマスコミ論調に腹を立てている人が、マスコミを痛烈批判するトランプ氏支持に回った印象があります。
自己・個人の利益を犠牲にしても、より多くの人命を救うことが必要な場合があるのです。
軍や警察・消防士はそう言う役割に使命感を持って応募し、命の危険を顧みず民族の楯となって頑張ってくれるからこそ、国民から尊敬され・・英霊を民族の神として祀りその子孫を大事にするのです。
イザとなって危険な場所に行きたくない・・住民を救えないと言うのでは、軍人としての価値がない・・そう言う職に就いていたこと自体が民族に対する裏切りです。
2月24日に物事の定義や理念の必要性が変わって行くので、「19世紀型原理を唱えれば済む時代ではない」と言う意見を書いて来ましたが、PKO派遣の必要性も時代によって変わって来た・・これが国際常識です。
我が国では92年に決めたいわゆる派遣5原則が時代に合わなくなくなっているのに、これを振りかざして反対するのは、幕末に世界情勢を無視して鎖国の祖法を守れと言っていた攘夷思想や戦後の非武装平和論・護憲勢力と同じ構図です。
他方で、PKOの関与が広がり過ぎると、徐々に危険性が増す・・結果的に先進国による派遣が減って実働部隊をインドやアフリカ諸国に委ねている印象です。
これが先進文化人の偽善と言われる象徴です。
民進党はスーダン派遣隊の昨年夏の日報の提出を求めて、駆けつけ警護任務の危険性強調をしているようです。
戦闘単位が政府軍か否かの特定を求めて国会で民進党が延々と追及?している様子が時々ニュースに出ています
民進党はスーダンは5原則に抵触する状況になっているから、これをやめるように言いたいのでしょうが、昨日紹介したとおり紛争状態の国に割っ入って強制介入も出来るように国際社会の原理が変わっているのをどう考えるかの視点がありません。
以下は、民主党の国対委員長の意気込みです。
https://www.minshin.or.jp/article/109939
山井和則国対委員長は26日午前、定例記者会見を国会内で開いた。
「冒頭、国会対策の基本方針として・・・「南スーダンの駆けつけ警護については「71年間日本の自衛隊は銃撃戦をしたことがなく、任務として死傷した自衛隊員は一人もいない。12月からの駆けつけ警護によって自衛隊員が深刻なリスクにさらされる危険があり、日本の戦後を大きく変えてしまう事態になりうるかもしれない。私たちはPKO参加5原則が(激しい戦闘が行われている)南スーダンの状況では壊れていると認識している。そういうことも含めて議論をしていきたい」と述べ「申し上げた通り、問題点は厳しく追及し、良い法案は成立させる。徹底した追及の延長戦上に蓮舫代表が言う対案をしっかり提示し、国民の負託に応える国会対策をしていく」と意気込みを語った。」
住民保護こそが平和維持軍の本来の責務と認識されている現在の国際常識・・国連決議ですから、これを前提に我が国の時代遅れの5原則をどうするかの議論こそが重要です。
左翼系は何かと国連決議や勧告を重視して運動しているのに、PKOになると国連決議を何故無視するのか不思議です。
非武装平和論者にとっては、平和維持に軍はいらない・平和さえ唱えていれば解決すると言う立場でしょうか。
「国連が紛争地域の平和の維持を図る手段として」紛争解決の手段として軍の派遣が必要と言う国際合意が気に入らないのでしょう。
非武装平和論は世界でどこも採用していない空想論であり、これを前提に揚げ足取り的にゴネゴネと繰り返しの国会論議になっている・・言わば税金の無駄遣いです。
日本固有論理で「危険性がある」とか、相手が政府軍かそうでないかの区分で「派遣しない」と言う主張が国際的に通用すると思っているのでしょうか?

ハーグ条約2

私は離婚裁判確定前の国外連れ出しを認めろと言うのは、日本女性の置かれた立場を強調しても無理がある(欧米系の理解を得られない)とは思いますが、この条約は離婚後も子供が16歳までは海外連れ出し禁止するものですから、(子供を抱えた多くの女性は生きて行くために母国へ帰りたいことが多い筈ですが・・・)大きな問題があると思います。
また、子供の立場で考えても離婚した人の子供は、親戚訪問であろうがなかろうが結果的に16歳まで海外旅行・州外へ行くことが一切出来ない法律になります。
(例外の許可を裁判所に求める制度があるのでしょうが・・・)
他方でアメリカを中心とするこの条約の強制を求める國は先進国が中心であり、国際結婚の多くは先進国居住型であることから、(後進国から先進国へ入国して生活するのが普通です・・・日米関係で言えばアメリカ居住が圧倒的に多い筈ですし、東南アジアとの結婚では日本居住が圧倒的多数でしょう)先進国の男性に有利な条約であることは間違いない法規制になります。
まして、アメリカ連邦法では国内での子供の連れ去りは州を越えても刑事犯罪にならないのに、国外に連れ出すときだけ刑法犯にしているのは、(州法では州を越えて連れ出すと違法になるなどマチマチです)外国人差別のための法ではないかとも言われています。
いずれにせよ、離婚した元妻は結婚同居当時の州から就職その他の理由で移動出来ない仕組みです。
離婚事件の係争中州外や国外に連れ出すのは裁判を妨害することになるのは分るのですが、離婚後(裁判で親権者がが母になった後)も何故、母親がが子供を連れて海外移動を禁止されなければならないか不明ですが・・・。
夫の面会権侵害の危険を理由とするのですが・・行き過ぎの感じです。
例えば日本人妻の場合、片言の英語では現地で有利な就職がないので母国に帰りたいのが普通ですが、これをするには子供をおいて帰らねばならないと言う先進国優位の法制です。
こうした(条約がないから連れて帰ったらどうなるか分らないと言う不信感で裁判運用されるリスクがあるので)不利益を免れるには、日本もハーグ条約締結の必要があるということらしいです。
ちなみにアメリカの国内での子供の連れ去り事件は米司法省の推定では、アメリカでは毎年203,900人とされており(5月29日ウイキペデイアからの引用です)離婚事件の6件に1件となっています。
この大半はアメリカ国内事件だと言うことです。
上記文書ではこの内訳が、夫、妻どちらが何%を占めるかは分りませんが、殆どの事件で共同親権または最低でも妻に監護権が認められる傾向があるので実際の実力行使は夫によるものが多いのでしょう。
夫の子供に対する関係を強調し過ぎたので、アメリカの男性は親意識が成長してしまい、変な方向へ走っている感じがします。
また、アメリカ人の日本人妻が離婚で共同親権を宣告されても、離婚すると滞在資格を失うので国外退去が強制されるのですが、子供だけを連れ出せないので生き別れになることになります。
他方でアメリカでの養育料未払い者は増加の一方ですから、生活苦になって働くためには、アメリカでよりは日本の方が有利ですから(よほどの能力者以外は、外国人差別があるので同じ能力ならば賃金水準の高い自国・日本で働く方が有利です)、帰ろうとすると子供を連れて帰れない不都合があります。
(離婚の多くは夫が生活費を入れない・家庭内暴力などがその殆ど・・日本国内離婚とそれほど変わりません)
乳幼児を抱えている場合、まだ働けないとしても実家に帰れば同居して何とかなる場合もありますが、夫が行方不明でもこれが出来ません。
こうしたいろんな不都合・・アメリカ人にとってのみ有利な法律ですが、これを批准しないままですと欧米諸国では、日本は子供の誘拐を許容しているかのような触れ込みでどうにも宣伝合戦で負けてしまっている状況(アメリカ下院での日本非難決意の採択・フランス国会で決議など)らしいのです。
ちなみに欧米(南北アメリカ及びオーストラリア・南アフリカなど西洋法系の国々)ではほぼ100%の加入率であり、アジアでは100%近い未加入です。
ハーグ条約は親権に関しては中立であるということですが、子供のためとは言いながら形式処理をモットウとしていることから、父親が蒸発していても形式的に国外連れ出し行為だけで犯罪になってしまう不都合があります。
アメリカの裁判所によっては、共同親権を定めるにあたって、(勝手に海外に行かないように)母親のパスポートまで取り上げることがあるようで、一種の人権侵害です。

ハーグ条約1(日弁連意見書)

日弁連でもこれに対する対応は、女性の権利関係の委員会は反対意見が強く、子供の権利を守る関連委員会は賛成傾向と意見が分かれる傾向がありましたが、最近国際趨勢(欧米だけの論理ですが・・・)には抗し難いことと、参加しない国に対してはペナルテイがあって、却って州外に出ることを禁止される裁判に繋がる・・連れ去った日本女性に対して何十億と言う精査的損害賠償判決も出ているなど日本女性に不利に働くことから一定の担保法の国内整備をすることを条件としての批准賛成に結論が出て来たようです。
「国際的な子の奪取の民事面に関する条約(ハーグ条約)の締結に関し、とるべき措置に関する意見書」
  2011年2月18日 日本弁護士連合会

意見書の詳細を省略しますので関心のある方は上記を検索してお読み下さい。
以下はハーグ条約です。

ハーグ条約(1980年)
CONVENTION ON THE CIVIL ASPECTS OF INTERNATIONAL CHILD ABDUCTION(国際的な子の奪取の民事面に関する条約)
(Concluded 25 October 1980)

これも条項が長大ですので省略しますが、今後海外在住その他で子供を外国で育てる女性が増えてくると重要な条約ですので、海外生活の予定のある女性は関心を持って、この条文をきっちり読んでおくべきです。
子供に対するそれぞれの民族別の歴史に由来する思いが他所の国では認められないから不利に働くと言う心配があって(片言の英語しか話せない日本人女性にとって、唯一の補助者であった英語を話せる夫と敵対して裁判するのは大変すぎるし、夫婦の葛藤が生じた時に精神的にもきつい状態になりますが、母国に帰って母親や母国語でのケアーを受けたい気持ちもわかります。
日本人同士でも夫婦関係がもつれると郷里の実家に帰る女性が多かったのは、経済問題だけではなく心の理解に関する地域差があったからでしょう。
ここ数十年離婚問題が発生しても実家に帰る女性が減ったのは、離婚女性に対する社会的受け皿整備が進んだことと心情的な地域差(男女関係や子供に対する考え方に地域差がなくなって来た)や方言(言葉)の壁が減ったこと・・以前は東北方面からの女性は言葉の壁があって不利でした・・も大きいでしょう。
言葉の壁や考え方の基礎の違いは今でも男女差や年齢差が大きいので、家庭裁判所の調停委員は男女ペアーで担当することにしているし、離婚を扱う弁護士も女性がその分野に進出しているのはこうした点を無視出来ないことを表しています。
まだ外国と日本あるいは日本に来た東南アジア諸国出身女性にとっては昔の日本国内の地域差を拡大した形で残っているのが現状ですから、言葉がカトコトしか通じない出先での裁判をして行くのは不利(夫が生活費を入れない場合生活すら維持出来ないヒトが大半です)ですので、子供を自分と一緒に日本や自分の故国に連れ帰る実際行動が起きているのですが、これが子供の連れ去りとして国際問題になっているのです。
しかし、公平に考えれば子供の問題は離婚直前まで子供が現に育っていた環境(・・夫婦の合意のあったところと言う意味もあります)に置くのは当然のことですし、現地の裁判所が現地の法慣習を前提に判断する権利があるのも当然のことです。
自分の都合のいいところへ一方的に連れ去って、そこで裁判を受けたいと言うのは、この部分を見れば公平に考えて無理があります。
そこで日弁連では、女性に対する担保整備をする条件付きでハーグ条約批准に同意する意見書となっているのですが、政府の施策については個々の女性にとってさしあたり関係がないとして(政府や日弁連にお任せとして・・)少なくとも自分の自由意思で子育ての場所を決めた以上は、そこが子供にとって一番良い場所だと言う米英系の主張に対してガードしておく心構えくらいは必要です。
即ち、海外で結婚したなら仕方がないですが、せっかく日本で一緒になったのに夫が海外に帰るとなったら、子供を連れて安易に海外移住しないように気をつける必要があります。
もしかしたら、移住の条件としてでイザとなれば日本に子供を連れ帰っても良いと言う合意書を夫との間交わしておくくらいの準備が必要です。

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