アメリカの産業・奴隷利用=粗放経済の破綻1

昨日紹介した日経新聞紙面では、60万人の雇用を誇るアマゾンが18年秋に最低賃金を時給15ドルに引き上げたことを紹介しています。
世界に誇る大手企業がその多くを最低賃金で雇っている現実こそ重要です。
Jul 9, 2016 12:00 amのブログで、「非正規雇用の多いアメリカ最大の大企業のウオールマートの店員の多くが,生活困窮者向けの1、25ドル分のフードスタンプを貰う列に並んでいることが問題になって日本でも報道されましたが、漫画みたいな社会です。」と紹介したことがあります。
サービス業でも日本はおもてなし文化度が高いので、能力レベルに応じた多様な高級職種がありますが、アメリカの場合飲食店といってもフードコート類似のマニュアル対応主流ですから、サービス業従事者の多くは最低賃金すれすれ職になっている点が大きな問題です。
(日本でもチェーン展開のコンビニや居酒屋、ファミレス、回転すしなどの従業員比率が上がる1方ですが・・変化が遅いのが取り柄です・スーパーが発達すると反作用でこだわり製品やデパ地下人気が高まるなど世の中の動きが一直線ではありません・・明治維新当時も洋画が入ると反作用で日本画への注目が起きるなど・・)
2月26〜7日に紹介した現地ルポで見たように英語を話せず文字すら読めないレベルの場合、サービス業はフードコートでも一応顧客対応ですので、(一定のコミュニケーション能力が必要)配送すら(宛名等の理解能力)できず草刈りなどの原始的職業しかありません。
ホームレスト関連するフードスタンプ受給者の激増問題もあり、この点については上記Jul 9, 2016 ブログで
「政府の最新データによると、2014年9月の登録者数は4650万人で、前年の4730万人から減少した」
と引用しています。
この登録は世帯単位であることから、1世帯三人とすれば人口の約3分の1がフードスタンプをもらっていることになるとも書いています。
フードスタンプをもらっていても帰る家のある人が多いでしょうが、ちょっと家賃が上がるとついていけないギリギリの人がこんなに多いことが推測されます。
この人たちの生活保障をどうするかのテーマに答えられないのが、ホームレス激増の背景でしょう。
日本のホームレスのイメージは無職者ですが、アメリカの場合有職者なのに住む家がない状態です。
こういう社会では失業率の統計は前年度との比較傾向が分かるものの、(無職で開き直っている人の割合が分かる程度?)目先困っている人の実態には迫れません。
月収3〜40万円の工員がレイオフされて、最低賃金の配達員などに転じた場合、失業者数は変わらないとしても、生活水準の劇的低下を知ることができません。
ところで昨日見た日中の賃金格差ですが、中国と日本の賃金格差が7〜8年前には10分の1前後の相場の記憶でしたから、短期間に約2〜3割上がったことがわかります。
この賃金上昇の結果、チャイナプラスワンの動きが出ているし、中国は低賃金を武器にした国内生産基地化の夢が破れそうになってきたので焦ってレベルアップに乗りだしたところ、やり方が強引すぎてアメリカの怒りを買っている構図です。
中国が近代産業導入後賃金水準アップに連れて国際競争力維持のために労働の質向上に必死なように、アメリカも奴隷利用による最低賃金による安値生産で始めたものの限界がきて、母国西欧諸国に追いつく・・産業革命の恩恵を受ける準備が始まると、労働の質アップが求められるようになったのです。
低レベル労働者のレベルアップは言うは安く、3〜40代以降の人に再教育してもその効果が知れています。
世代交代を待つしかないとすれば、30代後半以降の再教育不能人材の行き場に困ります。
こうなると低レベル・安いだけの労働者を失業させておけばいいのではなく、何らかの生活費支給が必要になる分、足手まといになってきます。
車産業のEV化も各産業分野のIT化でも同じですが、中高年・既存労働者にEVやIT関連作業に変更を強いる社内教育は年齢が行くほど無理があるので、適応可能な若手新人採用の方が企業にとっては合理的です。
社会の変化が3〜40年周期で起きる場合には、世代交代して入れ替わるので問題が少ないのですが、5〜10年で入れ替わる急激な変化の場合、まだ2〜30年働ける年齢で引退(失業)をしいられるので社会の軋轢が生じます。
先進国の高齢化社会到達までに要した期間と新興国の到達時間がまるで違うのがその象徴ですが、あとから追いつく方は近代産業導入以降ごく短期間で先端技術社会に追いつけるメリットの代わりに生身の人間の陳腐化が早すぎるのが難点です。
日本の場合江戸時代からの工芸技術の蓄積がある上に、産業構造の変化がいつも30年程度の周期で来たので、その間に変化に向けた技術修練を経る時間がある・・次の時代に向けた変化能力の高い人材が多く育っているので社会の分断が起きにくい安定社会になっています。
環境激変の時代に、次々と新たな技術に適応していける企業や人材が多くて今なお多くの製造業がしぶとく生き残れている所以でしょう。
訴訟手続きのIT化の取り組みも、パソコン普及開始後2〜30年経過後の今になってようやく始まろうとしていますが、それも明日から紙媒体を受け付けないというものではなくじっくり進める予定です。
そのうち私ら(昨年末同期会に行ってきましたが、同期の多くはすでに後期高齢者です)に続く次の世代が全員引退していなくなる約10年経過ころに全面施行になるのでしょう。
変化の早い時代にこれでは取り残されるといいますが、社会変化は早くとも30年周期が合理的であり、数百年も遅れすぎた後進国が無理に追いつこうとしているから(草花でいえば北国では春と夏が同時に来るように)変化が早い時代と言われているだけではないでしょうか?
先に進んだ方はゆったり構えて次に備えればいいのであって、焦る必要はありません。
新興国では平均寿命50歳前後の社会に近代工場がいきなり入ってきて生活水準が急激に上がり平均寿命が70前後への高齢化が急速に進む一方で、労働技術の陳腐化がほんの10年前後で進み取り残されるのでは、彼らはその後の長い人生をどうやって生きて良いかわかりません。
馬が高齢化して次の馬を買う代わりに車にするならば順次変化でスムースですが、馬や機械がまだ新しいうちにどんどん入れ替えるようなことを人間相手にしているのが韓国や中国政治ではないでしょうか?

継続保障4(三菱UFJBKの10年計画?1)

http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1710/25/news018.html

2017年10月25日 06時00分 公開
銀行業界に激震が走った。三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、三菱UFJグループ)の平野信行社長が9月、「事務作業の自動化やデジタル化によって9500人相当の労働力を削減する」と発言したからだ。
9500人というとグループの中核企業である三菱東京UFJ銀行の従業員の3割に相当する人数である。
平野氏は、あくまで「9500人相当の労働力を削減する」と言っただけで、9500人をリストラするといったわけではない。余った労働力はよりクリエイティブな業務にシフトするとのことだが、皆がクリエイティブな業務に従事できるとは限らない。実質的な人員削減策と受け止めた銀行員は少なくないだろう。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22847550Y7A021C1EA30003

銀行大リストラ時代 3.2万人分業務削減へ
2017/10/28 19:17
日本経済新聞 電子版
みずほフィナンシャルグループ(FG)など3メガバンクが大規模な構造改革に乗り出す。デジタル技術による効率化などにより、単純合算で3.2万人分に上る業務量を減らす。日銀によるマイナス金利政策の長期化や人口減などで国内業務は構造不況の色合いが濃くなって来たため。数千人単位で新卒を大量採用し、全国各地の店舗に配置する従来のモデルも転換を迫られる。

http://blogos.com/article/229520/

記事
沢利之
2017年06月18日 16:43
三菱UFJ1万人人員削減計画、早期退職で加速が好ましい
3日ほど前ブルンバーグが「三菱UFJグループが今後10年程度で過去最大となる1万人規模の人員削減を検討していることが分かった」と報じていた。
・・例えば今後銀行が生き残ることができる分野の一つに「資産運用部門」を上げることができるが、資産運用部門で求められる人材・スキルは預金吸収・貸出型と全く違う。これを同じ人事システムで処遇しようとすると資産運用部門の優秀な人材は退職し、外資系の資産運用会社に移籍する可能性が高い。
つまり銀行は総人員を減らすだけでなく、専門分野で活躍する人材を長期的に育成・確保する必要があるのだ。そのためには人事制度の改革と大胆な人減らしが必要なのである。

私は三菱の発表まで水面下の動きを知りませんでしたが、10年間で何万人不要になるなどという悠長な発表のずっと前から果敢なリストラ・・足し算ではなく人員入れ替えが必要という意見が6月時点で出ていたらしいのです。
既存権利に手をつけずにそのまま温存して定年になってやめて行くのを待つ・新分野兆戦に適した能力のある人員を新規採用・・足し算して行くようなやり方では、入れ替えに長期を要しすぎて技術革新の早い現在では、企業が潰れてしまうでしょう。
以前から書いていますが千葉の例でいうと、旧市街の改造には利害が錯綜して難しいのであんちょこに埋立地造成(幕張新都心立地など)や郊外に住宅団地を作る足し算式政治でごまかしてきました。
人口がいくらでも増えていく成長期には足し算政治で良かったのですが、人口が現状維持になってくるとスクラップアンドビルド・何か新しいことをやる以上は何かを廃止しないと財政的に持たなくなっています。
数年前から、千葉市では(政治によらない)大規模な都市改造が始まっています。
ちば駅から遠い順にパルコ、三越百貨店が昨年中に閉店し代わって新駅ビルが完成してちば駅周辺集中・コンパクトシティ化に急速に進み始めました。
最早従来の決まり文句であった旧市街の活性化(見捨てるのか!)などの2正面作戦を言う暇がない状態です。
選挙制度改革も同じで、産業構造の変化に合わせて都市部の人口が増えて、投票価値格差が広がると過疎化した地方の議員数を減らさずに増えた都会の選挙区を増やして相対的に格差縮小を図る足し算方式でしたが、これも限界がきてついに島根県などの合区に手をつけざるを得なくなりました。
三菱の発表を見ると銀行業界はいわゆる護送船団方式と揶揄されていましたが、未だに手厚い保護でぬるま湯に浸かっているのではないかの疑念を持つのは私だけでしょうか?
東京などの大都会に限らず、地方都市に例外なくシャッター通りが生まれてしまった原因は、都市再開発用に旧市街の土地や建物の明け渡し需要が必要になったのに既得権の壁が強すぎて旧市街地に手をつけられない・時代適合の新陳代謝ができない状態・戦後の貧しい住居がひしめいたままだったので、郊外にスーパーや若者の住む住宅団地などが立地してしまった結果です。
若者だって市中心地で新婚生活したいし、スーパー等の業者だってできれば人のあ集まる中心地で開業したかったでしょうが、既得権保護の抵抗が強すぎて(大規模店舗法など)新興勢力を寄せ付けなかったので結果的に中心市街地が地盤沈下してしまったのです。
これを国単位でやっていると日本全体が地盤沈下し周辺の国々・・韓国等が潤うことになります・・・この例としては、成田空港開設反対運動の結果、空港の開業も拡張も思うように出来ないうちに韓国仁川空港等に国際ハブ空港の地位を奪われてしまった例が挙げられます。
労働分野でも生産活動や事業分野が根本的に変わっていく変化の時代が始まっています。
これに対応して企業も・・従来事業の延長・・熟練によってその延長的工夫だけで、新機軸を生み出すだけではない(車でいえば電気自動車、・・車製造の熟練の技では対応不能・・金融でいえばフィンテックなど)全く別の分野で育った発想や技術が必要とされる環境に放りこまれる時代になりました。
今日たまたま、歴博(国立歴史民族博物館)発行の2017年novenber205号26pの研究者紹介を見ていると、コンピューターによる古文書解読(くずし字等解読アプリ」を開発した)すごさを書いている文章が目にはいりました。
私のような素人にとっては美術館・博物館等で壮麗な金粉を散らした立派な料紙に(例えば宗達の絵に光悦の)流麗なかな文字の「賛』や和歌があってもよほど知っている有名な和歌などでない限り読みこなせないのでは・外国人が意味不明のまま見ているのほとんど変わらない・・とても悲しいことです。
美的鑑賞ではそれでいいのでしょうが、文字の意味も知って鑑賞できた方がなお感激が深いでしょう。
くずし字を自動的に翻訳できるようになれば、大した労力・コストがかからずに展示の都度楷書に印刷したものを横において展示してくれるようになれば、私レベルの人間にとってはとても助かります。
協調学習利用のためにクラウドソーシングのシステム設計によってオープン化した結果、現在は災害史料に対象を拡大し1日1万ページのペースで翻刻が進んでいることが報告されています。
この人は1984年生まれで2017年4月に歴博に採用されたばかりとのことです。
話が横にそれましたが、その道何十年の経験を積んだ人しか「くずし字」を読みこなせない・この分野に新しい技術をひっ下げた分野外から新技術者導入の快挙の例です。

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