切り捨て社会の持続性3

それぞれの後進国が民度レベルに合わせて落ち着くところに落ち着けば、変化の激しい国際変動が終わるのでしょう。
初対面のある集団(新入生集団やPTAなど)が始まると各人の居場所・位置関係が決まるまでキョロキョロキョロして落ち着きませんが、一定時間経過で自然にそれぞれの役割が決まって行くものです。
日本人の場合多くの人は遠慮して隅の方から席が埋まって行くのが普通ですが、自分から進んで中心に立ちたい人もいます。
自分から名乗りをあげる人を(「あなたその器ではないでしょう」とは言えないので)誰も咎めませんが、長い時間軸でいつの間にか人望のある人が中心になる人が決まって行くのを待つやり方で、選挙によるよりは実質的です。
推挙された人も「自分はその器ではないで自分よりあの人の方がいいのではないか?」と一応辞退し、振られた方は当然「イヤイヤ〇〇さん適任ですよ!」と応じて円満に決まって行くのが普通です。
選挙の場合、こういう阿吽の呼吸がなく、誰がどういう能力を持つか不明の状態で「俺が俺が」という自己顕示欲の強い人が名乗りを上げて当選してしまうマイナスの方が大きいでしょう。
アメリカも中国も人から自然に推されるようになるのを待つよりは「俺が俺が」という自己顕示欲中心の国のように見えます。
こういう自己顕示欲中心の国・・アメリカはどこまでの西欧を追い越し続けたいので、いっときも休むことができない気の毒な民族?国です。
いっときも休むゆとりのない点では、現在中国(共産党政権)も成長経済を止められない点で同根のように見えます。
アメリカや中国の民度レベルの問題もありますが、金融資本に牛耳られる社会では目先の利子配当収入の多寡が最大の関心になります。
前年度同期比何%の成長か4半期の業績ばかりが株式相場の基準になっているのでは、ホンの数年先のための投資すら危ぶまれます。
自分で経営していれば一定の規模になれば昨年同様の収益があって、従業員を養なえれば満足して文化活動に精出す人が多いでしょう。
これが江戸時代に大旦那が番頭に経営を委ねて文化活動をしていた日本人の一般的生き方です。
我が国は誰もスタンドプレーに走らず・・黙々と戦後住宅不足時には公営住宅供給に税を投入してきたし、教育無償化や国民皆保険や年金制度を進めてきました。
アメリカではオバマケアなど個人名で騒ぎますが、日本の国民生活安心の基礎を作り上げた功労者の話をついぞ聞きません。
こういうことは短期の得票を求める選挙向きではなく、誰か立派なリーダーが旗振りして決めるのではなく、国民の暗黙合意によるからです。
農地で言えば数百年かけて耕地を肥沃にしていく日本の農業と土地を酷使し、使い捨て的に使いきり、土地が痩せれば化学肥料を撒いたり、移動して行く農業の違いでしょうか?
こうした息の長い政策には天文学的予算が必須でしかも地味です・・長くても4〜5年で選挙の評価を受けねばならない民主政体・・政権交代する前提の短期施策では不可能です。
日本人の多くは選挙や目先の評判でなく、子孫のために・・が恥をかかないようにお国(結局は郷土です)のために尽くす姿勢で多くの人が頑張ってきました。
これが我が国に住む人たちの価値基準であり、良き伝統です。
企業は不要な人材を「遠慮なく解雇し」「少しでも条件が良ければ転職する」「都合によっては外国へ逃げればいい」という価値観の国では、日本のような愚直?な価値観は育たないでしょう。
社会のあり方として、いわゆる性善説と性悪説を古くはjune 4, 2013,モラール破壊10(性善説の消滅)前後、近くは19年2月14日頃に書きましたが、日本は性善説の国であって、監視してこそ真面目によく働くというような性悪説・投票箱民主主義のように底浅いものではありません。
使い捨てといえば、都市さえもスクラップアンドビルド政策・用済みになれば、ゴーストタウンにして捨てていくアメリカ社会に対して、日本は戦災を受けた東京駅復元が数年前にようやく終わりましたが、毎日何百万という人が利用しながら復元していく地味な仕事です。
いろんな町の行事や古美術の保存、民具、地域のお祭りなどの伝承にエネルギーを注ぐ町の人たちを見ると、なぜか胸が熱くなります。
最近では日本でも利益率中心の経営がようやく根付いたと賞賛する声が大きくなり、アメリカの真似をするのが正しいという主張が有力ですが、私はアメリカ方式に反対です。
コスト重視の経営原理→賃金は低ければ低いほど良い→さすがのアメリカも低賃金政策は、新興国に汎用品の生産がどんどん移転するようになり、職業訓練や教育を受け付けない膨大な数の底辺労働者を抱え込んでしまった負の遺産・解雇すれば済む時代ではなくなってきました。
あまりにも大量に底辺移民を入れてきたので、「あとは知りません」というこれまでのやり方は数が多すぎるのでどうするか・放置できない時代に入っています。
2月27日に紹介したヒスパニック人口が約6000万人で、その中で一握りの成功者もいるでしょうが、大多数が文字やパソコン不要の現場作業(草刈り等の原始的?)に従事している階層では、真面目に働いてもアパートに住む収入がない状態になっている状態になってきたようです。
日本でも失業→転職対策として、再教育論が盛んですが、アメリカの底辺の場合基礎学力の違いが大きすぎる印象です。
しかも2月26日と27日紹介したように、彼らは米国民という共同体意識を持っていない・どちらかといえば、長年排他的扱いを受けてきた関係でむしろ敵意を持っているので、米国にいながら職業に必要な英語を身につけようとする意欲もない状態が見えます。
政府が正面に出ないでボランテイアに補助金をだす程度・餓死者続出時に政府は手を出さずに教会で気休め的にスープを振る舞うような政策が米国の基本的方向のようです。
底辺労働者・移民大量受け入れによる負の連鎖が始まると、この解決には途方も無い国民負担が生じる現実に嫌気したのがトランプ氏の反移民政策になって国民の感情的支持を受けるようになった基礎のように見えます。
オバマ時代から不法移民に対する合法化の政策が採用されました。
これは長期間不法移民のままで放置(追放しないまま放置)すると帰属意識の乏しい(逆に反感を持つ)移民に対する国民融合化を進めるための政策だったと考えられます。
不法移民の中で一定の要件に該当するものを合法化することで懐柔する・・その方が再教育に馴染みやすいのです・・が行われ、他方で新規移民には、能力に応じた枠を強化する方向できたのは、これ以上の底辺労働向け移民不要という政策表明と見るべきでしょう。

切り捨て社会の持続性(米国)2

弁護士業界で言えば、都心の名だたる法律事務所に入って数年して周辺県に移籍して、時代遅れ?旧来型の家事事件や生活保護事件に従事する若手がいくらもいます。
旧来型職種は総じて競争が激しくないというか高度なスキルを必要としない(弁護士であれば、半年〜1年の見習い程度ですぐできそうな)ことが多いので、脱落者には再挑戦し易いのです。
移民〜難民が人間であれば言葉が半分しか通じなくても誰でもできる最底辺層職種に浸透する傾向があるので、底辺層ほど職を奪われる危機感が強い・・移民反対、排外的になる傾向が起きる原因です。
国民同士の階層間移動では排斥運動がおきませんが、ただでさえ底辺労働の場が新興国の挑戦で職場が狭まっているときに上からの脱落者が加わるので、(弁護士業界で言えば旧来型業務は限界があるので新業態の企業法務進出が奨励されているのですが)余計に従来型の労働者の地位低下・平均賃金低下→先端産業で働く人との格差拡大を招きます。
韓国では就職路人予備校に通ってようやくサムスン等超一流企業に就職できても、30代から肩叩きが始まると言われています。
肩叩きにあうと、退職金等を利用して小さな居酒屋、土産物屋、コンビニ店主等を始めるしかないと言われていますが、似たようなことが世界中であるのでしょう。
要するに各種業界内の先端分野ではアメリカ企業的感覚で、少しでも能力に難があると見れば、容赦なく切り捨てて旧来型業種に脱落させていく集団です。
部外者にとっては、コンピューター系職業についていると聞くと先端で将来性がありそうですが、内部は多様な階層分化が出来上がっています。
プログラマーの職業寿命が短いのが知られていますが、職業寿命が尽きて再就職するとなれば、同業種で生きるのは無理で映画で見たようにローエンド・・ボイラーマンやタクシー運転手など超古式ゆかしい職業に戻るしかないのかも知れません。
数日前にリクルートが求人倍率の公表を取りやめたという記事が日経に出ていましたが、同じ業界関連でも職種が細分化されているので、求人倍率が細かな職種別で見ないと意味不明になる関係があるということらしいです。
建設業の求人倍率といっても分野によってまるで違うでしょうし、パソコン関連でいえばトータル求人が多くてもある分野では求人が少ないのに別の分野では求職が溢れているなどで細かな分野別で見ないと意味がないらしいです。
職業訓練校などは、数十年前から残っている古びた職業(重機操作等・今ではパソコン操作の練習?)の訓練をしているのが普通です。
4〜5年ほど前に交通事故被害で失業した1級建築士が、CADシステムの職業訓練に通っていたことがありました。
1級建築士でも何ができるかによって、求人倍率が違います。
長寿時代には再教育システムが必要と言うものの、40〜50台の人が20台の若者と最先端分野の教室で机を並べても生まれ付きのIT環境で育った彼らに付いて行くことができるわけがない・同年代の中高校教育でいえばいわば「落ちこぼれ組」「お荷物」です。
再勉強しなかった人よりはある程度分るようになったという程度でしかないので、本当の戦力として就職戦線で戦えるとは思えません。
部長職に止まったままでの学習ならば、基礎的能力で若者に叶わないものの、ある程度若者のやっているIT関連職務の理解ができる年配者になったという程度でしょうか?
完全離職した人の再就職用スキルを与える職業訓練校の役割は、「ローエンドのありふれた職業にせめて就職できるようにします」という程度の底上げを図ることでしかない印象ですがいかがでしょうか。
アメリカのホームレスに対する施策をさっと見た印象では、サービス業で接客できる程度の職業訓練・ピンポイント救済に引っかからないその他大多数は底辺労働にもつけない・・滅びゆく「先住民」のごとく「ゲットー」に囲って死ぬまで保護していくしかないイメージです。
シェルターは出入り自由なのでその点収容所とは違いますが・・。
出入り自由でも、アパートを借りる金もなく、ホテル等に泊まれない以上は夜になると路上で寝るか、別のシェルターを選べるにしても結局は近くのシェルターに帰るしかないのでは、事実上一生シェルター暮らしになる点は同じです。
能力別人口構成はピラミッド型で、底辺層の裾野が広いのでボランテイアがピンポイント的再教育して・一つ一つの成功例・・やっている人は善行を積んでいる達成感や満足感いっぱい・・それはそれでいいことです。
しかし・・こういうやり方では砂漠に水を撒いているような気休め・自己満足で抜本的解決にはなりません。
マザーテレサで知られるように、あるいはビルゲイツの巨額寄付金のように、欧米ではこういう気休め政策にのる人を賞賛して「アメリカ人の心根は優しい」のだという宣伝をして?底辺層不満のガス抜きしてきた社会です。
日本は個人スターを必要としない社会ですから、こういう真似事の売名行為?・・といえば怒るでしょうが・・は不要です。
一本釣りだけではなく、底辺レベルの底上げ・・40点以下の製造要員の仕事が新興国に取られるようになれば、国民の最底辺レベル層を原則として(それでもついて行けない人は一定率残るでしょうが)40点以上に引きあげる努力・・この種の底が挙げには静かな長期ビジョンによる国・社会の制度設計が必須ですが、これには数世代にわたる施策が必須です。
外国人を受け入れるようにする以上は、彼らに対する教育投資が必要と騒がれているのはこの現れです。
膨大な再教育投資の必要性を考えると、縄文の昔から一体的価値観のある日本人と違う歴史経緯・・外国人を受け入れて同化させていくだけでなく、単純労働で受け入れると彼らの技術水準をあげる教育が成功するとは思えない・・長期的に日本社会のためにならないという意見で、長移民受け入れ反対をしてきました。
日本の人手不足・高齢化の循環が安定軌道に乗るまでの数十年間・・我慢すれば高齢者と生産年齢人口のバランスが取れるようになります。
長い日本民族の歴史で見ればほんの短期間のことですから、ジタバタせずにじっと我慢の哲学こそが必要です。
民族ごとにスキルの歴史が違うのですから、その歴史にあったレベルの産業構造社会を作っていく・(日本がアジア展開するまで・・例えば中国は鉄のカーテンによって比喩的にいえば、中国人レベルが50点であれば50点の産業を担当できたのに政治力学によって解放されていなかったために5〜6点程度の低レベル産業にとどまっていた・・ダムが決壊して急激な近代化が生じたにすぎません。
中国がその勢いがどこまでも続くと過信?あるいは空威張りで自国民は100点の仕事をできると息巻いていますが、それは結果を見てからのことにすべきでしょう。

切り捨て社会の持続性(米国)1

米国から逃げ出す企業は以下の通りです。
https://japanese.engadget.com/2018/11/27/ev-gm-5-15/

EVと自動運転車に資源集中。GMが米国内5工場閉鎖、人員15%削減へ
トランプ政策空振り
米ゼネラルモーターズ(GM)が、契約社員の15%をレイオフするとともに、北米5か所の工場を閉鎖、さらに6車種を生産終了すると発表しました。
GMでは今回の再編によって正社員、契約社員あわせておよそ1万4000人のGM従業員が失業する可能性があります。
電気自動車と自動運転車の開発に資源を集中する方針です。

要は、EV系人材に入れ替えたいということでしょう。
車がEV系になると関連部材が大幅減になるので、生産台数が同じでも必要雇用が減るだけではなく、人材の系列が違いますので旧来型人材はそっくり適応障害・失業またはサービス業等への転換が求められる状態です。
本体で1万4000人減といえば、部品納入その他関連企業・周辺飲食業などの雇用減は膨大ですが彼らの多くが行き場を失なっていきます。
https://jp.reuters.com/article/gm-restructuring-trump-tweet-idJPKCN1NW29P

トランプ氏はツイッターで、GMがメキシコや中国の工場を閉鎖しなかったと批判。「米国はGMを救ったのに、その返礼がこれとは!われわれは今、電気自動車を含めGMへの補助金全額カットを検討している」と述べた。

旧来型製造技術者のレベルアップで国内雇用を守るには、時間もコストもかかるので民間企業としてはそんなことにエネルギーを使うよりも、新興国であるがままの低レベル人材を安く使って生産を続ける方が有利というのが米国企業の価値判断です。
アメリカの場合、労働者を機械設備同様の視点で見ているのでペイしないとなれば、(効率の良い機械が出てくれば新しい機械に取り替えるように)簡単に切り捨てるし、労働者も自分の能力(その企業で教えられた恩義など考えずに)に見合った待遇がない=他社からより良い条件を提示されれば転職(勤務先を切り捨てる?)する相互関係です。
中国への日本進出企業では中国人に技術やノウハウを教え込むとすぐに高い給料をくれる現地企業に転職してしまうのが普通ですが、諸外国では組織に対する帰属意識の歴史経験がないのです。
日本の場合には大昔からの村落共同体の発展した武士集団=お家大事・企業一家の思想できましたので、構成員全員生き残り策が最大関心です。
上杉、毛利の例を書いてきましたが、苦しくともリストラなど一切しない(・支配層の儲けを図るよりも構成員の維持が最優先です)のが基本です。
新興国に汎用品製造で追い上げられるようになると海外進出しますが、本国製造業をマザー工場として維持するための海外進出であって、本国の人員削減を目的にしていません。
アメリカ・ユダヤ資本主義は従業員のための企業ではなく「儲け」の基準で切り捨てる仕組みのようです。
新興国の低賃金に対抗するために能力が細分化した弊害をなくし多能工化を進めるなどの工夫努力を多くの企業で進めて、単純作業しかできない新興国との差別化に日々努力してきたのがその一例です。
その努力の結果現場から新技術発見工夫も生み出しやすくなっています。
日夜の努力の結果、国内製造業の急激な縮小を免れてきたし、車その他の各種部品産業が輸出産業・国際競争力を保っています。
人材育成・地味な努力ができるのは、大昔からの組織構成員相互の信頼関係が基礎にありますが・・時間とお金をかけて訓練しても一人前になると転職してしまう社会では企業が自己資金で訓練する意欲を失うでしょうから仕方のない面もあります。
アメリカや中国の現状・転職が先か企業がドライに切り捨ててきたから会社に忠誠を尽くす気持ちがなくなったのが先かの問題ですが、これを日本型の相互信頼社会に変えるのには数世紀どころか千年単位の時間が必要な印象です。
ホームレスに話題を戻します。
放逐された時代不適合・低賃金労働者をどうするかの政治がないことが可視化されたのが近年のホームレス激増になっていることがわかります。
彼ら全員の再教育には無理がある・・・教育機会がなかっただけで教育さえすれば、戦闘機やロケット製造技術者として参加できるようになれる人がいるか?よいえば1万人に一人?あれば良い方で、9割方は今なくなりつつある標準的技術を習得することさえできないでしょう。
国外移転企業を非難したり、ボランテイアによるピンポイントに頼って残酷な切り捨てに対する罪悪感解消に努めている様子ですが、ボランテイアが5人〜10人の再教育に成功しても、全体の底上げにはつながりません。
20年ほど前に職業転換教育・「学校」という映画を見た時の印象ですが、営業マンがリストラにあって職業訓練校に通う設定でしたが、なんとボイラーマンになって再起するストーリーでした。
当時既に新築ビルでは地下でボイラーを炊くスチーム暖房など時代遅れでしたので、再就職後すぐにその職業自体なくなる・・衰えゆく職種なので非常に違和感を覚えながら鑑賞したものでしたが、26日に紹介したボランテイアによる再教育も似たような滅びゆく職種に就職させるための訓練でした。
これから伸びゆく最先端・・ITや金融取引・製造業でも戦闘機製造技術等の能力付与は(文字も読めないものに教えるのは無理があるので、最底辺の接客訓練などでなんとか最低賃金でも雇ってもらえるようにするものに過ぎないようです。
職業柄リストラに遭った人たちを見ていると、先端系産業に勤めていて熾烈な競争に敗れた人が結構います。
時代遅れ産業よりは最先端系の方が日々の競争が熾烈で、そこでの優勝劣敗が日常的です。
学問でも絵描きでも体操でもスケートでも将棋でも皆そうでしょう。
その道のプロコーチその他が工夫しても、無理・プロをやめるしかないということで脱落していくのです。
そこで脱落した人がもう一度挑戦できるように再訓練出来る公共の?職業訓練校など有るはずがありません。
先端系で脱落した人は時代遅れと言われる旧式産業界でやりなおすしかないのが現実です。

アメリカの産業・奴隷利用=粗放経済の破綻1

昨日紹介した日経新聞紙面では、60万人の雇用を誇るアマゾンが18年秋に最低賃金を時給15ドルに引き上げたことを紹介しています。
世界に誇る大手企業がその多くを最低賃金で雇っている現実こそ重要です。
Jul 9, 2016 12:00 amのブログで、「非正規雇用の多いアメリカ最大の大企業のウオールマートの店員の多くが,生活困窮者向けの1、25ドル分のフードスタンプを貰う列に並んでいることが問題になって日本でも報道されましたが、漫画みたいな社会です。」と紹介したことがあります。
サービス業でも日本はおもてなし文化度が高いので、能力レベルに応じた多様な高級職種がありますが、アメリカの場合飲食店といってもフードコート類似のマニュアル対応主流ですから、サービス業従事者の多くは最低賃金すれすれ職になっている点が大きな問題です。
(日本でもチェーン展開のコンビニや居酒屋、ファミレス、回転すしなどの従業員比率が上がる1方ですが・・変化が遅いのが取り柄です・スーパーが発達すると反作用でこだわり製品やデパ地下人気が高まるなど世の中の動きが一直線ではありません・・明治維新当時も洋画が入ると反作用で日本画への注目が起きるなど・・)
2月26〜7日に紹介した現地ルポで見たように英語を話せず文字すら読めないレベルの場合、サービス業はフードコートでも一応顧客対応ですので、(一定のコミュニケーション能力が必要)配送すら(宛名等の理解能力)できず草刈りなどの原始的職業しかありません。
ホームレスト関連するフードスタンプ受給者の激増問題もあり、この点については上記Jul 9, 2016 ブログで
「政府の最新データによると、2014年9月の登録者数は4650万人で、前年の4730万人から減少した」
と引用しています。
この登録は世帯単位であることから、1世帯三人とすれば人口の約3分の1がフードスタンプをもらっていることになるとも書いています。
フードスタンプをもらっていても帰る家のある人が多いでしょうが、ちょっと家賃が上がるとついていけないギリギリの人がこんなに多いことが推測されます。
この人たちの生活保障をどうするかのテーマに答えられないのが、ホームレス激増の背景でしょう。
日本のホームレスのイメージは無職者ですが、アメリカの場合有職者なのに住む家がない状態です。
こういう社会では失業率の統計は前年度との比較傾向が分かるものの、(無職で開き直っている人の割合が分かる程度?)目先困っている人の実態には迫れません。
月収3〜40万円の工員がレイオフされて、最低賃金の配達員などに転じた場合、失業者数は変わらないとしても、生活水準の劇的低下を知ることができません。
ところで昨日見た日中の賃金格差ですが、中国と日本の賃金格差が7〜8年前には10分の1前後の相場の記憶でしたから、短期間に約2〜3割上がったことがわかります。
この賃金上昇の結果、チャイナプラスワンの動きが出ているし、中国は低賃金を武器にした国内生産基地化の夢が破れそうになってきたので焦ってレベルアップに乗りだしたところ、やり方が強引すぎてアメリカの怒りを買っている構図です。
中国が近代産業導入後賃金水準アップに連れて国際競争力維持のために労働の質向上に必死なように、アメリカも奴隷利用による最低賃金による安値生産で始めたものの限界がきて、母国西欧諸国に追いつく・・産業革命の恩恵を受ける準備が始まると、労働の質アップが求められるようになったのです。
低レベル労働者のレベルアップは言うは安く、3〜40代以降の人に再教育してもその効果が知れています。
世代交代を待つしかないとすれば、30代後半以降の再教育不能人材の行き場に困ります。
こうなると低レベル・安いだけの労働者を失業させておけばいいのではなく、何らかの生活費支給が必要になる分、足手まといになってきます。
車産業のEV化も各産業分野のIT化でも同じですが、中高年・既存労働者にEVやIT関連作業に変更を強いる社内教育は年齢が行くほど無理があるので、適応可能な若手新人採用の方が企業にとっては合理的です。
社会の変化が3〜40年周期で起きる場合には、世代交代して入れ替わるので問題が少ないのですが、5〜10年で入れ替わる急激な変化の場合、まだ2〜30年働ける年齢で引退(失業)をしいられるので社会の軋轢が生じます。
先進国の高齢化社会到達までに要した期間と新興国の到達時間がまるで違うのがその象徴ですが、あとから追いつく方は近代産業導入以降ごく短期間で先端技術社会に追いつけるメリットの代わりに生身の人間の陳腐化が早すぎるのが難点です。
日本の場合江戸時代からの工芸技術の蓄積がある上に、産業構造の変化がいつも30年程度の周期で来たので、その間に変化に向けた技術修練を経る時間がある・・次の時代に向けた変化能力の高い人材が多く育っているので社会の分断が起きにくい安定社会になっています。
環境激変の時代に、次々と新たな技術に適応していける企業や人材が多くて今なお多くの製造業がしぶとく生き残れている所以でしょう。
訴訟手続きのIT化の取り組みも、パソコン普及開始後2〜30年経過後の今になってようやく始まろうとしていますが、それも明日から紙媒体を受け付けないというものではなくじっくり進める予定です。
そのうち私ら(昨年末同期会に行ってきましたが、同期の多くはすでに後期高齢者です)に続く次の世代が全員引退していなくなる約10年経過ころに全面施行になるのでしょう。
変化の早い時代にこれでは取り残されるといいますが、社会変化は早くとも30年周期が合理的であり、数百年も遅れすぎた後進国が無理に追いつこうとしているから(草花でいえば北国では春と夏が同時に来るように)変化が早い時代と言われているだけではないでしょうか?
先に進んだ方はゆったり構えて次に備えればいいのであって、焦る必要はありません。
新興国では平均寿命50歳前後の社会に近代工場がいきなり入ってきて生活水準が急激に上がり平均寿命が70前後への高齢化が急速に進む一方で、労働技術の陳腐化がほんの10年前後で進み取り残されるのでは、彼らはその後の長い人生をどうやって生きて良いかわかりません。
馬が高齢化して次の馬を買う代わりに車にするならば順次変化でスムースですが、馬や機械がまだ新しいうちにどんどん入れ替えるようなことを人間相手にしているのが韓国や中国政治ではないでしょうか?

底辺労働切り捨てとホームレス1(奴隷解放)

日本では武士の時代が 終わったからといって元武士層が社会から弾かれ邪魔者扱いされたのではなく、次の時代指導層や中堅人材として活躍しました。
アメリカの場合、スクラップアンドビルドのやり方・・・街でさえ不要となればゴーストタウンにして捨てていく社会です。
人間も不要になれば簡単に切り捨てる・レイオフできる方式です。
単純労働の歴史区分で言えば、北米植民地初期には・・木綿産業が主要貿易材の時代8産業革命は繊維産業で起きたので繊維製品の生産力拡大→原料不足→木綿生産拡大→木綿輸出産業の中心時代に遭遇していました。
生産拡大適地としての植民地獲得したものの次に労働力不足に直面します。
そこで綿花摘み=手作業に人手のかかる作業に世界最低賃金労働者を大量に投入して大規模生産を展開することによって、本国英国が当時世界最強輸出国であったインドやエジプトなど伝統的木綿産地との競争に勝ち、大英帝国栄華の基礎を作るのに貢献しました。
何しろ人間性完全無視の奴隷制ですから、扱いは文字通り牛馬同様・・生殖行為すらも管理してた・・・現在も種牡馬で知られるように牛馬に行なっている「種付け」行為化していました。
「生存さえ保証すれば足りる」その他の給付不要→賃金最低化の極限化を図る政治でした。
アメリカ人には自分が強くても「人としてやって良いことと悪いことの区別がない」「金儲けのためなら何をしても良い」・・初めっから「人倫の道」という価値観のない恐るべき民族のようです。
こういう民族性の行き着くところが、相手が弱り切って反撃される心配がないとなってから決意した「対日原爆投下行為でしょう。
話題を戻します。
ところが産業革命が進み近代化が各分野で進むと国際貿易の主流が繊維産業から工業生産品に移ってくると、植民地とはいえ西欧諸国と同族ですから、アメリカの産業構造レベルも上がってきます。
北米地域で綿花栽培が中心産業でなくなってくると綿花栽培に特化した奴隷(動物に毛の生えた程度の労働者)はお荷物になります。
人件費が世界共通の場合、家畜並みの住まい・食べさせればいいだけの奴隷は安上がりですが、為替が仮に2倍〜3倍になるとその程度のコスト差では国際競争力がなくなります。
今中国成長の勢いがすごいといっても工場労働者の賃金は、まだ月額5〜6万円前後ですから、日本の工場労働者の5〜6分の1程度でしょうか?
例えば日経新聞2月28日朝刊11pでは大手企業の手取り月収の表が出ていますが、これによると台湾の電子機器の受託企業の残業代込の手取りが、なんと五万七千円前後、その他似たような数字が出ています。
統計ではないので全体平均とは言えませんし年齢別の数字も不明ですが、6万円前後としてみて日本の賃金と比較してみましょう。
日本の賃金水準・厚労省の29年の統計です。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2017/dl/13.pdf

新聞に出ているのは外資系大手企業ですから、日本と比較するには大企業の賃金が妥当でしょう。
日本の場合、40歳で約40万円ですから約7倍というところでしょうか?
これだけの賃金格差があると日本で少しくらい人件費の安い・・劣悪待遇をしても競争になりません。
日本あるいは先進国が、賃金比率に合わせて為替相場を切り下げれば競争できるでしょうが、そうすると豊かな生活が維持できないので、為替をそのまま(高収入を維持するならば)にして競争しようとすれば、人間でさえあれば誰でも従事できるような汎用品製造から手を引いていくしかありません。
新興国労働者と同レベルの仕事しかできない人材が、新興国労働者の10〜20倍(中国が解放した頃には20倍を超えていました)も高い賃金を得ていたこと自体が不正だったのです。
生産性以上の高賃金にこだわって職を失うか賃下げを受け入れるしないのですが、企業倒産しても賃下げを受け入れないのが多くの労働者です。
この賃金格差の結果を踏まえて(円切り下げができないので)中国の世界市場参加後日本国内での汎用品製造に見切りをつけて、新興国で作れない高度製品製造に切り替えが進んでいるところです。
労働者の中で高度製品製造に耐えられない労働者が、新興国労働者の何倍も高い賃金を得ていること自体が経済原理に反しているのですから、この構造改革の過程で能力の低い順に製造業から振り落とされていきます。
今朝の日経新聞第一面「進化する経済」には、「1980年台に米国で20%台だった製造業従事者比率が、足元で8%台まで低下した」と出ています。
製造業従事者比率が12%も減っているので、製造業から抜け落ちた人たちが宅急便配送やサービス業等へ転換してきたのでしょうが、その多くが最低賃金スレスレ業種です。

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