異文化尊重と人権3(国際標準2)

例えば、日本で禁酒法や禁煙法が制定された場合、外国に行って飲酒・喫煙したのがバレたら帰国後処罰されるのか?となります。
このためになんでも国内法違反行為を外国でしたら、帰国時に処罰されるわけではない・刑法では属地法主義が原則で属人法適用は例外になっている所以です。
例えば殺人などの重罪犯は国外犯も処罰されるし行政法違反等は処罰されないのが原則的法原理です。
刑法

(国内犯)
第一条 この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。
2 日本国外にある日本船舶又は日本航空機内において罪を犯した者についても、前項と同様とする。
(すべての者の国外犯)
第二条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。
一 削除
二 第七十七条から第七十九条まで(内乱、予備及び陰謀、内乱等幇助)の罪
三 第八十一条(外患誘致)、第八十二条(外患援助)、第八十七条(未遂罪)及び第八十八条(予備及び陰謀)の罪
四 第百四十八条(通貨偽造及び行使等)の罪及びその未遂罪
五 第百五十四条(詔書偽造等)、第百五十五条(公文書偽造等)、第百五十七条(公正証書原本不実記載等)、第百五十八条(偽造公文書行使等)及び公務所又は公務員によって作られるべき電磁的記録に係る第百六十一条の二(電磁的記録不正作出及び供用)の罪
以下省略

(国民の国外犯)
第三条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。
一 第百八条(現住建造物等放火)及び第百九条第一項(非現住建造物等放火)の罪、これらの規定の例により処断すべき罪並びにこれらの罪の未遂罪
二 第百十九条(現住建造物等浸害)の罪
三 第百五十九条から第百六十一条まで(私文書偽造等、虚偽診断書等作成、偽造私文書等行使)及び前条第五号に規定する電磁的記録以外の電磁的記録に係る第百六十一条の二の罪
四 第百六十七条(私印偽造及び不正使用等)の罪及び同条第二項の罪の未遂罪
五 第百七十六条から第百八十一条まで(強制わいせつ、強制性交等、準強制わいせつ及び準強制性交等、監護者わいせつ及び監護者性交等、未遂罪、強制わいせつ等致死傷)及び第百八十四条(重婚)の罪
六 第百九十八条(贈賄)の罪
七 第百九十九条(殺人)の罪及びその未遂罪
八 第二百四条(傷害)及び第二百五条(傷害致死)の罪
以下省略

上記のように政策上必要ものに限定列挙形式です。

第五条 外国において確定裁判を受けた者であっても、同一の行為について更に処罰することを妨げない。ただし、犯人が既に外国において言い渡された刑の全部又は一部の執行を受けたときは、刑の執行を減軽し、又は免除する。

殺人罪等は国外で犯した場合、処罰規定のない国がないのでそこで処罰されるので、実はそれほどの必要性はありません・・。
上記によると賄賂罪を国外で犯しても日本で処罰されそうですが、これは公務員犯罪ですから日本の公務員に対する贈賄であって、外国公務員は刑法でいう公務員ではありませんから不適用です。
日本の国家秩序を守るための刑法ですから当たり前です。
たまたま、今朝の日経新聞朝刊28pでは、初の司法取引の初公判として、タイの工事現場で現地係官に贈賄要求されて現地担当者が日本本社に相談して贈賄要求に応じた事件(内部通報?)での司法取引(会社側が捜査協力して法人自体が処罰されない取引)内容が公開された記事が出ていました。
え?外国公務員への贈賄がなぜ日本刑法の贈賄になるのか?とよく読んでみると贈賄罪の起訴ではなく「不正競争防止法違反(賄賂)」という記載になっていました。
不正競争は企業間の公正競争の問題ですので、国外での企業間競争を公正にするためには国外の不正競争も取り締まる必要があるので不正競争防止法では国外の不正競争行為でも不正競争取り締まり対象になっているのでしょう。
ところで、第5条で国内で処罰できるとしても国外で処罰された刑罰を(二重処罰にならないように)減刑免除される仕組みですから結局国外で殺人等を犯して検挙されないで日本に帰った時に処罰するメリットが中心でしょう。
弁護士になったばかりの頃にハワイでの殺人事件で服役後強制送還された事件(成田空港で入国後即逮捕です)の刑事弁護をしたことがありますが、日本の裁判で8年のところハワイで6年服役していえば残り2年となります。
警報は国民の善導のために巨費を投じて行うものですから、外国人までいちいち刑務所で教育してやるのは国費の無駄です。
入院患者と比較すればわかりますが、働き盛りの国家公務員(平均年収5〜600万?)が24時間体制で監視し移動時には付き添い、3食支給し収容時の医療体制を講じるなどものすごい経費です。
どこの国でも被害者が自国民でなければ、できるだけ執行猶予等の軽い刑罰にして母国に強制送還して母国(母国では自国民が殺されているし被害感情もあるし、物騒な人を野放しにできないなら自分で再教育や面倒見てもらいたいので、すぐに母国(日本)へ送られてきます。
日本の外国人事件でも余程の重大事件でないと原則執行猶予で即強制送還ですから、オーバーステイプラス売春防止法違反あるいは不法就労や交通事故などの事件では「どうせ執行猶予だろう」という見込みで入管職員が法廷に迎えにきています。
このように刑法では限定的に列挙した行為だけ国外で犯しても処罰されるとなっているのに、日本NGOが外国の発注先企業があたかも日本基準を前提に(正確には言ってません・・イメージ流布だけです)大々的に国連等で批判運動するのはおかしな論法です。
上記の通り、日本の賄賂罪にならないが、不正競争にならないかという内部通報の発達もこの一種でしょう。
実質的競争阻害と言えますが、不正の態様に応じて国外処罰規定のあるのとないのがあると思われますが、そのさじ加減は国会(民意)で決めるべきことです。
国外処罰規定がないことを、NGOが騒いで批判しているとすれば行きすぎではないでしょうか?

異文化尊重と人権2(国際標準1)

お隣の子供がいつも虐待されて泣いているのを見て、隣人は見てられない・・かわいそうだがどうするかの問題に似ています。
地域内のことは児童相談所や警察や学校に通報すれば済むでしょうが、隣の国のことになると放っておくしかないのでしょうか?
粗野な人とどの程度深く付き合うか、嫌な部分を見ないようにして仲良くしていくかは、個人的には大人の知恵の問題です。
それとなく嫌な人とは付き合いを弱めていくしかないでしょう。
安倍外交・国際戦力の基本は価値観共有というスローガンでしたが、粗暴な価値観をひけらかす国とは「一線を画す」という意味でもあったでしょう。
従来権力は家庭に介入しないという基本ルールがあったのですが、(家庭内暴力が昔に比べて増えた結果とは思えないですが)女性の権利意識の高まりによって、まずは家庭内暴力への関与システムが広がり(DV法関連の整備)、続いて(児童虐待の場合には児童が死亡するほどのひどい暴力や虐待は3世代同居などの抑止機能がなくなって、マンション等の閉鎖空間で母親の孤独育児と相まって昔より増えたような印象ですが)少子化で「子供は社会共通の宝」意識の高まりからか、原則としてまだ児童相談所経由ですが徐々に警察の関与する場面が増えてきました。
国際社会がこの延長意識で安易に他国内政にまで「人道といえば介入する権利」があるかのように振る舞うのは、今の所まだ行き過ぎでしょう。
西欧では宗教戦争に疲れた結果、ウエストファーリア条約で主権に介入しない(お互い宗教に口をさない)という国際合意ができたのですが、この20年ほどを見るとNGO等による後進国での労働環境劣悪等の批判で国際企業が対応に追われるようになっています。
人権をテーマにすれば、人類の叡智である主権尊重を無視するようになってきたのが行き過ぎた面もあるでしょう。
日米法人が自分で海外に立地する工場等だけでなく、発注先の現地工場が現地環境保護や贈収賄基準に違反していなくとも日本国内法違反で処罰するようになると企業にとっては後進国進出あるいは、後進国製品が安いので輸入する意味がなくなります。
米国や日本国内での贈収賄や環境保護法に反していれば、非難殺到という状態です。
日本企業ではユニクロの発注先の中国工場が、劣悪な労働環境で現地人を雇用しているとして標的になったことがあります。
https://ironna.jp/article/948

まさに地獄! 潜入調査で見たユニクロ下請け工場の実態
『伊藤和子』
長時間労働と低い基本給
Pacific および Luenthai は基本給をそれぞれ月額1550人民元及び1310人民元としているが、これは最低賃金であり、平均的賃金レベルよりはるかに少なく、時間外労働によって生活賃金を稼ぐことが常態化している。そして、両工場の時間外労働数は驚くほど長い。時間外労働時間数は、 Pacificで月平均134時間、Luenthaiで月平均112時間の時間外労働と推計されている。中国労働法では36時間を超える時間外労働は認められておらず、明らかな法律違反である。
2)リスクが高く安全でない労働環境
排水が作業現場全体にあふれている(SACOM提供) いずれの工場の労働環境も、大変劣悪・危険であり、労働者の健康と安全に深刻なリスクをもたらしている。

 例えば、Pacific工場では排水が作業現場の床全体にあふれている。床が滑りやすいことにより、転倒し、身体不随になるような労働災害を引き起こす可能性があるし、機械の漏電のリスクも高い。
深刻なのは、工場内の異常な高温である。工場の夏季の室内気温は約38℃にまで達しているが、エアコンはない。そのため、男性の多くは上半身裸で作業をし、女性も汗だくだという。聞き取り調査に答えた労働者は「あまりの暑さに夏には失神するものもいる」、状況は「まるで地獄だ」と話した。染料部門では、染料タンクは運転時に非常に高温になるため、室温は38-42℃にまで達し、作業員は100-135℃となる染料タンクのそばに立って、タンクから重い生地を取り出さなければならないが、囲いやゲートはなく、労働災害による怪我のリスクが増加している。
3)厳しい管理方法と処罰システム
4)労働者の意見が反映されない

以上はいずれもユニクロと取引のある中国の現地企業の工場ですが、発注元のユニクロにその改善を要求するものです。
日本に本籍のあるNGOは、国際的に日本非難を展開するための資料集めをしている印象を児童売買春関連で書きましたが、肝心の中国の常軌を逸した人権侵害には何も言わないのが特徴です。
上記告発?を見ると私が弁護士になったばかりの頃に千葉の臨海工場地帯を見学した時の印象・真っ赤に溶けた鉄の塊を入れた箱をレール状で運ぶ人夫・灼熱地獄のような現場・あるいは、子供の頃に普通にあった蒸気機関車の釜に石炭をくべる人夫?の姿など彷彿とさせる描写です。
飲食店等の厨房は長靴で働いているのが普通で、それが進んだ姿でした。
一般家庭の台所は土間が一般的でしたので、水や液体系をこぼすと大変でしたが(不潔になります)、プロの飲食店では床全面がコンクリート式になっていて、しょっちゅう水で床を洗えばいいので非常に衛生的という意識でした。
中国は日本に約40年遅れで追いつこうとしているのですから、いまの日本の衛生基準や労働環境を基準にして非難しても始まらないと思います。
この後で、マックの異物混入事件で紹介しますが、後進国はおもて通りだけ高層ビルを建てても生活の基礎意識まで(表通りの舗装はできても路地奥まで綺麗にするには時間がかかる)急速には変えられないし衛生観念も変わらないということです。)
外地で犯した日本基準の法令違反行為・・NGO摘発によれば、単に日本の衛生観念に届かないという程度で日本でも法令違反と言えないものも批判対象に含まれていますが、現地法令に触れない限り現地生産するのは違法でもないし、現地に行けば現地の衛生観念に従って生活すれば(手を洗ってからでなければ、食べたくないと言っても、手を洗えないところでは仕方がないこともあります・・)良いことではないでしょうか?
国内で言えば禁煙場所で喫煙するのはマナー違反でしょうが、喫煙場所に行って喫煙するのは違法でもマナー違反でもありません。
場所ごとのルールを守れば、非難されるべきことではありません。
各地の現地人がその国の法律を守っている限り日本法令に違反していても処罰できないのに、日本人だけ外国にいるときの日本法違反で処罰されたり、日本の不買運動に企業が晒されるとなれば、なんとなくおかしな気がします。
日本で禁酒法や禁煙法が制定された場合、外国に行って飲酒・喫煙したのがバレたら帰国後処罰されるのか?となります。
日本人や日本企業だけが現地の環境労働法規その他の各種法規に関係なく日本国内法規あるいは国内価値水準に適合しなければならず、(環境汚染や汚職その他やり放題・・規制のゆるい中国等新興国では、)日本企業の発注先企業のみ先進国基準を要求するのでは、競争上ものすごく不利になります。
ただし、衛生・品質基準が日本企業は特に厳しいというブランドイメージの中国国内定着が、日本への輸出はダメでも輸出基地としての利用が終わって中国国内販売にシフトするようになると有利に働く面もあります。
MGOによる日本企業批判運動が今の訪日中国人観光客の爆買いに繋がっているのでしょうから、何が幸いするかはわかりません。

クリスマス・イヴ2(異文化尊重と人権)

クリスマスの特番が今回は変な方向のテーマになってきましたが勢いで続けますhttps://www.bbc.com/japanese/video-45480237

国連、中国政府がウイグル人100万人拘束と批判
018年09月11日
国連人種差別撤廃委員会は8月末、最大100万人のウイグル人住民が刑事手続きのないまま、「再教育」を目的とした強制収容所に入れられているという指摘を報告した。
8月半ばにスイス・ジュネーブで開かれた同委員会の会合では、信頼できる報告をもとに中国政府が「ウイグル自治区を、大規模な収容キャンプのようにしてしまった」と委員たちが批判。これに対して中国政府は事実と異なると反発しているが、「宗教的過激派に染まった者」は「移住と再教育の支援を受ける」と珍しく認めた。

中韓汚染・中間の不利なことを率先して流さない)と言われるNHKでも以下のニュースです。
https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2018/07/0719.html

2018年7月19日(木)
中国でウイグル族大量拘束 今何が?
酒井
「今日(19日)の特集、中国の少数民族が悲痛な声を上げています。」
中国の新疆ウイグル自治区に暮らす少数民族のウイグル族。
中国政府は、ウイグル族の分離・独立運動を警戒し、長年、締めつけを行ってきました。
その締めつけが新たな次元に。
外国とつながりがあるウイグル族の人々などを、次々と拘束。
・・・大量の監視カメラが設置され、住民の監視が強化されています。
さらに、パスポートを没収されたり、中国国外との通信を制限されたりするケースも報告されています。
そして今、ウイグル族の人々が次々と拘束され、国際的な批判が強まっています。」
中国 ウイグル族 “大量拘束”の実態
・・・
収容所に数か月間入れられたという40代の男性です。
隣国・カザフスタンで、アメリカのAP通信に拘束中の体験を証言しました。
拘束された人
「彼らは私をつり上げました。
足は地面に辛うじて着くくらいで、4日間、一睡もさせてもらえませんでした。」
この男性はカザフスタンに住んでいますが、去年、両親に会うため、生まれ故郷の新疆ウイグル自治区に帰省したところ、拘束されました。
花澤
「VTRの中では、拘束されていた人、そこから解かれた人も出てきましたけれども、ああいう人たちというのも一定数いるんですか?」
中央大学講師 水谷尚子さん
「いえ、極めてまれな事例です。
彼の場合は、カザフスタンの国籍も持っていたので、カザフ政府の圧力などによって出てこられたと。
しかしながら、中国国籍者であそこから出てきたという話はあまり聞かないですね。」

アメリカ政府系のメディア「ラジオ・フリー・アジア」は、今年(2018年)この選手が「試合で外国に行ったこと」を理由に新疆ウイグル自治区で拘束され、行方が分からなくなったと報じました。
国際プロサッカー選手会も、選手の釈放を求める声明を発表しています。
「ラジオ・フリー・アジア」が、収容所内部で撮影されたものとして伝えた映像です。
映像省略
そこには、手錠を掛けられた男性たちが、中国共産党をたたえる歌を歌う姿が映っていました。
アメリカ国務省 ナウアート報道官
「我々はウイグル族の大規模な拘束と、空前のレベルでの監視を懸念している。
中国にこの措置の停止と、拘束された人の釈放を求める。」
中国外務省 陸慷報道官
「新疆ウイグル自治区の社会は安定し、経済も発展して、宗教の自由も享受している。
これは中国の内政であり、外国が干渉する権利は無い。」

以下省略しますが、在日ウイグル人が故国にいる親族と連絡がとれなくなっている現状を訴える悲痛な声が紹介されています。
23日以来、米国人の基礎レベル・・異文化理解の低さを根拠なく?書いてきましたが、我々日本の法律家の世界も専門化が進んできた結果幅広い教養がいらなくなったせいか?、あるいは合格者が増えすぎて地位低下による・・許容というのは、究極的には基礎的豊かさに帰する?かの原因不明ですが、若手弁護士を見ると一般教養に関する関心が急速に低下している印象です。
アメリカ人が根拠なく相手国の文化を無視して、「土足で他人の家にズカズカと踏み込む]」ような無礼を繰り返してきたことが、世界的にあちこちで嫌われるようになっている(国力低下に比例して表に出てきた)大元の原因でしょう。
ただ22日に書いたように誰と付き合っても「なくて七癖」というように、自分の流儀に合わない嫌なことはあるものです。
中国古来から続く残虐な国民性は文明国(・・デジタル技術駆使の能力はついたが文化は未発達?)になっても簡単には変わらないでしょう。
その一端があらわれて国際社会をギョッとさせたのが天安門事件でしたし、北京オリンピックにあわせて犬猫を食べる習慣をやめ冴えるキャンペインをしていましたが、この十数年では政治犯でいつの間にか行方不明になっている人民の臓器が闇販売されるようになっているおぞましさです。
天安門事件当時は国力がなく開き直る力がなかったので国際批判に萎縮して日本に頼ったのですが、今は開き直って批判国を逆に経済制裁したり気に入らない国の中国滞在者を拘束してしまえるほどの国力がついたということでしょう。
ファーウエイの副会長が米国の要請でカナダで逮捕されると、中国はすかさず在中国のカナダ人を次々と拘束しています。
ヤクザが警察通報された仕返しにその家族を襲っているようなやり方です。
こういう民族とどうやって付き合っていくか?ですが、あくまで交際の範囲であって、これに外国が介入する権利があるかは別問題です。

クリスマス・イヴ1(GHQ執務場所跡とKITTE内東大博物館見学)

明日はクリスマス・イヴなので、例年の習慣に従って日頃の連載は休んで今日明日の特番です。
今年の年末は、22日の土曜日から23日の天皇誕生日(平成天皇の来春ご退位によって天皇誕生日はこれが最後です)24日は振替休日で3連休となりました。
平成天皇最後の記憶に残るプレゼントになり、良き巡り合わせでした。
私は、12月7日に日弁連の委員会出席の帰り午後3時頃に東京駅前のKITTEという旧中央郵便局を残した高層ビル1階にあるコーヒー店で都内に住む末の娘と待ち合わせてコーヒーを楽しんだことから、偶然東京大学(当時は工部大学校)草創期の旧研究室の備品?らしきものの展示室が目に入り、そこへ入るとレトロな雰囲気と明治初期に研究用に集めた色々な品々の素晴らしさ!窓外に目をやると東京駅前広場を取り囲む高層ビル街の電気のきらめきが一気に気に入りました。
気に入った勢いでこの連休初日・22日に、妻ともう一人の娘の三人で、銀ブラならぬ、丸の内ブラを楽しみながら、KITTEに再び行くことになりました。
日暮れを目指して自宅を出て、まずは旧GHQのあった明治生命ビルの見学をして、日暮れどきの丸の内のイルミネーションを楽しみながら目的のKITTEへ行くコースで楽しんできました。
気候は雨模様でしたが、いきなり寒くなった1週間ほど前の気候にくらべて穏やかな日でしたので、しっとりした空気の中で気持ちよく散策できました。
東京駅前の広場では、多くの人もくつろいだ様子でイルミネーションや高層ビルの夜景を楽しんでいて、見ているだけで平和な社会を実感できて良い雰囲気でした。
私にとっては、旧GHQ本部跡の明治生命ビルの見学は、10年ほど前に妻と一緒に行ったことがありましたし、両方とも2回目でしたが、(今回は各所の説明がデジタル化されていて)2回目の方がよりよく理解できた印象です。
GHQ執務場所跡の方は10年ほど前に行った時と見学者は同じ程度マバラでしたが、KITTEの方は12月7日に行ったウイークデーと違い3連休中初日であったこともあって、しかも中央吹き抜けのクリスマスツリーの大人気のせいか?人出が多く、その余波か?東大博物館?もかなりの人出になっていました。
(12月7日は館内に見学者が4〜5人程度しかいなかったのですが・・)
見ていると、明治初期に欧米の模倣で大学というものを創設しものの、(藩校その他の文系教育の経験があっても)理系学問所としての経験のない日本では、何から手をつけて良いのかわからず手当たり次第に多方面の標本等を集めていたような印象を受けました。
展示品はそれぞれは精巧なもので感心しましたが、今のように理学、工学、電気、化学、鉱石学・民俗学や生物学その他理科系分業の進まない状態で、民俗学的資料に至るまで(アフリカや南米のお面まで)幅広く研究材料を集めていたイメージで、草創期の大学は大変な状態であったことがわかります。
明治生命ビルでは、GHQ接収時には、明治生命ご自慢のせっかくの文化的内装を嫌って?緑いろのペンキを塗りたくられていたので、昭和31年にGHQから返還されると明治生命はすぐに旧に復する工事をした経緯も説明されていました。
ペンキで塗りたくった行為は、庶民ではなく最高司令官の執務場所を仕切る側近の文化レベル・・・日常接している最高司令官の文化レベルを表すのでしょうが(・・幕末ペリー来日時同様に?)他国文化というものを理解できないのが、アメリカの文化レベルというべきでしょうか。
マッカーサーは単なる軍人としてではなく、日本占領統治を委ねられた以上は、幕僚には経済や軍事、法律、宗教や伝統文化関連等の専門家がいたのでしょうが、良い建物だからこそ司令部執務用に接収しておきながら、室内をペンキで塗りたくる神経が異常です。
一般的に言えば現地文化の理解力・基礎教養の低さを表すとも言えるし、逆に征服者の傲慢さを見せつけるためにあえて行った地元文化無視の示威行為だったとも言えます。
この辺は、セブン・イヤーズ・イン・チベットという映画・・中国軍圧迫に抵抗していたダライ・ラマ14世が最後にチベット脱出を敢行したときの映画を見たことがあり、そのとき強烈に残っている印象をもとに書いているのですが、日本撤退後中国軍の圧迫に恐れをなしたチベット側が、中国使節を迎えるために今で言えば式典用に王族等が歩く通路に絨毯を敷き詰める場所に、絨毯の代わりに人民・・チベット族最高技術者を駆り集めたのでしょうが、丹精込めて足元にチベット仏教の精神模様らしきものを描く場面があって、その直後に到着した中国軍人がせっかく丹精込めて作り上げた足元の文様をあえて中国高官が蹴散らしながら、いばり散らして傲慢に宮殿(寺院?)に入っていく状況を活写していました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/セブン・イヤーズ・

『セブン・イヤーズ・イン・チベット』(Seven Years in Tibet)は、1997年のアメリカ映画。ジャン=ジャック・アノー監督作品。
アイガー初登頂で知られるオーストリアの登山家ハインリヒ・ハラーの自伝の映画化。彼がチベットで過ごした7年間、彼と若きダライ・ラマとの交流を描く。
映画に対する中国の反応など
『セブン・イヤーズ・イン・チベット』の公開後、中華人民共和国政府は、映画の中で中国人民解放軍の士官が意図的に無礼で傲慢な人物として描かれている、また中国人民解放軍兵士がチベット人に対し虐殺したかのような演出がされたとして強く非難した。このため『セブン・イヤーズ・イン・チベット』は中国で上映禁止となった(言論統制)。また、映画の監督および主演者のブラッド・ピット及びデヴィッド・シューリスは中華人民共和国支配地域への立ち入りを無期限で禁止されたが、ブラッド・ピットは2016年11月に出演作の宣伝のため中国を訪問している[3]。

以上によると約20年前に見たことになります。
映画を見たときに「中国って怖い国だな!という印象づけを受けた映像でしたが、(中国が政敵を倒すと何十マン人も穴埋めしたり、生け捕りした敵将に対して捉えた親の肉を切り刻んで食べせるなど、人とは思えない残虐行為の歴史を想起する仕組みでした。
これは米国的価値観による中国批判ではなく、支配者になり優位に立ち被征服民を牛馬や犬猫のごとき扱いをするには、「相手の文化を全面無視にする」ことから始めた方が良いという米国の価値感が背景にあったのかもしれません。
ただし、中国が映画を批判しているようですが、現在ではウイグル族100万人以上を監禁しては拷問などを続けているという批判をうけています。

ロシアとトルコの関係2(トルコ危機?1)

トルコのエルドアンは強権政治(権力維持)の代償として、国是であった欧米依存から、宿敵ロシアにすり寄ってしまった事になります。
トルコとしては、十字軍遠征以来の敵役であった西洋が産業革命以降圧倒的力を持つようになるとその力を借りないとロシアの攻勢から国を守れなくなった象徴がクリミヤ戦争でしょう。
この因縁の地をロシアがウクライナから奪ったのが、この2014年のことです。
この侵略行為に対して欧米は対露経済制裁しているのですが、エルドアンは狂犬支持批判を受け入れたくないために制裁で困っているロシアと手を組んで欧米に背を向けようとしていることになります。
オスマントルコ時代末期から現在に至るまで欧米寄りの姿勢を国是にしてきたのは、国力衰退の現実に合わせて、国家(民族)の存立を図るには格下と思っていた西洋列強に頼るしかないと判断した結果でした。
その行き着くところ、第二次世界対戦以降は対露大規模相互防衛条約であるナトーへの正式参加を許されるなど、対露防衛を盤石化してきたのがトルコでした。
NATO・北大西洋条約機構に関する本日現在のウイキペデイアです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E5%A4%A7%E8%A5%BF%E6%B4%8B%E6%9D%A1%E7%B4%84%E6%A9%9F%E6%A7%8B

2017年時点で29カ国[1]
加盟した年 国 1949年 アイスランド、 アメリカ合衆国、 イギリス、 イタリア、 オランダ、 カナダ、 デンマーク、 ノルウェー、 フランス、 ベルギー、 ポルトガル、 ルクセンブルク 1952年 ギリシャ、 トルコ 1955年 ドイツ

その後西欧ではEUが結成されたので、単なる軍事同盟だけではなく共同体の一員となることを求めていくら擦り寄っても擦り寄っても西欧(キリスト教社会)の仲間に入れてもらえない差別意識・屈辱感に苛まれることになります。
対露防衛を目的とするNATOという軍事同盟に早くから入れてもらっているが、運命共同体と認めるべきEU参加申請にあれこれと注文をつけられて一向に加盟が認められない現実・・運命共同体になるのは嫌だが、お互いの利を持って軍事面だけで協力関係を築くという露骨な西欧の態度・・これがエルドアンがさじを投げるようになった下地でしょう。
エルドアン個人の意見ではなく(屈辱的関係はゴメンだという)トルコ民族全般に流れる不満が背景と見るべきでしょう。
しかし、運命共同体にまではなれないとしても、どうせ支配下・あるいは他人づきあいするにしても、ロシアの支配下あるいは服従関係に入るよりは、西欧の方が優しいというのが、歴代トルコ指導者や民族の判断だったのではないでしょうか?
実際ロシア支配下に入ったクリミヤ半島などではトルコ系というか、中央アジア系原住民の多くはシベリヤ等へ集団強制移住させられて現地にいなくなっていると言われます。
バルト3国その他でもロシア支配下に入った地域では、ロシア系人口の急増・原住民の激減が見られます→人為的強制移住政策・・シベリア送りが言われてきた・・うろ覚えの記憶ですが、詳細根拠までチェックしていませんので正確性は?と思ってください。
欧米に従うのとソ連・ロシア民族に従うのとどちらが良いか・・第二次世界大戦後の結果・・東独と西独の発展の差・・ソ連軍支配地となった東独では鉄道線路まで剥がして持って行ったと言われています。
日本の場合、北海道がもしも戦後ソ連支配下に入っていれば北海道住民の日本人の大方がシベリア送りになっていて(その多くは反共思想嫌疑対象にされて粛清され極寒の地で死亡してしまい、人種的には消滅?)北海道住民の大方はロシア人に入れ替わっていた可能性が高いでしょう。
60年安保騒動の頃に、メデイアでは公式報道はありませんでしたが、・我々世代は「アメリカがひどいからといって、ソ連支配・服従関係に入るのとどちらがひどいかの選択の問題」だという意見を聞いて育ちました。
満州駐在の関東軍将兵がシベリヤに連行され抑留された過酷な経験もあって(不可侵条約を破って満州侵攻してきた連軍の残虐さ、腕時計など見つかると身ぐるみ剥がれされるような経験、婦女子の暴行など)メデイアが報道しなくとも日本をソ連侵略から守らないと大変なことになるという選択のテーマ・・口コミの恐怖感の方が強かったのです。
実際その時の国民の選択・欧米よりいわゆる西側・・日米安保体制選択が正しかったことは、今や歴史的事実でしょう。
戦後思想界・メデイアを席巻していた左翼・・ソ連系思想界の失敗・・が白日の下にさらされ始めましたが、この批判論台頭に恐れをなしたのか?最近左翼系思想界からの巻返し運動・・60年台から70年初頭にかけての思想あるいは芸術界の過激な動き・吹き荒れた学生運動等の回顧展が宣伝されていますが・・これは批判のうねりに対する最後の反撃のつもりでしょうか。
日経新聞1週間前の文化書評?に高坂正嶤に関して誰かが書いた書物の書評が出ていました。
論壇では左翼系信奉者の多い丸山真男論ばかりで高坂正堯氏に関する評伝が少ない・・安保騒動が歴史になった今になると、高坂正堯氏の思想意見の通りの歴史展開になっているので彼の功績が見直されるべきで時宜を得た書物だというというような書評が出ていました。
文献では60年安保でも表向きの議論ばかりですので後世の人は誤解しますが、現実に生きている当時の人は占領政治に気持ちの良い人はいない・・米軍人による強姦事件多発や日米戦争開始に関する日本側の言い分が100%封じられてしまう不満などいくらでもありますが、(GHQ司令部跡を22日に見てきた感想をクリスマスのコラムで書きますが、せっかくの文化遺産をペンキで塗りたくるのがアメリカの文化度です)「じゃソ連だったらどうなのかの比較が庶民間では行われていた・・メデイアで論じられない重要な価値判断があったのです。
現実生活者の目はしたたかですが、メデイア界の寵児・思想家評論家は(共産社会は貧富の差がない理想の社会という)青臭い議論ばかりで社会体験のない青年を煽っていたのです。
学生運動家上がりの文政権の「最低賃金さえあげれば皆幸せ」という書生論が韓国経済を苦しめているようですが「韓国のアメリカ離れ」中国寄りの動きもトルコの動きと似ていますが、要は選択の問題でしょう。
擦り寄るといえば、ロシアの西欧崇拝も相当なものです。
フランス宮廷風文化取り入れに歴代皇帝は熱心でしたし、今もできれば西欧の仲間に入りたいのに西欧から見ればどう猛な野人扱いで本当の仲間に入れてもらえない悔しさで、今やプイッと横を向いて嫌な中国のご機嫌伺いするしかない状態です。
地理的に見ればトルコもロシアも西欧世界から見れば辺境の地という点で共通的・ひいては粗暴なイメージですから、社会意識・文化的に遠くなるのは仕方がないことでしょう。

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