ロシアとトルコの関係2(トルコ危機?1)

トルコのエルドアンは強権政治(権力維持)の代償として、国是であった欧米依存から、宿敵ロシアにすり寄ってしまった事になります。
トルコとしては、十字軍遠征以来の敵役であった西洋が産業革命以降圧倒的力を持つようになるとその力を借りないとロシアの攻勢から国を守れなくなった象徴がクリミヤ戦争でしょう。
この因縁の地をロシアがウクライナから奪ったのが、この2014年のことです。
この侵略行為に対して欧米は対露経済制裁しているのですが、エルドアンは狂犬支持批判を受け入れたくないために制裁で困っているロシアと手を組んで欧米に背を向けようとしていることになります。
オスマントルコ時代末期から現在に至るまで欧米寄りの姿勢を国是にしてきたのは、国力衰退の現実に合わせて、国家(民族)の存立を図るには格下と思っていた西洋列強に頼るしかないと判断した結果でした。
その行き着くところ、第二次世界対戦以降は対露大規模相互防衛条約であるナトーへの正式参加を許されるなど、対露防衛を盤石化してきたのがトルコでした。
NATO・北大西洋条約機構に関する本日現在のウイキペデイアです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E5%A4%A7%E8%A5%BF%E6%B4%8B%E6%9D%A1%E7%B4%84%E6%A9%9F%E6%A7%8B

2017年時点で29カ国[1]
加盟した年 国 1949年 アイスランド、 アメリカ合衆国、 イギリス、 イタリア、 オランダ、 カナダ、 デンマーク、 ノルウェー、 フランス、 ベルギー、 ポルトガル、 ルクセンブルク 1952年 ギリシャ、 トルコ 1955年 ドイツ

その後西欧ではEUが結成されたので、単なる軍事同盟だけではなく共同体の一員となることを求めていくら擦り寄っても擦り寄っても西欧(キリスト教社会)の仲間に入れてもらえない差別意識・屈辱感に苛まれることになります。
対露防衛を目的とするNATOという軍事同盟に早くから入れてもらっているが、運命共同体と認めるべきEU参加申請にあれこれと注文をつけられて一向に加盟が認められない現実・・運命共同体になるのは嫌だが、お互いの利を持って軍事面だけで協力関係を築くという露骨な西欧の態度・・これがエルドアンがさじを投げるようになった下地でしょう。
エルドアン個人の意見ではなく(屈辱的関係はゴメンだという)トルコ民族全般に流れる不満が背景と見るべきでしょう。
しかし、運命共同体にまではなれないとしても、どうせ支配下・あるいは他人づきあいするにしても、ロシアの支配下あるいは服従関係に入るよりは、西欧の方が優しいというのが、歴代トルコ指導者や民族の判断だったのではないでしょうか?
実際ロシア支配下に入ったクリミヤ半島などではトルコ系というか、中央アジア系原住民の多くはシベリヤ等へ集団強制移住させられて現地にいなくなっていると言われます。
バルト3国その他でもロシア支配下に入った地域では、ロシア系人口の急増・原住民の激減が見られます→人為的強制移住政策・・シベリア送りが言われてきた・・うろ覚えの記憶ですが、詳細根拠までチェックしていませんので正確性は?と思ってください。
欧米に従うのとソ連・ロシア民族に従うのとどちらが良いか・・第二次世界大戦後の結果・・東独と西独の発展の差・・ソ連軍支配地となった東独では鉄道線路まで剥がして持って行ったと言われています。
日本の場合、北海道がもしも戦後ソ連支配下に入っていれば北海道住民の日本人の大方がシベリア送りになっていて(その多くは反共思想嫌疑対象にされて粛清され極寒の地で死亡してしまい、人種的には消滅?)北海道住民の大方はロシア人に入れ替わっていた可能性が高いでしょう。
60年安保騒動の頃に、メデイアでは公式報道はありませんでしたが、・我々世代は「アメリカがひどいからといって、ソ連支配・服従関係に入るのとどちらがひどいかの選択の問題」だという意見を聞いて育ちました。
満州駐在の関東軍将兵がシベリヤに連行され抑留された過酷な経験もあって(不可侵条約を破って満州侵攻してきた連軍の残虐さ、腕時計など見つかると身ぐるみ剥がれされるような経験、婦女子の暴行など)メデイアが報道しなくとも日本をソ連侵略から守らないと大変なことになるという選択のテーマ・・口コミの恐怖感の方が強かったのです。
実際その時の国民の選択・欧米よりいわゆる西側・・日米安保体制選択が正しかったことは、今や歴史的事実でしょう。
戦後思想界・メデイアを席巻していた左翼・・ソ連系思想界の失敗・・が白日の下にさらされ始めましたが、この批判論台頭に恐れをなしたのか?最近左翼系思想界からの巻返し運動・・60年台から70年初頭にかけての思想あるいは芸術界の過激な動き・吹き荒れた学生運動等の回顧展が宣伝されていますが・・これは批判のうねりに対する最後の反撃のつもりでしょうか。
日経新聞1週間前の文化書評?に高坂正嶤に関して誰かが書いた書物の書評が出ていました。
論壇では左翼系信奉者の多い丸山真男論ばかりで高坂正堯氏に関する評伝が少ない・・安保騒動が歴史になった今になると、高坂正堯氏の思想意見の通りの歴史展開になっているので彼の功績が見直されるべきで時宜を得た書物だというというような書評が出ていました。
文献では60年安保でも表向きの議論ばかりですので後世の人は誤解しますが、現実に生きている当時の人は占領政治に気持ちの良い人はいない・・米軍人による強姦事件多発や日米戦争開始に関する日本側の言い分が100%封じられてしまう不満などいくらでもありますが、(GHQ司令部跡を22日に見てきた感想をクリスマスのコラムで書きますが、せっかくの文化遺産をペンキで塗りたくるのがアメリカの文化度です)「じゃソ連だったらどうなのかの比較が庶民間では行われていた・・メデイアで論じられない重要な価値判断があったのです。
現実生活者の目はしたたかですが、メデイア界の寵児・思想家評論家は(共産社会は貧富の差がない理想の社会という)青臭い議論ばかりで社会体験のない青年を煽っていたのです。
学生運動家上がりの文政権の「最低賃金さえあげれば皆幸せ」という書生論が韓国経済を苦しめているようですが「韓国のアメリカ離れ」中国寄りの動きもトルコの動きと似ていますが、要は選択の問題でしょう。
擦り寄るといえば、ロシアの西欧崇拝も相当なものです。
フランス宮廷風文化取り入れに歴代皇帝は熱心でしたし、今もできれば西欧の仲間に入りたいのに西欧から見ればどう猛な野人扱いで本当の仲間に入れてもらえない悔しさで、今やプイッと横を向いて嫌な中国のご機嫌伺いするしかない状態です。
地理的に見ればトルコもロシアも西欧世界から見れば辺境の地という点で共通的・ひいては粗暴なイメージですから、社会意識・文化的に遠くなるのは仕方がないことでしょう。

フラストレーション度3(ロシアとトルコの関係)

さしあたりできることは、(専守防衛の呪縛を煽るための運動家を養っていますのでその活用によって、)何の反撃もしてこない安全パイの日本攻撃・反日暴動に戻る可能性が高まります。
国内反日キャンペイン再開・国民を煽るだけ煽って〜尖閣諸島海域で漁船や公船という名の軍船?大量投入や南シナ海での通行妨害程度のことから始める可能性がないわけではない・・・皆無ではないと見ておくべきです。
現状は、国際孤立化プラス米国の総攻撃?の結果やむなく日本ににじり寄っていますが、いつでも日本攻撃できるように同時に南京事件の教育強化や南京事件否定意見を禁止するなど着々と布石を打っています。https://www.asahi.com/articles/ASLDD7S52LDDUHBI04R.html

南京事件の追悼式典、習氏ら参加せず 日本へ配慮にじむ
2018年12月13日18時23分
昨年は習近平(シーチンピン)国家主席が出席したが、今年は習氏をはじめ最高指導部の党政治局常務委員の7人は参加しなかった。日中関係が改善するなか、日本への配慮がにじむ式典となった。
南京市では式典に合わせ、市民に1分間の黙禱(もくとう)をこの日に義務づける条例を施行。条例では、南京事件を否定したり、記念館周辺で旧日本軍を連想させるような軍服を着て写真を撮ったりする行為の禁止も盛り込んだ。

習近平が今年だけ?「出席しない」というだけのことで、南京事件否定意見をいうことすら禁止→違反すれば刑務所行き?条例を制定するなど逆に着々と制度強化しているのが実態です。
天安門事件の時に日本にすがりついてきたのと同様で「今困っているから応援をしてほしいだけで、アメリカの攻勢が終われば嫌がらせ復活します」という意思表示ではないでしょうか?
こんな国に誠意があるでしょうか?
朝日新聞は何でも中国をよりよく見せたがるようですが、「配慮がにじむ」どころか「面従腹背」という中国古来の相手を欺く常套手段の一種(現在では養光韜晦)ではないでしょうか?
この後で中国の伝統的味方である独仏を中心としたEUの動きを紹介しますが、少しの間、国威発揚の1形態である制裁合戦の帰趨・・ロシアによる対トルコ野菜輸入禁止に戻ります。
Sep 19, 2016「フラストレーション度2と中華の栄光復活」の続きです。
トルコも野菜輸出出来なくて困りますが、本来我慢競べでは世界から制裁を受けているロシアの方が困る筈ですが、比喩的に10対8の差があっても国民の不満度では、トルコの方が民主化が進んでいる関係・あるいはフラストレーション度がロシア国民より低い関係で対外強行策による支持率アップ効果が低い弱みがあって、エルドアンが遂に謝って関係修復しました。
野菜等を買う方は個々人であって、エンドユーザーは企業人ではありません。
個々人の方は、経済学者が前提にするような合理的行動する人ばかりではありません。フラストレーション度が上がると民族意識鼓舞によって、窮乏我慢力が高くなっているのが普通です。
他方海外輸出する方は,作物を庭先で近所の人に売るような仕組みではなく、企業化されているので、輸出関連業界が成立している外に、半年前に作付けした野菜の処分に困る・・資金繰りが最優先課題で動く面が大きい・・良く言えば合理性が高いのです。
民族意識の鼓舞だけではどうにもなりませんので、その突き上げの方が大きい面があります・持久戦では、輸出禁輸する方が負けるのが普通です。
買う方は制裁に関与していない国から割高でも輸入その他いろんな買い方があるのですが、輸出禁止している国・・輸出国・商売人の方がよその国に商圏を奪われるのと従業員を養い切れない資金繰りがつかなくなるので焦ります。
エルドアンは以下紹介するように6月下旬頃から謝罪の書簡を送っていましたが、謝るだけでは格好つかない状態に陥っていました。
そこで16年7月15日〜16日に起きたクーデター未遂事件に対する徹底弾圧をする一方で欧米価値観に対する挑戦的態度を表明し同時にクルド族との和解を破棄して積極攻勢に転じて国民支持を上げています。
ちなみにこのクーデター未遂事件自体、普通のクーデターでは、最優先対象である筈のエルドアン大統領に対する攻撃ないし捕捉を意図的に避けている印象・・彼がホテルを出て行った後を空爆するなど不自然・・おかしな流れでしたから、もしかしたら手の込んだヤラセっぽい演出を疑う人が多いでしょう。
クーデター直後に1万5000人近前後の裁判官や軍〜政府機関の人物をクーデター関与を理由に解任や拘束していること・・あまりにも早過ぎる点も不自然な印象です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/2016によると以下のとおりです。

「関与したとされる軍関係者が次々に身柄を拘束され、7月18日までに軍関係者、検察当局や判事など司法関係者の約7,500人以上を拘束したほか、警察官約7900人、地方の知事や首長30人を含む公務員8700人を解任した[24]。」

(普通は幹部の検挙から順に芋づる式に割れて行くものですが・・クーデター鎮圧とほぼ同時ですから驚きです。)
この疑問・・人権侵害・・政敵弾圧政策ではないかの疑問を言う欧米に対する「シャラップ」が、ロシアに対する急接近とシリア反政府連合の一員であってアメリカが支援するシリア国内のクルド族攻撃強化です。
http://mainichi.jp/articles/20160810/k00/00m/030/146000c毎日新聞2016年8月9日 23時46分

「ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領は9日、露北西部サンクトペテルブルクで会談した。昨年11月にトルコ空軍機が露空軍機を撃墜して以降 では初めてとなる会談で、両首脳は関係を正常化させていくことで一致した。先月のクーデター失敗後、欧米との関係がぎくしゃくするトルコとロシアの「再接近」にはイランも関心を示す。この3カ国が欧米やアラブ諸国との対抗軸を形成すれば、シリア内戦など中東情勢にも影響を与えそうだ。 」
「エルドアン氏が6月下旬、撃墜事件についてロシア側に謝罪の書簡を送り、半年ぶりに関係改善の糸口が開かれた。 」
「北大西洋条約機構(NATO)と軍事的対立を強めるロシアにとって、その加盟国であるトルコを引きつけることは安全保障戦略上の意義が大きい。
一方でトルコにとっては、クーデター失敗後に強権支配を進めるエルドアン政権と米欧との関係にあつれきが生じる中、ロシアとの良好な関係は有効な外交カードとして使える。エルドアン氏がクーデター失敗後の初の外遊先としてロシアを選んだのは象徴的だ。」

フラストレーション度2と中華の栄光復活1

話題を北方領土回復に戻しますと、日本は軍事力で押しきるのは国是としてありえないので交渉しかあり得ません。
戻ってくるとすれば日本がロシアを追いつめたからではなく欧米が追いつめたので中国に頼ったものの大した協力をしてくれないので困っているロシアに日本が手を差し伸べる関係が必要です。
友好・信頼関係を安倍政権が時間を掛けて形成しておいたこと・・その方向になったので解決しそうになって来たことになります。
力づくの解決が正しくないと言う道義基準の社会では、長期的視点での友好関係樹立・・要は外交能力が重要です。
中国はまだそこのところが分らない・・直截要求するしかない・・・幼児ギャング世代レベルの社会と言うところでしょうか?
このあとでEUや韓国などの関係を書いて行きますが、中国はちょっとでも不利なことがあるとすぐ目に見える仕返しをする(・・フィリッピンに対するバナナ輸入妨害・・税関でサボタージュされてみな腐って返品されるなどいくらでもあります)即物的対応が目立ちます。
王者の栄華とはそう言うことをしなくとも、周辺から尊敬されることを言うものです。
何回も書いてきましたが,日本のように順次社会構造が変わって来た社会と違い、中国2000年(最近4000年の歴史と約2倍ガケで言い始めましたが、秦の始皇帝以来で言えば約2000年が正しいところです)の歴史と言っても、その間全く発展性がなく、同じ制度の繰り返しでやって来たので古代意識のままに留まっているから、幼児的発想しか出来ない原因です。
習近平は古代?の「中華の栄光・栄華を戻りたい」と主張していますから、古代意識がこの地域人民の社会レベルに合っているのでしょう。
ちなみに中華の栄光・栄華とは何かの定義すら分っていません。
やっていることから逆算すると「栄光」「栄華」とは、道義による名誉ある地位を目指すことではなさそうです。
日本領海での違法漁船操業・・言わば泥棒行為や、武力による支配地域拡張=強盗・海賊行為?をすることが「栄光・栄華の復活」であるかのような振る舞いです。
次に「中華の」意味ですが、そもそも過去の最大版図は清王朝が獲得したものであって、満州(女真)族・異民族支配の「栄光」「栄華」であって漢民族の栄光・栄華ではありません。
清朝が南沙諸島海域を武力支配したこともない・・元々大陸国家であって海洋国家ではないのですが・・この点を措くとしても、「中華」の定義自体が何を意味しているのか分りません。
世界帝国を樹立したモンゴル王朝・元もモンゴル族に漢民族が服従していた歴史です。
異民族に支配された成果?を自分の成果に出来るならば「日本の栄光・栄華復活」と言えば、アメリカ合衆国も俺のものとなります。
仮に漢民族限定の栄光・栄華の復活と言うならば、漢民族の語源?の漢王朝で言えば、次々と王族女性を匈奴に貢ぎ物に差し出していた惨めな「栄光・栄華?」のことではないでしょうか?
蘇武・李陵の故事・・有名な漢詩もあります・・に明らかなように英雄視される武帝のときでさえ、有能な将軍李陵や蘇武が何十年も捕虜生活していたことが知られています。
如何に歴史を捏造しようとも、王昭君の故事にも明らかなとおりです・・支配している方が何故王族女性を差し出す義務があったのでしょうか?
中国贔屓の文化人は朝貢の歴史を強調しますが、それは外交儀礼の一方法でしかなく、しかもこれまで漢民族が異民族に支配されたときの方がうまく行っているのです。
朝貢貿易が支配を表すならば、物産を持って行くのとは本質・レベルの違う女性を差し出さざるを得なくなっていた漢民族と匈奴の関係はどうなるの?と言うべきです。
神に仕える皇族未婚女性の斎宮制度、日本古代に地方豪族から朝廷に差し出される「采女」制度〜戦国時代では、武田信玄と諏訪御前の関係でも分るように、女性を差し出すのは戦に負けた方がすることです。
漢民族が王族女性を差し出すこと・屈辱的協定によって、漸く匈奴との和解で来たのが歴史事実です。
王照君は李白の詩によって我が国でも有名です。

    漢家秦地月,流影照明妃。
    一上玉關道,天涯去不歸。
    漢月還從東海出,明妃西嫁無來日。
    燕支長寒雪作花,蛾眉憔悴沒胡沙。
    生乏黃金枉圖畫,死留青冢使人嗟。

話題が飛びますが、上記の書き出しを見ると、阿倍仲麻呂の「あまの原、フリサケミレバ春日なる三笠のヤマにイデシ月かも・・」(百人一首に採用されているので多くの人が知っているとおりです)と同じ着想です。
李白と阿倍仲麻呂はほぼ同時代人ですし、親交があったので(日本へ帰る船が難破したときいて李白の阿倍仲麻呂に対する追悼の詩が残されています)どちらがこの着想を先に書いたものか分りません。
阿倍仲麻呂の上記和歌は日本へ帰る送別の宴で王維らの前で日本語で歌ったと言うのが通説らしいです。
王昭君に戻ると、女性を代々差し出サザルを得なかった事実が、真実の歴史は漢族の方が懐柔のためあるいは実質的に服従していたことを表している・・安全を図るために要求されれば、女性を差し出すしかない・・体面を繕うために人民を犠牲にする今の中共政権の原型を見ることが出来ます。
その後の2000年間も万里の長城を築き続けたことから分るように、防衛の歴史です。
漢民族が北方騎馬民族に勝ち進んだ例がないのです。
現在の東北地方(満州)や内モンゴル自治区は、漢族が異民族に支配された結果一体領土になっているに過ぎません。
北方民族には文字歴史がないのを良いことにして漢民族が勝手な歴史を作って来た可能性があります。
文字のある日本でさえ、今やなかった慰安婦や南京虐殺が真実の歴史であるかのように大宣伝されています。

秩序崩壊と騒乱4(稚拙な欧米基準)

北方領土交渉もロシアを経済的に追いつめれば、ロシアの民族感情を刺激するので返して来ることは100%あり得ません・おしておして押しまくって取り返すには問答無用の武力制圧しかないのが明らかです。
欧米は彼らの言う「選挙制度がない限り民主国家ではないし人権がない」と言う誤った思想を持って気に入らない国に対して恣意的に非民主国家と断定してその政権を経済制裁したりしていますが、このコラムで何回も書くように日本は革命を起こさなくとも選挙制度がなくとも民意重視社会でしたし女性重視どころか中心の社会です。
経済政治の表面に出る数で女性の人権を主張しますが、男女差や年齢差よりも、身分差の方が優越する社会・・例えば20歳でも王様や大手企業社長になれる社会は実力主義と社会とはとても言えないでしょう。
女性の地位も同様で、か−スト制など階級差別のきつい社会の方が女性でも大統領や社長になり易い・・社会全体の女性の地位とは関係がありません。
例えばインドでは、早くから女性首相が活躍していましたが、アメリカやフランスにはまだ女性大統領が出ていません・・アメリカに比べインド社会の方が女性の地位が高いと言う人はいないでしょう。
アメリカでは黒人大統領が出たから人種差別がないのか黒人の地位が高いのか?
例を出しているとキリがないのでやめますが、バカみたいな基準を世界に押し付け、マスコミが尤もらしく騒いでいるコトはいくらでも例証出来ます。
女性と男性は本質的に違う・・長所短所が別にあるのですから、違った能力を相互に認めたうえで違った面で活躍出来る・・それを相互に尊重する社会の方が本質的平等を実現する道です。
犬に猫と同じ動作を求めても意味がないし、猫も犬と同じ能力競争しても意味がありません・・こんな簡単な原理を無視しているのが欧米的人権意識です。
女性が男性と同じ仕事をして評価されなければならない社会の方が、女性差別が激しいことになります。
このような社会参加方式を?を逆に男性に求めたら,男性が女性と同じことを出来る訳がない・・直ぐに無理だと分ります。
男性の看護士や介護士、保育士もいますが、内部役割分担をしているから成り立っているのであってきめ細かな手厚い看護能力など男性が女性並みに出来る筈がありません。
日本では家庭内の発言権は、女性中心であって男性は従うしかない社会・・家計・・お金の管理も女性がやるのが普通でずっとやってきました。
欧米は女性蔑視・・結婚後お金・資産は全部夫が握る管理する社会ですから、明治になってフランス法制度を導入して以来法律上は女性の地位が下がりましたが家庭内では従来どおり女性がおしゃもじ権を握ったままで現在に至っています。
夫名義の遺産分割でも、皆女性が中心になって、どうするかの重要判断を決めている・・裁判実務でも生命に拘る病気で医師にかかるときの判断もみな同じです。
話題がそれましたが、欧米の人権意識・民意重視などは千年単位で日本より遅れていたことにちょっと気が付いただけのことを、さも大層な発見のように偉そうに言いふらしているに過ぎない・子供がちょっと社会の仕組みや礼儀を聞きかじって得意になって家に帰ってからオヤに「こう言う仕組みだって」・・と教えているつもりになっているような滑稽さがあります。
革命があったから偉いのではなく革命や禁止の法律がないと人権抑圧・動物虐待を際限なくしてしまう神経の方がおかしい・・日本にない奴隷解放や公民権法が出来たから進んだ社会の証明になるのではなく、19世紀まで奴隷制があり、20世紀末まで法的に黒人差別していたことが異常・・遅れた社会なのです。
英語の授業でリンカーンの(ゲチスバーグ)名演説として得々と自慢げに教えられますが、そんなことは古代から教えれなくとも日本人ならみんな知っていたことです。
欧米基準では軍事政権や独裁政権は非民主国家と言う断定ですが、独裁国家の方が民意が怖いので敏感です・・独裁者は政権が倒れると自分や家族まで命が危ないので民意をどうやって把握するかに必死(我が国では平家の「かむろ」が有名ですし、中国では強権支配が過ぎて民意把握が難しいので、保険的に「裸官」と言って家族を国外へ日常的に逃している状態です。
選挙制度の方が民意が予め分って便利で、しかも下野しても命までとられません。
選挙制度があっても選挙の結果、イキナリ負けるのはリスクが高いので民意を予め知るため世論調査をしょっ中やっている外、政治家は独自調査で選挙区の民意把握→次回選挙に落ちないためにこれに合わせるのに必死です。
高齢化して新たな民意に合わせ切れないと思った場合には、選挙で落ちてやめるよりは見込みなしと分れば次に出馬しない名誉ある撤退も出来ます。
選挙制度のない政権との違いは、ワンマンオーナーが引き際が難しいのと同じで、引き際判断を自分で決められるか暴動でやめるかの違い・・その程度の違い・・選挙制度は民意によって自発的にやめたり出来るので、制度政権担当者にとって便利な制度でしかありません。
我が国の場合元々民意重視ですから、明治維新の結果、欧米の選挙制度を知ると・為政者の苦労が軽減される・・「こりゃ便利な制度だ」と言うことですぐに定着しています。
中共政権では、権力者に便利な選挙制度に何故出来ないかと言えば、中国の支配地では古来から民意を虫けらのごとく扱って来て民意を汲んだ政治をしたことがないからです。
これまでやったことがないのでイキナリ逆転失脚するのが怖くて実施出来ないのです。
民意と政治のズレ・・GDPなどの数字を少しずつ誤摩化し続けると、その差が巨大になってしまって、今更本当の統計を出せないで困っている共産圏の統計と似ています。
中国地域での歴史ではいつも数百年周期で大乱が起きるのは、民意無視の硬直した政体なので、民意とのズレ・誤差の限界が来るからでしょう。
現在の中共政権は樹立後約70年近くなりますが、今は社会変化のスピードが速いのでそろそろ賞味期限が近づいている可能性があり・・これを治安警察力の強化・・恐怖政治でいつまで押さえ込めるかに世界の注目が集まっています。
鉄のカ−テンがあったソ連の収容所列島時代とは異なり、中国は今やWTO加盟によって世界との物流〜金融→人の往来が激しくなっていて、表向き開かれた社会になっています。
国内で情報遮断して好き勝手な政治教育をしていても、数時間かければ日本へ自由に出張し旅行に来られるので如何に反日教育していても、日本社会の実態が多くの国民の目につきます・・国民を閉じ込めておけない分、反日教育の成果は日々溶け出して行きます。
日本が、中国国民向けに飛行機でビラを撒いたり海外放送を強化しなくとも中国人がお金を使って?やって来る結果、どちらの社会が国民に優しいかは自然に浸透して行きます。
正しい方は泰然としていれば、結果がついてきます。

秩序崩壊と騒乱3(フラストレーション度1)

新興国の粗暴競争・・わがままの噴出を見ると、そこには正義の観念がない・・地道な経済政策等の王道で勝負する能力がないので、国内支持を得るためのパフォーマンス中心でマトモな議論にならない時代が目の前に迫っていることが分ります。
この辺はトランプ氏の主張も同じです。
マスコミはこう言う政治家が出ると「偏狭な愛国主義者・民族主義者・排外主義者・オポチュニスト」と言うレッテル張りで満足していますが、レッテル張りで解決出来る問題ではありません。
内政能力に自信のない者が政権を握ると対外パフォーマンスや国内弱者圧迫のパフォーマンスに頼りがちになります。
内政能力のない代わりに対外的に勇ましいことを主張するモノが選挙あるいは各種内部工作で勝ち抜いて選出されること自体、国民のフラストレーションの大きさを現しています。
フラストレーションを放置しておいて、ヘイトスピーチや排外主義が行けないとマスコミが宣伝しても、フラストレーションの溜まった多くの国民は聞く耳を持たないでしょう。
プーチンは当初資源価格急上昇によるボーナスで地位を盤石にしましたが、中国経済の勢いが止まった結果国際的資源下落が始まると経済低迷・政治的苦境が始まりました。
この辺はブラジル、ベネズエラ、みな資源高騰によって大きな顔をしていた新興国の指導者が追いつめられて、次々と政権崩壊が進んでいますが、彼らは地域軍事大国ではないので海外挑発によるパフォーマンスによる延命を図れないからです。
「アラブの春は、アラブ諸国による原油独占が揺るぎ始めたことが原因だ」と言う意見を数年前に書いたことがあります。
原油輸出国でなかった国の混乱も産油国からの潤沢な援助に頼っていた国が混乱に陥っている関係です。
ロシアは地域大国兼世界軍事大国ですから、資源下落による自滅を待つよりは・・と言うことで、目くらましのためにクリミヤ併合を行なった結果、国内的にはものすごく支持率が上がっています。
政治困難の本質が経済苦境にあるのですから、経済が回復しない限り本来の解決にはならない・・ウクライナに軍事侵攻し、クリミヤ併合しても経済が良くなる訳がない・・併合に伴う軍事費や占領地の治安対策比・現地迎合的出費や治安経費が却って増える一方です。
その上、世界中から経済制裁を受けてさらに国内経済が苦しくなる一方ですから、今度はシリア空爆(戦闘機・爆撃機1機あたり日々ものすごい出費です)を始め、国内の目を外にそらすのに余念がありません。
http://masteru.seesaa.net/article/428247380.html
シリア介入のコストは400万ドル/日

 こちらに よると、ロシアのシリア空爆コストは400万ドル/日である。IHS Jane’sの試算によると、空爆、供給、インフラと整備要員、巡航ミサイル発射のコストは、9月30日の空爆開始以来、8000万-1億1500万ドル に達している。ロシアの国防予算500億ドルと比べると、微々たる額であるが、コストとロシアの関与の度合いは膨れ上がるとクレムリンはみている。シリア 紛争は数年続き、兵士が死ねば、ロシアの関与は劇的にエスカレートすると専門家は警告している。
 36攻撃機、20攻撃ヘリがシリア内の基地から 一日あり40回出撃しており、これが三週間続いている。地上要員は1500-2000人と伝えられており、黒海やイラン、イラク領空経由で送り込まれた。 攻撃機は飛行時間あたり12000ドル、攻撃ヘリは3000ドル要する。攻撃機の平均飛行時間を一日あり90分、ヘリ1時間とすと、24時間あたり71万 ドル。毎日、75万ドル相当の弾頭を投下している。要員のコストは一日あたり44万ドル、地中海に艦艇を張り付けるにはプラス20万ドルを要する。また、 ロジスティック、情報収集等のコストも25万ドル/日かかる。すなわち、最小で一日あたり240万ドルかかるが、実際のコストは2倍に達すると見積もられ ている。巡航ミサイルは一発120万ドルであり、26発発射分で3600万ドルとなる。

確かに中東でのロシアの存在感をアップし,アメリカの凋落を印象づけましたが、それがロシア経済・・すなわち国民にとってどの程度のメリットがあるのか分りません・・出費が増えているだけでしょう。
介入が成功した場合、政権には貸しを作れますが、荒廃しているシリアの復興援助のてをカ空かない・・却って出費が膨らむのが目に見えています。
これをいやがって日本等に押し付けると戦後復興需要が日本等に奪われてしまいます。
イメージアップや業界団体での名誉や地位確保は自分の商売がうまく行っている場合の余技であるべきですから順序が逆です。
業界団体の会長等では出身企業の運営で失敗すると、自発的に身を引くものですが、政治の世界では内政がうまく行かないと外部での名誉を得ようと逆に頑張るのが現状です・・業界組織と違って政治構成員は非合理基準(フラストレーションで)で行動する人の方が多いコトが分ります。
シリア介入後ロシア軍機がトルコ軍に撃墜されるトルコへの制裁と称してトルコからの野菜輸入禁止を決めました。
実はクリミヤ併合に対するEUからの制裁で野菜類の輸出が禁止されて野菜不足で困っているのは、ロシアの方でした。
国民が困るかどうかより対外パフォーマンス・・自己保身の方が優先ですが、それでも国民が喝采し、支持率が上がるのですから排外主義がどうなるかは民度次第とも言えます。
冒頭に書いたように排外主義等の感情に訴える政策効果度がフラストレーション度に比例するとすれば、既に資源下落に追い討ち的に経済制裁されているロシアの方がフラストレーション度が上がっている・・比例してナショナリズムに訴える効果が高くなっています。
北朝鮮で言えば、経済制裁等で追いつめると却ってナショナリズムが高まる→対外挑発行為成功?が支持率アップになる関係ですから、国際政治家は逆効果を狙っていることになります。
その裏の意図は別の機会に書きたいと思っています。

        

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