賄賂社会と道徳意識(中国5)

地位維持に汲々とする党幹部や高官だけでなく人民の方も競争相手がルールを守っていないのに自分だけ守っていたら競争に負けるが、真似して違法操業すると摘発されるのが怖いので日頃から党幹部や摘発機関への付け届けを怠れません。
また、環境規制等日常全般に違反状態で許認可を通して貰い、摘発を免れるには賄賂が必要になる関係になっています。
競合相手より上位の人間に・・課長クラス一人に渡すだけより幅広く且つ部長クラス〜局長クラスにも渡しておいた方がより効果がありますが、そのためにはより大きな賄賂を出せる人に限られる・結果的に学校の成績評価も何もかも全て金次第の社会となっています。
中国では付け届けを渡すのは古来からの慣習で違法(モラル違反)というよりは、税金の自発的上乗せ納税(もともと徴税能力不足が原因?)かのように考えている節があります。
ただ公式納税の場合には納税の多寡によって電車に優先的に乗れるわけではないし、一流大学に優先的に入れるわけでもなく公平ですが、賄賂の場合この秩序が乱される点が大違いです。
日本の場合公平性が徹底していて金持ちも貧乏人も・・生命維持の基礎である医療現場で端的に現れていますが、生活保護による無料医療を受ける人も金持ちも申し込み時間順の順番待ちし、3分医療も同じですし貧乏人か金持ちかによって薬のレベルや品質が変わることもないし、受ける治療・レベルの高い手技の医師に手術を受けられるどうかもすべて機械的決定です。
(いつも書くようここは大方の社会の仕組みを書いているのであって総理その他の場合特別な割り込みの仕組みがあるのですが、ごく少数の例外を書いていません)
アメリカの場合、公的サービス提供に賄賂で割込めない点では日本同様に公平ですが、その代わり公的サービスレベルが公教育であれ医療その他何であれ日本に比べて低すぎる点(その分私立が発達している)に問題があります。
それが生命に関わる分野で端的に知られているのが、オバマケアで知られる医療場面です。
アメリカの自治体結成動機をこのあとで再開・書いていきますが、州政府の提供するサービスレベルが低すぎるので自分たちでお金を出し合って道路や学校を作りたいとか水道、警察を持ちたいという時にそれぞれの目的限定の自治体を結成します。
自治体にまでいかなくとも、昔から一定のお持ちのクラブ(飲み屋やレストランやゴルフクラブホテルなどいろんな分野でフリーの客を入れない閉鎖社会を作っていくのがアメリカ式社会・・地中海式都市国家の流れの残滓というべきものかもしれません。
閉鎖的都市国家形態を取らない社会は日本と東南アジア諸国だけですから、いろんな価値観で現在主流の世界の異端「変わってる!」になるのです。
大型マンション内部にプライベート公園を作ったり、プライベートビーチなどすべて同様の流れによります。
税金の代わりに払えるものが自発的に払うという点で賄賂はアメリカで発達している寄付文化に似ていますが、寄付者は寄付金の使途に色付けできるだけでルールを曲げようとするものではない点で、似て非なる方向性です。
日本でも一定のお金持ちしかグリーン車やファーストクラスに乗れないお金がないとお芝居も見られないという程度の差がありますが、賄賂と違って一定のお金を払えば(チケット買うのに身分さがなく、裏金が要りません)、公平に同様のサービスを受けられる点が違います。
中国社会のように賄賂を道徳違反の問題ではなく自発的納税または必要経費として考えれば、規制クリアーのために公害防除設備をつけたままにして生産するコストよりも、要路への賄賂提供の方が安ければ日本から輸入時にくっついてくる公害防除設備を取り外す方になびく・国民の健康がどうなるかの視点が全くない国民性・・中国の場合「人民」がいるが国民がいないと言われている所以です。
まして、規制にあうように技術アップに努力するコストを考える(金をかけてもうまく行くとは限らない)と賄賂や剽窃でクリアーした方が確実(100人のスパイを放ってその内一人でも持ち帰りに成功すればコスト的に計算可能)で安上がりですし、海外企業との競争のためには成功するかどうか不明の技術アップの努力・・例えば巨額投資の必要な医薬品開発よりは盗むほうに金をかける方が合理的となるのでしょう。
いくら企業秘密を盗んでも国内にいる限り処罰されないのでは、関係者は道徳の痛みを全く感じない・・コスト計算の問題でしかありません。
http://gigazine.net/news/20170608-high-school-exam-cheating-devices/によれば以下の実態がでています。

2017年06月08日 21時00分00秒
中国の試験で発見されたカンニング用ガジェットの数々が公開される
中国では2017年6月7日から9日にかけて全国大学統一入試「高考(gao kao)」が行われています。「世界で最も難しい試験」と言われる高考ではカンニングが多発しており、カンニングを防ぐために念入りなボディチェックが行われたり、受験生に「ワイヤレス端末が仕込まれている可能性があるためワイヤー入りのブラジャーをしないように」という指示が出されたこともあったとのこと。では実際にどのような方法でカンニングが行われているのか?ということで、中国・山西省の太原市が、ここ数年で実際に使われたカンニングデバイスを公開しました。

High-tech devices used to cheat China’s exams | Reuters.com
http://www.reuters.com/news/picture/high-tech-devices-used-to-cheat-chinas-e?articleId=USRTX39AF6
例えば以下の写真に写っているのは一見すると何の変哲もないベルトですが、実はワイヤレス通信を行うデバイス。太原市ではここ数年の高考で使われたカンニング道具がメディアに向けて公表されたとのこと。(以下写真部分引用省略)
以下も消しゴムに偽造したワイヤレス端末。受信した答えをディスプレイに表示するのでしょうか。
時計のように見えるワイヤレス端末に……
耳につけて外部との通信を図るイヤーピースと端末。
イヤーピースはこんな感じです。(以上写真部分引用省略)
上記のようなデバイスを用いたカンニングが増えているため、試験の最中は監視員がワイヤレス端末の活動を調べているそうです。」

中国以外の国々では、自分が努力しないで他人の努力の成果を盗むのは古代から確立したとてつもない犯罪行為というモラル意識ですが、中国ではいろんな受験時に電子機器を使って外部交信によってカンニングする方法が流行っていたのを見れば、カンニングすること自体が能力次第であるし、商取引の一態様という意識のように見えます。
裏切ることも騙すことも、騙されたり盗まれたりする方が弱いだけ・騙し陥れる方が、能力が高いと評価される社会です。
モラルの問題ではなさそうな社会です。
中国ではモラルよりは全て金次第、金の亡者のように外部から見えるのは、すべての分野で賄賂金額を基準に動く社会になっている結果によります。
今回の党大会で宣言された習近平の「世界強国」が実現する世界では、新たな中国式価値観がルールとして強制され、これが道徳として教育されるのでしょう。
「付け届けをしない」方がモラル意識が低いと批判される社会でしょうか?
忠臣蔵の原因ですが、当時何かを教えてもらうには授業料を払うルールが未発達であったのでその代わりにお世話になりますという付け届けが必須であったことが背景にあります。
粛清政治→恐怖の弊害は直接的には権力闘争の結果・・権力周辺の問題でしかありませんが、政府高官がしょっちゅう粛清されるようになると、次の地位(局長クラス)の高官も間接的に粛清政治の対象になり、どんどん下位公務員に及んで行き、最後は公務員でない民間人も反党分子という名目でどんどん処罰されるようになっていたのがソ連の「収容所列島」の実態でした。
これを免れるためには、じっこんにする相手を特定高官に限定するとその高官(例えば薄熙来)が失脚すると却って危ないので、できるだけ賄賂の網を幅広くしておく必要に迫られるようになります。
賄賂がないと何もしてくれない社会になっていても景気が良くて末端まで一定の資金が回っていれば問題がありません。

政治不満と暴動1(中国4)

北朝鮮を韓国と比較して極限的貧しさを強調し、このような貧困状態でなぜ我慢できているか・・すぐにも社会や体制が崩壊するのではないという疑問を抱かせるようなイメージが流布していますが、国民としては豊かで自由な方が良いとしても、言論の自由がなくても仮に年間人口の数%〜5%くらいが飢え死にしてもその程度ならば命がけの暴動を起こしません。
北朝鮮の場合先進国に比べて貧しすぎるだけであって、朝鮮戦争時に比べれば格段に生活水準が上がっているので昔に比べれば良くなっていると満足している人の方が多い可能性があります。
このような心象は日本の田舎でも同じで、他都市では10数年に2〜3回のペースで商店内装リニューアルしているのに対して地方都市では10数年に1回のリニューアルペースとした場合、地元の人は20年前に比べて新しい店やフィットネスクラブが出来て便利になったと満足しているのですが、新陳代謝の激しい地域から行くと古色蒼然たる展示内容に驚くのと同じです。
韓国の場合、身の丈にあわない民主主義政治をアメリカに押し付けられたのが国民の不幸で、ストレスいっぱいの社会になっている原因のように見えます。
せっかく大統領制にしているのに任期満了後例外なく次の政権の厳しい追及を受けるのですから、せっかく権力の頂点・政権を握っても安心できません。
ロシアの民度レベルを前提にすると選挙で選ばれる大統領制になってもプーチンはこれが怖くて政権を手放せない・終身制にしない限り心の休まる暇がないのでしょう。
暴動に戻しますと、最初の暴動参加者は治安警察レベルですぐ検挙されるし、そのうち大規模になっても政府軍に簡単に鎮圧され殺されてしまう繰り返しのうちに、各地で次々と暴動が起きて自然発生的暴徒が組織化されて軍隊らしくなっていく・・政府が弱体化の極みに達すれば(中国歴代王朝末期のように大暴動の長期化の結果農民の流民化→ 全国的食料不足発生・ソ連の場合で言えば生産低迷)による人口大激減になれば、結果的に一族殆どが飢え死にするリスクがあるのは同じです。
現在のシリアの現状を見ても暴動前より生命の危機を含めて生活水準が低下している現状を見れば分かります。
そこまでのリスクを冒してでも人民の多くが大動乱を願望するようになるには、このままでは一族みんなが飢え死にしてしまうほどの危機が来ないと無理でしょう。
ところで中国歴代王朝末期の飢餓→大暴動は、実は当てのない飢え死に目的で暴動を起こしたのではなく「県城」等に豊富な食料備蓄があって、それを襲う暴動から始まったことを無視できません。
項羽と劉邦・漢楚の攻防で知られる攻防戦も、多くは食料備蓄の豊富な県城争奪戦であり攻城戦勝利の暁には飢えに苦しんでいる兵士に腹いっぱい食べさせられる欲望を利用していたものでした。
城中に乱入すれば城内の家に押し入り略奪(限らず女性も)するのは文字どおりの兵士にとっての戦利品・・当然の権利として中国では何千年もやってきました。
日本の武士団が戦争に勝っても略奪しなかったのは、食料目的の戦争ではなかったからです。
日本軍の食料不足で餓死者続出のインパール作戦でも、自分たちが餓死していても現地民から食料調達・略奪をしていません。
中国歴代の暴動に戻しますと10月18日に大躍進政策で4〜5千万人が餓死していた陰で政府倉庫には、「また都市部の倉庫は穀物で一杯だったという証言が残されている[8]」という記事を紹介しました。
中国は古代から都市国家・点と点をつなぐ支配体制ですから、出先基地である県城(都市国家)の外は野蛮な異民族の居住地域(今も都市と農村戸籍の2分類思想です)という扱いですから、いざという時に近隣県城からの応援軍が来るまで持ちこたえるための食料備蓄は基本中の基本ですし、城壁外の異民族が飢えていても関心がない・城内備蓄優先ですから、これを狙った暴動が起き易かったのです。
現在の中国政府は、大躍進政策の失敗で4〜5千万人程度飢え死にを出しても暴動にならなかったし、その後公安部隊の増強をしてきたので、その数倍程度までの餓死者が出ても、治安部隊強化で押さえ込み可能と見ているでしょう。
まして現在の不満は、公害や不公平・格差の大きさ程度でしかない・末端人民が食えないほど困窮していません・その基準から見れば格差の大きさ程度は贅沢な悩みですので、過酷な拷問等を受けるリスクを冒してまで立ち上がる心配はありません。
シリア混乱が収拾のつかない内乱にまでなったのは、国外勢力の介入があったからだと見るべきでしょう。
現在中国の場合格差があっても解放直後よりも、生活水準が格段に上がっているので飢え死にするようなことはない・・ちょっとやそっとの経済不況(前年比減)や言論不自由程度で暴動(を期待する?論調が多いですが)になるわけがありません・海外逃亡を拒否して国内民主化運動をしていて先日獄死したノーベル平和賞受賞者の後に続く人がいないことを見てもわかります。
生活苦や規制の厳しさ等々の不満に対する国民の耐性については、昨年トルコ軍がロシア軍機シリア上空で撃墜した時にロシアが直ちに農産物輸入停止やトルコ観光停止などを発動した時に、経済政策の耐性としてロシアとトルコの経済制裁合戦になればどちらが耐性があるのかの意見をSep 19, 2016「フラストレーション度2と中華の栄光復活」で書き始めていました。
いろんな意見が挟まってしまい原稿が先送りになっていますが、これを引用してFebruary 1, 2017にもロシアはクリミア併合によって欧米から経済制裁を受けている最中・・野菜等生鮮食品が西欧から輸入出来なくなっていても、輸入国の方が強いことと「生活条件の過酷な発展の遅れた国の方が耐性がある」という意見を書きました。
月収百万円の人が半分になるのと10万円の人が半分になるのとでは貧しい人の方が極限状態だから、より反発が激しいというのが普通の印象ですが、現実政治では逆に日頃贅沢していた人の方が、(株が少し下がったり)少しでも貧しくなるのに耐性が弱いのです。
加えて政治自由度が低いとか政治不満程度ならば、(賄賂や汚い・公害等が気に入らないならば中国へ外資が進出しなければ良いのとほぼ同じで)今では国民にも国外移住の道があるので、わずか10数万円あれば国外脱出可能・・(出稼ぎ等で)逃げ出せば良いのですから命がけで暴動を起こす必要はありません。
シリア難民が最近の実例ですが、外部に逃げられない昔ならその何割かは暴動参加者になっていたでしょうが、難民になって出てしまえば政府は安泰です。
出血輸出は相手国の失業増加要因`・失業の輸出であると一般に言われますが、難民を吐き出せば受け入れ国の政治不安要因になります。
これが受け入れ国であるドイツその他西欧諸国の団結をゆるがす原因になっています。
賄賂社会に戻しますと、賄賂社会が嫌だという程度で命がけの反政府運動をしても続く人が少なすぎて投獄されて終わりです。
出世競争や権力闘争に関係のない人民の方も(競争相手がルールを守っていないのに自分だけ守っていたらコスト競争に負けるので)設備・労働基準など違反状態で許認可を通して貰う・許可後の基準未達操業を見逃してもらうなどいろんな場面で常に賄賂が必要になっています。
この数年は、 習近平派以外に近づかなければよかったのですが、せっかく賄賂を提供していても、習近平派内の争いが激化してくると頼みにしていた人がいつ検挙・粛清されるか知れないのでは、戦々恐々の状態でしょう。
この結果、賄賂提供の効果がない・・廃れるかというと日常末端の検査官や窓口業務で賄賂を要求される・断ると基準違反で摘発されたり嫌がらせされるリスクがある・競争相手の肩を持って自分の企業だけいやがらせされたたら、倒産するのでもっと上の人に頼むしかないのが現状です。
ソ連の場合も賄賂がないとまともに医療すら受けられない賄賂社会でも景気が良ければ何とかなっていましたが、ソ連末期の経済混乱期になると平均寿命が低下した時に賄賂社会の厳しさが表面化してしまいしました。
今後中国の成長が低下するとこの社会規模の矛盾(いわゆる都市戸籍と農民戸籍の差別・貧富格差)が表面化すると思われます。

混乱収束後の政治体制(ローマの場合)

ロシアの大統領制はソ連崩壊の混乱の中で失うものがない状態で生まれたものですが、中国の場合共産政権が崩壊してもいないのに結果がどうなるか不明(選挙というものはやってみないと結果はわからないものです)の選挙など怖くてすぐにはできません。
(対立候補が出ないように)よほど周到な準備をしてからでないと怖くて選挙をすると言い出せませんので、今は内々にその準備中でしょうが、中国にとっては大統領制のロシアでプーチンが2000年以来約20年も続いている体制が理想となっているのでしょうか?
大統領制で守られているはずのプーチン氏でさえも、家族でさえ信頼できない・・日本が贈った秋田犬だけが心を許せる状態?・・らしいですが・・・。
権力争いに関係のない国民にとっての関心は、習近平の粛清がどの段階でとどまれるか・スターリン粛清のように庶民まで及ぶのかでしょう。
中国歴代暴動では暴動を生き抜いた覇者を次の皇帝にすることで、際限ない闘争に終止符を打ってきた例を10月21に「漢承秦制の思想」として(003/30/10「パックスアメリカーナから中国専制支配へ2」のシリーズで紹介したこと)紹介しました。
一定の民度以下の社会ではどこでも一旦独裁が始まった以上は、終身制・・どころか子孫へ世襲していける皇帝や国王にして安心させない限り独裁者が権力維持のための際限のない猜疑心に陥り大変なことになるのが歴史教訓というべきです。
古代ローマでもシーザーへの権力集中→終身独裁官にまでしたものの、シーザーへの権力集中が進むことへの危機感から「共和制の大義」を守るために有志で?「ブルータス、お前もか (et tu, Brute?)」の文句で知られるクー・デ・ターで倒したものの、結果的にそのブルー タスを皇帝にして行った歴史が参考になります。
シーザーに関するhttps://ja.wikipedia.org/wiki/によれば以下の通りです。

ローマ内戦
紀元前46年夏、ローマへ帰還したカエサルは市民の熱狂的な歓呼に迎えられ、壮麗な凱旋式を挙行した。カエサルはクレオパトラ7世をローマに招いており、クレオパトラ7世はカエサルとの間の息子とされるカエサリオンを伴っていた。紀元前45年3月、ヒスパニアへ逃れていたラビエヌスやポンペイウスの遺児小ポンペイウス・セクストゥス兄弟らとのムンダの戦いに勝利して一連のローマ内戦を終結させた。
終身独裁官就任
元老院派を武力で制圧して、ローマでの支配権を確固たるものとしたカエサルは共和政の改革に着手する。属州民に議席を与えて、定員を600名から900名へと増員したことで元老院の機能・権威を低下させ、機能不全に陥っていた民会、護民官を単なる追認機関とすることで有名無実化した。代わって、自らが終身独裁官に就任(紀元前44年2月)し、権力を1点に集中することで統治能力の強化を図ったのである。この権力集中システムは元首政(プリンキパトゥス)として後継者のオクタウィアヌス(後のアウグストゥス)に引き継がれ、帝政ローマ誕生の礎ともなる。
紀元前44年2月15日、ルペルカリア祭の際にアントニウスがカエサルへ王の証ともいえる月桂樹を奉じたものの、ローマ市民からの拍手はまばらで、逆にカエサルが月桂樹を押し戻した際には大変な拍手であった。数度繰り返した所、全く同じ反応であり、カエサルはカピトル神殿へ月桂樹を捧げるように指示したという[28]。 共和主義者はこの行動をカエサルが君主政を志向した表れと判断した。また、カエサルは「共和政ローマは白昼夢に過ぎない。実体も外観も無く、名前だけに過ぎない」「私の発言は法律とみなされるべきだ」などと発言したとされる[29]。これら伝えられるカエサルの振る舞いや言動、そして終身独裁官としての絶対的な権力に対し、マルクス・ユニウス・ブルトゥスやガイウス・カッシウス・ロンギヌスら共和主義者は共和政崩壊の危機感を抱いた。
暗殺『カエサル暗殺』(La Mort de César) フランス人画家ジャン=レオン・ジェロームによる1867年の作

 紀元前44年3月15日 (Idus Martiae)、元老院へ出席するカエサル

4〜5年前に松本幸四郎主演の「カエザル」を日生劇場で見た時の舞台装置はこれを参考にしたらしく上記写真のようでした。
以下は、ローマ帝国に関するウィキペデアの記事からです。

「紀元前44年にカエサルが暗殺された後、共和主義者の打倒で協力したオクタウィアヌスとマルクス・アントニウスが覇権を争い、これに勝利を収めたオクタウィアヌスが紀元前27年に共和制の復活を声明し、元老院に権限の返還を申し出た。これに対して元老院はプリンケプス(元首)としてのオクタウィアヌスに多くの要職と、「アウグストゥス(尊厳なる者)」の称号を与えた。一般的にこのときから帝政が開始したとされている。
以降、帝政初期のユリウス・クラウディウス朝の世襲皇帝たちは実質的には君主であったにもかかわらず、表面的には共和制を尊重してプリンケプス(元首)としてふるまった。これをプリンキパトゥス(元首政)と呼ぶ。彼らが即位する際には、まず軍隊が忠誠を宣言した後、元老院が形式的に新皇帝を元首に任命した。皇帝は代々次のような称号と権力を有した。」

上記経過を見るとクロムウエル独裁やナポレン帝政の原型・混乱を鎮めたスターを国王または皇帝にしないと世の中がおさまらない歴史の原型がローマ時代からあったことがわかります。
クロムウエル独裁時に議会が国王になるように求めた例がありましたが、現実的判断の利くイギリス人の一面を表しています。
中国歴代王朝が大暴動で滅びこれを鎮めた武将が次の皇帝になり過去の王朝制度をそのまま踏襲してきたのもその一例です。
北朝鮮がどんなに貧困状態にあっても政治が安定しているのは、意外でもナンでもない・民度レベルからしてできもしない民主主義・能力主義政治あるいは、政策目標を掲げたり約束していない身の丈にあった世襲制政治をしているからです。

1党独裁と汚職3(中国2)

昨日紹介した弁護士の記事によると立件基準も公開されており先進国と変わらない透明性が公開されています。
膨大な日常業務でいつもチップみたいに(裁判官からまで要求される日常)賄賂を要求されている中で、どういう場合に実際に基準通りに事件扱いになるか?にかかっている・これが人治主義と言われる根拠なのでしょう。
何もかも賄賂・袖の下次第の社会に進出する日本企業/関係者も大変です。
http://biz-journal.jp/2013/09/post_2944.htmlによると以下引用の通り日本企業の悩みが伝わります。

「尖閣諸島問題が勃発して以降、日本からの製品輸入と現地日系工場からの製品輸出に対して、税関等での手続きや検査、監督省庁からの許認可などが、日系企業を狙い撃ちするように厳しくされたのだ。「ともかく許可が下りるまでの時間が異常に長くなった」と話す物流会社の幹部によると、その背景はこうだ。
あるアパレルメーカーは、中国の現地工場で製造した製品を日本に輸入しているが、「賄賂を渡さないと税関を通してもらえない」(社長)のが実態だ。この会社では、現地の中国系物流会社に通関業務を委託して税関と折衝させている。
「きちんと税関を通して、こちらに商品が届いた時点で代金は支払う旨を伝えて、中国人同士で話をつけさせている」(同)。このアパレルメーカーの場合、賄賂という形式で金銭を渡してはいない。だが、物流会社から同社への請求額に、実際には賄賂に該当する金額が含まれている可能性もある。
賄賂が渡されるまでのステップは、例えばこんな流れだ。日系企業が中国で、所轄の地方政府当局に許認可などの手続きに訪問すると、幹部が「こういう良い会社があるから取引を検討してみたらどうか」と物流会社や投資会社などを紹介してくる。
その多くは幹部の親族などが経営する会社で、日系企業と取引しながら、裏では現地当局との交渉役を担っている。相場より高い金額を請求され、その過大な分が賄賂等に相当し、その取引先から政府幹部に賄賂が渡されていくケースが多くあるという。」

ニュースサイトで読む: http://biz-journal.jp/2013/09/post_2944.htmlによると以下の通りです。
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「賄賂が渡されるまでのステップは、例えばこんな流れだ。日系企業が中国で、所轄の地方政府当局に許認可などの手続きに訪問すると、幹部が「こういう良い会社があるから取引を検討してみたらどうか」と物流会社や投資会社などを紹介してくる。
その多くは幹部の親族などが経営する会社で、日系企業と取引しながら、裏では現地当局との交渉役を担っている。相場より高い金額を請求され、その過大な分が賄賂等に相当し、その取引先から政府幹部に賄賂が渡されていくケースが多くあるという。
恫喝まがいの賄賂で知られるのは、中国の大手テレビ局である。このテレビ局は、消費者の声を紹介する番組で、商品の性能などを紹介しているが、日系の大手企業に対して「商品へのクレームが多いので、番組で取り上げる予定だ」と連絡をした上で、番組へのスポンサー協力などを「よかったら検討してください」と“お願い”する。
もし要求を拒否したら、どうなるのだろうか? 日系の家電メーカー販社幹部は「このテレビ局は専用のクレーマーグループを雇っていて、そのクレームがテレビで報道されてしまう」と実態を説明する。」

独裁社会では賄賂がなぜ必然化するかですが、民度レベルが先進国に遠く及ばない・・穏健な話し合い解決不能な実態があって、独裁〜強権政治しかない社会では、やむなく形式的民主制を導入し委員会(の全会一致)で民主的に何ごとも決めているかのような真似事だけ民主的にやっている実態があります。
環境〜衛生〜建築〜品質規制その他の多くの分野で先進国並みの規制を格好付けだけ制定するとどうなるか?
国家の基本である意思決定・骨格システム自体が実質を伴わない形式的制度である結果、末端人民に対する法令も条文だけは先進国並みの先端的環境法や知財保護法その他整備していると自慢しているだけになっているのは自然です。
民度(国内技術水準)上無理な制度ですから、国民は誰も守らなくともお目こぼしにしている・政敵や関係悪化した国の外資だけ狙い撃ちできる法令になっています。
サード配備に不快感を示すために韓国ロッテの消防設備にケチをつけて以来、ほぼ全店規模で操業停止が半年以上?続いている事実がその一例です。
この2週間ほど前から大問題になっている神戸製鋼の品質改ざん問題・中国に進出していないから良いようなものの、もしも中国工場で起きていればすぐに操業停止→多分倒産でしょう。
狙い撃ちされないまでも外資系(飲食業その他全て)は法令通りやるしかないので、民族系に比べてコスト高になっていて事実上外資妨害になっています。
以上紹介してきた通り贈賄提供自体をみんながするしかない社会ですが、習近平が権力を握ったのちにこれを利用してその摘発を始めると、その対象設定が恣意的・江沢民系や胡錦濤系に集中している・・政敵粛清に利用されてきたことが象徴的です。
政敵粛清目的が概ね達成されたらしく、この半年くらいでは習近平系?内の後継候補と言われていた者に対する粛清が始まっています。
http://www.sankei.com/world/news/170901/wor1709010037-n1.html

【紅い権力闘争(上)】「ポスト習近平は習近平だけ」次々後継者潰し「あと30年やるつもりだ」 写真あり; 中国陸軍の李作成司令官、参謀長に昇進…「習近平派」か · 人民日報、胡春華氏の寄稿文掲載 習近平氏を称賛、絶対服従をアピール 写真 …

http://biz-journal.jp/2017/07/post_19981.html

中国の権力闘争が激化している。秋には5年に1度の中国共産党全国代表大会が開かれるが、これに向けて党内の粛清合戦が始まっているのだ。
7月に入り、習近平国家主席の後継候補と目されていた政治局員の孫政才氏が「重大な規律違反」で調査されることが決まった。孫氏は重慶市のトップにあたる党委員会書記を務めており、党大会で政治局常務委員入りの可能性も取り沙汰されていたが、事実上の失脚だ。
習政権になってから、現職の政治局員が摘発されるのは初のケースだ。さらに、孫氏の後任には習主席の側近である陳敏爾氏が起用されたことも波紋を呼んだ。

汚職摘発名目の粛清に辣腕を振るった王岐山氏が不文律の「定年」超え留任が注目されていましたが、無理をしないで終わるようです。
1週間ほど前から無理しない観測が出ていましたが、今日23日の日経新聞にも(公式に?)この報道が出ています。
1説には秘密を握りすぎ・力を持ちすぎたので敬遠された・・やりすぎたので政敵の怨嗟をかわす狙いその他の憶測がネット上?言われていますが、真相は不明です。
今回の党大会の動きでは、権力闘争の第一段階が終わり自分の次を窺うものの存在を許さない段階に入ったように見えます。
党大会は25日に終わる予定ですし経過は新聞で次々と出ていますが、習近平政権の終身化方向(先ずは2期10年定年のルールを変える方向?)へ向けて動いているようです。
スターリン粛清もトロツキーなど公然たる政敵の粛清が終わると次の標的として内部粛清に移って行った例を参考にすれば分かり良いでしょうか?
図式的にいえば半径5キロの外周人物粛清から順次半径4キロ〜3キロ〜2〜1と順次・・内周に入って行き最後には半径数メートルの最側近が次々と失脚する時期が続いた例・スターリンが倒れても誰も手を出さず見守っていただけ・と言われるほど、恐るべき極限の不信関係になっていた例をなぞっていくのを防ぎたいでしょう。
皇帝制にすれば終身どころか子孫まで安泰ですが、共産主義主張と矛盾し王朝制復活は無理なのでロシアの真似をして選挙による大統領制に変更するチャンスを狙っているとも言われます。
大統領制にすれば突然の側近クーデターでは政権を取れないので、少なくとも任期中は安泰・・猜疑心にかられて夜も寝られないという苦しみから逃れられます。
しかも世界中で民選の儀式を経ていない・経ることすらできない国は、今や北朝鮮と中国しかないという実態に内心自尊心がいたく傷ついているはずですが、この屈辱感から解放されます。

1党独裁3と汚職2

日本では、事件が少ないだけではなく賄賂と言っても数万円のゴルフバッグをもらったり、数万円の飲食接待を受けたなどが多いので基礎数字が違います。
中国の場合、正式摘発だけでこれですから、細かな日常的汚職・・公務員だけでなく・・民間は「汚職」とは言いませんが・・医師にかかるにも何をするにも「袖の下」が必須な社会ですから、文字通り裏金まみれの社会です。
http://blogos.com/article/56237/
記事笹川陽平 2013年02月15日 08:38

「ニューヨータイムスは温家宝首相の一族が合計で27億ドル(約2150億円)を保有すると報じ話題になった。又、失脚して話題になった薄熙来氏の妻・谷開来は、殺人罪で起訴されて無期懲役が確定したが、裁判では60億元(約738億円)もの海外財産が発覚した。
いまや中国の人民が、「中国の局長クラス以上の幹部に全部死刑判決を言い渡したら冤罪の人が出てくる。半分にしたら漏れが出る」、「腐敗を取り締まらないと亡国になる。腐敗を取り締まると亡党となる」と揶揄するほど腐敗が蔓延している。」

具体性になると賄賂社会の実態は性質上表に出せない話が多いので、ニュース元の信用性不明ですが一応紹介すると以下の通りです。
https://matome.naver.jp/odai/2140650132500021201によれば以下の通りです。更新日: 2014年08月03日

「タオバオに出品しているスポーツ靴販売店の話。同店が販売しているあるシューズは閲覧回数が1万3000回あまりなのに、2万6000足も売れている。そのページを閲覧した人は全員2足ずつ購入している計算だ。閲覧回数あたりの販売数(コンバージョン)は5%に達すれば上々と言われる。同店はどのようなマジックを使っているのか……。

出典中国ネットモール最大手タオバオをむしばむ腐敗=プラットフォーム企業と公共性 : 中国・新興国・海外ニュース&コラム | KINBRICKS NOW(キンブリックス・ナウ)

タオバオ従業員による、販売数の水増し表示が行われているそうです。ワイロを渡せば検索順位も操作できるとか。
北京の有名病院で幹部を務めたこともある匿名の医師(50)は、収入の8割が賄賂によるものだったと打ち明ける。賄賂がなければ月収は600ドルにも満たず、給料だけではやっていけない状態だったという。

出典アングル:賄賂が病院経営の「生命線」、中国の医療制度に矛盾 | Reuters
車の教習所でも賄賂が必要。貧乏な人は免許もとれないらしい・・・

中国では自動車免許を取得するのに、表面上、最低4000元(64000円)ほど必要なようです。しかし、先生への賄賂も必要なため、実際はもっとお金がかかります。
黄さんは、申し込みに4500元。2段階目の試験に通らず補習代に300元。毎回車の練習に1時間10元の練習場代。そして、マンツーマンの費用として1000元。
その上、先生への謝礼金とタバコ代で3段階目の試験が終わるまでにすでに1万元近く払ったというのです。

出典中国では車の教習所でも賄賂が必須。貧乏は免許さえ取れない実情。 | お金に関する海外の反応【お金の学校】

教習所の先生に謝礼を渡さないと相手にしてくれないそうです。1万元は日本円で168000円くらいです。結局、日本の教習所と同じくらいの金額が必要なんでは?
ワイロを使って試験をパス。お金持ちの免許取得はスムーズに済みそう。
金まみれの中国の大学・高校・中学・・・我欲強すぎ。
親は自分の子供の成績が少しでも上がるように、先生に賄賂を贈って特別に面倒をみてもらうように頼む。現金を贈るケースもあるが、車を運転する先生であれば、ガソリンのチケットを贈るケースもある。無論、これは一例に過ぎない。親から金品をもらった教師は特別にその子供の面倒をみる。

出典賄賂・不正所得・・・・金まみれの中国の大学・高校・中学 – バンクーバー風車小屋便り・全カナダ「ちびまる子ちゃん」愛好会 – Yahoo!ブログ

貧乏な家の子供は先生から相手にされないようです。
中国の大学では、単位が足りなかったり卒論が合格しなかったりすると、留年になる。本来、留年は教育の品質管理の有効な手段であるが、中国の大学の卒業生を見ると、明らかに真面目に勉強していない学生も卒業している。実は、成績の悪い学生は先生に賄賂を贈ることで単位をもらうのだ。その賄賂は金品とは限らず、女子学生の場合、体を贈ることもあると言われている。

出典賄賂・不正所得・・・・金まみれの中国の大学・高校・中学 – バンクーバー風車小屋便り・全カナダ「ちびまる子ちゃん」愛好会 – Yahoo!ブログ

試験の点数も賄賂で買えるそうです。
そして、官僚の腐敗。悪党どもが多すぎる。
中国、腐敗官僚5万人超を13年に立件 汚職構造の深刻さ示す

http://sankei.jp.msn.com/world/news/140310/chn14031018590008-n1.htm

中国では、ほぼ毎年4万人以上の官僚が汚職で立件されます。それも近年、増加傾向にあるそうです。
報告によると、立件された閣僚級は8人で、局長級は253人。100万元(約1680万円)以上の汚職は2581件だった。
出典中国、腐敗官僚5万人超を13年に立件 汚職構造の深刻さ示す

大手企業でさえ賄賂要求に応じざるを得ない実態については、https://docs.google.com/document/d/1B_k-2lcstvNhZWWRqkWpEo0Evf1mJlU7NLjlDEZOEak/edit#では、もうちょっと格式のありそうな報道です。(執筆者:弁護士 東城 聡)

1.中国の法律を確認
「2013年9月11日、自動車マフラーなどの部品大手のフタバ産業の元役員が外国公務員への贈賄罪違反容疑で日本の愛知県警に逮捕されました。中国広東省の地方政府役人に対して、工場設備の届け出違反を見逃してもらう見返りに、3万香港ドル(45万円相当)と15万円相当の女性用バックを渡したのが逮捕にかかる被疑事実とのことです。」
上記は日本の不正競争防止法に基づいた逮捕ですが、中国の法律はどのようになっているのでしょうか。
「不正な利益をはかるために、国の職員に対して財物を供与した者は、贈賄罪とする。」(刑法389条)
2.立件の基準は公開されている
3.中国司法業界の贈賄の実情
もっとも、上海の高等裁判所にあたる高級人民法院の裁判官4名が、ある事件の当事者から女性をあてがわれて性的なサービス接待を受けていた疑惑が一部ビデオ付きで報道されており、例外的なケースが残念ながらまだ残っているという点も否定できません。
なお私の親しいある中国弁護士は日系企業の弁護をしていたところ、和解の際に裁判官に賄賂を直接的に要求されたようです。しかし日系企業のクライアントはコンプライアンス上この要望をきっぱり断ったところ、和解内容は特に不利な内容にはならなかったそうです。」

以上によれば立件基準も公開されており先進国と変わらない透明な運用基準が公開されています。
膨大な日常業務でいつもチップみたいに賄賂を要求されている中で、どういう場合に立件されるか?にかかっている・これが人治主義と言われる根拠なのでしょう。
裁判途中で裁判官から賄賂を要求されるというのですから驚くべき実態です。

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