アメリカの州・郡(County Government)と市町村の関係1

日経新聞の10月4日夕刊1面には柏崎崎原発「合格」と大見出しで出ています。
あとは新潟県知事の同意を得られるかがテーマらしいですが、新潟県の同意が何故必要になったのかの疑問です。
「昔は越の国だった」という主張を始めるとは思えませんが・・?
新潟県も思うように原発反対で補助金をうまく取れなくなると「昔は中国の領土だった」という主張を始めるのでしょうか?
そこまで行かなくともあちこちの県が何かある都度エゴむき出しで行動するようになると、なにかあっても助け合いたい気持ちが薄れて民族一体感が次第に蝕まれていき、民族維持のために自己犠牲を厭わない勇猛果敢な精神がすり減っていきます。
これが中韓の狙いでしょう。
そもそも地方自治制度がなんのためにあるか?という疑問になってきます。
現在憲法改正論が(反対論を含めて))盛んですが、この辺で憲法で定める地方自治の限界・自体首長が、その自治体領域が日本の領土ではない(とは言っていませんが・・)かのような主張をすることが許されるかを議論する必要があるように思われます。
地方自治制度は、アメリカの意向で現憲法で導入された制度ですから、当然にアメリカの連邦と州の関係をモデルにしていると見るべきでしょう。
以下に比較紹介するように大日本憲法には地方自治の章節がありません。

大日本帝国憲法
目次
第1章 天皇(第1条-第17条)
第2章 臣民権利義務(第18条-第32条)
第3章 帝国議会(第33条-第54条)
第4章 国務大臣及枢密顧問(第55条-第56条)
第5章 司法(第57条-第61条)
第6章 会計(第62条-第72条)
第7章 補則(第73条-第76条)

日本国憲法
第八章 地方自治
第九十二条  地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
第九十三条  地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
○2  地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
第九十四条  地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
第九十五条  一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。」

憲法を見ると特定自治体の同意がないと国策遂行できないのは、その地方だけの特別法制定の場合に限定されています。
憲法上は全国的な国策の貫徹には、特定地方の同意がいらない仕組みです。
憲法上の要請ではないのにあれもこれもと地方の同意が必要な制度にしていたことが間違っているのです。
オナガ知事15年訪米時の記事からです。

http://vpoint.jp/media/44476.html
翁長雄志沖縄県知事の訪米は大失敗
江崎 孝  2015/6/05(金)  メディア批評|沖縄 [沖縄時評]
恥晒した権限誤解翁長知事の思い込みをはるかにしのぐほど、米国の要人や政治家は民主主義が何であるかを心得ていた。つまり州知事と州政府の安全保障に関する法的権限を厳しく峻別(しゅんべつ)していたということである。その点、外交・安全保障にかかわる地域の首長の法的権限を誤解し、夜郎自大な発言で、世界に恥を晒(さら)した翁長沖縄県知事とは雲泥の差である。
・・最後に付け加えると、出発前の記者会見で外人記者が発した「それ(訪米)よりも知事はなぜ安倍首相を説得しないのか」という質問の意味が理解できなかった翁長知事の責任を問うべきである。」

地方自治体首長が政府の頭越しに外国で国防・国家主権に関する事柄を政治発言をするのは、越権行為であり許されないということは、アメリカのように独立している各州が連邦を結成した場合には、州政府が連邦政府の専権事項である外交や防衛問題に口出しするのは条約違反になるという意味でより一層はっきりします。
ただし、元々自分らは先住民・異民族だから・・というのでは、同じ土俵での議論になりません。
冒頭に書いたように日本の地方自治制度は、長年の国内議論すらも必要性もなく敗戦時に歴史の違うアメリカ憲法を(法的素養のない人材が?)模倣して作られたものです。
日本の地方自治制度を論じるならばアメリカ各州内の地方自治の実態や歴史研究が必須です。
アメリカの連邦と州の関係は周知の通り独立国同士の連合契約・条約で成立しています。
合衆国ではなくUNIRED STATE OF・・・ステートの連合ですから、日本の地方自治体とは経緯・本質がまるで違います。
もともと百%の主権を持っている各州(国)が連邦を組むために主権の一部を連邦政府に移譲した関係・移譲しない部分にはもともと持っていた主権が残っているのは当然です。

https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/zk079/zk079_02.pdf
「2.1
合衆国憲法
合衆国憲法における地方自治の規定は、1791年に成立した憲法修正第10条による。
ここでは「憲法が合衆国に委任し、または州に対して禁止していない権限はそれぞれ
の州または人民に留保されている」と定めていることから、連邦と州の間での役割分
担は、連邦の権限が具体的に列挙されて州が残余権を有するという、州権の強い形と
なっている。」

軍で言えば同盟行動する以上、軍事活動時に一致協力する範囲で独自行動を制約される程度の関係です。
アメリカ連邦政府と各州の関係は、主権国家である日本がアメリカとのいろんな条約を締結すればこれを守る義務があるような関係の方が近いでしょう。
このような場合、日本やアメリカに自治権があるかという方向の議論ではなく、条約によってどこまで日本国内法が(商取引で言えば契約したらその契約を守られねばならない範囲のレベル・・人権がどこまであるかの議論でありません・・)制約されるかの議論であって順序が逆です。
自治の面でアメリカとの比較をするならば、アメリカの州政府と州内の郡や市その他の自治体の関係と日本の中央政府と県市町村の自治権を比較するのが本来の議論です。
日本の県の権限を連邦政府と対立・緊張関係にある(独自の軍を持ち)州の自治権?と同じように見る現在の暗黙の前提となっている議論自体が無茶過ぎておかしいのです。

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