アメリカンファーストと都民ファーストの違い

以上見てきたように内政重視・・正攻法の政治をするには政治家に利害調整能力が必要であるほか国民の方も妥協できる能力・よほど民度が高くないと難しいことが分かります。
日本は奈良〜平安〜江戸時代を通じて外敵を求めずに内部完結政治をして国民も満足してモラルを高め独自文化を発展させてきましたが、このような真似をできる国はそれほど多くありません。
アメリカは世界最強のイギリスを退けた独立戦争直後から今の中国のようにアメリカの強引な行動が目立つようになり(うまく行かないとモンロー宣言でアメリカ大陸に引きこもる)事実上どこの国も文句言えない状態が続きました。
第二次世界戦後西側諸国では名実ともに一強になり、さらにソ連崩壊で世界の一強になりましたので第一次イラク戦争を初め国外でやりたい放題でしたが、IT~AI技術の発展に象徴されるように大規模設備不要の少数者の威力・・ネット発信力を無視できなくなってきました。
日本で言えば、マスメデイアの情報独占が崩れ個々人のネット発信力が強まりましたが、これが物理的側面に出たのがテロの威力増大です。
サイバーテロが象徴的ですが、正規軍の強大さだけでは対抗できなくなりました。
言論世界でもマスメデイアさえ押さえれば、好きなように世論誘導できる社会ではなく個々人のツイッターその他ネット発信威力を無視できません。
世界政治が軍事力や資金力だけを背景に自己主張を押し通せるような単純なものではなくなってきました。
国際政治も内政並みの複雑さになると、内政経験の蓄積がないまま・複雑な利害調整不要な単純社会であるからこそ図体が大きくなれているという面もあります・・超大国になったアメリカ〜ロシア〜中国など領域の大きさに頼る大国政治家には手に負えなくなってきました。
地形を見ても複雑な地形では大きな国になりにくいし、大平原地帯等では利害が単純ですから広大な領域支配が可能です。
中国が数千年単位の大国経営の経験があると思う人が多いでしょうが、日本のように自然に出来上がった集落が近隣集落と意見のすり合わせ・利害調整を経て大きくなったのではありません。
中国大陸の政治支配の内実は点々とした飛び地に出先砦を作り上げた飛び地経営・都市国家連合形態ですから、砦と砦の間の広大な空間に住む原住民の攻撃を防ぐための城壁に守られた都市国家・点と点を支配して来たにすぎません。
これが現在の「都市戸籍」と「農村戸籍」二分の源流と見れば歴史を無視できないことが分かるでしょう。
日本の城下町は地元住民の出入りが自由な仕組みですが、中国の場合には都市そのものが都市外の地元住民を敵視して大規模な城壁で囲まれているし、原住民の襲撃を防ぐために鶏鳴狗盗の故事で知られるように夜間は厳重に閉じられて兵が守るのが原則です。
近代〜現在においても、華僑が人口の大多数を占めるシンガポールでうまくいっているし香港、深セン特区や上海租界などの「点」としての都市を治める政治をしている限りうまくいく社会です。
アメリカの自治体のあり方を紹介している途中ですが、アメリカの場合も広大な空間の広がりの周囲に旗を立てて支配空間を決めただけで、内容がスカスカの状態・・飛び地支配で始まっています。
広域テーマが増えてきて共同して対処するための自治体間協議が全くまとまらない状態についても、Oct 15, 2017「アメリカの自治体4(自然発生的集落の未発達→内政経験未熟1)」に紹介したばかりです。
アメリカの政党・共和党は経済を含めた外交とセットの戦争のためにある政党と言われていますし、民主党・リベラル系は庶民の味方と称してバラマキだけで利害調整型政治はできません。
日本の民主党政権も韓国の文在寅政権も同様で、単純に「無駄を省けばバラマキ資金が出てくる(日本民主党政権)」「仕分け」など韓国文在寅大統領も内部留保を吐き出せとか、公務員を80万人?(正確な数字は忘れました)の大量雇用するとか、最低賃金引き上げなど強権的決定で押し切ろうとするやり方が基本であって、利害調整で何とかしようとする姿勢がありません。
以下は、https://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/page-3.htmlから「文在寅大統領」のキーワードで拾った検索データの一部です。

韓国、「最低賃金」大幅引上で零細企業に財政援助の「間違い」
韓国、「原発廃止表明」原理主義と独善で唖然「電力対策」欠く
「社会的大妥協」という強制
『ハンギョレ』(6月11日付)は、「文在寅大統領、働き口解決法として『社会的大妥協』を提示」と題して次のように伝えた。
文氏の選挙公約では、次のような点が上がっていた。
(1)公的機関で81万人、民間で50万人の雇用創出(潜在失業者を除く実数で135万人であるから、これを吸収する人数)
(2)最低賃金を時給1万ウォンに引き上げる(労組の要求通り。現在は約7000ウォンであるから20年までに実現するためには年率15%の引き上げが必要)
(3)4大財閥を中心とする財閥改革(労組の経営への参加)などを掲げた。一言で言えば、韓国経済を成長させ、その果実で分配を改善するのではなく、現在のパイの中で分配を変えるということであろう。」

韓国新大統領の政権運営を見ると平成10年代始めの日本の民主党政権の運営と似ているのに驚くばかりです。
「草の根の意見を大事にして・・」というのが決まり文句ですし、自分たちだけが民意の代表という決めつけをしていますが、実際に政権を取ると国民意見吸い上げ・利害調整能力がないので、八ッ場ダム工事中止決定や強権的にできることばかりに精出していた印象でした。
権力的決定はどうにもならない・権力の及ばない利害調整の必要な沖縄基地移転問題ではアメリカ相手に為すすべもなく大恥を書いたのは、強権決定に頼っている民主党政権の本質的矛盾によるものでした。
文在寅が、就任直後サード配備工事中止を命じたものの、対米関係上無理があって結果的に配備せざるを得なくなったのは鳩山政権の基地移転問題と同じです。
政治家・政党が「〇〇をやる」という以上は、何事も反対意見があることを前提に利害調整を自分ならばうまくやってみせるという意味であって、「アメリカに反対されたのでできません」というのでは、当初からできる見込みもない公約・・虚偽公約になります。
上記原発ゼロが問題視されているのはゼロにした場合に穴埋めの電力をどうするかの総合政策がないまままの発表だからです・中国の大躍進政策のように、決めた以上は権威に関わるので電気不足で国民が困ってもやるというならば別ですが・・。
同様のことは、蓮舫氏の30年までの原発ゼロ政策発表が無責任として民進党内で総スカン受けて引っ込めざるを得なくなったのと同じことを文在寅が繰り返しています。
こういう稚拙な政治家が国内批判もなく5年間もトップに君臨する・・人材不足・引いては民度の低さが韓国の不幸です。
アメリカの自治体紹介を年内から来年初ころに再開したいと思っていますが、アメリカは気がつくと国内政治・利害調整をうまくやる能力がない・・自国内で利害調整能力のない民族が国際政治の利害調整者を務めるのは無理があると気がついた状態です。
国際政治のヘゲモニー争いに執心して国富をつぎ込むのは国民福利に関係のないことだと気がついたのが、トランプ氏の唱える「アメリカンファースト」との意気込みとすれば時宜を得ていることになります。
アメリカも今後はロシア的外延拡張政策より自分達のために・・「内部の充実が重要・・先ずは利害調整できる程度まで民度を引き上げることが先決」という意味の方針転換とすれば歴史必然であり、正しい方向性というべきです。
ちなみに昨春以来の小池都知事の「都民ファースト」のフレーズは、都民無視の対外支出が都政で続けられてきたのならばこれを改めるのは当たっていますが、小池知事は過去の何が都民ファーストでなかったのかについて何も言いません。
小池都知事は都政で前任者がしていたことの何が都民ファーストでなかったのか明らかにしてこれをやめて今後何にファーストの焦点をあてるかの説明がないまま、1年以上過ぎてしまいました。

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