アメリカの傲慢と中国の適応力2

5月19〜20日に書いたように中国は(国内向けに劣等感の裏返しで)格好付けのためにする対外強硬意見ばかり日本で報道されますが、国内ではしこしこと公害であれ礼儀であれ謙虚に学んでいるように見えます。
他方でアメリカは超大国の威信にこだわり何も学ばない・日本に対して理不尽な要求を押しつけてくるばかりですから、長期的に見て学んだ国と学ばない国との違いが出て来る筈です。
米中共に今はローエンド製品向け民度中心であり、人口大国で(広大な領土保有)共通しています・・ハイエンド技術に上がれる人は限られるので、その他の巨大人口をどうするかの問題に直面することは同じです。
同じならば、学ぶ意欲のある中国の方が、(まして、製造現場が微細技術中心になると、欧米人よりアジア人の方が基本的に器用です)アメリカよりも適応力がある・・民度が伸びる可能性があると言う意見になります。
5月20日の日経新聞朝刊では、上海デズニーランドの入園者が、開園10ヶ月で1000万人突破・・予定どおりで順調と出ています。
開園直後で批判の多かった入園者のマナーも批判を受けて良くなっていると出ています。
また日本国内経済に目を向けると5月20日日経朝刊では、国境をまたいだ通販の発達で訪日観光客が帰国後資生堂などのリピーターになっている状態が報道されています。
帰国後リピータ買い増加の結果、化粧品の輸出が過去3年で倍増し、化粧品だけの貿易収支では、史上初(今までは西欧ブランド品の輸入額の方が多かった)・・・輸出が輸入を上回るようになり、資生堂などは国内工場の増産投資をすると出ています。
その他省力化投資が盛んで、ロボット製造大国の日本企業が潤っている経済ニュースが従来から出ています。
「財政投入で持ちこたえているだけだから資金切れになれば直ぐに行き詰まる筈」と言う批判論ばかり見ていると中国の企業は気息奄々で、従業員もいつ解雇されるか心配している筈ですが、そのような説明では末端消費の力強さと矛盾します。
財投で景気の下支えをしながら着々と省力化投資に邁進している様子が、対日発注の変化から見て取れます。
海外観光客数や国内自動車購買数その他・・末端消費の実数をみると、それだけの消費者が育っていることは確かです。
クルマの年間販売が数年前には2000万台規模だったのがいつの間にか2800万台前後で安定するようになっています。
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/salesfig_china_2016
2016年の中国新車販売は前年比13.7%増の2,803万台
中国汽車工業協会は12日、2016年通年の自動車生産・販売台数がともに過去最高を更新したと発表した。
・2016年通年の生産台数は前年比14.5%増の2,811.9万台、販売台数は13.7%増の2,802.8万台。伸び率は2015年と比べ生産が11.2ポイント、販売が9.0ポイント上昇した。
・乗用車の2016年通年の生産台数は15.5%増の2,442.1万台、販売台数は14.9%増の2,437.7万台となり、伸び率は自動車全体と比較すると生産が1.0ポイント、販売が1.3ポイント上回っている。」
以下はアメリカです。
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/salesfig_usa_2016米新車販売、2016年通年は0.4%増の1,755万台で過去最高
「オートデータが4日に発表した12月の米国新車販売台数は、前年同月比3.1%増の169万429台となった。12月の季節調整済み年率換算(SAAR)は1,843万台/年だった。
・1-12月の米国市場の累計販売は1,755万351台で前年同期比0.4%増となり、これまで過去最高であった2015年の1,747万9,469台を上回り、記録を更新した。
・12月の販売は営業日が1日少なかったが、週末が5回あったこともあって前年同月比で3.1%増となった。」
中国では景気対策のために、小型車の減税があったと言え、その程度の臨時優遇策・・(アメリカでは、ガソリン値下がりで良く売れたと言われます)駆け込み需要はどこの国でもあることですから、全体的に2500万台以上の安定した消費力があることが重要です。
また伸び率で見てもアメリカが金融緩和出口戦略で「景気が最高潮」と言うにしては、アメリカ3%に対して不景気な筈の中国が13%増と大幅な違いです。
まだクルマが十分普及していないことから、伸びシロが大きい点があるとしても、絶対数で見てもアメリカの年間1775万台ベースと2800万台を比較すると(事業用も含むので個人保有とは限りませんが一応の目安です)クルマ購入層の人口がアメリカの約1、6倍もいることになります。
人口比の普及率の比較を書いているのではなく、中国の景況がどうかの基準で言えば、着実に安定成長している傾向が見えます。
上記のとおり中国は中国なりにキャッチアップに努力していることが分りますが、さしあたりアメリカの金利上げに追随するしかない点をどうするかが当面の難所
です。
3月15日発表のFRBの金利0、25%上げ・・今後金利上げが引き続く場合・・中国に最後のとどめを刺す始まりになるかはこれからの展開次第です。
EU危機で南欧諸国は不景気でもも独自の金融緩和・金利下げ出来ない難点が世界で認識されましたが、世界経済が一体化しているので、アメリカの金利上げに世界中が影響を受ける点では似たようなものです。
経済力の弱い純に金利を少しでも高くしないと金利の高い国に資金が逃げられてしまう・・たちどころに資金不足に喘いでしまいます・・資金不足・・不景気対策に金融緩和・主権国家だから紙幣をいくらでも増発出来ると言っても、為替相場がそれに比例して下がるので、輸入に必要な外貨を入手出来ない点では同じです。
これが現在進行中のベネズエラ危機・・国民が食糧難に喘いでハイパーインフレになっている通貨的側面です。
アメリカの金融政策の影響がないのは、多分世界最強経済・・最大純債権国の日本くらいでしょう・・。
日本は約20年ほど前から事実上世界基軸通貨国・・世界最低のゼロ金利政策を採用していても資金が集まる有事の「円」と言われる国になっています。
これこそが基軸通貨国の基準です。
表向き言えませんが・・既に日本は事実上世界の基軸通貨国になっていると言うのが私の意見です。軍事力・・物理的強制力がない程度であって、文化発進力でも腕力や宣伝によらずに事実上世界の底辺層に至るまで日本的生き方が世界標準になりつつあります。
文化発信国家と言う基準では、ちょうどエルミタージュ美術館に関する宣伝?映画が千葉劇場(私の事務所の2階にあります)にかかっていましたのでみて来ましたが、西欧の明がなどの紹介ばかり・・文化受容を自慢していることが中心で自国芸術が全く出て来ないのには驚きました。
もしかして独自文化のない民族って?悲しいものだな・・と言う感想を抱きました。
日本の国立博物館・美術館に行って、日本人の芸術品が1つもなくて海外の名作の所蔵ばかりが自慢はでは悲しくないですか?
今のプーチン・ロシアでは民族主義の固まりみたいに見えますが、自国民族の精神の固まりであるべき自国文化を主張しない民族主義って?ロシアって何のための民族国家なのかさっぱり分らない気がして帰って来ました。

アメリカの傲慢(半導体交渉)と中国の適応力1

商品の代わりに人間で言えば難民を送り出すクニがあると、送り出される方の治安や経済情勢が悪化します。
窮乏を基礎にした対外転嫁や先送りはいつか破綻すると言うのが定説ですが・・北朝鮮の例で分るように窮乏化競争では、より貧しい方が競争力があるのが普通です。
中国国内だけ見ると倒産先送り・国内雇用維持になっている代わりに、ダンピング輸出を受ける方にとってはその分国内生産が減る・・失業を輸出されているのと同じ効果になります。
中国人個人で見ても、世界中で世界標準の礼儀作法を守らないで汚しまくる・・大声で騒ぎ顰蹙を買う・・企業では知財の剽窃などルール破りが目立ちましたが、控えめに言って分る相手ではない・トランプ式恫喝が必要だと思う人も結構います。
そうは言っても中国の場合、国際ルールを知らないことに反省している気配が見えて、最近で大分礼儀正しくなっています。
企業行動でも低賃金・人海戦術は先がないとなれば、速やかに省力化投資に精出している様子がこの数年目立っています。
こう言う謙虚な精神がないのがアメリカで、熟練技術者不足となればレベルアップ努力するよりは作業工程を分解して流れ作業方式を編み出して未熟練者の大量採用で対抗する・粗放・大量生産の極大化を押し進めて来ました。
この一態様・・移民受入れ政策で・・要は労働者「数」で勝負する思想です。
粗放・大量生産方式に対して、日本のきめ細かい技術による対抗を受けて、これに再対抗出来ないとなると、先ず第二次世界大戦で一旦叩き潰し、戦後直ぐに再挑戦して来ると世界大国になった傲慢さから工夫するよりは開き直りに徹して来ました。
日本はhもう一度戦争になるとと大変なので、何を言われても「御無理御尤も」の精神で対応して来ました。
日本に追われるようになった繊維〜電気〜鉄鋼〜半導体〜クルマなど(腕力に任せて)日本に負けると次々と輸入制限しただけで安心し、国内での構造改革努力をせずにそれでも日本に負ける分野では海外進出して対抗する・スポーツも負け始めるとルール変更したり、低賃金競争に負けると移民で人口を増やす努力・・国民レベル引き上げの必要性に目をつぶり、その努力しなかったのが、戦後アメリカ政治でした。
いわゆる成功体験が新しい時代への適応を誤らせる好事例です。
日米経済戦争が次々と起きて来る中で最後の半導体では、・・アメリカの粗放生産向きの国民レベルでは、電子機器・・半導体工場等の微細工程をこなすには自国民には無理と諦めたのでしょう・・保護主義だけでは無理となって日本パッシングの道具・対抗馬として韓国企業を育てる方向へアメリカは舵を切りました。
https://matome.naver.jp/odai/2145459542538851901
卑劣 日米半導体協定 ⇒ 日本半導体産業崩壊
更新日: 2016年02月05日
日本は技術・経営で勝利したが,政治で敗北
概略
日本半導体研究開発成功 (大容量DRAM, 技術標準化)
 ⇒【技術的勝利】世界のシェアを奪う
  ⇒【政治的敗北】米国との協定により日本の半導体産業崩壊
   ⇒ 現在,米国と韓国が半導体のシェアを確保」
米国の政治的攻撃:日米半導体協定という不平等条約 (1986~1996年)
日本の半導体の輸出価格をアメリカが決め,日本市場の20%は外国に譲らなければならないという「日米半導体協定」を10年間結ばされ,その間に日本の半導体産業は衰退する。」
アメリカが日本企業の販売価格を勝手に高く決めてしまうことにより、他国と競争出来ないようにしてしまったことになります。
韓国企業を育てる応援を強制されたので?仕方なしに半導体製造装置を輸出せざるを得なくなり、それ以降日本は、いろんな分野で製造装置や部品の輸出で稼ぐ構造になりました。
この辺は逆に今の新たな経済パターンを作り出せて良かった・・ああすればこうする日本の柔軟な戦略にアメリカはいらついていることは確かです。
太平洋戦争に引きずり込まれて日本は痛い目にあったので、どんな無茶を言われても柔軟対応に切り替えていることになります。
この辺は逆に今の新たな経済パターンBt0CからBtoB方式にモデルチェンジ出来て良かった・・ああすればこうする日本の柔軟な戦略にアメリカはいらついていることは確かです。
戦後70年間・・隠忍自重をやって来たので韓国はアメリカの後押しさえあれば日本は何でも言うことを聞くと思い込んでしまったのです。
詳細を省略しますが、上記のとおりの理解・・占領直後に日本の工業生産を禁止ししていたのと似たような強制が1996年当時もあったのです・・サムスンの躍進はこうした米国の政略の後押しによるものです・・が今の常識でしょう。
アメリカにかかると経済原理・正義の基準も何もあったものではありません。
http://www.seminowa.org/seminowa_archive2014/articl_other/semi_news_V26_2.htm
日米半導体戦争
半導体シニア協会 理事長 牧本次生 
「この歴史を振り返って強く感じることは、首位を転落した後の米国の強烈な巻き返しである。超LSIプロジェクトの方式を「日本株式会社」と非難しながら、これが有効となれば、手のひらを返すような形でSEMATECHを設立。なりふりかまわぬ振る舞いには半導体を国家戦略として位置づける米国のすさまじい執念が感じられる。この当時、政府、産業界、大学、マスコミなど国全体で「米国の盛衰は半導体にあり」という認識が共有されていたのだと思われる。」
この後アメリカの応援を受けた中韓による日本に対する明からさまな敵視政策が顕在化して来ます。
話題を戻しますと、日米半導体戦争の決着以降日米経済戦争はあらかた終わりましたが、・・日本はクルマの製造拠点をアメリカ国内に作ることにしてアメリカの怒りをかわすのに成功したこともあり、他方でアメリカによる戦後台頭して来た対日押さえ込み政策が成功を収めていたことになります。
半導体交渉は、日本の輸出自主規制させておきその間に韓国企業を育てる政策であり、中国進出政策でした。
例えばGMは本拠地のデトロイトでの工員のレベルアップを放棄して、日本に対抗するためには中国で大規模生産して漸く生き残っている状態です。
アメリカ企業は、中国等の低賃金攻勢・・あるいはアジア人の器用さを武器にする攻勢に対して低賃金+器用な国に海外進出してしまい国内企業改革をしなかった・これがアメリカ国内産業空洞化の結果ですが・・他方で安い移民を入れる方に走ってしまったのとは違います。
アメリカ「民族系?」企業は嫌がらせされる心配がないので遠慮なく国外進出してしまう・・あるいはアップルのように99%中国工場で生産して逆輸入する・アメリカの産業空洞化を日系企業が穴埋めする入れ替わり現象が起きています。
この数年トヨタや日産、ホンダ等の日系自動車工場の進出先では、韓国系の慰安婦運動その他の反日運動に対する沈静化の支えになっていると言われますが・・。
中国の大規模なダンピングが世界の迷惑になっているかどうかは別として、中国はさしあたり国有企業温存の結果、国内大量倒産を防ぎ大量失業を発生させないで今のところ、何とかなっている・・見た目には成功しています。
これをどう見るかは立場によって違うでしょうが、イチガイに「ダメ」とは言い切れないように見えます。

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