弁護士会委員会の運動体化1

弁護士会で、何かの対策委員会が出来ると、一方に偏ってしまう傾向があるのは何故でしょうか?
刑事弁護でも弁護側は刑事政策的にどうなるか、考える余地がない、兎も角権力は強いんだから、被告人の立場で要求出来ることは要求して行けば良いと言う立場性が強烈です。
私も刑事弁護ではそう言う意識になります・・制度不備があれば、別に政府が改めれば良いことであって、法網をくぐっていようと該当する法律がなければ法をまげて処罰することは許されない・・当たり前のことです。
しかし消費者問題や環境、公害等で現行法違反を追及するのは刑事弁護同様で分りよいですが、法制度をこうすべきだと言う立法論になって来ると意味が変わってきます。
弁護士会の委員会は、一方の立場ばかりで、産業がどうなっても良いから?(とは言わないまでもそれは企業側で反撃して来れば良いと言う立場・・)もっと厳しい規制立法すべきだ言う運動論中心になってくると、それは政治・・国民の負託を受けた国会で決めることではないのかと首を傾げる弁護士も多くなってきます。
立法論・・立法活動になると委員会活動が運動体になって行きますので、継続性が必要になって行き・新入委員は既存の決定方針に従うしかなくなって行きます。
自民党や共産党など政党の場合、立党のときに決めた党是・綱領を知った上納得して党員になるのは勝手ですが(イヤなら加入しない自由があります)、弁護士会の場合政治団体ではない上に、強制加入が法律で決まっているので、弁護士である限り加入しない自由がありません・・意見が合わないからと別の弁護士会に入るには他府県に移住しなければ、事実上無理です。
たとえば、(いつ決めたか知りません・・)「3〜40年前に死刑廃止に決めたから・・」「◯年前に特定秘密保護法反対に決めたから・・」「何故反対した方が良いのか知らないなら勉強しなさい」と言われても、新入会員が先輩が決めたことに(先輩を尊敬するのは原則よいことですが・・)何故(反対が正しいことの勉強しか許されず)強制されるのか訳が分りません。
死刑廃止論程度では、(死刑を存続した方が良いと思っている弁護士でも)人権擁護の精神からは刑事政策的考慮は別として弁護士の立場からそう言うものかな?と納得・・許容範囲として黙っている人が多かったと思います。
最近は上記消費者保護や環境その他多角的分野に関して、既存法に合致しているか否かだけではなく、攻めの活動・・新規規制強化を求める運動が多くなって来ているので、業界側についている弁護士も当然いるのに一方の意見だけで運動するのが常態化して来ると業界から見ると自社の顧問弁護士が反対政治運動団体の会員であると言う不思議な関係になって来ます。
政治と弁護士活動の区別が難しくなって来ました。
以前紹介しましたが、防犯カメラ設置に対する反対の講演・・勉強会にまで広がって来ると・肖像権保護など何でも理由をつければ人権活動ですが・・何でも新しい技術に反対するための組織か?と色目で見る人が増えてきます。
いろんなことに関心を持つのは良いことですが、いつも反対する方向性しか意見が出ない状態が何十年も続くと、革新系?を標榜する超保守野党と何が違うのか?分らなくなってきます。
何でも反対の社会党と評判をとった同党が国民の支持を失ってほぼ消滅状態ですが、強制加入組織で国民世論支持を必要としない日弁連や単位会が、事実上消滅状態の旧社会党の言いそうなことを亡霊のように代弁をしている状態ではないかと言う批判が強くなってきました。
世論支持が法律上いらないことにあぐらをかいてやりたい放題をしていると、長期的には国民の反発を受けて弁護士の地位低下が進みます・・モノゴトはやり過ぎないことが肝要です。
過激化する大学自治会活動が世論支持を失って行く過程で、世論など問題にしない過激派が牛耳るようになって「純化」して行ったのと傾向が似ているように見えませんか?
法政や早稲田大学など過激派が牛耳っている大学自治会では、学生は學納金とセットで大学から自治会費を自動徴収される仕組みだったと思いますが・・今は知りません・・この結果一旦特定セクトが大学自治会を牛耳ると、毎年巨額の資金を学生から自動徴収出来る仕組みが出来上がっています。
日弁連や単位会が強制加入で会費を強制徴収出来るのと経済的仕組みが似ていませんか?
フィットネスクラブや文化講座では、面白くないと行かなくなる・会費を払わなくなる・・チェック機能が働いています。
強制徴収制度が市場のチェック・健全な抑制機能を喪失させているように見えます。

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