成長と独裁の限界3

「中朝の反抗2」November 12, 2012その他で、アラブの春を引き合いに中国への外資流入減が分配資金減の結果、政治危機を引き起こすだろうと書いてきました。
中国の場合、外資流入減の始りはアラブの石油収入増加率低下→分配力の低下と同根です。
アラブと違い中国の場合、低賃金大規模工場がバングラディッシュ等へ移転→失業の増大による具体的不満の発生が始まっている点が大きな違いです。
昨日書きましたが、一時良い思いしただけだから、元の掘っ立て小屋生活に戻れば良いかと言うとそうは行かない・・一旦得たものを失うのはイヤなものです。
既に失業したりこれから職を失いそうな人口が半端な数ではないのでこれが重要な要素になっています。
その上に、もしも不動産バブル崩壊が重なると既得権益層も大損害ですから、致命的です。
幹部特権層が不正収入のマネーロンダリング目的に親族名義等で不動産購入をしていることが多いので、これが大崩壊すると政権支持層の基盤が揺らぎます。
(まじめに働いたホワイトカラー層もかなり買っていますので、折角成長のおこぼれにあずかってた人たちも財産を失うと大変です・・低賃金者でも失業して一旦得た地位を失うと大変なのと同じで、政権支持基盤の裾野が大幅に縮小します。)
このために中国ではバブル崩壊を先延ばしすると、その先更に大変なことになると分っていても延命工作に奔走するしかなくなっているように見えます。
高度成長から安定成長への踊り場に来ると、一般的に開発独裁の一番難しい局面になります。
韓国はここ何年も数%の低成長経済になっていることを、最近どこかで紹介したように記憶していますが、もしかしたら先送りになっているかも知れません。
念のためもう一度コピペーストしておきます。
http://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=NGDP_RPCH&c1=KR&s=&e=

経済成長率の推移 - 世界経済のネタ帳

韓国の経済成長率の推移(1980~2014年)
<出典>
IMF – World Economic Outlook Databases (2014年4月版)

1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989
-1.89 7.40 8.29 12.18 9.86 7.47 12.24 12.27 11.66 6.75
1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999
9.30 9.71 5.77 6.33 8.77 8.93 7.19 5.77 -5.71 10.73
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
8.80 3.97 7.15 2.80 4.62 3.96 5.18 5.11 2.30 0.32
2010 2011 2012 2013 2014
6.32 3.68 2.04 2.78 3.71

単位: %

数値(14年分は途中なので推計と言う意味です・・イナガキ注)はIMFによる2014年4月時点の推計

<注記>

  • 実質GDPの変動を示す。
  • SNA(国民経済計算マニュアル)に基づいたデータ

<出典>

リーマンショックが08年8〜9月ですが、韓国ではその前年でも2、3%しかありません。
2009年10年が8%、6%になっていますが、これはリーマンショックによる落ち込みを前提にした前年比増ですから実は大したことではありません。
この特例を除けば再び2〜3%で落ち着いていて、この後もっと成長率が低下するだろうと言う予想ですから焦る訳です。
(今年の4〜6月期成長率は0、6%の低成長だったとのことです)
成長率が2〜3%に低下しているのに、差を付けるためにと見境なく進学率を上げて来たので、大卒就職先がある訳がない・・これが大卒の半分くらいしか就職出来ない状態が続いている原因です。
韓国の物価上昇率が長年年率2〜3%と言われていますので、今では日本と韓国では物価が殆ど同じ・コンビニ商品単価が日本とほぼ同じと言われています。
ところがコンビニの時給が日本の何分の1と言う状態では(財閥等に就職し損ねて非正規で働くしかなくなった若者の)生活が成り立ちません。
真偽不明ですが、以下のような情報がネットで溢れています。

年金も月8000円あまりと言われていますから高齢者は大変です。
(日本の大学発行論文で韓国人らしい名前の学者の書いた論文では、保障が軽いから韓国財政は健全であると自慢していますが・・・)
正規から振り落とされた弱者に厳しい社会です。
他方で昨年1年間で135万人くらいリストラされている言われていますが、折角正規就職してもサムスンなど一流企業では、ドンドン振り落とされる仕組みです。

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