貿易黒字(依存率)と内需5

15日引用したグラフ解説者の意見を敷衍すると、まだ貿易社会に参入できない最貧国等は別として、近代化離陸中の国は貿易依存度が高くなるの逆から言えば依存傾向がある・・依存度の高い順に国内経済はまだ未成熟な離陸開始直後に近いと言えます。
(ドイツの貿易依存率の高さは異常ですが、この点については別に書きます)
近代社会に参入したばかりの国では、先ず外貨を稼ぐことが最重要ですし、国内購買力が低いので、自国民相手に物を作ったりサービスするよりは、輸出基地として投資を呼び込み先進国で受入れられるものやサービスに特化して売り込みに励むしかありません。
結果的に自国民相手の経済ではなく、目の前の国民を顧客として大事にしないで、遠くの国への輸出品製造基地として投資を呼び込み、輸出に精出しているのが発展段階の初歩と言うべきでしょう。
中国が輸出基地として深圳特区など作って外資を呼び込み、貿易黒字に精出して黒字を溜め込んでいたのは、この意味で参入当初の行動としては当然の行為であり、立ち上がりに成功したと言う程度のどこにでもある結果です。
商人・産業界が国民を客として重視しない社会では、政治制度だけ国民主権と言っても建前に過ぎず、実際には無理・・国民不在政治になりガチですので、開発独裁と言われるように新興国では独裁政治の方が似合っています。
キャッチアップ型社会では先進国の真似をしていれば良いので、国内で試行錯誤的議論する必要もなく独裁の方が効率的ですから独裁が向いていると言われてきましたが、政治だけではなく、民間経営者にとっても輸出先である外国の顧客志向ですから足下の顧客をあまり意識しない経営体質になっていて、・・社会全般に国民の意向軽視社会で済む点も独裁の下支えになっているのです。
まだ中国が解放直後の立ち上がり段階では、(自由経済参入する以上は共産主義とは矛盾していますが・・)1党独裁のままであったことについては、社会的妥当性がありました。
新興国を卒業してOECDに仲間入りした筈の韓国が、新興国顔負けの貿易依存率100%と言う突出ぶりを示しているのは、外形的高成長にかかわらず、輸出基地として発展開始したばかりの後進国同様に国内経済がなお未成熟であることを証明しています。
韓国は国内経済が未熟なまま無理して軍事独裁政権から民主政権に移行しましたが、経済内実が伴っていないで王朝時代の搾取構造(専制支配の民間版である財閥支配)のままなので、民主政体と噛み合ない結果、政権維持に苦労していることになります。
中国の場合政体と内実が一致しているので、この面では国民の意見を聞くと言う格好を付ける必要がなく情け容赦のない少数民族弾圧を繰り返していますが、韓国の場合表面上民主政体になってしまっているので、内外共に二重に虚偽性を発揮しなくてはならないのが苦しいところです。
北朝鮮や中国と一体化して民主主義国家社会から訣別して開き直った方が楽でしょう。
韓国の大統領制については、実質期間限定の独裁体制であると言う説明を「民意に基づく政治2(大統領制と議院内閣制1)」July 14, 前後のシリーズで書いたことがあります。
民度が熟していない後進国の場合、本当の民主主義政体・・完全な言論自由化にすると、言いたい放題・利害調整能力の欠如からまとめる力がない・・混乱になってしまう点をアラブの春に関して連載したことがあります。
期間限定の独裁体制にすれば、その間政権から引き摺り落とす政治行動が出来ないので、政争から逃れられるのでその間だけでも政権が安定するから後進国向けメニューです。
朝日新聞の30年近い慰安婦報道が虚偽報道だったことが朝日の記事訂正・自白によって明らかになって大騒ぎですが、この意趣返しのためか?朝日の報道を長年批判して来た産經新聞ソウル支局長が大統領の動静を朝鮮日報の記事を引用する形でネットで報じたことが虚偽報道だとして検察への出頭要請されたことがニュースになっています。
民主化したとは言っても、内実は言論の自由・政治家の行動批判すら許されない程度の民主国家だと言うことです。
ルーマニアその他独裁政権が倒れると直後に必ずその復讐があるように、韓国では任期中政権打倒の運動を出来ない代わりにその間の不満の蓄積があるので、(これも上記引用コラムで書きました)これまで政権交代の度に前大統領とその周辺が粛清?されて来ました。

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