成長と独裁の限界1

内需拡大のテーマに戻りますと、生活レベル引き上げ→生活コスト上昇=人件費等の上昇→低賃金工場の海外移転促進→大量失業発生ですから、中国は貿易黒字減少が怖い以上に、国内失業増加が怖いので本気で国民生活レベルを引き上げられないと思われます。
中国では、まだまだたとえば音楽を楽しむならば海賊版利用する程度が限界で、文化水準底上げを狙うどころの段階ではありません。
とは言えモノゴトはお金の有る無しばかりで決まる訳ではありません。
日本の場合、古代から敗戦後のどんなに貧しい時代でも正真正銘の良いものを買い求め、世界一流スターには相応の関心を示す国民性ですからこの辺が大きな違い・・貧しいだけではなく人間としての本質的部分が違っている面もあります。
敗戦後の極貧のときでも日本は良いものが売れる市場でした。
遣唐使の昔から、まがい物を買ったり学んで来る人の少ない民族性・レベルの問題です。
8月22日に書いたように中国では、経済基盤が弱過ぎて生活水準引き上げによる内需引き上げ出来ないために、内需引き上げ→黒字減の心配もさることながら、職場維持のために輸出による黒字積み上げを続けるしか能がない状態に陥っています。
この辺は韓国の内需比率の低さ・内需率を上げることが出来ない弱さも同じような内実が隠されていると見るべきでしょう。
中国人民は、政府からGDPで日本を追い越したとか、外貨準備世界1の自慢ばかりされていますが、成長の恩恵が自分に及ばない大多数の国民にとっては却って腹が立つばかりでしょう。
中国経済成長の恩恵が及んでいるのは政府高官や共産党幹部とその係累ばかりで、高官とその一族の何兆円と言う巨額汚蓄積が時々伝わって来て、裸官と言う熟語まで生まれています・・。
こう言う隠語が流通していること自体国民の不満の広がりを表しています。
先進国比は低賃金でも、低賃金工場で働けること自体が極貧状態であった中国人にとっては夢のような恩恵だったでしょうkら(今になれば賃金が安いと不満を言いますが・・)、一度得たものは失いたくないものです。
ユニクロなどの縫製工場がバングラデシュに移転した場合、中国でミシンを践んでいた彼ら彼女らが、工場閉鎖になると高度部品製造技術者に転進できる訳がなく殆どが失業している筈で、そのマグマが溜まりつつあったと推定すべきです。
中国には失業統計がないのかあるのか・・日本マスコミは中国に不都合なことは報道しません。
不都合な統計を隠しても、実際にはバングラデッシュ等に輸出基地が移転し始めた数年前から大量の失業者が出ているので、その人たちの不満を放置できなくなっている点は同じです。
既存工場閉鎖しないまでも、増産分が東南アジア立地になった場合もドンドン沸いて来る新たな労働力受け入れが出来なくなる点では・若者の無職化ですから政治的にはもっと深刻です。
韓国でも対日優越意識の昂揚と反日行動のヒートアップに必死ですが、この強さに比例して国民の不満や劣等意識が蓄積されていると言うべきでしょう。
企業としてのサムスンの大成功にもかかわらず、具体的生活になると貧富格差が大きい・・・財閥系一族の巨額資産保有とその他庶民との格差の大きさ・大卒就職率の低さ・50数%台です・・日本では97%に達しています・・(海外立地が進んだ結果国内就職先が乏しい)があって不満のマグマが大きい社会です。
世界中に売春婦に出掛けて行かないと生活できない・・アンケーと調査では国民の約8割が国外脱出願望状態にあるだけでも、国民の苦しみは容易に想像できます。
中韓共に、内需引き上げ=一般人の生活水準の底上げが出来ないと言うことは、国民一般に経済成長の恩恵が及んでいないことになります。
庶民に広く恩恵が及ぶ・生活水準が上がると国際競争に負けてしまいやって行けないことによります。

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