日中の制裁合戦4(バブル崩壊1)

韓国では世界ニュースになった4月中旬の船舶事故(フェリー転覆)に続いて1昨日発生したソウル地下鉄事故によって安全面を軽視して・違法でも何でも稼いだ方が勝ち・・結果が全ての風潮・・価値観が漸く韓国国内でも批判されるようになってきた様子です。
能力があって急成長すれば良いのですが、日本で言えばブラック企業・・安全教育や設備/手順あるいは労働基準を守らない・・企業秘密を盗んでぼろ儲け・急成長している企業があります。
急成長する新興国の場合、必要なコストを手順やコストをケチって(設計図を盗んで来ても安く作りさえすれば勝ちみたいな)生産だけに特化するから成り立っている面があります。
このやり方がそろそろ限界にきたのが、北京を中心とする公害問題であり、韓国の事故多発社会でしょう。
韓国では、もっとも安全性を要請される原子力発電の規格部品でさえ不適格な適当な製品であったことが昨年バレたばかりです。
言わばブラック企業中心で設計もデタラメで、低コストを売り物に世界に進出していた咎めがこれから出て来ます。
中国が低賃金輸出や公害垂れ流し、知財剽窃等々非合法行為をやりたい放題にすることによって支えられていた外貨獲得が今後減少して行くと、離陸し切れていない巨大人口をどうやって養って行くかの課題に直面して行かざるを得ません。
改革解放前の貧しいままならば、今の北朝鮮同様に国民は我慢できたでしょう。
解放後上海等で目の前に豊かな都市住民を作り出して来たうえで、実態に合わない統計を発表しては・・国民に輝かしい未来を煽って来たので、国民はその気になってしまっています。
この状態で倒産続出・失業の嵐→国内生活レベルダウンに見舞われると、共産党政権に対する人民の不満が嵩じて行き国内政治が危機に直面して行くでしょう。
生活向上を夢見て(田舎の親が借金して)苦労して大学を出て見れば地下室で寝泊まりするアリ族の生活が待っているのでは、若者を中心に不満が蓄積して行くのは当然です。
ちなみに中国大卒の就職率は僅か35%でしかありません。
5月3日日経新聞ウエブ刊(2013/6/1220:48http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1000E_S3A610C1EA1000/)
によると「中国の大卒就職内定率35%に低下 13年春、ミスマッチなど響く」とあります。
記事内容は以下のとおりです。
「中国では大学などへの進学者が急拡大。今年の卒業生は約700万人に増える見込みだ。だが中国の労働集約型の経済構造は変わっておらず、国内総生産(GDP)に占める3次産業の割合は10年間で3ポイントしか上昇していない。大学生が希望する仕事はもともと少なく、最近の景気減速で求人数がさらに減少した。」
このニュースの何年も前からマトモな就職ができないアリ族が報道されていましたので、13年は12年より就職率が少し下がった程度でこの有様です。
700万人の約7割前後が毎年就職出来ない社会・・これが毎年累積して行くのですから・・多くはネズミ・蟻族として不本意な現場労働者等として食いつないでいます・・大変な事態が待っています。
日本のように親世代が裕福ではありませんから、韓国ではこのマイナス・・学費等の借金を解決するために売春婦になって世界を横行していますが、中国の場合まだ男子中心の進学ですから親が借金して息子を進学させて就職出来ないと親の家に戻る訳にも行かず、政情不安に直結します。
同記事では以下のように書いています。
『このまま内定率が上がらなければ、就職できない大学生らが共産党体制に不満を持ち、社会不安が急速に高まる恐れもある。地元経済紙によると、中国政府は今月に入って、国有企業に「社会的な責任を積極的に果たす」ために大卒者の採用を拡大するよう要求した。」

日中の制裁合戦3

日米双方が対中貿易を縮小してGDP比5%にしたときに、この間に中国の経済規模が縮小していないで以前と同様であるとすれば、その他の国の対中貿易が穴埋め的に増えている勘定ですから、その他の国にとっては日米の要請に応じて対中禁輸に参加するには抵抗がその分大きくなります。
中国が世界貿易の1割を占めているとした場合、日本が中国から手を引いて東南アジアと貿易を増やしてもその代わりどこかが対中貿易を増やすので、世界全体での中国の比重は1割のママで同じと思うのが普通です。
日本が対中投資を縮小すると中国の生産がその比率で減って経済規模が縮小するならば効果がありますが、その穴埋めをドイツ等が引き受けるならば世界経済に占める中国の比率は変わりません。
しかし、この後で書いて行きますが、中国の場合ローエンド製品中心・・日本の安値な下請工場として経済が拡大して来たのですから、(この間にある程度中級品を作れる技術者も育っていますが・・)日本企業にとって似たような低賃金の最低労働者ならば世界中どこにでもいます。
インド、バングラデシュ、東南アジアで工場を造っても同じと言うことで、対日暴動以来対中投資が4割減でその分東南アジアに進出するようになりました。
日本にとって中国へ進出するか東南アジアに進出するかは50歩100歩でしかないので、日中対立したからと言って日本企業は困ってはいません。
国内で言えば地方で大手工場に嫌がらせをして出て行かれると困るのは地方政府の方であって、大手企業は別の県に工場を移転すれば従来どおり生産できます。
日中対立後丸1年経過後の昨年度決算で見れば、日本では、殆どの大手企業が史上最高レベルの利益を出しているのは周知のとおりです。
これに対して中国はどうでしょうか?
従来の中国の製品輸出先であった東南アジアが日本の大量投資によって国内製造業の活況によって自給するようになるだけではなく、欧米等での輸出先で中国と競合してきます。
中国国内生産の大多数を占めるローエンド製品輸出先であった東南アジア諸国が輸出先でなくなり、逆に市場の奪い合い相手になるので、中国の輸出産業が急激に縮小して行きます。
対日暴動以来、中国経済がジリ貧になって来たのは、日本の対中投資が激減して東南アジア諸国が競合生産国になって来たことによります。
ユニクロなどもバングラデシュに縫製工場を持っているようです。
実際に対日暴動以来中国の輸出は大幅減になって来て、経済停滞は顕著なものがあります。
今朝の日経新聞では国有大手の増益発表に関して子会社に資産を売却益計上したに過ぎず、売却価格が不透明で株式市場では知らん顔で株価に反映しない・・中国の株式相場はリーマンショック前の3分の1に沈んだママであると書いています。
いろんなマイナス面がこの基礎的停滞の結果表面化して来た・・シャドーバンキング問題が世界の注目を浴びるようになって来たのは・・回り回って資金繰りが着かなくなって来たことによります。
逃げ出した日本企業の代わりにドイツ企業を誘致して日本以外から基幹部品の代替輸入しても、ローエンド品しか作れない限り、東南アジアやバングラデシュ等との競争では、後発国の方が人件費が安いので先行きがなくなってきました。
そこで必死に産業構造の転換を図っているのですが、特定少数者のレベルアップならば可能性がない訳ではないでしょうが、巨大な人口の大多数を底上げするのは無理があります。
外貨が湯水のように入って来なくなったこの局面で、これまで公害対策費・衛生関連費等をケチって生産していたのが限界にきて、いよいよコストを掛けて公害対策や保健・衛生面にも気を配るしかなくなってダブルパンチを受けています。
知財剽窃や公害の垂れ流し・・町を汚いままで割安に生産していた競争力が、(本来のルールを守っていなかっただけです)この方面でも殺がれて行き、国民レベル相応の普通(以下)の国にならざるを得なくなって行きます。

日中の制裁合戦2

当時の報道では、日系企業で働く労働者数は約1000万人にのぼると言われていました。
それだけの国内産業の操業が止まると、納入業者・仕入れている企業その他の関連産業の混乱は半端なものではありません。
http://biz-journal.jp/2012/10/post_918.htmlによれば、
「中国には、国内で1千万人の雇用を創出する日本企業が不可欠」
の題名で掲載しています。
ま、特定の立場で書いている面もあるので、真実は分りませんが・・。
日系企業を痛めつけて操業不能にすると日系企業が自主的に日本本国に協力するために中国国内でゼネストをして、中国内部を痛めつけているような効果が中国国内で生じます。
このために中国は日系企業を全面弾圧することは不可能で、オバマ大統領の対ロシア制裁が西欧諸国に大した害のない程度しか出来ないのと同様で、象徴的にいくつかの日系企業を大げさに血祭りに上げて日系企業に対する萎縮効果を狙うしかなかったと思われます。
数年前の対日暴動で、パナソニックなど象徴的企業を狙い撃ちしたのもそう言う視点・・脅かす視点だったと見るべきでしょう。
数年前の対日暴動では何の被害も受けなかった日系企業の方が多かったと(嘘か本当か分りませんが)今になって報道されています。
しかし、このやり方は却って中国にとって不利な結果になりそうです。
このやり方は、日本右翼が中国進出はこんなに危険だと宣伝して中国への投資をやめるように宣伝していますが、彼らに代わって中国政府自身が日本企業に対して危険だから来るなと宣伝してくれているような結果になります。
以前ヤクザが公衆の面前で弱い者イジメの暴力を振るって「どうだ!」と粋がっていることが、彼らにとって却って自分に損なことをしている自覚がないのが不思議だと書いたことがあります。
店でダニのように言いがかりをつけていれば、その場では不当な利益を少しは得ることがあるでしょうが、大きな目では世間を狭くし、誰もマトモにつき合ってくれなくなって、人生総合で見れば損なことをしていることになります。
2014-4-24「中国の学習能力4(反日行動の損得)」で、商船三井に対する差し押さえ事件を書きましたが、目先の暴力行為や嫌がらせはトータルで損することが国家の歴史の浅い中国ではまだ理解できないのです。
ところで、経済制裁というのは相互に経済交流があるからこそ効果があるのですが、往復200万ドルの交流があれば双方100万ドルずつ損失が起きる関係です。
ですから制裁とは言うものの双方同額の損害が生じますので、制裁する方とされる方の経済規模格差が余程大きくないと強力な実行が不可能です。
世界対イランの場合、何百倍の格差だから全面実行が可能だったことになります。
イランと取引が出来なくなってもの殆どの国にとってはホンの何%の被害でしかありませんが、イランにとっては村八分にあんれば90%以上の効果があります。
ロシアにとってウクライナに対する分だけ天然ガス禁輸できれば、(ウクライナにとって被害甚大ですが・・)ロシア経済にとって小さな被害ですから簡単に締め上げることが出来るでしょう。
しかし、西欧へのパイプラインがウクライナ経由ですから、パイプの口を締めるとなれば西欧への全面禁輸となりますから、ロシア自体が収入の大方を失ってしまいますので、(ロシア政府収入の過半を占めると言われます)ロシアの方が参ります。
中国の経済規模になると中国に経済制裁・禁輸すれば、禁輸した方にも同額の損失が生じる以上は、おいそれとは実行できません。
アメリカや日本が自分にダメージが少なくなるように中国との経済交流の規模をドンドン縮小して行って、全体の5%以下に引き下げてから全面禁輸しても5%の被害で済みますが、(日米合計経済規模が中国の2倍としても)中国にとっても1割しか被害がないので制裁の効果が限定されます。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC