日中の制裁合戦2

当時の報道では、日系企業で働く労働者数は約1000万人にのぼると言われていました。
それだけの国内産業の操業が止まると、納入業者・仕入れている企業その他の関連産業の混乱は半端なものではありません。
http://biz-journal.jp/2012/10/post_918.htmlによれば、
「中国には、国内で1千万人の雇用を創出する日本企業が不可欠」
の題名で掲載しています。
ま、特定の立場で書いている面もあるので、真実は分りませんが・・。
日系企業を痛めつけて操業不能にすると日系企業が自主的に日本本国に協力するために中国国内でゼネストをして、中国内部を痛めつけているような効果が中国国内で生じます。
このために中国は日系企業を全面弾圧することは不可能で、オバマ大統領の対ロシア制裁が西欧諸国に大した害のない程度しか出来ないのと同様で、象徴的にいくつかの日系企業を大げさに血祭りに上げて日系企業に対する萎縮効果を狙うしかなかったと思われます。
数年前の対日暴動で、パナソニックなど象徴的企業を狙い撃ちしたのもそう言う視点・・脅かす視点だったと見るべきでしょう。
数年前の対日暴動では何の被害も受けなかった日系企業の方が多かったと(嘘か本当か分りませんが)今になって報道されています。
しかし、このやり方は却って中国にとって不利な結果になりそうです。
このやり方は、日本右翼が中国進出はこんなに危険だと宣伝して中国への投資をやめるように宣伝していますが、彼らに代わって中国政府自身が日本企業に対して危険だから来るなと宣伝してくれているような結果になります。
以前ヤクザが公衆の面前で弱い者イジメの暴力を振るって「どうだ!」と粋がっていることが、彼らにとって却って自分に損なことをしている自覚がないのが不思議だと書いたことがあります。
店でダニのように言いがかりをつけていれば、その場では不当な利益を少しは得ることがあるでしょうが、大きな目では世間を狭くし、誰もマトモにつき合ってくれなくなって、人生総合で見れば損なことをしていることになります。
2014-4-24「中国の学習能力4(反日行動の損得)」で、商船三井に対する差し押さえ事件を書きましたが、目先の暴力行為や嫌がらせはトータルで損することが国家の歴史の浅い中国ではまだ理解できないのです。
ところで、経済制裁というのは相互に経済交流があるからこそ効果があるのですが、往復200万ドルの交流があれば双方100万ドルずつ損失が起きる関係です。
ですから制裁とは言うものの双方同額の損害が生じますので、制裁する方とされる方の経済規模格差が余程大きくないと強力な実行が不可能です。
世界対イランの場合、何百倍の格差だから全面実行が可能だったことになります。
イランと取引が出来なくなってもの殆どの国にとってはホンの何%の被害でしかありませんが、イランにとっては村八分にあんれば90%以上の効果があります。
ロシアにとってウクライナに対する分だけ天然ガス禁輸できれば、(ウクライナにとって被害甚大ですが・・)ロシア経済にとって小さな被害ですから簡単に締め上げることが出来るでしょう。
しかし、西欧へのパイプラインがウクライナ経由ですから、パイプの口を締めるとなれば西欧への全面禁輸となりますから、ロシア自体が収入の大方を失ってしまいますので、(ロシア政府収入の過半を占めると言われます)ロシアの方が参ります。
中国の経済規模になると中国に経済制裁・禁輸すれば、禁輸した方にも同額の損失が生じる以上は、おいそれとは実行できません。
アメリカや日本が自分にダメージが少なくなるように中国との経済交流の規模をドンドン縮小して行って、全体の5%以下に引き下げてから全面禁輸しても5%の被害で済みますが、(日米合計経済規模が中国の2倍としても)中国にとっても1割しか被害がないので制裁の効果が限定されます。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC